Advantage+ セールスキャンペーンは、既存顧客の割合を出して新規顧客だけのROASで評価する
この記事は、自社ECやD2CでAdvantage+ セールスキャンペーンを運用し、購入とROASで予算を判断している担当者の方に向けた解説です。新規顧客と既存顧客に分けた数字を、まだ出していない方を想定しています。
Advantage+ セールスキャンペーンの新規顧客と既存顧客については、次の3つの状況がよく起こります。この記事では、それぞれへの対処と、広告マネージャで確認する箇所を順に説明します。
- Advantage+ セールスキャンペーンのROASは手動のキャンペーンより高く表示されているが、新規顧客の数は同じ割合では増えていないこのROASには、既存顧客の購入が含まれている
- 新規顧客と既存顧客に分けた数字を出そうとしたが、広告マネージャのどこで分けられるのかが分からない[広告設定]でオーディエンスセグメントを定義すると、レポートの内訳で分けられる。あわせて、広告経由の注文をストアの注文の記録と照合する
- 既存顧客の割合は分かったが、予算を増やすかどうかをどの数字で判断すればよいかが分からない新規顧客の購入だけで計算したROASを、損益分岐ROASと比べる
例として、診断サンプルの架空の会社であるF社(スキンケアブランドの自社EC)の12か月の数字を、記事の最後まで使います。数字はすべて説明用のサンプルです。購入は二重計上を除いた件数で、損益分岐ROASの1.54は粗利率を65%と仮定した値(1÷0.65)です。F社のAdvantage+ セールスキャンペーンのROASは、広告マネージャの表示では3.09、二重計上を除いて計算し直すと2.56です。この記事で単に「ROAS」と書く場合は、二重計上を除いた値を指します。2.56は新規顧客向けの手動のキャンペーン(1.88)より高い値ですが、購入の61.8%は既存顧客によるもので、新規顧客の購入だけでROASを計算し直すと0.98です。
説明の根拠は、Metaの公式ヘルプと開発者向けのドキュメント(Meta for Developers)です。TAMKOは、Meta広告のアカウント診断で、Advantage+ セールスキャンペーンの既存顧客の割合を毎回確認しています。その立場から解説します。
【結論】Advantage+ セールスキャンペーンは、既存顧客の割合を出して新規顧客だけのROASで評価する
Advantage+ セールスキャンペーンのROASには、既存顧客の購入が含まれています。予算を増やすかどうかは、購入のうち既存顧客が占める割合を出し、新規顧客の購入だけで計算したROASを損益分岐ROASと比べてから決めます。

ROAS 2.56のうち、新規顧客の購入は4割弱
F社のAdvantage+ セールスキャンペーン:全体のROAS 2.56
- A既存顧客の購入 61.8%リピートの売上。広告が無くても発生した分を含みうる
- B新規顧客の購入 38.2%この部分だけで計算したROASは0.98。損益分岐1.54を下回る
既存顧客の購入に価値が無い、という意味ではありません。リピートによる売上も、自社の売上に変わりはありません。ただし既存顧客の購入には、広告が無くても発生した分が含まれている可能性があります。新規顧客だけのROASは、その分を差し引いた保守的な見方として使います。
確認は、既存顧客の割合を出す、新規顧客だけのROASを計算する、損益分岐ROASと比べる、の順に進めます。既存顧客の割合が高く、新規顧客だけのROASが損益分岐を下回る場合は、予算を増やす前に既存顧客への配分を見直します。
Advantage+ セールスキャンペーンとは:手動のキャンペーンよりROASが高く表示される理由
Advantage+ セールスキャンペーンのROASは手動のキャンペーンより高く表示されているが、新規顧客の数は同じ割合では増えていない。
Advantage+ セールスキャンペーンは配信先を広く取るため、新しいオーディエンスだけでなく既存顧客にも広告が配信されます。購入につながりやすい既存顧客の分が含まれるため、キャンペーン全体のROASは高くなります。
