Amazon広告の指名の広告は、ACOSではなく停止して減った全体の売上で、要否を判断する
Amazon広告で、自社ブランド名(指名)のキャンペーンだけACOSが極端に低く、「この広告は本当に必要なのか」と考えたことはありませんか。
診断サンプルの架空の会社(K社・キッチン用品メーカー・自社ブランド「ケイライフ(架空)」)の例では、12か月のスポンサープロダクト|指名(ブランド名)キャンペーンがACOS 7.2%・ROAS 13.93で、5つのキャンペーンの中で最も良い数字でした。一方で、ブランド名で検索した人は、広告が無くても自然検索の結果から同じ商品を買っていたかもしれません。
そこでこの記事では、指名の広告のACOS・ROASだけでは要否を判断できない理由、停止して検証する前に確認すること(競合が自社ブランド名に広告を配信しているか など)、検証の期間と比べる売上、結果を損益分岐と比べる読み方を、Amazon Adsの公式の記載を根拠に整理します。
対象は、自社ブランドをAmazonに出品し、スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告でブランド名のキーワードに広告を配信している運用担当者の方です。
Amazon広告のアカウント診断で、キャンペーンの種類ごとのACOSと、全体の売上に対する広告費を毎回確認している立場から解説します。
【結論】Amazon広告の【指名】の広告は、ACOSではなく「停止して減った売上」で要否を判断する
指名の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるため、数字が良くても要否は判断できません。停止するか入札を下げて、広告と自然検索を合わせた全体の売上がどれだけ減ったかを計測し、そこから出した増分のACOSを損益分岐ACOSと比べて決めます。
指名の広告は、停止して減った全体の売上で判断する
- 01指名のACOSが良いそれだけでは要否を判断できない
- 02競合とほかのキャンペーンを確認ブランド防衛の要否・指名を拾う設定
- 03停止または入札を下げる前後を4週以上ずつ比べる
- 04全体の売上の減少から増分のACOS使わずに済んだ広告費÷減った売上
- 05損益分岐と比べて決める続ける・入札を下げる・停止する
- 指名の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれる。数字が良くても、それだけでは要否を判断できない。
- 検証の前に、競合が自社ブランド名に広告を配信しているか、ほかのキャンペーンが指名の検索を拾っていないかを確認する。
- 停止する(または入札を下げる)前後で、広告と自然検索を合わせた全体の売上がどれだけ減ったかを計測する。
- 減った売上から増分のACOSを出し、損益分岐ACOSと比べて「続ける・入札を下げる・停止する」を決める。
4の判断の型は、Amazonが示している基準ではなく、この記事の判断です。Amazon Adsの公式ガイドも、同業他社が自社のブランドキーワードに入札していることがあるとして、ブランド防御戦略としての入札の検討を勧めています。この記事も指名の広告を否定するものではなく、続ける根拠を数字で持つための手順として整理しています。
指名(【自社ブランド】名)の広告とは:【ブランドキーワード】の範囲と、指名の検索語句の確認方法
指名の広告とは、ブランドキーワード(自社のブランド名、およびブランド名と他の語の組み合わせ)で検索した人に表示する広告のことです。どの検索語句で表示・クリックされたかは、検索ワードレポートで確認します。
ブランド名を含めば、組み合わせも指名に入る
- ブランド名だけ例:「ケイライフ」指名
- ブランド名+商品の種類など例:「ケイライフ 保存容器」「ケイライフ 片手鍋」指名
- ブランド名を含まない語(一般語)例:「ステンレス 保存容器」指名ではない
Amazon Adsの公式ガイドでは、ブランドキーワードはブランド名だけでなく、ブランド名と他の単語の任意の組み合わせも含むとされています。別のガイドでは、ブランド名・製品ライン・商標用語を含むキーワードと説明されています。K社なら「ケイライフ」だけでなく、「ケイライフ 保存容器」「ケイライフ 片手鍋」も指名です。「ステンレス 保存容器」のようにブランド名を含まない語は、一般語(カテゴリーキーワード)です。
