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計測と評価

Amazon広告は、損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分け、全体はTACOSを月ごとに見る

この記事は、Amazonに自社ブランドの商品を出品し、スポンサー広告(スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告)を運用している担当者の方に向けた解説です。ACOSは確認しているものの、キャンペーンごとの損益分岐ACOSとTACOSはまだ算出していない方を想定しています。

損益分岐ACOSとTACOSについては、次の3つの状況がよく起こります。この記事では、それぞれへの対処と、管理画面とセラーセントラルで確認する箇所を順に説明します。

例として、診断サンプルの架空の会社であるK社(キッチン用品メーカー・自社ブランド「ケイライフ(架空)」)を記事の最後まで使います。数字はすべて説明用のサンプルです。K社の12か月間における全体のACOSは21.6%で、損益分岐ACOS(35%と仮定)を下回っています。キャンペーンの種類ごとに分けると、指名(ブランド名のキーワードに広告を出すキャンペーン。以下、指名)は7.2%、競合の商品ページは55.5%で、そのうち1つは基準を上回ります。以降、K社の数字は「K社の例」と記します。

説明の根拠は、Amazon Adsの公式の解説とサポートセンターのヘルプです。TAMKOは、Amazon広告のアカウント診断で、キャンペーンごとのACOSと全体の売上に対する広告費を毎回確認しています。その立場から解説します。

【結論】損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分け、停止する対象と増額する対象を決める

損益分岐ACOSは、原価・Amazonの販売手数料・配送の費用などを引いた利益率から算出し、全体のACOSではなくキャンペーンの種類ごとに比べます。損益分岐を大きく上回り、原因が分かる商品ページや検索語句は、商品ターゲティングの指定を停止するか、除外キーワードを追加して対処します。損益分岐を下回り、差の大きいキャンペーンは増額の候補にします。指名は停止して自然検索の売上を確認し、損益分岐との差が小さいオートと、境目のうち外側にあるものは、注文の件数を集めてから判断します。全体の状態は、TACOSの月ごとの推移で確認します。

Amazon広告のTACoS(TACOS)とACOSの違いを示した図。同じ広告費6,042,345円を広告経由の売上で割るとACOS 21.6%、広告以外も含む全体の売上で割るとTACoS 10.2%になる、という2つの式で表す
ACOSとTACoS(TACOS)は、分子の広告費は同じで、分母に入れる売上の範囲が違う。K社の例です(12か月)。

全体ではなく、種類ごとに損益分岐と比べる

  1. 01損益分岐ACOSを算出する原価・販売手数料・配送の費用などを引いた利益率
  2. 02種類ごとに比べる指名・一般語・オート・競合の商品ページ・スポンサーブランド
  3. 03細かい単位に分ける競合の商品ページは商品ページ、一般語・オートは検索語句
  4. 04全体はTACOSで確認する月ごとの推移を、ACOS・広告経由の売上の比率と併せて確認する
比べる単位は、全体ではなくキャンペーンの種類。競合の商品ページは商品ページの単位に、一般語とオートは内側でも検索語句の単位に分ける。

この記事では、損益分岐ACOSと比べた位置を、次の3つの呼び名で書きます。

  • 内側:ACOSが損益分岐ACOSを下回る。広告費を引いても利益が残る
  • 外側:ACOSが損益分岐ACOSを上回る。広告費が広告費をかける前の利益を上回り、赤字になる
  • 境目:注文が10件程度増減するだけで、内側と外側が入れ替わる範囲(K社の例で後述)

公式のACOSの解説では、損益分岐ACOSは利益率に直接関係し、利益を維持するにはACOSを利益率より低く抑える必要がある、とされています。この記事では、この比較をキャンペーンの種類ごとに行い、その結果を停止・増額の判断に結びつける手順を説明します。

ACOS・ROAS・TACOSの違いと損益分岐ACOSとは:ACOSを見ていても、利益が残る水準が分からない理由

よくある場面

ACOSは毎月確認しているが、自社の商品で利益を確保できるACOSの上限を算出していない。

ACOSの値だけでは、利益を確保できているかどうかは判断できません。その上限が損益分岐ACOSで、販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送の費用などを引いた利益率と同じ値です。TACOSは、同じ広告費を広告以外も含む全体の売上で割った値で、ACOSとは分母が違います。

