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キーワードとターゲティング

Amazon広告の指名の広告は、ACOSではなく停止して減った全体の売上で、要否を判断する

この記事は、Amazonで自社ブランドの指名キーワードに広告を配信している運用担当者の方に向けた解説です。指名の広告を停止した場合に、売上がどれだけ自然検索に残るかを確認したい方を想定しています。扱う広告は、スポンサープロダクト広告(SP)とスポンサーブランド広告(SB)です。

指名の広告の要否を検証する前後では、次の3つの状況がよく起こります。この記事では、それぞれへの対処と、広告コンソール(Amazon広告の管理画面)とセラーセントラルで確認する箇所を順に説明します。

例として、診断サンプルの架空の会社であるK社(キッチン用品メーカー・自社ブランド「ケイライフ(架空)」)を記事の最後まで使います。K社の数字は、すべて診断サンプルのものです。また、指名の広告を停止したあとの売上の減少(16万円と40万円の2つのケース)は、サンプルデータにも含まれない、説明用の架空の数字です。K社の指名のキャンペーンの12か月のACOSは7.2%、ROASは13.93で、5つのキャンペーンの中で最も良い数字です。

説明の根拠は、Amazon Adsの公式ガイドとサポートセンターの記載です。TAMKOは、Amazon広告のアカウント診断で、キャンペーンの種類ごとのACOSと、全体の売上に対する広告費を毎回確認しています。その立場から解説します。

【結論】Amazon広告の指名の広告は、ACOSではなく「停止して減った売上」で要否を判断する

指名の広告は、停止するか入札を下げて、広告と自然検索を合わせた全体の売上がどれだけ減ったかで判断します。停止した期間に使わずに済んだ指名の広告費を、減った売上で割った値を「増分のACOS」と呼びます。増分のACOSが損益分岐ACOSを大きく下回れば続け、損益分岐ACOSより低いが差が小さければ入札を下げて露出を残し、損益分岐ACOSを上回れば停止します。広告コンソールのACOS・ROASには広告が無くても買われていた売上が含まれるため、その数字だけでは要否を判断できません。

Amazon広告の指名キーワードの広告を停止するテストで、停止前4週の指名の広告経由の売上約71.5万円が、停止後に競合が配信していないケースAでは16万円、競合が配信しているケースBでは40万円減り、残りは自然検索から買われた売上だったことを示した積み上げ棒グラフ(説明用の架空の数字)
停止前の約71.5万円は、K社の12か月の指名の広告経由の売上を4週あたりに換算した値。停止後の減った売上(16万円・40万円)は説明用の架空の数字。

判断に使う値は、次の2つです。

  • 増分のACOS:停止した期間に使わずに済んだ指名の広告費÷停止によって減った全体の売上(以下、減った売上)。入札を下げて検証する場合は、減った指名の広告費÷減った売上です。Amazonの指標ではなく、この記事での定義です。
  • 損益分岐ACOS:売上から、原価・Amazonの販売手数料・配送の費用などを引いた後の利益率。K社では35%と仮定しています。

図の2つのケースは、競合が自社ブランド名に広告を配信しているかどうかで分けています。

  • ケースA(競合が配信していない):減った売上は16万円、増分のACOSは約32.1%です。損益分岐ACOSの35%より低いものの差は2.9ポイントと小さいため、入札を下げて露出を残し、検証を続けます。
  • ケースB(競合が配信している):減った売上は40万円、増分のACOSは約12.8%です。損益分岐ACOSの35%を大きく下回るため、続けます。減った40万円には、競合に移った自然検索の売上も含まれます。

指名の広告は、停止したときの全体の売上の減少で判断する

  1. 01指名のACOSが良いそれだけでは要否を判断できない
  2. 02競合・ほかのキャンペーン・在庫を確認ブランド防衛の要否・指名の検索語句に広告を表示する設定・在庫切れとセール
  3. 03停止または入札を下げる前後を同じ長さ(例:4週)ずつ比べる
  4. 04全体の売上の減少から増分のACOS使わずに済んだ広告費÷減った売上
  5. 05損益分岐と比べて決める大きく下回れば続ける・差が小さければ入札を下げる・上回れば停止する
比べるのは指名の広告経由の売上ではなく、広告と自然検索を合わせた全体の売上。

