TAMKO
認知・オフライン

ブランドリフト調査とは?測れること・やり方と、MMM(売上への効果測定)との使い分け

認知目的の動画広告やテレビCMを出したあと、「で、効果はあったの?」と聞かれて答えに困ったことはありませんか。クリックやコンバージョンの数字は出るものの、認知施策の目的はそこではないはず。かといって「認知が上がったはず」では、次の予算の根拠になりません。この「認知施策の効果をどう測るか」に対する代表的な答えのひとつが、ブランドリフト調査です。

そこでこの記事では、ブランドリフト調査の仕組みと測れる指標、実施のやり方を整理したうえで、この調査で分かること・分からないことを正直に線引きします。そして後半では、認知施策の効果測定を「意識・行動・売上」の3層で捉える全体像と、売上への貢献を測るMMM(マーケティングミックスモデリング)との使い分け・併用までを扱います。

認知施策の効果を社内に説明する立場のマーケティング担当者に向けて書きます。実際にMMM分析を提供している立場から解説します。

【結論】ブランドリフト調査が測るのは「意識の変化」。売上への貢献は別の物差しで測り、併用する

ブランドリフト調査が測るのは、広告がターゲットの認知度・好意度・購入意向をどれだけ押し上げたか——つまり「意識の変化」です。広告を見たグループと見ていないグループへのアンケートの差分でこれを確かめます。認知施策の効果測定として有効ですが、測れるのは意識までで、「売上にいくら効いたか」には答えられません。売上への貢献はMMMなど別の手法の守備範囲であり、両者は競合ではなく、測る層が違う補完関係です。

つまり、認知施策の効果測定は「ブランドリフト調査かMMMか」の二択ではありません。意識はブランドリフト調査で、売上への貢献はMMMで——この役割分担を先に押さえておくと、以降の説明はすべて素直に読めます。

ブランドリフト調査とは|広告を見た人と見ていない人の「意識の差」を測る調査

ブランドリフト調査とは、広告に接触したグループと、接触していない比較グループにアンケートを行い、回答の差分から広告がブランドに関する意識に与えた影響(リフト=押し上げ)を測る調査手法です。

仕組み:接触グループと非接触グループのアンケート比較

単純に「広告を出す前と後」で認知度を比べると、季節やニュースなど広告以外の要因が混ざってしまいます。ブランドリフト調査はここを、「広告を見たグループ」と「広告の表示対象だったが見なかったグループ」の同時比較で解決します。たとえばGoogle広告のブランド効果測定は、この2グループにアンケートを配信し、回答の差から広告の影響を判定する仕組みです。同じ期間・同じ条件下の2グループを比べるため、広告以外の要因は両グループに同じようにかかり、差分は広告の影響として解釈できます。

測れる指標:広告想起・認知度・比較検討・好意度・購入意向

測定の対象になるのは、購買ファネルに沿った意識の指標です。Google広告のブランド効果測定では、広告想起・認知度・比較検討・好意度・購入意向などの指標を測定でき、結果は「効果があったユーザー数」や「効果があったユーザーあたりの費用」、接触・非接触グループの肯定的回答の割合の差(リフト)として確認できます。

「広告を覚えているか」(広告想起)から「買いたいと思うか」(購入意向)まで、どの深さの意識が動いたかを分けて見られるのがポイントです。認知度は上がったが購入意向が動いていない、という結果が出れば、クリエイティブやメッセージの見直しにつながります。

参照

ブランドリフト調査のやり方|媒体提供型と調査会社型

実施の形態は大きく2つあります。広告プラットフォームの機能として実施する「媒体提供型」と、調査会社に依頼してカスタム設計する「調査会社型」です。どちらを選ぶかは、測りたい対象で決まります。

媒体提供型:広告プラットフォームの機能として実施する

GoogleやMetaなどの主要な広告プラットフォームは、自社の広告に対するブランドリフト測定の仕組みを提供しています。Google広告の場合、対象はオークションで購入したインストリーム広告やバンパー広告などのYouTube系キャンペーンで、利用にはアカウント担当者が付いていることなどの条件があります。プラットフォームが接触・非接触のグループ分けからアンケート配信までを自動で行うため、配信と計測が一体になっていて実施の手間が小さいのが利点です。一方で、測れるのはそのプラットフォームで配信した広告の効果に限られます。

調査会社型:カスタム設計でテレビCMなどオフラインも測る

調査会社に依頼して、調査パネルに対するアンケートで接触・非接触を比べる形です。設問の設計やターゲットの定義を自社の状況に合わせられ、テレビCM・交通広告・複数媒体をまたいだキャンペーン全体など、媒体機能では扱えない対象も測れます。そのぶん調査設計の工数と費用がかかり、費用は設計内容次第の個別見積もりが一般的です。