ROASは、3つのセグメントの購入の合計
- 新しいオーディエンス商品やサービスにアクションを実行したことがない利用者ROASに合算
- エンゲージメントの高いオーディエンスビジネスを知っている、またはやりとりしたことがあるが、購入はしていない利用者ROASに合算
- 既存顧客購入したことがある利用者。購入につながりやすいROASに合算
公式ヘルプでは、Advantage+ セールスキャンペーンは、売上キャンペーンでAdvantage+のオーディエンス・配置・予算を使う形と説明され、アクションを実行する可能性の高い人に広告を配信するとされています。オンラインで購入する可能性が高い人には、既存顧客も含まれます。既存顧客は購入につながりやすいため、既存顧客への配信が多いほど、キャンペーン全体のROASは高くなります。
配信が必ず既存顧客に偏るわけではありません。どの程度含まれるかはアカウントごとに異なるため、次の章の方法で実際の割合を確認します。Metaもベストプラクティスとして、3つのセグメントに分けたレポートを得られるよう、オーディエンスセグメントを作成することを挙げています。
Advantage+ キャンペーンの設定は、売上・アプリの宣伝・リードの目的を選んだときに表示されます。手動のキャンペーンの機能は、引き続きすべて利用できます。
売上を目的とするAdvantage+のキャンペーンでは、かつて「Advantage+ ショッピングキャンペーン」(旧来の形式)が提供されていたため、検索するとその名前で書かれた解説も多く見つかります。Meta for Developersによると、旧来の形式のキャンペーンはAPIのv24.0から作成できなくなり、v25.0では作成しようとするとエラーになります。
Google広告のP-MAXにも、新規顧客の購入をどう数えるかという同じ論点があります(関連:P-MAXの新規顧客の獲得)。
「既存顧客の予算上限」は利用できなくなった
検索で見つかる解説記事には、「既存顧客の予算上限」を現在も使える設定として紹介しているものがあります。これは、既存顧客に予算を使うかどうかを選べる機能でした。公式ヘルプには、現在は利用できないと明記されています。広告マネージャに表示されないのは正常です。ヘルプには同じ設定を手動で行う手順があり、その手順は「既存顧客の割合が高かったときの配分の変え方」の章で整理します。
Meta for Developersによると、既存顧客の予算上限(APIでは「既存顧客の予算割合」)を使っている旧来の形式のキャンペーンはv26.0で一時停止され、新しい構造への移行は広告マネージャでキャンペーンを複製して行います。v26.0の公開日は記載されていません。
既存顧客の割合とは:広告マネージャの購入を新規顧客と既存顧客に分けて確認する2つの方法
新規顧客と既存顧客に分けた数字を出そうとしたが、広告マネージャのどこで分けられるのかが分からない。
既存顧客の割合とは、全購入件数に占める既存顧客の購入件数の比率です。Metaのオーディエンスセグメントの内訳(以下「Metaの内訳」)と、ストアの注文の記録との照合(以下「ストアの照合」)の2つの方法で確認できます。Metaの内訳を表示するには、先に[広告設定]でオーディエンスセグメントを定義します。予算の判断にはストアの照合を使い、Metaの内訳は月ごとの変化を見るために使います。
既存顧客を何で判定するかが違う
Metaのオーディエンスセグメントの内訳
- 既存顧客=カスタムオーディエンスに入っている人
- 広告マネージャで毎月同じ条件で見られる
- 顧客リストが古いと、最近の購入者が漏れる
月ごとの変化を見る
ストアの注文の記録との照合
- 既存顧客=過去に注文がある人
- 売上の記録と同じ基準で数えられる
- 注文番号と初回の注文日をそろえる手間がかかる
予算の判断に使う
Metaの内訳とストアの照合では、既存顧客の判定基準が異なります。Metaの内訳は、[広告設定]で指定したカスタムオーディエンスに入っているかどうかで判定します。ストアの照合は、その顧客に過去の注文があるかどうかで判定します。
Metaのオーディエンスセグメントの内訳で見る