ACOSとTACOSは、分母に入れる売上の範囲が違う

全体の売上(広告以外も含む)=TACOSの分母

AB
  • A
    広告経由の売上ACOS・ROASの計算に使う売上。K社は約47%
  • B
    広告以外の売上自然検索などからの売上。K社は約53%
K社の例です。12か月の全体の売上59,460,328円のうち、広告経由の売上は約47%。

ACOS(広告費売上高比率)は、広告費を広告経由の売上で割り、100を掛けた値です。ROAS(広告費用対効果)は、広告経由の売上を広告費で割った値で、公式の解説ではACOSの逆数と説明されています。ACOSとROASは、同じ関係を別の形で示した指標です。

ここでいう広告経由の売上は、Amazon Adsのアトリビューションの考え方で広告に起因するとされた購入の合計金額です。公式ヘルプでは、この売上はROASの計算に使われ、計算方法が異なるためリテールのレポートとは必ずしも一致しない、と説明されています。

K社の例です。12か月の広告費は6,042,345円、広告経由の売上は27,942,348円、全体の売上は59,460,328円です。

指標式K社の値
ACOS広告費÷広告経由の売上21.6%
ROAS広告経由の売上÷広告費4.62
TACOS広告費÷全体の売上10.2%

損益分岐ACOSは、原価と手数料などを引いた利益率から算出する

損益分岐ACOSは、広告費をかける前の1個あたりの利益率と同じ値です。式は次のとおりです。

損益分岐ACOSは、手数料なども引いた利益率

損益分岐ACOS
販売価格 − 原価 − Amazonの販売手数料 − 配送の費用など広告費をかける前の1個あたりの利益
販売価格
粗利率(販売価格−原価)ではなく、販売手数料や配送の費用なども引いた利益率で算出する。

次の数字で計算すると、損益分岐ACOSは35%です(説明用の数字です。手数料の額はカテゴリーや配送の方法で異なります)。

  • 販売価格:3,000円
  • 引く費用:原価1,200円、Amazonの販売手数料300円、配送の費用など450円
  • 広告費をかける前の利益:1,050円。損益分岐ACOSは1,050÷3,000=35%(損益分岐ROASは1÷0.35で約2.86)

同じ商品の粗利率は(3,000−1,200)÷3,000で60%です。粗利率で算出すると、販売手数料や配送の費用などの分だけ損益分岐を25ポイント高く見積もり、実際には利益が残っていないキャンペーンを内側と誤って判断することになります。手数料の率は商品のカテゴリーや配送の方法で異なるため、セラーセントラルで確認してください。

商品ごとに利益率が違う場合は、そのキャンペーンで売れている商品の利益率で算出します。K社は、手数料などを引いた後の利益率を35%と仮定しています(K社の例です)。計算例の販売価格3,000円は説明用の数字で、K社の注文1件あたりの売上とは別のものです。

全体のACOSとは:損益分岐を下回っていても、広告の利益が想定ほど残らない理由

よくある場面

全体のACOSは損益分岐ACOSを下回っているが、広告の利益は想定ほど残っていない。

全体のACOSは、各キャンペーンの広告費の合計を売上の合計で割った加重平均です。売上が大きくACOSの低いキャンペーン(多くは指名)があると、全体のACOSは低くなり、損益分岐の外側にあるキャンペーンを全体の数字からは把握できなくなります。

全体のACOSは、売上の大きいキャンペーンの値に近づく

全体のACOS
各キャンペーンの広告費の合計
各キャンペーンの広告経由の売上の合計売上の大きいキャンペーンほど影響が大きい
全体のACOSは加重平均。売上の大きい指名のACOSが低いと、全体の値も指名の値に近づいて低くなる。

K社の例です。12か月のキャンペーンを種類ごとに比較すると、全体は21.6%でも、ACOSは7.2%〜55.5%の幅があります。

キャンペーン広告費広告経由の売上ACOSROAS損益分岐(35%)との位置
スポンサープロダクト|指名(ブランド名)666,724円9,288,894円7.2%13.93内側(27.8ポイント下)
スポンサープロダクト|一般語(マニュアル)2,080,018円8,769,024円23.7%4.22内側(11.3ポイント下)
スポンサープロダクト|オート1,546,581円4,867,528円31.8%3.15内側(3.2ポイント下)
スポンサープロダクト|競合の商品ページ983,677円1,772,198円55.5%1.80外側(20.5ポイント上)
スポンサーブランド|一般語765,344円3,244,704円23.6%4.24内側(11.4ポイント下)
損益分岐ACOSとキャンペーン別のACOSを比べた横棒グラフ。K社のキャンペーンの種類ごとのACOSに損益分岐35%の線と全体21.6%の点線を引くと、競合の商品ページの55.5%だけが損益分岐の外側に出ている
K社のキャンペーンの種類ごとのACOS(K社の例・12か月)。損益分岐35%は手数料などを引いた後の利益率の仮定。

