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Amazon広告の掲載枠ごとの入札額の調整:広告枠レポートのACOSと注文数から入札額を引き上げる掲載枠を決め、変更の効果を増加分のACOSで判定する

Amazon広告(スポンサープロダクト広告)で掲載枠ごとの入札額の調整を設定する際、検索結果の最上部に適用する引き上げ率を、運用担当者が根拠に基づいて決められない場合があります。

診断サンプルの架空の会社(K社・キッチン用品メーカー・自社ブランド「ケイライフ(架空)」)の例では、一般語(マニュアル)のキャンペーン(以下、一般語のキャンペーン)における12か月間のACOSは23.7%です。掲載枠ごとに集計すると、検索結果の最上部(最初のページ)が16.5%、その他の検索結果が29.9%、商品ページが36.2%です。商品ページのACOSは、販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送費などを差し引いた利益率に基づく損益分岐ACOS(35%と仮定)を1.2ポイント上回っています。ただし、この掲載枠の注文数(447件。説明用の架空の数字)の規模では、1.2ポイントの差は偶然による変動の幅に収まります。一方、検索結果の最上部のACOSは、変動の幅(16.0〜16.9%)を含めて損益分岐ACOSを大きく下回るため、入札額を引き上げる候補になります。

そこでこの記事では、Amazon Adsの公式ヘルプとガイドに基づき、掲載枠の範囲と引き上げ率の仕組み、広告枠レポートによる掲載枠ごとの成果の確認、ACOSの差と注文数による変動の幅の比較、基本入札額(キーワードや商品ターゲティングに設定した入札額)と引き上げ率の設定、変更の効果の判定について、手順を整理します。

この記事の対象読者は、Amazonに自社ブランドの商品を出品し、スポンサープロダクト広告の入札額を管理している担当者の方です。

Amazon広告のアカウント診断で、掲載枠ごとのACOSと入札額の調整を毎回確認しているTAMKOの立場から解説します。

【結論】Amazon広告の掲載枠ごとの引き上げ率は、各掲載枠のACOSの差を、注文数から求めた変動の幅で確認してから決める

広告枠レポートで掲載枠ごとのACOS(広告費÷売上。広告費はレポートの列名ではコスト)を算出し、注文数から求めたACOSの変動の幅が、ほかの掲載枠の幅と重ならない場合や、損益分岐ACOSを含まない場合に限り、引き上げ率を変更します。入札額の引き上げは、損益分岐ACOS÷ACOSの値が大きい掲載枠から段階的に行います。引き上げ率の変更後は、変更前後の広告費の増加額÷売上の増加額(以下、増加分のACOS)を掲載枠とキャンペーン全体のそれぞれで算出し、損益分岐ACOSと比較して効果を判定します。

Amazon広告で掲載枠ごとの引き上げ率を設定する手順を、広告枠レポートの出力、掲載枠ごとのACOSの算出と注文数の確認、ACOSの変動の幅の比較、基本入札額と引き上げ率の決定、増加分のACOSによる効果の判定の5段階で示した図
掲載枠ごとの入札額の調整では、各掲載枠の引き上げ率を設定する。注文数が少ない掲載枠のACOSは偶然によって変動するため、ACOSの変動の幅が、ほかの掲載枠の幅と重ならないことや、損益分岐ACOSを含まないことを確認してから、引き上げ率を変更する。

公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札額を調整する」では、掲載枠ごとの入札額の調整は、特定の掲載枠でコンバージョンや売上が得られたことを過去の実績で確認済みの広告主に適した機能とされています。この記事では、その確認をACOSと注文数で行う手順を示します。

損益分岐ACOSは、販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送費などを差し引いた利益率をもとに求めます。算出方法は「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。

Amazon広告の掲載枠とは:検索結果の最上部・商品ページなど4つの掲載枠と、入札額の引き上げ率

よくある場面

検索結果の最上部の引き上げ率を設定しているが、どの位置に表示された広告がその掲載枠に含まれるかを把握していない。

スポンサープロダクト広告の掲載枠は、検索結果の最上部・その他の検索結果・商品ページの3つと、Amazonビジネスの掲載枠を合わせた4つです。掲載枠ごとの入札額の調整では、各掲載枠の引き上げ率(%)をキャンペーン単位で設定します。

Amazon広告(スポンサープロダクト広告)の掲載枠を、検索結果の最上部・その他の検索結果・商品ページと、Amazonビジネスの掲載枠の4つに分け、それぞれの範囲と広告枠レポートのヘルプにある表記を示した図
掲載枠の範囲は公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の入札額を調整する」に、表記は「スポンサープロダクト広告の広告枠レポート」の列の定義に基づく。