指名の広告は、スポンサープロダクト広告のキーワードターゲティングか、スポンサーブランド広告で配信することが多い広告です。キーワードのマッチタイプは3つあります。
- 部分一致:キーワードに関連する検索に、任意の順序で広告が表示される。変化形・同義語・関連用語を含み、範囲が最も広い。
- フレーズ一致:キーワードがまったく同じ順序で使われたときに広告が表示される(前後に別の単語があってもよい)。
- 完全一致:キーワードが入力したとおりに検索されたとき(またはごく近いバリエーション)だけ広告が表示される。
指名の検索語句は、検索ワードレポートで確認します。公式ヘルプによれば、このレポートには少なくとも1回の広告クリックにつながった検索用語だけが含まれます。
診断サンプルの架空の会社(K社)の例では、12か月の検索ワードレポートに、次の2つの指名の検索語句がありました。
| 検索語句(K社の例) | 広告費 | 広告経由の売上 | 注文 | ACOS |
|---|---|---|---|---|
| ケイライフ 保存容器 | 12.5万円 | 131.3万円 | 369件 | 9.5% |
| ケイライフ 片手鍋 | 5.6万円 | 51.2万円 | 97件 | 10.9% |
表の数字は、診断サンプルの架空の会社(K社)の例です。
キャンペーンの種類ごとにACOSを損益分岐と比べる方法は、Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法で扱っています。指名はその種類の1つです。
指名のACOS・ROASが良く見える理由:広告が無くても自然検索(【オーガニック】)から買われていた売上が含まれる
ブランド名で検索した人が広告をクリックして買えば、その売上は広告経由として集計されます。その人が広告が無くても自然検索の結果から買っていたかどうかは、管理画面では区別されません。そのため、指名のACOSは「広告があったことで増えた売上(増分)」に対する費用を示していません。
指名の広告経由の売上には、2つの売上が混ざっている
指名の広告経由の売上(管理画面のACOS・ROASの元になる数字)
- A広告が無くても買われていた売上広告を停止しても、自然検索の結果から買われて残る
- B広告があったことで増えた売上(増分)境目は管理画面では見えない
Amazon Adsのガイドは、ブランドキーワードは購買意欲の高いお客様にはたらきかけるものとなる可能性がある、と説明しています。また、お客様は商品を自然検索で見つけることも、スポンサー広告で見つけることもできる、とも書いています。ブランド名で検索する人は、買う商品をすでにほぼ決めていることが多く、自然検索の結果の上位にも自社の商品が並んでいることが多いと考えられます。その人が上の広告をクリックして買った場合、広告が無ければ下の自然検索の結果から同じ商品を買っていた可能性があります。
広告経由の売上は、広告のクリックから一定の日数(ルックバックウィンドウ)の間に起きた購入を集計したものです。公式ヘルプでは、出品者のスポンサープロダクト広告は7日間・クリックのみ、スポンサーブランド広告は14日間とされています。この集計は「広告に触れた人の購入」であって、「広告が無ければ起きなかった購入」ではありません。
増分を見るには、比べる数字を広告経由の売上から、広告と自然検索を合わせた全体の売上に置き換えます。TACOSで全体の売上を基準にするのと同じ考え方です。ROASに広告が無くても買った人の売上が入るという構造はGoogle広告でも同じで、その説明は指名キーワードの広告は必要か?停止して確認する前に見る件数とP-MAXの影響にまとめています。
K社の例:指名のキャンペーンはACOS 7.2%・ROAS 13.93
診断サンプルの架空の会社(K社)の例です。12か月(2025年10月〜2026年9月)のキャンペーン別の数字は、次のとおりでした。
| キャンペーン(K社の例) | ACOS | ROAS |
|---|---|---|
| スポンサープロダクト|指名(ブランド名) | 7.2% | 13.93 |
| スポンサープロダクト|一般語(マニュアル) | 23.7% | 4.22 |
| スポンサープロダクト|オート | 31.8% | 3.15 |