広告経由の売上の3分の1を占める指名が7.2%と低いため、全体のACOSは21.6%まで下がります。5つの種類のうち、競合の商品ページだけが損益分岐を20ポイント以上上回っています。

金額の目安として、「広告経由の売上×35%−広告費」を単純計算すると(説明用の計算です)、指名は約258万円、一般語は約99万円、オートは約16万円、スポンサーブランドは約37万円のプラスで、競合の商品ページは約36万円のマイナスです。合計は約374万円のプラスで、全体の広告経由の売上×35%から全体の広告費を引いた値と一致します。合計は黒字でも、赤字のキャンペーンの種類が1つ含まれています。

キャンペーンの種類ごとの仕分け:指名・一般語・オート・競合の商品ページ・スポンサーブランド

種類ごとに、損益分岐と比べた位置だけでなく、数字が実態より良く出る要因と悪く出る要因を確認し、どの単位まで分けて確認するかを決めます。内側か外側かだけで、続けるか停止するかは決めません。

種類ごとに、確認の仕方が違う

キャンペーンのACOSを、損益分岐と比べる

  • 指名(ブランド名)停止して検証する広告が無くても買われた売上を含みうる
  • 一般語・オート検索語句の単位に分ける商品に合わない検索語句が混ざる
  • 競合の商品ページ商品ページの単位に分ける素材や価格帯の違う商品ページが混ざる
  • スポンサーブランド損益分岐とだけ比べる計測期間がスポンサープロダクト広告と違う
種類ごとに、数字が実態より良く出る要因・悪く出る要因が違う。確認の仕方もそれに合わせて変える。
種類K社のACOS数字が実態より良く出る・悪く出る要因確認の仕方
指名(ブランド名)7.2%広告が無くても買われた売上が含まれうる(良く見せる)キャンペーン(停止して検証する)
一般語(マニュアル)23.7%商品に合わない検索語句が混ざる(悪く見せる)検索語句の単位に分ける
オート31.8%商品に合わない検索語句が混ざる(悪く見せる)検索語句の単位に分ける
競合の商品ページ55.5%素材や価格帯の違う商品ページが混ざる(悪く見せる)商品ページの単位に分ける
スポンサーブランド|一般語23.6%計測期間がスポンサープロダクト広告より長い(良く見せる)キャンペーン(損益分岐とだけ比べる)

指名(ブランド名):ACOS 7.2%は最も良く見えるが、広告が無くても買われた売上が含まれうる

K社の指名はACOS 7.2%・ROAS 13.93で、5つのキャンペーンの種類の中で最も良い数字です(K社の例です)。ただし、ブランド名で検索した人は、広告が無くても自然検索の結果から同じ商品を購入していた可能性があります。その分は管理画面の数字では区別できません。

そのため、指名のACOSは、予算を増やす根拠にも、停止する根拠にもしません。停止して自然検索の売上がどれだけ残るかを検証する方法は、「Amazon広告の指名の広告は必要か?停止して自然検索に残る売上を検証する方法」で扱います。Google広告で同じ考え方を扱った記事は「指名キーワードの広告は必要か?停止して確認する前に見る件数とP-MAXの影響」です。

一般語とオート:損益分岐の内側でも、商品に合わない検索語句が混ざる(K社:注文0件の4語・年15万円)

K社の一般語(マニュアル)は23.7%、オートは31.8%で、どちらも内側です。ただしオートは、損益分岐との差が3.2ポイントにとどまります。

オートターゲティングには、ほぼ一致・おおまか一致・代替商品・補完商品の4つの戦略があり、Amazonが商品との関連性から検索語句や商品ページを選んで広告を表示します。この判断が自社の想定と合わない検索語句も含まれるため、検索ワードレポートで検索語句の単位に分けて確認します。