どちらを選ぶかは、測りたい対象で決まります。単一プラットフォームの動画広告なら媒体提供型で足り、テレビCMを含むキャンペーン全体の評価なら調査会社型が候補になります。テレビCMの効果測定の全体像(5つの方法の使い分け)は、テレビCMの効果測定の記事で解説しています。

実施前に決めておく3つのこと

形態がどちらでも、調査を意味のあるものにするために、実施前に次の3点を決めておくことをおすすめします。

  1. どの指標を主役にするか:広告想起から購入意向まで、動かしたい意識の深さはキャンペーンの目的で違います。「全部見る」ではなく、施策の狙いに対応する指標を先に1つ決めておくと、結果の解釈がぶれません
  2. 比較が成立する設計にする:調査期間の途中でクリエイティブやターゲティングを大きく変えると、何の効果を測ったのか分からなくなります。測る期間は条件を固定するのが原則です
  3. 結果の使い道を先に決める:リフトが出たら何を続け、出なかったら何を変えるのか。受け取り先の決まっていない調査は、実施しても数字が置かれるだけで終わります

ブランドリフト調査で分かること・分からないこと

ブランドリフト調査で分かるのは、認知施策が意識を動かしたかどうかです。売上・利益への貢献額、効果の残存、媒体をまたいだ予算配分の判断材料は、この調査の守備範囲外です。

分かること:認知施策が「意識」を動かしたか

  • 広告がターゲットの記憶に残ったか(広告想起)
  • ブランドを知っている人が増えたか(認知度)
  • 検討の候補に入ったか、好意や購入意向が動いたか
  • どのクリエイティブ・どんな接触のしかたが意識を動かしたか(設計次第)

クリックが発生しない認知施策に対して、「意識が動いた」という証拠を対照比較の形で出せる——これがブランドリフト調査の価値です。

分からないこと:売上に「いくら」効いたか

  • 売上・利益への貢献額:意識の変化と実際の購買の間には距離があります。認知度が5ポイント上がったことが売上いくらに相当するのかは、この調査からは出ません
  • 効果の残存:調査が捉えるのはキャンペーン期間の意識の変化で、その後何ヶ月効果が続くかは分かりません
  • 媒体をまたいだ予算配分の判断材料:「認知にいくら、獲得にいくら」という配分の議論には、共通の物差し(売上への貢献)に載せた比較が必要です

つまり、ブランドリフト調査の結果だけを持って「この施策は売上に貢献した」と報告すると、論理が一段飛んでいます。ここを埋めるのが次の全体像です。

認知施策の効果測定の全体像|意識・行動・売上の3層で捉える

認知施策の効果は「意識→行動→売上」の3層で捉えると整理できます。意識はブランドリフト調査、行動は検索リフト測定、売上はコンバージョンリフト測定やMMM——層ごとに対応する測定手法が違う、というのがこの記事の核です。

層測るもの代表的な手法
意識広告想起・認知度・好意度・購入意向ブランドリフト調査
行動ブランド名・商品名の検索の増加検索リフト(サーチリフト)測定
売上購入・申込などの成果への貢献コンバージョンリフト測定・MMM

実際、Google広告のリフト測定も、ブランド効果測定(意識)・検索数の増加(行動)・コンバージョンリフト測定(成果)という同じ3段階で用意されており、この層の分け方は媒体側の設計とも一致しています。

3層で捉えると、よくある混乱が解けます。「ブランドリフト調査で効果が出たのに売上が動かない」は矛盾ではなく、意識の層では効いたが、売上の層はまだ検証していないという状態です。逆に、意識の層を測らずに売上だけ見ていると、認知施策は「クリックもCVもない費用」に見えて、真っ先に削減候補になります。どの層を測れていて、どの層が空白かを先に確認することが、認知施策の効果測定の出発点です。

参照

ブランドリフト調査とMMMの併用|「意識が動いた」を「売上に効いた」につなげる

売上の層を埋める代表的な手法がMMMです。ブランドリフト調査は認知施策の「中身」の改善に、MMMは「量と配分」の判断に使う——測る層の違いを活かした併用が実務の正解です。

MMM(マーケティングミックスモデリング)は、過去の売上と媒体別費用の時系列データから、売上を「広告がなくても立つ分+施策ごとの貢献分」に統計的に分解します。クリックの有無に関係なく、テレビCMや認知目的の動画広告も「売上への貢献」という同じ物差しに載るため、認知施策と獲得施策をまたいだ予算配分の議論ができるようになります。仕組みはMMM(マーケティングミックスモデリング)とは?の解説記事にまとめています。

