Amazon広告の入札戦略は、掲載枠ごとのクリック単価の許容倍率と予算切れの日の有無で選び、切り替えの効果は、変更後4週間の実績を、設定を変更していないキャンペーンの変化率から算出した見込みと比較して判定する
Amazon広告(スポンサープロダクト広告)では、キャンペーンの入札戦略が、作成時に選んだ設定のまま見直されていない場合があります。
診断サンプルの架空の会社K社(キッチン用品メーカー。自社ブランドは「ケイライフ(架空)」)の例では、一般語(マニュアル)のキャンペーン(以下、一般語のキャンペーン)において、検索結果の最上部(最初のページ)に表示された広告のACOS(広告費売上高比率)が16.5%で、販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送費などを差し引いた利益率に基づく損益分岐ACOS(35%と仮定)を大きく下回っています。一方で、このキャンペーンでは、日予算に到達して配信が停止した日(以下、予算切れの日)が12か月間で114日あります。この状況で入札額を最大2倍に引き上げる入札戦略を選ぶと、予算切れの日がさらに増える可能性があります。
そこでこの記事では、Amazon Adsの公式ヘルプとガイドに基づき、3つの入札戦略(動的な入札の2種類と固定入札額。ルールに基づく入札はFAQで扱います)の違い、選定の前に広告枠レポートから算出する値、入札戦略の選定方法、切り替え前後の比較期間と、切り替えの効果の判定方法を整理します。
この記事の対象読者は、Amazonに自社ブランドの商品を出品し、スポンサープロダクト広告のキャンペーン設定を管理している担当者です。
Amazon広告のアカウント診断で、掲載枠ごとのACOSと予算切れの日を確認しているTAMKOの立場から、入札戦略の選定と切り替えの効果の判定を解説します。
- 入札戦略を「動的な入札 - アップとダウン」に変更してから、キャンペーンのクリック単価とACOSが上昇しているクリック単価の許容倍率(損益分岐ACOS÷ACOS)が2を下回る掲載枠では、入札額の引き上げによってACOSが損益分岐ACOSを上回る可能性がある
- 一般語のキャンペーンで日予算に到達して配信が停止する日があり、どの入札戦略を選ぶべきか判断できない予算切れの日がある間は、入札額を引き上げる「動的な入札 - アップとダウン」を選ばない
- 入札戦略を変更した翌月から、キャンペーンの売上が増加し、ACOSも低下しているが、変更の効果か季節による変動かを判断できない設定を変更していないキャンペーンの同じ期間の変化率から、変更しなかった場合の見込みを算出し、変更後の実績と比較する
【結論】Amazon広告の入札戦略は、掲載枠ごとの許容倍率と予算切れの日の有無で選び、切り替えの効果は変更しなかった場合の見込みとの比較で判定する
広告枠レポートで掲載枠ごとに「損益分岐ACOS÷ACOS」(この記事では、クリック単価の許容倍率と呼びます)を算出し、その値が2以上の掲載枠の有無と、予算切れの日の有無の2条件で、入札戦略を選びます。入札戦略の切り替え後は、変更後4週間の広告費と売上を、変更前4週間の値に設定を変更していないキャンペーンの同じ期間の変化率を掛けた見込みと比較し、損益分岐ACOSに照らして、変更後の入札戦略を継続するか元に戻すかを判定します。

損益分岐ACOS(販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送費などを差し引いた利益率に基づく値)の算出方法は「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。キーワードの入札額の上限の算出方法は「Amazon広告の推奨入札額で入札してよいか?損益分岐クリック単価を算出して比較する」、掲載枠ごとの引き上げ率の設定方法は「Amazon広告の掲載枠とは?入札額の引き上げ率を掲載枠ごとのACOSと注文数で決める方法」で扱っています。この記事では、入札戦略の選定と、切り替えの効果の判定に絞って説明します。
Amazon広告の入札戦略とは:動的な入札(ダウンのみ/アップとダウン)と固定入札額の違い
キャンペーンの作成時に選んだ入札戦略を、その後の成果に基づいて見直していない。