この流れは、Amazonが示している基準ではなく、この記事独自の手順です。Amazon Adsの公式ガイドは、同業他社が自社のブランドキーワードに入札していることがあるとして、ブランド防御戦略としての入札の検討を勧めています。この記事も指名の広告を否定するものではなく、続ける根拠を数字で持つための手順として整理しています。

指名(自社ブランド名)の広告とは:ブランドキーワードの範囲と、指名の検索語句の確認方法

指名の広告とは、ブランドキーワード(自社のブランド名、およびブランド名と他の語の組み合わせ)で検索した人に表示する広告のことです。どの検索語句で表示・クリックされたかは、検索ワードレポートで確認します。

ブランド名を含む組み合わせも、指名に含まれる

  1. ブランド名だけ例:「ケイライフ」
    指名
  2. ブランド名+商品の種類など例:「ケイライフ 保存容器」「ケイライフ 片手鍋」
    指名
  3. ブランド名を含まない語(一般語)例:「ステンレス 保存容器」
    指名ではない
ブランド名と他の語の組み合わせも、Amazon Adsの公式ガイドではブランドキーワードに含まれる。検索語句はK社の例。

Amazon Adsの公式ガイドでは、ブランドキーワードはブランド名だけでなく、ブランド名と他の単語の任意の組み合わせも含むとされています。別のガイドでは、ブランド名・製品ライン・商標用語を含むキーワードと説明されています。K社の場合は、「ケイライフ」だけでなく、「ケイライフ 保存容器」「ケイライフ 片手鍋」も指名です。「ステンレス 保存容器」のようにブランド名を含まない語は、一般語(カテゴリーキーワード)です。

指名の広告は、主にスポンサープロダクト広告のキーワードターゲティングか、スポンサーブランド広告で配信します。キーワードのマッチタイプは3つあります。

  • 部分一致:キーワードの語が任意の順序で含まれる検索や、関連する検索に広告が表示される。変化形・同義語・関連用語を含み、範囲が最も広い。
  • フレーズ一致:キーワードがまったく同じ順序で使われたときに広告が表示される(前後に別の単語があってもよい)。
  • 完全一致:登録したキーワードと同じ語で検索されたとき(またはごく近いバリエーション)だけ広告が表示される。

指名の検索語句は、検索ワードレポートで確認します。公式ヘルプによれば、このレポートには少なくとも1回の広告クリックにつながった検索語句だけが含まれます。

K社の12か月の検索ワードレポートにある指名の検索語句のうち、主な2つは次のとおりです。2つの合計は、指名のキャンペーン全体の一部です。

検索語句(K社の例)広告費広告経由の売上注文ACOS
ケイライフ 保存容器12.5万円131.3万円369件9.5%
ケイライフ 片手鍋5.6万円51.2万円97件10.9%

キャンペーンの種類ごとにACOSを損益分岐ACOSと比べる手順は、記事「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。指名はその種類の1つです。

指名のACOS・ROASとは:自然検索(オーガニック)から買われていた売上が含まれ、ACOSが極端に低く表示される理由

よくある場面

指名のキャンペーンのACOSは他のキャンペーンより極端に低いが、その売上が広告によって増えたものかが分からない。

ブランド名で検索した人が広告をクリックして購入した場合、その売上は広告経由として集計されます。その購入が、広告が無くても自然検索の結果から起きていたかどうかは、広告コンソールでは区別されません。そのため、指名のACOSは「広告があったことで増えた売上(増分)」に対する費用を示していません。

指名の広告経由の売上には、2種類の売上が含まれる

指名の広告経由の売上(広告コンソールのACOS・ROASの元になる数字)

AB
  • A
    広告が無くても買われていた売上広告を停止しても、自然検索の結果から買われて残る
  • B
    広告があったことで増えた売上(増分)境目は広告コンソールでは見えない
帯の幅は模式的なもので、実際の割合を示すものではない。どこが境目かは広告コンソールに表示されず、広告の有無で全体の売上を比べて推定する。

Amazon Adsのガイドは、ブランドキーワードでは購買意欲の高いお客様に広告を届けられる可能性がある、と説明しています。また、お客様は商品を自然検索で見つけることも、スポンサー広告で見つけることもできる、とも書いています。ブランド名で検索する人は、買う商品をすでにほぼ決めている場合が多く、自然検索の結果の上位にも自社の商品が並んでいることが多いと考えられます。その人が検索結果の上部に表示された広告をクリックして購入した場合、広告が無ければ、その下に表示される自然検索の結果から同じ商品を購入していた可能性があります。