Metaの内訳を表示するには、先にオーディエンスセグメントを定義します。定義と表示の手順は次の4つです。
- 広告マネージャの左側のナビゲーションを開き、[すべてのツール]から[広告]の下の[広告設定]を選択する。
- [広告の作成]の下の[オーディエンスセグメント]をクリックする。
- [エンゲージメントの高いオーディエンス]と[既存顧客]のそれぞれで、既存のカスタムオーディエンスを選ぶか、新しく作成する。
- レポートでは、広告マネージャの右側の[内訳]をクリックし、[利用者層データ別]で[オーディエンスセグメント]を選択する。
公式ヘルプによると、設定には次の決まりがあります。
- 既存顧客のソース:ウェブサイト・アプリアクティビティ・カタログ・顧客リスト・オフラインアクティビティ・ショッピング・リード獲得フォームから作成できる
- 適用範囲:[広告設定]で定義したセグメントは、同じアカウントの売上キャンペーンすべてに自動的に適用される
- 提供状況:この機能はまだ利用できない場合がある
注意が必要なのは、既存顧客の定義がカスタムオーディエンスに含まれる顧客で決まる点です。顧客リストを長期間更新していない場合、最近購入した人は既存顧客に数えられず、新しいオーディエンスやエンゲージメントの高いオーディエンスの側に入ります。Metaの内訳を使う場合は、顧客リストを更新する頻度も併せて決めておきます。
Metaの内訳は、オーディエンスセグメントを定義した後の期間で確認します。定義する前の期間まで遡って分けられるか、購入をどの時点の定義で分けているかは、公式ヘルプに記載がありません。この点も、Metaの内訳をストアの照合と併せて確認する理由です。
ストアの注文の記録と照合して、初回の購入かどうかで見る
ストアの照合は、広告経由の注文が、その顧客にとって初めての注文かどうかを見る方法です。
- 広告経由の購入の注文番号を書き出す(購入イベントに注文番号を送っている場合)。
- 同じ注文番号を、ストアの注文の記録から探す。
- その注文の顧客について、最初の注文日を調べる。
- 広告経由の注文が初回の注文であれば新規顧客、それより前に注文があれば既存顧客と数える。
始める前に、新規顧客をどの期間で数えるかを決めます。たとえば「過去24か月に注文が無ければ新規」のように基準を定めておかないと、月ごとに数え方が変わります。
広告経由に数えられる注文の範囲は、アトリビューション設定で変わります。ウェブサイトなど広告以外の経路で行われた購入も、広告を見てから、またはクリックしてから一定の日数内であれば広告にアトリビューションされ、標準では広告セットのアトリビューション設定に基づいて表示されます。F社の例のアトリビューション設定は、クリックスルー7日・ビュースルー1日です。既存顧客の割合は、この設定で広告経由に数えられた注文を照合して推計しました。
照合に使う注文番号は、購入が二重に数えられていないかを確認するときにも使います(関連:Meta広告のコンバージョンAPIの二重計上を、注文数と照らして確認する方法)。
2つの数字がずれたときの扱い
Metaの内訳はカスタムオーディエンスの範囲で、ストアの照合は注文の記録の範囲で数えるため、2つの数字は一致しません。ずれていても、どちらかが誤りとは限りません。
予算の判断にはストアの照合を優先します。売上の記録と同じ基準で数えた数字のほうが、根拠を示しやすいためです。Metaの内訳は、広告マネージャ上で毎月同じ条件で確認できるため、割合が上昇しているか低下しているかという変化を見る目的に使います。ずれが大きい場合は、まず既存顧客のカスタムオーディエンスが最新の顧客リストかどうかを確認します。
新規顧客だけのROASとは:全体のROASが高くても、予算を増やす前に損益分岐と比べる理由
既存顧客の割合は分かったが、Advantage+ セールスキャンペーンの予算を増やすかどうかを、どの数字で判断すればよいかが分からない。
新規顧客の購入による売上だけでROASを計算し直し、損益分岐ROAS(1÷粗利率)と比べます。全体のROASでは高く表示されるキャンペーンでも、新規顧客だけで見ると損益分岐を下回ることがあります。