入札戦略は、キーワードや商品ターゲティングに設定した入札額(以下、入力した入札額)を、Amazonがオークションごとに増減するか否かを決める、キャンペーン単位の設定です。動的な入札 - ダウンのみ(以下、ダウンのみ)は、販売につながりにくいクリックの入札額を最大100%引き下げます。動的な入札 - アップとダウン(以下、アップとダウン)は、最大100%の範囲で引き上げと引き下げの両方を行います。固定入札額は入札額を調整しません。

公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札戦略」に記載されている内容は、次の表のとおりです。
| 入札戦略 | 入札額の調整 | 公式ヘルプが示す適用場面 |
|---|---|---|
| 動的な入札 - ダウンのみ | 販売につながる可能性が低いクリックの入札額を、すべての掲載枠で最大100%引き下げる | 最大入札額を決めたうえでコンバージョンを最適化したい場合、広告の運用を開始した直後の場合、予算が限られている場合 |
| 動的な入札 - アップとダウン | 販売につながる可能性が高いクリックでは入札額を引き上げ、可能性が低いクリックでは引き下げる。増減の幅は、すべての掲載枠で最大100% | 過去の成果データが十分にある商品の場合、人気のある掲載枠への掲載を重視するキャンペーンの場合、高い入札額にも対応できる予算がある場合 |
| 固定入札額 | 入札額を調整しない | 過去のキャンペーンのデータと目標ACOSがある場合、新商品の広告の成果を検証する場合 |
公式ガイド「スポンサープロダクト広告の「動的な入札 - アップとダウン」に関するガイド」は、アップとダウンを選ぶ広告主に対し、入札額が入力した額の2倍まで引き上げられても支出に対応できるかを確認するよう求めています。
掲載枠ごとの入札額の調整は、選択した入札戦略に加えて適用されます。公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札額を調整する」の例では、入札額が1ドル、検索結果の最上部に対する引き上げ率が50%の場合、同掲載枠での入札額は1.5ドルとなり、アップとダウンでは最大3ドルになります。つまり、掲載枠ごとの引き上げ率を設定している場合、アップとダウンでの上限は引き上げ後の入札額の2倍です。この最大額を損益分岐クリック単価と比較する方法は「Amazon広告の推奨入札額で入札してよいか?損益分岐クリック単価を算出して比較する」で解説しています。
入札戦略を選ぶ前に、広告枠レポートで掲載枠ごとのクリック単価の許容倍率(損益分岐ACOS÷ACOS)を算出する
入札戦略をアップとダウンに変更してから、キャンペーンのクリック単価が上昇し、ACOSが損益分岐ACOSに近い水準にある。
掲載枠ごとに損益分岐ACOSをACOSで割ると、1クリックあたりの売上が変わらない前提で、クリック単価が何倍に上昇するまでACOSが損益分岐ACOS以下に収まるかの目安が得られます。この値が、本記事でいうクリック単価の許容倍率です。許容倍率が1未満の掲載枠では、ACOSが損益分岐ACOSを上回っています(その差が偶然による変動の幅に収まるかは、注文数で確認します)。

掲載枠ごとの広告費と売上は、キャンペーンマネージャーの「入札額調整」タブ、または広告枠レポートで確認できます(広告枠レポートの列名では、広告費は「コスト」、注文数は「商品購入数」)。公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の広告枠レポート」によると、このレポートには「入札戦略」の列もあり、各キャンペーンの入札戦略を確認できます。レポートの列と出力できる期間は「Amazon広告の掲載枠とは?入札額の引き上げ率を掲載枠ごとのACOSと注文数で決める方法」で解説しています。
ACOS(広告費÷売上)は、(クリック単価×クリック数)÷(1クリックあたりの売上×クリック数)であり、クリック単価÷1クリックあたりの売上と一致します。1クリックあたりの売上が一定であれば、クリック単価が2倍になるとACOSも2倍になります。したがって、損益分岐ACOS÷ACOSは、クリック単価の上昇を何倍まで許容できるかを示します。
K社の一般語のキャンペーンでは、許容倍率は検索結果の最上部が2.12倍、その他の検索結果が1.17倍、商品ページが0.97倍です。アップとダウンは入札額を最大2倍に引き上げますが、検索結果の最上部では、クリック単価が2倍になってもACOSは損益分岐ACOSを上回りません。その他の検索結果では、クリック単価が17%を超えて上昇するとACOSが損益分岐ACOSを上回ります。商品ページでは、ACOSがすでに損益分岐ACOSを1.2ポイント上回っています(いずれも1クリックあたりの売上が変わらない場合)。