広告経由の売上は、広告のクリックから一定の日数(ルックバックウィンドウ)の間に起きた購入を集計したものです。公式ヘルプでは、出品者のスポンサープロダクト広告は7日間・クリックのみ、スポンサーブランド広告は14日間とされています。この集計は「広告に触れた人の購入」であって、「広告が無ければ起きなかった購入」ではありません。

増分を確認するには、比べる数字を、広告経由の売上から、広告と自然検索を合わせた全体の売上に置き換えます。広告費を全体の売上で割るTACOS(TACOS=広告費÷全体の売上。Amazonの公式の用語ではありません)と同じ考え方です。ROASに、広告が無くても購入した人の売上が含まれるという構造はGoogle広告でも同じで、その説明は記事「指名キーワードの広告は必要か?停止して確認する前に見る件数とP-MAXの影響」にまとめています。

K社の例:指名のキャンペーンはACOS 7.2%・ROAS 13.93

K社の12か月(2025年10月〜2026年9月)のキャンペーン別の数字は、次のとおりです。

キャンペーン(K社の例)ACOSROAS
スポンサープロダクト|指名(ブランド名)7.2%13.93
スポンサープロダクト|一般語(マニュアル)23.7%4.22
スポンサープロダクト|オート31.8%3.15
スポンサープロダクト|競合の商品ページ55.5%1.80
スポンサーブランド|一般語23.6%4.24

指名のキャンペーンは、広告費約66.7万円に対して広告経由の売上が約928.9万円、注文は2,580件でした。広告経由の売上は、全体の売上(約5,946万円)の約15.6%にあたります。ただし、この数字だけでは、約928.9万円のうちどれだけが広告によって増えた売上かは分かりません。

ブランド防衛とは:指名の広告を停止する前に、競合が自社ブランド名に広告を配信しているかを確認する理由

よくある場面

指名の広告を停止して自然検索に残る売上を確認したいが、停止すると競合の広告に売上が移るおそれがある。

停止の前に確認することは3つです。競合が自社ブランド名に広告を配信しているか、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが指名の検索語句に広告を表示していないか、検証の期間が在庫切れやセールの時期と重ならないか、です。

停止の前に確認するのは3つ

  1. 1
    競合が自社ブランド名に広告を配信しているか実際の検索結果と、検索用語インプレッションシェアレポートで確認する
  2. 2
    ほかのキャンペーンが指名の検索語句に広告を表示していないか検索ワードレポートで、指名以外のキャンペーンにブランド名を含む語が出ていないかを見る
  3. 3
    在庫切れ・セールの時期と重ならないか在庫の見通しと販売イベントの日程から、検証の期間を選ぶ
ほかのキャンペーンが指名の検索語句に広告を表示している場合や、検証の期間が在庫切れ・セールと重なる場合は、停止の前後を比べても、指名の広告の有無による差を判別できなくなる。競合が配信している場合は、競合に移る売上も含めて計測する。

Amazon Adsの公式ガイドは、同業他社が自社のブランドキーワードに入札している可能性を挙げ、ブランド防御戦略として入札を検討するよう書いています。この記事では、この考え方を「ブランド防衛」と呼びます。競合が配信している場合、指名の広告を停止すると検索結果の上部に競合の広告が表示され、自然検索から購入していた人の一部も、競合の商品を購入する可能性があります。この場合、検証で計測するのは「自然検索に残る売上」だけでなく、「競合に移る売上」も含めた全体の売上の減少です。

競合が配信していない場合は、停止しても、自然検索の結果の上位に自社の商品が表示されている限り、売上の多くが残る可能性があります。どちらになるかは事前には分からないため、次の方法で状況を確認してから検証を始めます。

自社ブランド名で検索して、検索結果に競合の広告が出ているかを見る

最も簡単な確認方法です。主な指名の検索語句(K社の場合は「ケイライフ」「ケイライフ 保存容器」)で実際にAmazonで検索し、検索結果の上部や自社の商品ページに、他社のスポンサー広告が表示されているかを見ます。日や時間帯によって表示は変わるため、1回だけで判断せず、日と時間帯を変えて複数回見ます。