新規顧客だけで見ると、損益分岐を下回る
計算式:ROAS×(1−既存顧客の割合)
計算式は次の2つです。
- 新規顧客だけのROAS=ROAS×(1−既存顧客の割合)
- 損益分岐ROAS=1÷粗利率(粗利率65%の場合は1÷0.65で約1.54)
新規顧客だけのROASは、新規顧客の購入による売上を、そのキャンペーンの費用全体で割った値です。既存顧客に使った分も含めた費用を、新規顧客の獲得だけで回収できているかを見ます。
既存顧客の割合は、購入件数をもとに出すのが基本です。購入件数で出した場合は、新規顧客と既存顧客の客単価が同じとみなした近似値になります。新規顧客と既存顧客で客単価が大きく異なる場合は、購入件数ではなく売上の比率で計算します。なお、この計算は評価のための自社の定義で、広告マネージャにある指標ではありません。
何を成果として数えるかを先に決めておく考え方は、Google広告のコンバージョンの設定と同じです(関連:コンバージョンの主要と副次)。
F社の例:ROAS 2.56のうち、新規顧客だけでは0.98
F社の12か月の、キャンペーン別の数字です。
| キャンペーン | 費用 | ROAS | 既存顧客の割合 | 新規顧客だけのROAS | 損益分岐1.54との比較 |
|---|---|---|---|---|---|
| Advantage+ セールス|全商品 | 911.4万円 | 2.56 | 61.8% | 0.98 | 下回る |
| 手動|新規(興味・関心) | 1,252.5万円 | 1.88 | 12.9% | 1.64 | 上回る |
| 手動|新商品(美容液) | 145.9万円 | 1.89 | 19.1% | 1.53 | ほぼ同じ水準 |
| 手動|リターゲティング(参考) | 328.6万円 | 3.59 | 84.5% | 0.56 | 同じ基準で評価しない |
全体のROASでは、Advantage+ セールスキャンペーン(2.56)のほうが新規顧客向けの手動のキャンペーン(1.88)より高い値です。新規顧客だけで見ると、0.98と1.64で順位が逆になります。
購入単価で見ても同じ結論です。F社の客単価は7,400円のため、損益分岐の購入単価は7,400円×65%=4,810円です。新規顧客1件あたりの購入単価は、Advantage+ セールスキャンペーンが約7,570円、新規顧客向けの手動のキャンペーンが約4,510円です。
リターゲティングのキャンペーンは、もともと既存顧客や訪問者への配信を目的としているので、既存顧客の割合が高いことが前提です。新規顧客だけのROASで評価する対象からは外します。
新規顧客だけのROASが損益分岐とほぼ同じ場合の判断
F社の新商品(美容液)のキャンペーンは、新規顧客だけのROASが1.53で、損益分岐の1.54とほぼ同じ水準です。この場合は、予算を増やす根拠にも、停止する根拠にもしません。現在の予算のまま、判断の材料を集めます。
0.01の差は、既存顧客の割合に直すと約0.5ポイント(0.01÷1.89)で、12か月の購入372件のうち既存顧客が2件違うだけで、損益分岐を上回るか下回るかが入れ替わる差です。また損益分岐の1.54は粗利率を65%と仮定した値で、実際の粗利率が1ポイントに満たない違いでも上下が逆転します。ほぼ同じ水準と判断した場合は、次の2つを行います。
- 仮定の粗利率を、自社の実際の粗利率に置き換えて損益分岐ROASを計算し直す
- 月ごとの既存顧客の割合の推移を3か月以上確認し、上昇しているか低下しているかの方向を見る(「購入が少ないとき・期間が短いときの判断」の章)
二重計上を除いた購入で計算する
広告マネージャに表示されるF社のAdvantage+ セールスキャンペーンのROASは3.09で、ピクセルとコンバージョンAPIの二重計上を含んでいます。二重計上を除いた購入で計算した2.56との差は、この二重計上の分です。広告マネージャの3.09のまま計算すると、新規顧客だけのROASは3.09×0.382で約1.18になり、実際より高くなります。
計算の前に、購入イベントの数がストアの注文数と合っているかを確認します(関連:Meta広告のコンバージョンAPIの二重計上を、注文数と照らして確認する方法)。