併用の役割分担はこう整理できます。

  • ブランドリフト調査:認知施策の「中身」の改善に使う。どのクリエイティブ・メッセージが意識を動かしたかを確かめ、施策の質を上げる
  • MMM:認知施策の「量と配分」の判断に使う。売上への貢献と飽和度から、いくらまで投じる価値があるかを検討する。配分の考え方は広告予算の配分の記事で解説しています

なお、検索リフトやコンバージョンリフトのような行動・成果系のリフト測定の結果は、MMMの推定の事前情報として組み込む使い方(キャリブレーション)もあり、実験とMMMは対立ではなく補強関係にあります。

リフト測定とMMMの使い分け・キャリブレーションの詳細は、インクリメンタリティテストとMMMの使い分けの記事で解説しています。

DOREGAは、このMMM側を担う分析代行サービスです。エンジンにGoogleのオープンソースMMMライブラリ「Meridian」を使い、前後のデータ整形・レポート作成を独自ツールで標準化することで、媒体別の貢献度分解から予算配分シミュレーションまでを初回分析15万円で提供しています。ブランドリフト調査を実施済みの場合も、その結果と突き合わせながら売上の層を検証できます。

よくある質問(FAQ)

Q01ブランドリフト調査とは何ですか?

広告に接触したグループと接触していないグループにアンケートを行い、回答の差分から、広告が認知度・広告想起・好意度・購入意向といったブランドに関する意識に与えた影響を測る調査です。クリックやコンバージョンが発生しない認知施策の効果を、対照比較の形で確かめられます。

Q02ブランドリフト調査ではどんな指標が測れますか?

広告想起・認知度・比較検討・好意度・購入意向などが代表的です。購買ファネルに沿ってどの深さの意識が動いたかを分けて確認でき、結果は接触・非接触グループの肯定的回答の差(リフト)として示されます。

Q03ブランドリフト調査のやり方には何がありますか?

大きく2つあります。GoogleやMetaなど広告プラットフォームの機能として実施する媒体提供型と、調査会社に依頼してカスタム設計する調査会社型です。単一媒体の動画広告なら媒体提供型、テレビCMや複数媒体をまたぐキャンペーン全体の評価なら調査会社型が候補になります。媒体提供型には対象キャンペーンなどの利用条件があります。

Q04ブランドリフト調査とMMMはどちらをやるべきですか?

測る層が違うため、二択ではありません。意識の変化(施策の中身の改善)はブランドリフト調査、売上への貢献と予算配分の判断はMMMの守備範囲です。認知施策の効果を売上の言葉で説明する必要があるなら、ブランドリフト調査だけでは足りず、MMMなど売上の層を測る手法との併用になります。

Q05テレビCMの効果もブランドリフト調査で測れますか?

測れます。テレビCMのような媒体機能の対象外の施策は、調査会社型のカスタム調査で接触・非接触を比較するのが一般的です。ただし測れるのは意識の変化までで、テレビCMが売上にいくら貢献したかは、MMMのような時系列データからの分析が守備範囲になります。

ブランドリフト調査は「意識」、MMMは「売上」。認知施策は2つの物差しで測る|まとめ

ブランドリフト調査は、接触・非接触の対照比較で認知施策の「意識への効果」を確かめられる、確立された手法です。ただし測れるのは意識までで、売上にいくら効いたかには答えられません。認知施策の効果測定は意識・行動・売上の3層で捉え、意識はブランドリフト調査、売上への貢献と予算配分はMMM——と物差しを使い分けること。この全体像を持っていれば、「認知施策は効果が分からない」という理由だけで予算が削られる状況にも、測り方の提案で応えられるようになります。

この記事のポイント

  • ブランドリフト調査は、広告接触グループと非接触グループのアンケート回答の差分から、認知度・広告想起・好意度・購入意向など「意識の変化」を測る手法。
  • 実施形態は媒体提供型(Google・Metaなどの広告機能。利用条件あり)と調査会社型(カスタム設計でテレビCMなども対象)の2つ。
  • 測れるのは意識まで。売上への貢献額・効果の残存・媒体をまたいだ予算配分の判断は守備範囲外。
  • 認知施策の効果測定は「意識(ブランドリフト)・行動(検索リフト)・売上(コンバージョンリフト・MMM)」の3層で捉える。Google広告のリフト測定も同じ3段階で提供されている。
  • ブランドリフト調査は施策の中身の改善に、MMMは量と配分の判断に。競合ではなく補完関係として併用する。