検索用語インプレッションシェアレポートと、検索結果上部のインプレッションシェア

スポンサープロダクト広告の検索用語インプレッションシェアレポートでは、検索語句ごとに、アカウント全体のインプレッションシェアと、他の広告主と比べたインプレッションランクが分かります。公式の説明によると、ある日付の検索語句でインプレッションランクが3位であれば、その日にその検索語句で3番目に多くのスポンサープロダクト広告のインプレッションを獲得したことを意味します。レポートは広告コンソールのレポートセンターからダウンロードでき、日本も対象です。

指名の検索語句でランクが1位でない日がある、またはシェアが低い場合は、他の広告主も同じ検索語句に広告を配信していると考えられます。

検索結果上部のインプレッションシェアは、獲得対象となった検索結果上部のインプレッションのうち、自社のキャンペーンが獲得した割合です。スポンサーブランド広告とスポンサープロダクト広告のキャンペーンで使え、ルックバックは90日間です。指名のキャンペーンでこの割合が下がっている場合は、検索結果上部の枠を他の広告主と分け合っている可能性があります。

オートや一般語の部分一致が、指名の検索語句に広告を表示していないか

指名のキャンペーンを停止しても、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが同じ指名の検索語句に広告を表示している場合は、広告の表示は止まりません。その状態では、「広告がある期間」と「広告が無い期間」の比較が成り立ちません。

検索ワードレポートで、指名以外のキャンペーンにブランド名を含む検索語句が出ていないかを確認します。出ている場合は、検証の期間中、それらのキャンペーンにブランド名を除外キーワードとして設定するかを決めます。除外キーワードで使えるマッチタイプは、フレーズ一致と完全一致です。この対処はAmazonの推奨ではなく、比べる条件をそろえるためのこの記事の判断です。

在庫切れ・セール時期と重ならないか

おすすめ出品に選定されない(在庫不足など)と、スポンサープロダクト広告は表示されません。在庫切れの日は、広告の有無と関係なく売上が減るため、検証の結果を正しく評価できなくなります。大型セールの時期も、全体の売上が大きく動きます。

K社では、主力の「ステンレス保存容器 5点セット」が2025年12月19日〜30日と2026年3月24日〜31日に在庫切れになっていました。このような時期と、検証の期間を重ねないようにします。

停止または入札を下げて検証する設計:比べる売上・期間・件数

比べるのは、指名の広告経由の売上ではなく、広告と自然検索を合わせた全体の売上です。停止前と停止後を同じ長さの期間(例:4週ずつ)でそろえ、停止直後の7日(スポンサーブランド広告も停止する場合は14日)は比較から外します。

停止直後の7日を外して、同じ長さで比べる

  1. 01停止前の4週基準の期間
  2. 02停止日指名のキャンペーンを停止する
  3. 03停止直後の7日広告の影響が残る期間として外す
  4. 04停止後の4週比較の期間
比べる売上は、どの期間も広告と自然検索を合わせた全体の売上。7日は出品者のスポンサープロダクト広告のルックバックウィンドウ(スポンサーブランド広告も停止する場合は14日)。
  1. 比べる売上:広告と自然検索を合わせた、商品ごとの全体の売上。セラーセントラルの売上のレポート(公式ヘルプでいうリテールのレポート)から取ります。公式ヘルプにあるとおり、広告経由の売上はリテールのレポートと計算方法が異なるため、両者は必ずしも一致しません。広告コンソールの数字と混ぜずに、停止前も停止後も、全体の売上は同じレポートから取ります。
  2. 期間:停止前と停止後を同じ長さにし、曜日の構成をそろえます(例:4週ずつ)。
  3. 停止直後の扱い:出品者のスポンサープロダクト広告のルックバックウィンドウは7日間です。停止の直前に広告をクリックした人が数日後に購入することがあるため、停止直後の7日は、まだ広告の影響が残っている期間として比較から外します。スポンサーブランド広告の指名もあわせて停止する場合は、14日間を外します。
  4. 市場全体の変化:同じ期間の一般語のキャンペーンの売上や、前年同期の全体の売上と比較して、季節や市場全体の変化を差し引きます。

K社の月ごとの全体の売上は、12か月のあいだに約396万円(2026年2月)から約599万円(2026年7月)まで変動していました。隣り合う月を比べるだけでは、停止による減少と季節による変動の区別がつきません。