公式ヘルプの例では、「カメラ」というキーワードの入札額を1ドル、検索結果の最上部の引き上げ率を50%に設定すると、その掲載枠での入札額は1.5ドルになります。オーディエンスごとの入札額の調整なども設定している場合は、それぞれの引き上げが掛け合わされて最終的な入札額が決まります。掲載枠ごとの引き上げは、キャンペーンの入札戦略(動的な入札 - ダウンのみ/動的な入札 - アップとダウン/固定入札額)による入札額の増減に上乗せして適用されます。計算を単純にするため、この記事の例では固定入札額を前提とします。

公式ヘルプでは、スポンサープロダクト広告の掲載枠ごとの入札額の調整は引き上げ率を入力する機能として説明されており、引き下げの設定に関する記載はありません。特定の掲載枠の入札額を低く抑える方法は、「基本入札額と引き上げ率の設定方法」の章で扱います。

スポンサーブランド広告にも掲載枠ごとの入札額の調整があります。公式ヘルプ「掲載枠およびオーディエンスごとのスポンサーブランド広告入札額」によると、スポンサーブランド広告の掲載枠は検索結果上部(最初のページ)とその他の検索結果の2つです。同ヘルプには、検索結果上部以外の掲載枠の入札額を50%引き下げる例も示されています。この記事では、スポンサープロダクト広告を対象とします。

掲載枠ごとの成果の確認方法:広告枠レポートで、広告費の割合と売上の割合を比較する

よくある場面

キャンペーン全体のACOSは損益分岐ACOSを下回っているが、どの掲載枠で売上が計上されているかを確認していない。

キャンペーンマネージャーの「入札額調整」タブまたは広告枠レポートで掲載枠ごとの広告費と売上を確認し、ACOSと、キャンペーン全体の広告費・売上に占める割合を算出します。広告費の割合より売上の割合が大きい掲載枠では、ACOSがキャンペーン全体より低くなります。

Amazon広告の掲載枠ごとに、キャンペーンの広告費と売上に占める割合を比較した横棒グラフ。広告費の割合と売上の割合は、検索結果の最上部が38.0%と54.7%、商品ページが28.0%と18.3%
検索結果の最上部は、広告費の38.0%に対して売上の54.7%を占める。商品ページは広告費の割合28.0%、売上の割合18.3%で、ACOSは3つの掲載枠の中で最も高い。数値は診断サンプルの架空の会社(K社)の例。

公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の広告枠レポート」によると、このレポートでは掲載枠別のキャンペーンの成果を確認でき、掲載枠ごとの入札額の調整が有効なキャンペーンを特定できます。公式ガイド「スポンサープロダクト広告のベストプラクティス」では「広告掲載枠レポート」とも表記されています。列には、キャンペーン名・入札戦略・掲載枠・インプレッション数・クリック数・クリック単価(CPC)・コスト・売上・商品購入数のほか、「広告費用対効果(ROAS)の合計」などがあります。この記事では、コストを広告費、商品購入数を注文数と呼びます。出品者のスポンサープロダクト広告では、クリックから7日以内の購入が売上と商品購入数に計上されます。ACOSは広告費÷売上で算出され、ROAS(売上÷広告費)の逆数に当たります。

レポートの時間単位は概要と日次の2つで、レポートで出力できる期間(公式ヘルプではルックバックウィンドウ)は90日です。12か月などの長期間で集計するには、月1回程度の頻度でレポートを保存する必要があります。

掲載枠広告費売上ACOS広告費の割合売上の割合
検索結果の最上部(最初のページ)790,407円4,794,336円16.5%38.0%54.7%
その他の検索結果707,206円2,366,714円29.9%34.0%27.0%
商品ページ582,405円1,607,974円36.2%28.0%18.3%
合計2,080,018円8,769,024円23.7%100%100%

この表は、広告枠レポートの3つの掲載枠で集計しています(Amazonビジネスの掲載枠は別のレポートで確認します)。K社の一般語のキャンペーンでは、検索結果の最上部が、広告費の38.0%に対して売上の54.7%を占めています。一方、商品ページは広告費の28.0%に対して売上が18.3%です。キャンペーン全体のACOS 23.7%は損益分岐ACOS 35%を下回りますが、掲載枠ごとのACOSは16.5〜36.2%と差があります。