K社の例です。12か月で注文が0件だった検索語句は次の4語で、広告費の合計は150,000円です。

検索語句広告費クリック注文
保存容器 ガラス52,000円7430件
保存容器 100均42,000円5950件
タッパー 使い捨て32,000円4220件
弁当箱 子供24,000円3610件
合計150,000円2,1210件

K社の商品はステンレス製で、4語はいずれもその商品を探す検索ではありません。こうした語句は除外キーワードに追加します。除外キーワードで使えるマッチタイプは、フレーズ一致と完全一致です。

一般語とオートを合わせたACOSは26.6%で、この4語の広告費を除くと約25.5%になります(売上は変わらないと仮定した説明用の計算です)。

競合の商品ページ:全体55.5%の中に、損益分岐を大きく上回る商品ページと、境目の商品ページがある

K社の競合の商品ページのキャンペーンは、全体でACOS 55.5%で外側です。商品ターゲティングで指定した5つの商品ページの単位に分けると、内訳は2つのグループに分かれます(K社の例です)。表中の番号は、指定した商品ページを区別するためのもので、かっこ内はその商品ページの商品の素材です。

指定した商品ページ広告費広告経由の売上ACOS損益分岐(35%)との位置
競合の商品ページ1(ガラス保存容器)234,574円96,776円242.4%大きく上回る(約6.9倍)
競合の商品ページ4(プラスチック保存容器)198,336円102,282円193.9%大きく上回る(約5.5倍)
競合の商品ページ2(ステンレス保存容器)278,322円832,483円33.4%境目(内側)
競合の商品ページ5(ホーロー保存容器)97,442円271,356円35.9%境目(外側)
競合の商品ページ3(ステンレス保存容器)175,004円469,301円37.3%境目(外側)
  • 損益分岐を大きく上回る2件:ガラス保存容器(商品ページ1・ACOS 242.4%)とプラスチック保存容器(商品ページ4・ACOS 193.9%)。ACOSが損益分岐の5倍を超え、広告費は合計約43万円(432,910円)
  • 境目の3件:ステンレス保存容器(商品ページ2・ACOS 33.4%、商品ページ3・ACOS 37.3%)とホーロー保存容器(商品ページ5・ACOS 35.9%)。合計するとACOS 35.0%(広告費550,768円・売上1,573,140円)で、損益分岐とほぼ同じ

素材や価格帯の違う商品のページでは、K社のステンレス製の商品が同じページに表示されても、比較した人に選ばれにくいため、損益分岐を大きく上回る2件は、商品ターゲティングの指定を停止します。オートのキャンペーンでも同じ商品ページに広告が表示されている場合は、オートの側で除外する商品の指定(除外商品ターゲティング)をします。公式ヘルプでは、除外商品ターゲティングは、商品ターゲティングの広告とオートターゲティングの広告の両方に適用されるとされています。

境目の3件は、1件ずつ見ると損益分岐の前後に分かれています。競合の商品ページのキャンペーン全体の、注文1件あたりの売上(約3,600円)で換算すると、35.9%の商品ページ5は約2件、37.3%の商品ページ3は約9件、33.4%の商品ページ2は約10件の注文の増減で、内側と外側が入れ替わります(説明用の計算です)。損益分岐との差が約10件以内の注文に収まるため、境目のうち外側にある2件(商品ページ3・5)は停止の対象にせず、次の章の「検証してから判断」に入れます。境目のうち内側にある商品ページ2は続け、毎月確認します。

除外の設定は、追加してもすぐには反映されません。公式ヘルプでは、有効になるまでのバッファー期間を、除外キーワードは72時間、除外商品は96時間としています。

K社のスポンサーブランド|一般語はACOS 23.6%で、内側です(K社の例です)。

比べるときに注意すべき点は、広告経由の売上として計測する期間(ルックバックウィンドウ。以下、計測期間)の違いです。公式ヘルプでは、出品者のスポンサープロダクト広告の計測期間は7日間、スポンサーブランド広告は14日間で、広告に起因するとみなす商品の範囲の定め方も異なるとされています。同じ条件で計測した売上ではないため、種類どうしのACOSの差は細かく比較せず、それぞれを損益分岐と照らし合わせる使い方にとどめます。

スポンサーブランド広告は、ブランドロゴ・見出し・複数の商品などを組み合わせた広告で、商品検索結果ページの上部とページ内、商品ページなどに掲載されます。在庫不足などでおすすめ出品に選ばれない商品があると、スポンサープロダクト広告は表示されませんが、スポンサーブランド広告は表示されます。在庫切れの月は、両者の数字の動きがそろわないことを前提に解釈します。