件数が足りるかは、停止の前に確認します。K社の指名の注文は12か月で2,580件、4週あたりにすると約198件です。件数に応じた通常の変動の目安は、記事「指名キーワードの広告は必要か?停止して確認する前に見る件数とP-MAXの影響」(Google広告)と同じ考え方で見積もれます。

停止できない場合:入札の引き下げや、掲載枠ごとの入札額の調整で段階的に検証する

売上の大きいブランドで全面的な停止が難しい場合は、指名のキャンペーンの入札を段階的に下げる方法があります。また、掲載枠ごとの入札額の調整で検索結果の最上部(最初のページ)への引き上げを外し、表示される割合を減らすこともできます。掲載枠は、検索結果の最上部(最初のページ)・その他の検索結果・商品ページの3つです。

どちらも広告の露出を減らして、全体の売上の変化を見る方法です。停止よりも露出の差が小さくなるため、同じ件数でも差が見えにくくなり、判断に必要な期間は長くなります。比較から外す期間は、入札の変更の直後の7日です。

スポンサーブランド広告でもブランド名に広告を配信している場合、スポンサープロダクト広告だけを停止しても、スポンサーブランド広告が同じ検索語句に広告を表示し続けます。逆の場合も同じです。同時に停止するか、片方ずつ検証するかを先に決めます。同時に停止する場合は、比較から外す期間を長いほうの14日間に合わせます。

増分のACOSとは:指名の広告を停止して全体の売上が減っても、その減少幅だけでは続けるかを判断できない理由

よくある場面

指名の広告を停止したあと全体の売上が減ったが、その減少幅で広告を続けるべきかを判断できない。

減少幅だけで判断できないのは、減った売上だけでは、使わずに済んだ広告費と比べられないためです。使わずに済んだ指名の広告費を減った売上で割って増分のACOSを算出し、増分のACOSが損益分岐ACOSを大きく下回れば続け、損益分岐ACOSより低いが差が小さければ入札を下げて露出を残し、損益分岐ACOSを上回れば停止します。

増分のACOSは、減った売上を分母にする

増分のACOS損益分岐ACOSと比べる
使わずに済んだ指名の広告費停止した期間の分
停止によって減った全体の売上市場全体の変化を差し引いた後
減った全体の売上は、市場全体の変化を差し引いた後の値を使う。
  • 減った売上=停止前(基準)の全体の売上-停止後の全体の売上(市場全体の変化を差し引いた後)
  • 増分のACOS=停止した期間に使わずに済んだ指名の広告費÷減った売上

比べる損益分岐ACOSは、売上から原価・手数料などを引いた後の利益率から出します。K社では、その利益率を35%と仮定し、損益分岐ACOSを35%としています。出し方は、記事「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。

増分のACOSが損益分岐ACOSより低いが差が小さい場合は、通常の変動によって実際には損益分岐ACOSを上回っている可能性があります。この場合は、入札を下げて露出を残し、期間を延ばして、判断に必要な差が出るまで件数を集めます。

K社の例:競合が配信していない場合と、配信している場合

前提は、K社の12か月の数字を4週あたりに換算した次の値です。停止後の売上の減少額だけが、説明用の架空の数字です。

  • 4週の指名の広告費:約51,286円(12か月の666,724円×4÷52)
  • 4週の指名の広告経由の売上:約714,530円(12か月の9,288,894円×4÷52)
  • 損益分岐ACOS:35%(K社の仮定)
2つのケースの増分のACOSと損益分岐ACOS 35%を比べた横棒グラフ(説明用の架空の数字)
停止後の減った売上(16万円・40万円)は説明用の架空の数字。4週の指名の広告費(約51,286円)は、K社の12か月の数字からの換算。
K社の例ケースA:競合が配信していないケースB:競合が配信している
停止後4週で減った全体の売上16万円40万円
指名の広告経由の売上(約71.5万円)に占める割合約22%約56%
増分のACOS(約5.1万円÷減った売上)約32.1%約12.8%
損益分岐ACOS 35%との差2.9ポイント低い22.2ポイント低い