既存顧客の割合が高かったときの配分の変え方
既存顧客の予算上限は利用できなくなりましたが、公式ヘルプには同じことを手動で行う手順が2つ記載されています。既存顧客を除外した新しいキャンペーンを作成する方法と、広告セットを2つに分けて既存顧客側に上限予算を設定する方法です。この章では、既存顧客以外の利用者(新しいオーディエンスとエンゲージメントの高いオーディエンス)を「潜在顧客」と呼びます。
既存顧客を外すか、上限を設けるか
手順① 既存顧客を除外する
- キャンペーン予算を選ぶ
- カスタムオーディエンスの除外に既存顧客を追加
- 予算はすべて潜在顧客に使う
Advantage+ オフにはならない
手順② 広告セットを2つに分ける
- 広告セット1:既存顧客を含め、広告セットの上限予算を設定
- 広告セット2:既存顧客を除外し、残りの予算を潜在顧客に使う
- クリエイティブは両方で同じものを使う
広告セット1のオーディエンスはAdvantage+ オフ
どちらも「新しいキャンペーン」を作成する手順です。現在のAdvantage+ セールスキャンペーンをすぐに停止するのではなく、予算の一部を新しいキャンペーンに移し、前後を比較しながら進めます。
既存顧客を除外したキャンペーンを作る
既存顧客に予算を使わず、潜在顧客だけに配信する方法です。
- 広告マネージャで新しいキャンペーンを作成する。
- 予算戦略として[キャンペーン予算]を選び、1日の予算か通算予算を設定する。
- [オーディエンス]の[制御]で[他の制御を表示する]を選び、[カスタムオーディエンスの除外]に既存顧客のカスタムオーディエンスを追加する。
- 広告レベルでクリエイティブを選び、[公開する]を選択する。
公式ヘルプによると、カスタムオーディエンスを除外してもAdvantage+ オフにはなりません。その効果は、除外に指定したカスタムオーディエンスに含まれる顧客で決まります。顧客リストが古い場合は、最近購入した顧客は除外されずに配信の対象に残ります。
広告セットを2つに分け、既存顧客側に上限予算を設定する
既存顧客に使う予算に上限を設け、残りを潜在顧客に使う方法です。
- 広告マネージャで新しいキャンペーンを作成し、予算戦略として[キャンペーン予算]を選ぶ。
- 最初の広告セット(以下「広告セット1」。既存顧客への予算消化を制限する)を、次のように設定する。
- [予算と掲載期間]で[広告セットの上限予算]を選び、[1日上限]または[通算上限]をパーセンテージか金額で設定する。
- [オーディエンス]で[広告のリーチをさらに制限]を選び、既存顧客のカスタムオーディエンスを含め、[提案として使用する]のチェックを外す。
- クリエイティブを選ぶ。両方の広告セットで同じものを使う。
- 広告セットを複製して広告セット2(残りの予算を潜在顧客に使う)を作成し、[カスタムオーディエンスの除外]に既存顧客を追加して、[公開する]を選択する。
上限予算を設定すると、消化金額は設定額を下回ることはあっても、上回ることはありません。パーセンテージで設定した場合は上限額が変動し、金額で設定した場合は固定されます。
注意が必要なのは、[提案として使用する]のチェックを外すと、オーディエンスがAdvantage+ オフと表示される点です。広告セット1はこれに当たります。一方、キャンペーン予算を選ぶ場合や上限予算を設定する場合、予算はAdvantage+ オンと表示されます。既存顧客への配分を自社で制御する代わりに、オーディエンスはAdvantage+ オフになることを理解したうえで、この手順を選びます。
変更の前後は同じ長さの期間で比較する
予算の一部を移したら、元のキャンペーンと新しいキャンペーンを合わせた数字で、変更前と同じ長さの期間の新規顧客だけのROASと新規顧客の購入件数を比べます。キャンペーン全体のROASが低下しても、新規顧客の購入件数と新規顧客だけのROASが上昇していれば、配分の変更は意図どおりの結果です。比較する期間の決め方は次の章で整理します。