仕分けの4つの判断とは:種類ごとにACOSを算出しても、停止と増額の対象を決められない理由

よくある場面

キャンペーンの種類ごとにACOSを算出したが、どのキャンペーンを停止し、どのキャンペーンの予算を増やすかを決められない。

内側か外側かの1つの軸だけでは、停止と増額の対象は決まりません。この軸に、管理画面の数字だけで判断できるかという軸を加えて、4つに分けます。損益分岐を大きく上回り、原因がはっきりしているものだけを停止し、内側で損益分岐との差が大きいものを増額の候補にします。指名、損益分岐との差が小さいオート、境目のうち外側にあるものは、検証してから判断します。

停止するのは「外側で、数字だけで判断できる」ものだけ

外側損益分岐との位置内側
一部を停止競合の商品ページ1・4の指定/注文0件の4語
検証してから判断境目の外側の商品ページ3・5(37.3%・35.9%)
続ける・配分を増やす候補一般語・スポンサーブランド・境目の内側の商品ページ2(33.4%)
検証してから判断指名・オート
管理画面の数字で判断できる判断の材料検証が要る
K社の例です。

「検証してから判断」の検証は、対象によって次の2つに分かれます。

  • 指名:一定期間停止し、自然検索の売上がどれだけ残るかを確認する
  • オートと、境目のうち外側にある商品ページ:同じ条件のまま期間を延ばし、注文の件数を集めてから損益分岐と比べ直す。オートは内側だが損益分岐との差が3.2ポイントと小さいため、注文0件の検索語句を除外した後の数字で判断する
判断対象理由
続けるスポンサーブランド|一般語・競合の商品ページ2(ステンレス保存容器・ACOS 33.4%)損益分岐の内側。スポンサーブランドは計測期間が違い、種類どうしの差を細かく比較しないため増額の比較の対象にしない。商品ページ2は境目(注文約10件の差)のため、同じ表で毎月確認する
配分を増やす候補一般語(マニュアル)内側で、損益分岐との差が大きい(11.3ポイント)。現状の配信も続ける
一部を停止競合の商品ページ1・4(ガラス・プラスチック保存容器)の指定/注文0件の4語(除外キーワード)損益分岐を大きく上回る、または注文が0件で、原因が素材や検索の意図の違いと分かる
検証してから判断指名・オート・競合の商品ページ3・5(ステンレス・ホーロー保存容器・ACOS 37.3%・35.9%)指名は広告が無くても買われた売上を含みうる。オートは損益分岐との差が3.2ポイントと小さく、除外の効果を確認してから判断する。商品ページ3・5は損益分岐との差が注文数件〜10件程度と小さい

停止で浮いた費用の配分先は、内側で損益分岐との差が大きいもの(K社では一般語)から検討します。ただし、入札額や予算を上げるとクリック単価も上がるため、増額分のACOSは現在のACOSと同じにはなりません。増額分の広告費と売上を2か月程度計測し、そのACOSを損益分岐と比べて判断します。

何件あれば判断できるか:損益分岐との差に相当する注文の数で考える

件数が少ない商品ページや検索語句は、注文が数件違うだけでACOSが大きく動きます。何件あれば判断できるかは、利益率と販売価格で変わるため、損益分岐との差に相当する注文の数を算出して考えます。

  • 損益分岐の売上:広告費÷損益分岐ACOS
  • 損益分岐との差に相当する注文の数:(損益分岐の売上−広告経由の売上)÷注文1件あたりの売上

K社の競合の商品ページ3(ステンレス保存容器・ACOS 37.3%)では、広告費175,004円÷0.35で損益分岐の売上は約50万円、広告経由の売上は469,301円です。差の約3.1万円は、1件約3,600円の注文の約9件分にあたります(説明用の計算です)。損益分岐との差に相当する注文の数がこのように10件程度にとどまる場合は、同じ条件のまま期間を延ばし、その件数より十分多い注文が集まってから判断します。

K社の例で、停止の効果を単純計算します(説明用の計算です。停止した2件の売上199,058円は、他のキャンペーンで補われないと仮定します)。広告費から、競合の商品ページ1・4の432,910円と4語の150,000円を引くと、全体のACOSは21.6%から約19.7%に、TACOSは10.2%から約9.2%に下がります。実際に停止した後は、次の章の表で前後の月を比べます。