広告枠レポートの数値はキャンペーンと掲載枠の組み合わせごとに集計されます。そのため、指名の検索語句への配信や、競合の商品ページを指定するターゲティングが同じキャンペーンに混在していると、それらの成果も各掲載枠の数値に含まれます。キャンペーンを分けるか否かの判断は「Amazon広告のキャンペーン構成:指名・一般語・競合の商品ページを分けるか否かの判断」で扱っています。

掲載枠ごとのACOSの差の有無は、注文数による変動の幅と比較して判断する

よくある場面

掲載枠ごとのACOSの差が、注文数の少なさによる偶然か否かを判断できない。

ACOSの分母である売上は、注文数の偶然の増減によって変動します。この記事では、ACOS±ACOS÷√注文数の範囲をACOSの変動の幅とします。2つの掲載枠の変動の幅が重ならない場合は掲載枠どうしのACOSに差がある、変動の幅が損益分岐ACOSを含まない場合は損益分岐ACOSとの間に差がある、と判断します。

Amazon広告の掲載枠ごとに、注文数から算出したACOSの変動の幅を12か月間と4週間(換算)で比較した範囲グラフ。商品ページの変動の幅は損益分岐ACOS 35%を含み、4週間ではその他の検索結果と商品ページの変動の幅が重なる
12か月間の集計では、商品ページの変動の幅だけが損益分岐ACOS 35%を含む。4週間に換算すると、その他の検索結果と商品ページの変動の幅が重なる。ACOSは診断サンプルの架空の会社(K社)の例、注文数は説明用の架空の数字。

統計学では、偶然による注文数の増減幅を、注文数の平方根程度と見積もるのが一般的です。注文が100件であれば±10件(10%)、400件であれば±20件(5%)です。ACOSの分母である売上も少なくとも同じ割合で変動するため、この記事では、ACOS±ACOS÷√注文数を変動の幅の目安とします。実際の売上には注文ごとの単価の違いによる変動も加わるため、変動の幅はこの目安より広くなります。

掲載枠ACOS注文数(12か月)変動の幅(12か月)注文数(4週間に換算)変動の幅(4週間に換算)
検索結果の最上部(最初のページ)16.5%1,332件16.0〜16.9%102件14.9〜18.1%
その他の検索結果29.9%657件28.7〜31.0%51件25.7〜34.1%
商品ページ36.2%447件34.5〜37.9%34件30.0〜42.4%

掲載枠ごとの注文数は、各掲載枠の売上をこのキャンペーンの注文単価(8,769,024円÷2,436件=約3,600円)で割って求めた、説明用の架空の数字です。4週間の注文数は、12か月間の値を52で割り、4を掛けて求めました。ACOSは12か月間の実績を用いています。

12か月間では、検索結果の最上部(16.0〜16.9%)とその他の検索結果(28.7〜31.0%)の変動の幅がいずれも35%を含まないため、両掲載枠のACOSは損益分岐ACOSを下回っていると判断できます。商品ページの変動の幅(34.5〜37.9%)は35%を含むため、ACOS 36.2%は損益分岐ACOSを上回っているとは判断できません。商品ページのACOSと損益分岐ACOSの差(1.2ポイント)が偶然の範囲を超えるか否かを判断するには、約910件((36.2÷1.2)²)の注文が必要で、商品ページの年間447件という件数では約2年分に相当します。

4週間に換算すると、その他の検索結果(25.7〜34.1%)と商品ページ(30.0〜42.4%)の変動の幅が重なり、2つの掲載枠のACOSに差があるとは判断できません。広告枠レポートで出力できる期間の全体(90日、約13週間)で集計しても、商品ページの注文数は約112件、ACOSの変動の幅は32.8〜39.6%です。注文数が少ないキャンペーンでは、保存したレポートを合算して集計期間を延長してから、差の有無を判断します。

基本入札額と引き上げ率の設定方法:ACOSが最も高い掲載枠を基準に基本入札額を決め、ほかの掲載枠の入札額を引き上げる

よくある場面

検索結果の最上部の引き上げ率を何%に設定すべきか、判断の根拠がない。

ACOSが最も高い掲載枠の入札額を基本入札額とし、その掲載枠の引き上げ率は0%にします。入札額の引き上げは、「損益分岐ACOS÷その掲載枠のACOS」の値が大きい順に、1回につき1つの掲載枠ずつ段階的に行います。1回に設定する引き上げ率は、引き上げ後の入札額が、その掲載枠の「1クリックあたりの売上×損益分岐ACOS」を超えない範囲で小さく設定します(この記事の例では25%)。