この値を解釈する際は、次の3点に留意します。
- アップとダウンで入札額が引き上げられるのは、Amazonが販売につながる可能性が高いと判断したクリックです。これらのクリックの1クリックあたりの売上は掲載枠の平均と異なる可能性がありますが、その差は事前に確認できません。
- 実際のクリック単価はオークションで決まり、入札額に比例して上昇するとは限りません。1クリックあたりの支払額の上限は、引き上げ後の入札額の最大値で確認します。
- 注文数が少ない掲載枠のACOSは、偶然によって変動します。K社の商品ページのACOS 36.2%と損益分岐ACOS 35%の差は偶然による変動の幅に収まるため、この記事では損益分岐ACOSとほぼ同じ水準と判断します。差が偶然による変動の幅に収まるかの判断方法は「Amazon広告の掲載枠とは?入札額の引き上げ率を掲載枠ごとのACOSと注文数で決める方法」で解説しています。
Amazon広告の入札戦略の選定:許容倍率が2以上の掲載枠の有無と、予算切れの日の有無で決める
一般語のキャンペーンで予算切れの日があり、「アップとダウン」と「ダウンのみ」のどちらを選ぶべきか判断できない。
アップとダウンを選ぶのは、クリック単価の許容倍率が2以上の掲載枠があり、かつ予算切れの日がない場合です。その場合も、入札額が2倍に引き上げられたときの1日の広告費を日予算で賄えるかを確認し、賄えない場合はダウンのみを選びます。どちらかの条件を満たさない場合も、ダウンのみを選びます。Amazonによる入札額の自動調整の影響を除いて、掲載枠ごとの引き上げ率や入札額を変更した効果を検証したい場合は、固定入札額を選びます。

1つ目の条件は、前の章で算出した許容倍率が2以上の掲載枠の有無です。2つ目の条件は、予算切れの日の有無です。公式ヘルプは、ダウンのみの適用場面として予算が限られている場合を、アップとダウンの適用場面として高い入札額にも対応できる予算がある場合を挙げています。予算切れの日があるキャンペーンで入札額を引き上げると、1クリックあたりの支払額が増え、日予算に到達する時刻が早まる可能性があります。
K社の一般語のキャンペーンでは、検索結果の最上部の許容倍率が2.12倍で1つ目の条件を満たしますが、予算切れの日が12か月のうち114日(約31%)あり、2つ目の条件を満たしません。公式ヘルプは固定入札額の適用場面として過去のキャンペーンのデータと目標ACOSがある場合を挙げていますが、このキャンペーンには予算切れの日があります。そのため、この記事の例では、一般語のキャンペーンで入札戦略を固定入札額(説明用の架空の設定)からダウンのみに切り替え、販売につながりにくいクリックの広告費を減らします。
検索結果の最上部の入札額は、掲載枠ごとの入札額の調整を使って引き上げることもできます。公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札ルール」にも、ダウンのみのキャンペーンで、検索結果の最上部に対する入札額の調整を設定する例があります。ただし、引き上げ率で入札額を引き上げる場合も、予算切れの日が増える可能性がある点は同じです。そのため、引き上げ率の変更は、ダウンのみへの切り替えの効果を判定し、日予算を見直して予算切れの日がなくなったことを確認してから行います。引き上げ率の設定方法は「Amazon広告の掲載枠とは?入札額の引き上げ率を掲載枠ごとのACOSと注文数で決める方法」で扱っています。予算切れの日がなくなった後は、アップとダウンも選択肢になりますが、どちらも入札額を引き上げるため、一方の効果を判定してから、もう一方を変更します。
許容倍率が1以上2未満の掲載枠のみの場合も、アップとダウンで成果が改善する可能性はありますが、改善するか否かは事前に判断できないため、ダウンのみを選びます。
入札戦略の切り替え前後の比較期間:4週間ずつとし、設定を変更していないキャンペーンの変化率から見込みを算出する
入札戦略を変更した翌月から、キャンペーンの売上が増加し、ACOSも低下しているが、変更の効果か季節による変動かを判断できない。
変更前と変更後の4週間ずつを比較期間とし、変更後の4週間が終了した7日後に判定します。比較期間からは、在庫切れの日と、大型セールの前と開催期間を除きます。同じ期間に設定を変更していないキャンペーンを比較対象とし、その広告費・売上・注文数の変化率を変更前の値に掛けた見込みと、変更後の実績を比較して、切り替えの効果を判定します。