配分を変えるときは、配置ごとの費用と購入も併せて確認します(関連:Meta広告のAudience Networkは外すべき?配置別の費用と購入で決める方法)。
購入が少ないとき・期間が短いときの判断
既存顧客の割合は、購入件数が少ないと月ごとに大きく変動します。1か月だけの割合で配分を変えず、月ごとの割合の推移を3か月以上確認し、同じ方向に動いているかを見てから判断します。
1か月の割合では、配分を変えない
既存顧客の割合で、配分を変えてよいか
- 月ごとの割合の推移を3か月以上確認し、同じ方向に動いている配分を変える予算の一部を移し、前後を比較する
- 方向がそろわず、新規顧客の購入が数十件に届かない期間を延ばして件数を集める比較する両方のキャンペーンで数十件以上が目安
- キャンペーン単位では件数が足りないアカウント全体の割合で先に判断する判断した後で、キャンペーン別に見直す
1か月の割合で配分を変えない
割合の変動は、件数の少なさから生じます。F社の新商品(美容液)のキャンペーンの購入は月に約31件で、1件の違いで既存顧客の割合が約3ポイント変動します。一方、Advantage+ セールスキャンペーンは月に約263件あり、1件の違いは0.4ポイントほどです。
月に数十件の規模では、ある月に既存顧客の割合が10ポイント上昇しても、それが配信の変化によるものか偶然かを判断できません。判断の前に、月ごとの割合の推移を3か月以上確認し、同じ方向に動いているかを見ます。
判断できないときは、集める期間と件数を決める
件数が足りずに判断できない場合は、次の2つのどちらかで進めます。
- 期間を延ばして件数を集める。比較する両方のキャンペーンで、新規顧客の購入がそれぞれ数十件以上になるまでを目安にする。
- キャンペーン単位ではなく、アカウント全体の既存顧客の割合で先に判断する。
F社の例では、新商品のキャンペーンの新規顧客の購入は月に約25件(12か月の購入372件×新規顧客の割合80.9%÷12)で、3か月分を合計すると約75件になります。Advantage+ セールスキャンペーンの新規顧客の購入は月に約100件(3,151件×38.2%÷12)で、1か月目から数十件を超えます。件数の少ないキャンペーンほど、判断までに長い期間が必要です。
数十件は判断の目安で、統計的な検定の基準ではありません。判断に必要な件数を先に決めておけば、都合のよい月の数字だけで結論を出すことを防げます。
予算を移した後の判定期間には、情報収集期間を含めて余裕を持たせます。情報収集期間は、新しい広告セットを作成したときや大幅な編集を加えたときに始まり、通常は最後の大幅な編集から1週間以内に約50件の結果を獲得すると終了します。この期間中はパフォーマンスが安定しにくいため、その間の数字だけで判断しないようにします。
TAMKOのMeta広告アカウント診断で確認すること
この記事で挙げた、Advantage+ セールスキャンペーンの既存顧客の割合、新規顧客だけのROASと損益分岐の比較、購入の数の正しさは、TAMKOのMeta広告アカウント診断で確認している項目です。既存顧客の割合は、診断の確認項目「Advantage+ セールスキャンペーンと手動のキャンペーンの分け方」の中で確認しています。
診断で確認する3つの項目
- 1既存顧客の割合Advantage+と手動のキャンペーンで割合を比較する
- 2新規顧客だけのROAS損益分岐と比べる
- 3購入の数の正しさピクセルとコンバージョンAPIの二重計上
料金は、診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)です。エグゼクティブサマリー・調査報告書・分析の明細(Excel)・オンラインの説明会1回をお渡しします。
配分の変更まで依頼したい場合は、Meta広告のお試し運用から始められます。1施策を、1か月・5万円でお預かりします(税別)。お預かりする施策の広告費は月30万円までです(お試し運用)。
詳しくは診断ページをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q01Advantage+ セールスキャンペーンで、既存顧客の予算上限はどこで設定しますか?