TACOSの推移で全体を確認する:ACOSと広告経由の売上の比率を同じ表にまとめる

TACOSは、ACOSと「全体の売上に占める広告経由の売上の比率」と同じ表にまとめ、3つの動きの組み合わせで解釈します。TACOSだけを見ると、広告の効率が変わったのか、広告以外の売上が変わったのかを区別できません。

TACOSは、ACOSとの組み合わせで解釈する

TACOSが動いたとき、ACOSはどう動いたか

  • TACOSが下がり、ACOSは横ばい広告以外の売上が増えている
  • TACOSが上がり、ACOSも上がる広告の効率が低下している
  • TACOSが上がり、ACOSは横ばい広告以外の売上が減っている、または広告費を増やした
TACOSの動きは、ACOSの動きと組み合わせて解釈する。TACOSだけでは原因を区別できない。

TACOSは広告費を全体の売上で割るため、広告費が増えても、全体の売上が同じ割合で増えれば変わりません。表は、広告費・広告経由の売上・全体の売上・ACOS・TACOS・広告経由の売上の比率(広告経由の売上÷全体の売上)の6列で、月ごとにまとめます。全体の売上(広告以外も含む)は、セラーセントラルで確認してください。

K社の12か月の広告経由の売上の比率・ACOS・TACOSの折れ線グラフ。3本とも横ばいで、比率は45.8〜48.7%、ACOSは21.0〜22.1%、TACOSは9.9〜10.5%
K社の12か月のACOS・TACOS・広告経由の売上の比率(K社の例・2025年10月〜2026年9月)。図の「広告経由の比率」は広告経由の売上の比率。

K社の12か月は、TACOSが9.9〜10.5%、ACOSが21.0〜22.1%、広告経由の売上の比率が45.8〜48.7%で、3つとも横ばいです(K社の例です)。全体の売上は月396万円(2026年2月)〜599万円(2026年7月)の間で変動していますが、広告費もほぼ同じ割合で増減しているため、TACOSはほぼ一定です。上半期(2025年10月〜2026年3月)のTACOSは約10.1%、下半期(2026年4月〜9月)は約10.2%です。各月の値は次の表のとおりです。

月広告費広告経由の売上全体の売上ACOSTACOS広告経由の売上の比率
2025年10月50.1万円226.5万円483.7万円22.1%10.4%46.8%
2025年11月56.5万円257.8万円561.6万円21.9%10.1%45.9%
2025年12月50.2万円229.5万円490.0万円21.9%10.2%46.8%
2026年1月46.4万円220.0万円469.2万円21.1%9.9%46.9%
2026年2月41.4万円189.1万円395.9万円21.9%10.5%47.8%
2026年3月48.9万円233.6万円496.0万円21.0%9.9%47.1%
2026年4月54.7万円248.7万円543.3万円22.0%10.1%45.8%
2026年5月49.3万円229.9万円484.6万円21.4%10.2%47.5%
2026年6月46.9万円211.6万円453.8万円22.1%10.3%46.6%
2026年7月59.8万円277.8万円599.1万円21.5%10.0%46.4%
2026年8月52.0万円241.8万円496.1万円21.5%10.5%48.7%
2026年9月48.1万円227.9万円472.9万円21.1%10.2%48.2%

この12か月分だけでは、月ごとの動きが季節によるものかどうかを判別できません。判別するには、前年の同じ月のTACOSと比較する必要があります。前の章で示した停止を実施した場合は、停止した月から同じ表でTACOSと全体の売上を前後で比べ、広告経由の売上の比率が下がったか、全体の売上が減ったかを確認します。

TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること

この記事で挙げた、キャンペーンの種類ごとのACOS、検索語句と商品ページの単位の仕分け、TACOSの月ごとの推移は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で毎回確認している項目です。

診断のエグゼクティブサマリーの例(キャンペーンの種類ごとのACOSと損益分岐の比較のページ)
診断でお渡しするエグゼクティブサマリーの例。会社・数字・広告名はすべて架空です(K社の例です)。

資料の中のACOSは、整数に丸めた値です(本文の21.6%・23.7%・31.8%・55.5%は、資料では22%・24%・32%・56%)。並び順も本文の表と異なりますが、同じK社のデータです。

診断で確認する項目には、「スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告・ディスプレイ広告の分け方と、それぞれのACOS(広告費÷広告経由の売上)」「オートとマニュアルに出た検索語句と、商品ターゲティングで狙った商品ページ」「広告以外を含む全体の売上に対する広告費(TACOS)」が含まれます。

現状の配分を続けてよいという判断も、診断の結論の一つです。改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。診断から報告書、説明会まで無料です(毎月2社限定)。

詳しくは診断ページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q01TACOSの目安はどのくらいですか?