比較期間は、変更前と変更後で同じ長さの4週間ずつとし、曜日の構成をそろえます。公式ガイド「スポンサープロダクト広告の「動的な入札 - アップとダウン」に関するガイド」は、アップとダウンの開始後、2週間に1回程度の割合で入札額を確認するよう求めており、4週間はこの確認を2回行える長さです。比較期間は、次の3点に注意して決めます。
- 判定の時期:出品者の場合、スポンサープロダクト広告の売上にはクリックから7日以内の購入が計上されます。公式ヘルプ「広告キャンペーンのアトリビューション」によると、このアトリビューションの期間(ルックバックウィンドウ)が終了するまで指標は確定しません。そのため、切り替えの効果は、変更後の4週間が終了した7日後に判定します。
- 在庫切れの日:在庫がないなどの理由で商品がおすすめ出品に選定されない日は、スポンサープロダクト広告が表示されないため、比較期間から除きます。K社の例では、主力商品「ステンレス保存容器 5点セット」の在庫切れの日が、12月19日〜12月30日と3月24日〜3月31日の計20日あります。
- 大型セールの前と開催期間:公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告キャンペーンに入札額を設定する」によると、クリック単価は主要なショッピングイベントの数週間前から開催期間中にかけて上昇する傾向があるため、この期間も除きます。
除いた日数が変更前と変更後で異なる場合は、1日あたりの値に換算して比較します。
ただし、これらの期間を除いても、変更前と変更後では需要が異なる場合があります。K社の例では、アカウント全体の広告の売上が2026年6月の2,115,903円から7月の2,777,653円へ31.3%増加し、ACOSは22.1%から21.5%に低下しています。6月末に入札戦略を変更していた場合、前後の比較だけでは、この変化のうち入札戦略の効果と需要の変化による部分を区別できません。
このため、同じ期間に入札戦略・入札額・日予算・掲載枠ごとの引き上げ率・ターゲティングのいずれも変更していないキャンペーンを比較対象とします。切り替えたキャンペーンの変更前の広告費・売上・注文数に、比較対象のキャンペーンのそれぞれの変化率を掛けた値を「変更しなかった場合の見込み」とします。この方法は2つのキャンペーンの需要が同じ割合で変化することを前提とするため、比較対象には、切り替えたキャンペーンと類似する商品を広告しているものを選びます。
入札戦略を切り替えたキャンペーンでも、比較期間中はほかの設定を変更しません。公式ガイドも、テストでは変更による成果の差を明確に把握できるよう、変更内容を限定することを推奨しています。入札戦略と掲載枠ごとの引き上げ率は、一方の変更の効果を判定してから、もう一方を変更します。
変更前と変更後の4週間ずつと、判定までの7日を合わせた63日は、広告枠レポートで出力できる期間(90日)に収まるため、判定する日に両方の期間のレポートを出力できます。ただし、比較期間を8週間ずつに延長する場合は合計119日となり、90日を超えます。延長に備えて、入札戦略を変更する日に、変更前8週間のレポートを保存します。
切り替えの効果の判定:ダウンのみは減少分、アップとダウンは増加分のACOSを損益分岐ACOSと比較する
入札戦略をダウンのみに切り替えてから、キャンペーンの広告費と売上がともに減少しており、変更後の入札戦略を継続すべきか判断できない。
変更しなかった場合の見込みに対する、広告費と売上の増減額を算出します。広告費と売上がともに減少した場合は、広告費の減少額÷売上の減少額(以下、減少分のACOS)が損益分岐ACOSを上回れば、利益は増加しています。広告費と売上がともに増加した場合は、広告費の増加額÷売上の増加額(以下、増加分のACOS)が損益分岐ACOSを下回れば、利益は増加しています。

損益分岐ACOSは広告費を差し引く前の利益率に当たるため、利益の増減額は、売上の増減額×損益分岐ACOS−広告費の増減額で算出できます。広告費と売上がともに減少した場合、この値が正になるのは、減少分のACOSが損益分岐ACOSを上回る場合です。広告費が減少して売上が増加した場合は利益が増加し、広告費が増加して売上が減少した場合は利益が減少します。