Amazon広告の掲載枠ごとの入札額の調整で、基本入札額を60円から50円に引き下げ、引き上げ率を検索結果の最上部50%・その他の検索結果20%に設定して、各掲載枠の入札額を75円・60円・50円にする計算を示した図
商品ページの入札額を60円から50円に引き下げ、検索結果の最上部とその他の検索結果は変更前と同額に保つ例。金額と引き上げ率は説明用の架空の設定(入札戦略は固定入札額)。

スポンサープロダクト広告の掲載枠ごとの入札額の調整は引き上げ率を設定する機能であるため、基本入札額は、入札額を最も低く抑えたい掲載枠に適用される額になります。したがって、ACOSが最も高い掲載枠の入札額を基本入札額とし、ほかの掲載枠の入札額には引き上げ率で上乗せします。

入札額を引き上げる掲載枠の順番は、「損益分岐ACOS÷その掲載枠のACOS」の値で決めます。注文単価と購入率(コンバージョン率。注文数÷クリック数)が変わらないと仮定すると、この値は、ACOSが損益分岐ACOSに達するまでに、その掲載枠のクリック単価を何倍まで高められるかを示します。K社の例では、検索結果の最上部が約2.1倍(35%÷16.5%)、その他の検索結果が約1.2倍(35%÷29.9%)です。公式ヘルプ「スポンサー広告の入札額調整について」も、検索結果の最上部に表示される広告のコンバージョン率が、ほかの掲載枠のコンバージョン率より高いことを確認できる場合に、同掲載枠の入札額を上げる例を示しています。

ただし、引き上げによって新たに獲得するクリックの購入率は、既存のクリックの購入率より低い場合があります。そのため、引き上げ率は一度に大きく変えず、段階的に変更します。この記事の例では、検索結果の最上部の引き上げ率を0%から25%に変更し、次章の方法で効果を判定したうえで、その後の変更を決めます。引き上げ後の入札額が、その掲載枠の「1クリックあたりの売上×損益分岐ACOS」を超えていないかを確認する方法は、「Amazon広告の推奨入札額で入札してよいか?損益分岐クリック単価を算出して比較する」で解説しています。

K社の例では、商品ページのACOSが損益分岐ACOSを上回っているとは判断できないため、基本入札額は下げず、商品ページの引き上げ率は0%のままにします。その他の検索結果は、1回に変更する掲載枠を1つにするため、今回は入札額を引き上げません。基本入札額を60円(説明用の架空の数字)とすると、検索結果の最上部の入札額は60円×(1+25%)=75円になります。

商品ページのACOSの変動の幅が損益分岐ACOSを含まず、損益分岐ACOSを上回る場合は、基本入札額を引き下げ、ほかの掲載枠は引き上げ率を高めて入札額を従来の水準に保ちます。変更後の引き上げ率は、次の式で求めます。

引き上げ率=維持する入札額÷新しい基本入札額−1

掲載枠変更前の入札額(引き上げ率)変更後の入札額変更後の引き上げ率
検索結果の最上部(最初のページ)75円(25%)75円50%(75円÷50円−1)
その他の検索結果60円(0%)60円20%(60円÷50円−1)
商品ページ60円(0%)50円0%

基本入札額はキーワードと商品ターゲティングごとに設定されているため、その額が異なる場合は、それぞれを同じ比率(この例では50÷60)で引き下げます。引き上げ率はキャンペーン内のすべてのキーワードと商品ターゲティングに適用されるため、基本入札額を一律の比率で引き下げれば、検索結果の最上部とその他の検索結果での入札額は、キーワードと商品ターゲティングごとに変更前の水準に保たれます。

引き上げ率の変更後の判定:掲載枠とキャンペーン全体の増加分のACOSを、損益分岐ACOSと比較する

よくある場面

検索結果の最上部の引き上げ率を高めた後、同掲載枠のACOSは損益分岐ACOSを下回っているが、キャンペーン全体の利益は増加していない。

引き上げ率の変更の効果は、変更前後の同じ長さの期間について増加分のACOSを算出して判定します。引き上げ率を高めた掲載枠の売上には、それまでほかの掲載枠で計上されていた分が含まれる場合があるため、キャンペーン全体の増加分のACOSも算出し、損益分岐ACOSと比較します。