ケースA(競合が自社ブランド名に広告を配信していない)では、停止後4週で全体の売上が16万円減ったとします。指名の広告経由の売上のうち、広告によって増えていたのは約22%で、残りの約78%は広告が無くても自然検索から買われていたことになります。増分のACOSは約32.1%で、損益分岐ACOSの35%より低いものの、差は2.9ポイントと小さい結果です。利益で見ると、減った売上16万円に利益率35%を掛けた5.6万円が、使わずに済んだ広告費約5.1万円をわずかに上回るだけです。そのため、入札を下げて露出を残し、より少ない広告費で同じ売上を保てるかを検証し続けます。

ケースB(競合が配信している)では、停止後4週で全体の売上が40万円減ったとします。自然検索から購入していた人の一部が、検索結果の上部に表示された競合の広告を経由して他社の商品を購入したと想定しています。そのため、減った40万円には、広告が無くても自然検索から買われていた売上のうち、競合に移った分も含まれます。この分も指名の広告があれば失わずに済む売上のため、増分として扱います。広告を停止すると失う売上は指名の広告経由の売上の約56%、増分のACOSは約12.8%で、損益分岐ACOSの35%を大きく下回ります。続ける判断になります。

なお、16万円の減少は、K社の4週あたりの全体の売上(約457万円)の約3.5%にとどまります。差が小さいほど通常の変動と区別しにくくなるため、前の章で確認した件数(4週あたり約198件)で、この差が通常の変動と区別できるかが判断の前提になります。実際の検証では、12か月平均の換算ではなく、停止前4週の実績を基準にします。

検証の後:続ける・入札を下げる・停止するの判断と、ブランド防衛の選択肢

増分のACOSが損益分岐ACOSを大きく下回れば続け、損益分岐ACOSより低いが差が小さければ入札を下げて露出を残し、損益分岐ACOSを上回れば停止します。どの判断でも、競合の出稿状況が変化すると結果も変わるため、再検証のきっかけを決めておきます。

増分のACOSと損益分岐ACOSの差で、3つに分かれる

増分のACOSは、損益分岐ACOSと比べてどこにあるか

  • 大きく下回る続ける増分のACOSを記録し、競合の出稿状況が変わったら再検証する
  • 低いが差が小さい入札を下げて露出を残す使わずに済んだ広告費を、ACOSが損益分岐ACOSより低い一般語などへ配分するかを検討する
  • 上回る停止する競合が配信し始めていないかを定期的に確認する
分かれ目の位置はこの記事の判断で、Amazonの基準ではない。競合の出稿状況が変化すると、同じ指名の広告でも増分も変動する。
  1. 損益分岐ACOSを大きく下回る場合:続けます。広告コンソールのACOSではなく、検証で出した増分のACOSを記録しておき、競合が自社ブランド名に広告を配信し始めた・やめたなど、出稿状況が変わったら再検証します。
  2. 損益分岐ACOSより低いが差が小さい場合:入札を下げて露出を残し、検証を続けます。使わずに済んだ広告費を、一般語など、ACOSが損益分岐ACOSより低いキャンペーンへ配分するかを検討します。
  3. 損益分岐ACOSを上回る場合:停止します。そのうえで、競合が自社ブランド名に広告を配信し始めていないかを、前の章の方法(実際の検索と検索用語インプレッションシェアレポート)で定期的に確認します。

競合が配信していて、指名の検索結果の上部を確保したい場合の公式の選択肢として、スポンサーブランド広告の「シェア・オブ・ボイスの確保」があります。2025年10月22日のお知らせによれば、ブランドキーワードの検索結果上部のスポンサーブランド広告の掲載枠を、前払いの固定価格で確保できる機能で、日本も対象です。オークションとは別の購入方式になるため、使う場合も、確保した期間とそうでない期間の全体の売上を比べて評価します。

なお、広告をきっかけにブランドが検索された回数を示す「ブランド検索数」などの指標もあります。ただし、公式のお知らせによると、これらはスポンサープロダクト広告では使用できません。また、指名の広告を停止したときに残る売上を示すものでもありません。

指名を含めたアカウント全体の状況は、TACOSの月次推移で確認します。その方法は、記事「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。

TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること

この記事で扱った、キャンペーンの種類ごとのACOS、全体の売上に対する広告費、広告コンソールの数字だけでは判断できない項目の検証の方法は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で毎回確認している項目です。

診断のエグゼクティブサマリーの例(キャンペーン別のACOSのページ)
診断でお渡しするエグゼクティブサマリーの例(K社)。会社・数字・広告名はすべて架空。紙面の「SP」はスポンサープロダクト広告、「SB」はスポンサーブランド広告の略。