| 区分 | 広告費 | 売上 | 注文数 | ACOS |
|---|---|---|---|---|
| 一般語のキャンペーン:変更前(固定入札額) | 160,000円 | 672,000円 | 187件 | 23.8% |
| 一般語のキャンペーン:変更後(ダウンのみ) | 136,000円 | 640,000円 | 178件 | 21.3% |
| 比較対象のキャンペーン:変更前 | 119,000円 | 375,000円 | 104件 | 31.7% |
| 比較対象のキャンペーン:変更後 | 119,000円 | 390,000円 | 108件 | 30.5% |
| 一般語のキャンペーン:変更しなかった場合の見込み | 160,000円 | 698,880円 | 194件 | 22.9% |
| 変更後と見込みの差 | −24,000円 | −58,880円 | −16件 | — |
表の数値は、K社の一般語のキャンペーンを想定した説明用の架空のものです。比較対象のキャンペーンは、広告費が変わらず、売上が4.0%、注文数が約3.8%(108÷104)増加しています。そのため、変更しなかった場合の見込みは、広告費を変更前の値のまま、売上を変更前の値の1.04倍、注文数を変更前の値の108÷104倍として算出しています(注文数は小数点以下を四捨五入)。
変更前後だけを比較すると、広告費は24,000円、売上は32,000円減少しており、減少分のACOSは75.0%、利益の増減額は(−32,000円)×35%−(−24,000円)=+12,800円です。一方、変更しなかった場合の見込みと比較すると、売上の減少額は58,880円となり、減少分のACOSは40.8%、利益の増減額は(−58,880円)×35%−(−24,000円)=+3,392円です。2つの減少分のACOS(75.0%と40.8%)はいずれも損益分岐ACOS 35%を上回っていますが、比較対象のキャンペーンの変化率を反映すると、利益の増加額は変更前後だけを比較した場合の約4分の1になります。
次に、変更後と見込みの注文数の差が、偶然による変動の幅に収まるかを確認します。統計上の目安として、変更後の注文数と見込みの差が偶然によって生じる幅は、√(変更前の注文数+変更後の注文数)程度です(Amazonの公式の基準ではありません)。この例では√(187+178)≒19件で、その2倍は約38件です。変更後の注文数と見込みの差は約16件で、約38件以内に収まるため、売上の減少が入札戦略の変更によるものか、偶然による変動かを区別できません。
この例では、減少分のACOSが損益分岐ACOSを上回っており、売上の減少が偶然によるものであれば、利益の増加額はさらに大きくなります。そのため、判定を保留し、ダウンのみのまま比較期間を変更前と変更後の8週間ずつに延長して、同じ計算を行います。変更前8週間の値には、入札戦略を変更する日に保存したレポートを使います。
アップとダウンに切り替えた場合は、広告費と売上がともに増加することが多く、その場合は増加分のACOSを損益分岐ACOSと比較します。増加分のACOSの考え方は「Amazon広告の掲載枠とは?入札額の引き上げ率を掲載枠ごとのACOSと注文数で決める方法」で解説しています。いずれの場合も、掲載枠ごとのクリック単価の変化から、どの掲載枠で入札額が増減したかの目安が得られます。また、広告経由の売上が減少しても、その一部はほかの経路の注文で補われる場合があるため、広告以外を含む全体の売上の推移もあわせて確認します。
TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること
この記事で扱った掲載枠ごとのACOSと予算切れの日は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認している項目です。

診断ページのK社の例では、「一般語のキャンペーンが日予算に届き、配信が停止した日」を年114日と示しています。診断では、改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。料金は、診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)です。
詳しくは、診断ページをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q01ルールに基づく入札とは何ですか?