TACOSはAmazonの用語ではなく、公式の目安もありません。

公式のACOSの解説でも、ターゲットとするACOSはブランドごとに異なるとされています。目安の数字を探すより、損益分岐ACOSを自社の利益率から算出し、TACOSは自社の月ごとの推移で確認することをおすすめします。

Q02ACOSとROASのどちらで見ればよいですか?

ROASはACOSの逆数で、同じ結果を別の形で示しています。

損益分岐ACOSが35%の場合は、損益分岐ROASは約2.86(1÷0.35)です。日常的に使用している指標に合わせて問題ありません。

Q03損益分岐ACOSを粗利率で算出してもよいですか?

おすすめしません。

Amazonの販売手数料や配送の費用などを引く前の率で算出すると、その分だけ損益分岐を高く見積もり、実際には利益が残っていないキャンペーンを、損益分岐を下回る(内側)と誤って判断することになります。販売価格3,000円・原価1,200円・販売手数料300円・配送の費用など450円の例(説明用の数字)では、粗利率は60%、損益分岐ACOSは35%です。

Q04指名のキャンペーンはACOSが低いので、予算を増やしてよいですか?

管理画面の数字だけでは判断できません。

ブランド名で検索した人は、広告が無くても自然検索から購入していた可能性があるためです。停止して自然検索の売上がどれだけ残るかを検証する方法は、指名の広告の記事で解説しています。

Q05スポンサープロダクト広告とスポンサーブランド広告のACOSを比較してよいですか?

細かな差の比較には向きません。

広告経由の売上として計測する期間(ルックバックウィンドウ)が、出品者のスポンサープロダクト広告は7日間、スポンサーブランド広告は14日間と異なるためです(公式ヘルプ記載)。それぞれを損益分岐ACOSと比べる使い方をおすすめします。

損益分岐ACOSで仕分けたあとの対処と、TACOSの確認の仕方|まとめ

最初に、原価・販売手数料・配送の費用などを引いた利益率から損益分岐ACOSを算出し、キャンペーンの種類ごとのACOSと比較します。売上の大きい指名のACOSが低いと全体のACOSも低く算出されるため、全体が内側でも外側のキャンペーンが含まれることがあります。競合の商品ページは商品ページの単位に、一般語とオートは内側でも検索語句の単位に分け、損益分岐を大きく上回り原因が分かるものを、商品ターゲティングの指定の停止か除外キーワードの追加で対処し、内側で差の大きいものを増額の候補にします。指名は停止して自然検索の売上を確認し、損益分岐との差が小さいオートと、境目のうち外側にあるものは、損益分岐との差に相当する注文の数より十分多い件数を集めてから判断します。停止や増額のあとは、TACOSをACOS・広告経由の売上の比率と同じ表にまとめて月ごとの推移を確認し、季節の影響は前年の同じ月と比較して判別してください。

この記事のポイント

  • ACOSは広告費÷広告経由の売上、TACOSは広告費÷広告以外も含む全体の売上(TACOSはAmazonの用語ではない)。
  • 損益分岐ACOSは、原価に加えて販売手数料・配送の費用などを引いた利益率から算出する。
  • 全体のACOSが損益分岐の内側でも、キャンペーンの種類ごとに分けると、損益分岐を上回るものが含まれることがある(架空のK社は全体21.6%でも、競合の商品ページは55.5%)。
  • 競合の商品ページは商品ページの単位に、一般語とオートは内側でも検索語句の単位に分け、損益分岐を大きく上回り原因が分かるものだけを、商品ターゲティングの指定の停止か除外キーワードの追加で対処する。内側で損益分岐との差が大きい一般語は増額の候補にする。指名、損益分岐との差が小さいオート、境目のうち外側にある商品ページは、検証してから判断する。
  • 全体はTACOSの月ごとの推移を、ACOSと広告経由の売上の比率と併せて確認する。季節の影響は前年の同じ月と比較しないと判別できない。