Amazon広告で掲載枠ごとの引き上げ率を変更した後に、広告費の増加額を売上の増加額で割って増加分のACOSを算出し、掲載枠とキャンペーン全体のそれぞれで損益分岐ACOSと比較する式を示した図
掲載枠のACOSが損益分岐ACOSを下回っていても、増加分のACOSが損益分岐ACOSを上回る場合がある。その場合、増加した売上からは利益が得られていない。

変更と比較は、次の条件で行います。

  1. 1回に変更する掲載枠は1つとする。公式ガイド「スポンサープロダクト広告の「動的な入札 - アップとダウン」に関するガイド」も、テストでは、効果の差を明確に識別できるよう変更内容を限定することを推奨している。
  2. 比較する2つの期間は同じ長さ(この記事の例では8週間)とし、引き上げ率を変える日の7日後から30日後までの間に、変更前の期間の広告枠レポートを保存する。7日後までは変更前の期間の最終週の数値が確定せず、レポートで出力できる期間(90日)を過ぎると変更前の期間の初日から出力できなくなるためである。
  3. 変更後の期間の終了日から7日以上経過した後に集計する。公式ヘルプ「広告キャンペーンのアトリビューション」によると、アトリビューション指標は、アトリビューションの期間(出品者のスポンサープロダクト広告では7日間)が終了するまで未完成である。
  4. 在庫切れの日とセールの実施日を含まない期間を選ぶ。在庫がないなどの理由でおすすめ出品に選定されない日は、スポンサープロダクト広告が表示されない。K社の例では、主力商品「ステンレス保存容器 5点セット」が12月19日〜12月30日と3月24日〜3月31日の計20日間、在庫切れとなっている。
掲載枠変更前8週間(広告費/売上)変更後8週間(広告費/売上)ACOS(変更前→変更後)増加分のACOS
検索結果の最上部(最初のページ)121,600円/737,600円164,800円/868,600円16.5%→19.0%33.0%(43,200円÷131,000円)
その他の検索結果108,800円/364,100円90,800円/304,100円29.9%→29.9%—(広告費18,000円・売上60,000円の減少)
商品ページ89,600円/247,400円89,600円/247,400円36.2%→36.2%—(変化なし)
キャンペーン全体320,000円/1,349,100円345,200円/1,420,100円23.7%→24.3%35.5%(25,200円÷71,000円)

この例では、検索結果の最上部のACOSは変更後も19.0%で、損益分岐ACOS 35%を大きく下回ります。同掲載枠の増加分のACOSも33.0%で、35%を下回ります。一方、その他の検索結果の売上は60,000円減少しています。検索結果の最上部で増加した131,000円の一部は、引き上げ率の変更前にはその他の検索結果で計上されていた売上と考えられます。キャンペーン全体の増加分のACOSは35.5%で、損益分岐ACOS 35%とほぼ同じです。増加した売上からは、ほとんど利益が得られていません。なお、キャンペーン全体のACOSそのものは24.3%と損益分岐ACOSを下回っており、ACOSの水準のみを確認する方法では、増加した売上から利益が得られていないことを把握できません。

増加分のACOSにも、偶然による変動があります。変更前後の各8週間の注文数は約375件と約394件(売上÷注文単価約3,600円)で、売上はそれぞれ偶然によって±約20件分(約7万円)増減します。キャンペーン全体の売上の増加額71,000円はこの増減と同じ程度のため、増加分のACOSが損益分岐ACOSを上回るか否かは、この8週間だけでは判断できません。ただし、増加分のACOSが損益分岐ACOSに近い水準にあるため、引き上げ率をさらに高める根拠はありません。この例では引き上げ率を25%で維持し、変更前後の期間をそれぞれ16週間に延ばして同じ方法で集計します。それでも増加分のACOSが損益分岐ACOSを下回ると判断できない場合は、利益の上積みを確認できないため、引き上げ率を0%に戻すことを検討します。

TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること

この記事で扱った掲載枠ごとのACOSと入札額の調整は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で毎回確認している項目です。

TAMKOのAmazon広告アカウント診断の確認項目のうち、「掲載枠(検索結果の最上部・商品ページなど)ごとのACOSと入札額の調整」と「在庫切れなどでおすすめ出品(カート)を失い、広告が出なかった日」の2項目を示した図
診断ページに記載している確認項目のうち、この記事に関わる2項目(文言は同ページの記載のまま)。

診断ページのK社の例では、検索結果の最上部の入札額の調整について「入札額を上げるとクリック単価も上がるため、増やした分のACOSで2か月後に判定します。」と記載しています。引用中の「増やした分のACOS」は、この記事でいう増加分のACOSです。診断では、改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。料金は、診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)です。

詳しくは、診断ページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q01掲載枠ごとの入札額の調整で、引き下げは設定できますか?