広告主がROAS(広告費用対効果)などの目標を設定し、その達成に向けて、Amazonがオークションごとに入力した入札額を増減する入札戦略です。
公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札ルール」によると、入札額は、掲載枠ごとの入札額の調整などを反映した後の値の最大5倍に引き上げられる場合があります。利用には日予算の最低要件などの条件があり、ROASの目標を設定する前に、少なくとも2週間分のデータを収集することが推奨されています。Amazonは目標の達成を保証していません。ルールに基づく入札に切り替える場合も、この記事の比較期間と判定の方法を使えます。
Q02入札戦略は、キーワードや広告グループごとに変えられますか?
変えられません。入札戦略はキャンペーン単位の設定です。
指名・一般語のキーワードと、競合の商品ページを指定する商品ターゲティングが1つのキャンペーンに混在している場合は、すべてに同じ入札戦略が適用されます。指名・一般語・競合の商品ページごとに入札戦略を変える必要がある場合のキャンペーンの分割方法は「Amazon広告のキャンペーン構成:指名・一般語・競合の商品ページを分けるか否かの判断」で解説しています。
Q03オートターゲティングのキャンペーンでも、アップとダウンを使えますか?
使えます。公式ガイドでは、オートとマニュアルのどちらのキャンペーンでもアップとダウンを選択できると説明されています。
公式ガイドでは、アップとダウンの開始後は、オートターゲティングのデフォルト(ほぼ一致・おおまか一致・代替商品・補完商品など)ごとの成果を確認し、キャンペーンの目標に合わせて入札額を調整するよう推奨されています。
Q04大型セールの期間だけ、入札戦略を変更してもよいですか?
入札戦略の変更自体は可能です。ただし、セール期間に入札額を引き上げることが目的であれば、入札戦略は変更せずに、スケジュール式入札ルールを使う方法もあります。
公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札ルール」によると、スケジュール式入札ルールは、特定の時間帯・曜日・期間・高トラフィックのイベントに入札額の引き上げを設定する機能で、ダウンのみ・アップとダウン・固定入札額のいずれにも適用できます(ルールに基づく入札のキャンペーンには適用できません)。セール期間の成果は、通常期の成果と分けて判定してください。
Amazon広告の入札戦略は、掲載枠ごとの許容倍率と予算切れの日の有無で選び、切り替えの効果は変更後の実績を変更しなかった場合の見込みと比較して判定する|まとめ
入札戦略は、入札額をAmazonがオークションごとに増減するか否かを決める、キャンペーン単位の設定です。広告枠レポートで掲載枠ごとにクリック単価の許容倍率(損益分岐ACOS÷ACOS)を算出し、許容倍率が2以上の掲載枠があり、かつ予算切れの日がない場合はアップとダウンを、それ以外の場合はダウンのみを選びます。入札戦略の切り替え後は、変更後4週間の実績を、設定を変更していないキャンペーンの変化率から算出した見込みと比較し、減少分または増加分のACOSを損益分岐ACOSと照らし合わせて、切り替えの効果を判定します。
この記事のポイント
- 入札戦略はキャンペーン単位の設定で、ダウンのみは入札額を最大100%引き下げ、アップとダウンは100%の範囲で増減させ(上限は入札額の2倍)、固定入札額は調整を行わない。掲載枠ごとの入札額の調整は、入札戦略に加えて適用される。
- 広告枠レポートで掲載枠ごとに損益分岐ACOS÷ACOS(クリック単価の許容倍率)を算出する。許容倍率が1未満の掲載枠では、ACOSが損益分岐ACOSを上回っている(その差が偶然による変動の幅に収まるかは、注文数で確認する)。
- アップとダウンは、許容倍率が2以上の掲載枠があり、かつ予算切れの日がない場合に選ぶ。それ以外の場合はダウンのみとし、Amazonによる入札額の自動調整の影響を除いて引き上げ率や入札額を変更した効果を検証したい場合は固定入札額とする。
- 比較期間は切り替えの前後4週間ずつとし、変更後の4週間が終了した7日後に判定する。在庫切れの日と、大型セールの前と開催期間を除いたうえで、設定を変更していないキャンペーンの変化率から、変更しなかった場合の見込みを算出する。
- 変更後と見込みの注文数の差が√(変更前後の注文数の合計)の2倍以内であれば、比較期間を延長して再判定する。それを超える場合は、広告費が減少して売上が増加した場合、減少分のACOSが損益分岐ACOSを上回る場合、または増加分のACOSが損益分岐ACOSを下回る場合に、変更後の入札戦略を継続する。