診断で確認する項目には、「スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告・ディスプレイ広告の分け方と、それぞれのACOS(広告費÷広告経由の売上)」と「広告以外を含む全体の売上に対する広告費(TACOS)」が含まれます。改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)。

指名の広告の検証そのものを依頼したい場合は、Amazon広告のお試し運用から始められます。「ブランド名・商品名で検索されたときの広告」のような施策を、1施策・1か月で5万円・税別でお預かりします。

詳しくは診断ページへ。

よくある質問(FAQ)

Q01Amazon広告で自社ブランド名(指名)の広告は必要ですか?

広告コンソールのACOS・ROASだけでは判断できません。

広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるためです。競合が自社ブランド名に広告を配信しているかを確認したうえで、停止するか入札を下げて全体の売上の減り方を計測し、増分のACOSを損益分岐ACOSと比べて判断します。

Q02指名の広告を停止すると、競合に売上が移りませんか?

競合が自社ブランド名に広告を配信している場合は、その可能性があります。

停止の前に、実際の検索結果と検索用語インプレッションシェアレポートで、他の広告主が同じ検索語句に広告を配信しているかを確認します。

Q03検証はどのくらいの期間が必要ですか?

停止前と停止後を同じ長さ(例:4週ずつ)で比較します。

出品者のスポンサープロダクト広告のルックバックウィンドウは7日間のため、停止または入札の変更の直後の7日は比較から外します(スポンサーブランド広告も停止する場合は14日)。必要な期間は注文の件数によって変わります。

Q04指名の広告を停止しても、広告が表示されることがあるのはなぜですか?

指名以外のキャンペーン(オートや一般語の部分一致など)が、ブランド名を含む検索語句にも広告を表示していることがあります。

検索ワードレポートで確認し、検証の期間中にそれらのキャンペーンへ除外キーワードを設定するかを決めます。

Q05停止せずに検証する方法はありますか?

入札を段階的に下げる、掲載枠ごとの入札額の調整で検索結果の最上部への引き上げを外す、などで露出を減らし、全体の売上の変化を見る方法があります。

停止よりも露出の差が小さくなるため、判断に必要な期間は長くなります。

Amazon広告の指名の広告は、停止して減った全体の売上から増分のACOSを出して判断する|まとめ

Amazon広告の指名(自社ブランド名)の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるため、数字が良くても要否は判断できません。まず、競合が自社ブランド名に広告を配信しているかと、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが指名の検索語句に広告を表示していないかを確認し、在庫切れやセールと重ならない期間を選びます。そのうえで、停止するか入札を下げるかして、広告と自然検索を合わせた全体の売上を同じ長さの期間で比べます(停止または入札の変更の直後の7日は外し、スポンサーブランド広告も停止する場合は14日を外す)。全体の売上は、停止前も停止後もセラーセントラルの同じレポートから取ります。減った売上から増分のACOSを算出し、売上から原価・手数料などを引いた後の利益率に基づく損益分岐ACOSと比較します。大きく下回れば続け、低いが差が小さければ入札を下げて露出を残し、上回れば停止してください。

この記事のポイント

  • 指名(自社ブランド名)の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるため、数字が良くても要否は判断できない(診断サンプルの架空の会社K社の指名のキャンペーンは、ACOS 7.2%・ROAS 13.93)。
  • 検証の前に、競合が自社ブランド名に広告を配信しているか(ブランド防衛の要否)と、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが指名の検索語句に広告を表示していないかを確認する。
  • 比べるのは広告経由の売上ではなく、広告と自然検索を合わせた全体の売上。停止前と停止後を同じ長さで比較し、停止または入札の変更の直後の7日(ルックバックウィンドウの残り。スポンサーブランド広告も停止する場合は14日)は外す。
  • 減った売上から増分のACOS(使わずに済んだ広告費÷減った売上)を算出し、売上から原価・手数料などを引いた後の利益率に基づく損益分岐ACOSと比較する。大きく下回れば続け、低いが差が小さければ入札を下げて露出を残し、上回れば停止する。
  • 全面的な停止が難しい場合は、入札の引き下げや、掲載枠ごとの入札額の調整で検索結果の最上部への引き上げを外すなどして、段階的に検証する。