スポンサープロダクト広告の公式ヘルプでは、この機能は入札額の引き上げ率(%)を入力するものとして説明されており、引き下げの設定に関する記載はありません。

特定の掲載枠の入札額を低く抑える場合は、基本入札額を引き下げ、ほかの掲載枠は引き上げ率を高めて従来の水準を保ちます。引き上げ率は、維持する入札額÷新しい基本入札額−1で求めます。

Q02スポンサーブランド広告でも、同じ方法で引き上げ率を決められますか?

掲載枠ごとのACOSと注文数を確認する手順は同じです。

スポンサーブランド広告の掲載枠は、検索結果上部(最初のページ)とその他の検索結果の2つです。公式ヘルプには検索結果上部以外の掲載枠の入札額を引き下げる例も示されているため、基本入札額を引き下げて引き上げ率で補う手順(この記事の「基本入札額と引き上げ率の設定方法」の章)は不要な場合があります。設定できる率の範囲は、管理画面で確認してください。また、出品者のスポンサーブランド広告はアトリビューションの期間が14日で、スポンサープロダクト広告(7日)と異なるため、両広告のACOSを同じ基準で比較することはできません。

Q03Amazonビジネスの掲載枠は、どのように扱えばよいですか?

Amazonビジネスの掲載枠にも、引き上げ率を個別に設定できます。

公式ヘルプ「スポンサープロダクト広告の広告枠レポート」によると、日本でもAmazonビジネス広告枠レポートで同掲載枠の成果を確認できます。注文数が少ない場合は、この記事の方法でACOSの変動の幅を算出し、その幅が損益分岐ACOSを含む限り、引き上げ率は高めません。

Q04「商品ページ」の掲載枠には、自社商品の詳細ページも含まれますか?

含まれる場合があります。

キーワードを指定したキャンペーンでは、広告がどの商品ページに表示されたかをレポートで確認できません。自社商品の詳細ページに自社広告を表示する場合の成果の区分方法は、「Amazon広告の商品ページの防衛は必要か?掲載枠と売上の内訳で判断する方法」で解説しています。

Amazon広告の掲載枠ごとの引き上げ率は、変動の幅で確認したACOSの差に基づいて決め、変更の効果を増加分のACOSで判定する|まとめ

掲載枠ごとの入札額の調整は、キャンペーン単位で各掲載枠の引き上げ率を設定する機能です。広告枠レポートで掲載枠ごとのACOSを算出し、ACOS±ACOS÷√注文数で求めた変動の幅が、ほかの掲載枠の変動の幅と重ならない場合、または損益分岐ACOSを含まない場合に限り、差があると判断します。ACOSが最も高い掲載枠に基本入札額を合わせ、「損益分岐ACOS÷ACOS」の値が大きい掲載枠から順に、入札額を段階的に引き上げます。引き上げ率の変更後は、変更前後の同じ長さの期間で、掲載枠とキャンペーン全体の増加分のACOSを損益分岐ACOSと比較します。

この記事のポイント

  • スポンサープロダクト広告の掲載枠は、検索結果の最上部・その他の検索結果・商品ページと、Amazonビジネスの掲載枠の4つ。掲載枠ごとの入札額の調整では、キャンペーン単位で各掲載枠の引き上げ率(最大900%)を設定する。
  • 広告枠レポート(出力できる期間は90日)で掲載枠ごとの広告費(コスト)と売上を出力し、ACOSと、キャンペーン全体の広告費・売上に占める割合を算出する。長期間で集計するには、レポートを定期的に保存する。
  • ACOSの変動の幅は、ACOS±ACOS÷√注文数を最低限の目安として算出し、掲載枠どうしで幅が重ならない差と、損益分岐ACOSを含まない幅だけを判断に用いる。
  • ACOSが最も高い掲載枠の入札額を基本入札額とし(引き上げ率0%)、「損益分岐ACOS÷ACOS」の値が大きい掲載枠から順に入札額を段階的に引き上げる。基本入札額を下げる場合の引き上げ率は、「維持する入札額÷新しい基本入札額−1」で求める。
  • 引き上げ率の変更は1回につき1つの掲載枠とし、直近7日・在庫切れの日・セールの実施日を除いた変更前後の同じ長さの期間で、掲載枠とキャンペーン全体の増加分のACOSを損益分岐ACOSと比較する。