既存顧客の予算上限は利用できなくなりました(公式ヘルプ記載)。
同じことをするには、既存顧客のカスタムオーディエンスを除外した新しいキャンペーンを作成するか、広告セットを2つに分けて既存顧客側に上限予算を設定します。
Q02オーディエンスセグメントの内訳が表示されません。
先に[広告設定]の[オーディエンスセグメント]で、[エンゲージメントの高いオーディエンス]と[既存顧客]を定義する必要があります。
公式ヘルプには、この機能はまだ利用できない場合があるとも記載されています。
Q03既存顧客の割合が高いのは悪いことですか?
一概には言えません。
既存顧客の購入も売上に貢献しますが、広告が無くても発生した購入を含んでいる可能性があるため、新規顧客だけのROASが損益分岐を上回るかを併せて確認します。
Q04新規顧客だけのROASが損益分岐とほぼ同じ場合は、予算を増やしますか?
増額も停止もせず、現在の予算のまま判断の材料を集めます。
具体的には、仮定の粗利率を自社の実際の粗利率に置き換えて損益分岐ROASを計算し直し、月ごとの既存顧客の割合の推移を3か月以上確認します。差が小さい場合は、既存顧客の購入が数件違う場合や、仮定した粗利率が実際と異なる場合に、損益分岐を上回るか下回るかが逆転するためです。
Q05既存顧客を除外すると、Advantage+ オフになりますか?
公式ヘルプでは、カスタムオーディエンスを除外してもAdvantage+ オフにはならないとされています。
一方、既存顧客を含める広告セットで[提案として使用する]のチェックを外すと、Advantage+ オフと表示されます。
Advantage+ セールスキャンペーンは、新規顧客だけのROASで続けるかを判断する|まとめ
Advantage+ セールスキャンペーンのROASには、新しいオーディエンスだけでなく既存顧客の購入も含まれています。続けるか、予算を増やすかを判断する前に、既存顧客の割合を確認します。確認の方法はMetaの内訳とストアの照合の2つで、予算の判断にはストアの照合を、月ごとの変化を見るにはMetaの内訳を使います。Metaの内訳を表示するには、先に[広告設定]の[オーディエンスセグメント]で既存顧客を定義します。そのうえで、二重計上を除いた購入で新規顧客だけのROASを計算し、自社の粗利率で出した損益分岐ROASと比べます。新規顧客だけのROASが損益分岐ROASとほぼ同じ水準の場合は、増額も停止もせず、実際の粗利率で損益分岐ROASを計算し直し、月ごとの割合の推移を3か月以上確認します。既存顧客の割合が高かった場合、既存顧客の予算上限は現在利用できないため、既存顧客を除外した新しいキャンペーンか、2つの広告セットと上限予算で配分を変えます。購入が少ないうちは1か月の割合で判断せず、月ごとの割合の推移を3か月以上確認し、集める件数を先に決めてから判断してください。
この記事のポイント
- 広告マネージャに表示されるAdvantage+ セールスキャンペーンのROASは、新しいオーディエンス・エンゲージメントの高いオーディエンス・既存顧客の3つのセグメントの購入を合計した数字である。
- 既存顧客の割合は、Metaのオーディエンスセグメントの内訳([内訳]→[利用者層データ別])と、ストアの注文の記録との照合の2つで確認できる。内訳を表示するには、先に[広告設定]の[オーディエンスセグメント]で既存顧客を定義する。
- 新規顧客だけのROAS=ROAS×(1−既存顧客の割合)を、損益分岐ROAS(1÷粗利率)と比べて、予算を増やすかを決める。損益分岐ROASとほぼ同じ水準の場合は、増額も停止もせず、実際の粗利率で損益分岐ROASを計算し直し、月ごとの割合の推移を3か月以上確認する。
- 既存顧客の予算上限は利用できなくなった。代わりに、既存顧客の除外、または2つの広告セットと上限予算で配分を制御する。
- 購入が少ないと割合は月ごとに変動するため、1か月の数字で配分を変えず、月ごとの割合の推移を3か月以上確認し、集める件数を決めてから判断する。