| スポンサープロダクト|競合の商品ページ | 55.5% | 1.80 |
| スポンサーブランド|一般語 | 23.6% | 4.24 |
表の数字は、診断サンプルの架空の会社(K社)の例です。
指名のキャンペーンは、広告費約66.7万円に対して広告経由の売上が約928.9万円、注文は2,580件でした。広告経由の売上は、全体の売上(約5,946万円)の約15.6%にあたります。ただ、この数字だけでは、約928.9万円のうちどれだけが広告で増えた売上かは分かりません。
停止する前に確認すること:競合が自社ブランド名に広告を配信しているか(ブランド防衛)
停止の前に確認することは3つです。競合が自社ブランド名に広告を配信しているか、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが指名の検索を拾っていないか、検証の期間が在庫切れやセールの時期と重ならないか、です。
停止の前に確認するのは3つ
- 1競合が自社ブランド名に広告を配信しているか実際の検索結果と、検索用語インプレッションシェアレポートで確認する
- 2ほかのキャンペーンが指名の検索を拾っていないか検索ワードレポートで、指名以外のキャンペーンにブランド名を含む語が出ていないかを見る
- 3在庫切れ・セールの時期と重ならないか在庫の見通しと販売イベントの日程から、検証の期間を選ぶ
Amazon Adsの公式ガイドは、同業他社が自社のブランドキーワードに入札している可能性を挙げ、ブランド防御戦略として入札を検討するよう書いています。競合が配信している場合、指名の広告を停止すると検索結果の上部に競合の広告が表示され、自然検索から買っていた人の一部も競合に流れる可能性があります。この場合、検証で計測するのは「自然検索で残る売上」だけでなく、「競合に流れる売上」も含めた全体の売上の減少です。
逆に競合が配信していなければ、停止しても、自然検索の結果の上位に自社の商品が表示されている限り、売上の多くが残る可能性があります。どちらになるかは事前には分からないため、次の方法で状況を確認してから検証を始めます。
自社ブランド名で検索して、検索結果に競合の広告が出ているかを見る
最も簡単な確認です。主な指名の検索語句(K社なら「ケイライフ」「ケイライフ 保存容器」)で実際にAmazonで検索し、検索結果の上部や自社の商品ページに、他社のスポンサー広告が表示されているかを見ます。日や時間帯によって表示は変わるため、1回の確認では判断せず、日と時間帯を変えて複数回確認します。
検索用語インプレッションシェアレポートと、検索結果上部のインプレッションシェア
スポンサープロダクト広告の検索用語インプレッションシェアレポートでは、検索用語ごとに、アカウント全体のインプレッションシェアと、他の広告主と比べたインプレッションランクが分かります。公式の説明では、ある日付の検索用語でインプレッションランクが3位なら、その日にその検索用語で3番目に多くのスポンサープロダクト広告のインプレッションを獲得したことを意味します。レポートは広告コンソールのレポートセンターからダウンロードでき、日本も対象です。
指名の検索語句でランクが1位でない日がある、またはシェアが低い場合は、他の広告主も同じ語に広告を配信していると読めます。
検索結果上部のインプレッションシェアは、獲得対象となった検索結果上部のインプレッションのうち、自社のキャンペーンが獲得した割合です。スポンサーブランド広告とスポンサープロダクト広告のキャンペーンで使え、ルックバックは90日間です。指名のキャンペーンでこの割合が下がっていれば、検索結果上部の枠を他の広告主と分け合っている可能性があります。
オートや一般語の部分一致が、指名の検索を拾っていないか
指名のキャンペーンを停止しても、オートや一般語の部分一致のキャンペーンが同じ指名の検索に広告を表示していれば、広告は消えません。その状態では、比べたい「広告がある期間」と「広告が無い期間」が比べられません。
検索ワードレポートで、指名以外のキャンペーンにブランド名を含む検索語句が出ていないかを確認します。出ている場合は、検証の期間中、それらのキャンペーンにブランド名を除外キーワードとして設定するかを決めます。除外キーワードで使えるマッチタイプは、フレーズ一致と完全一致です。この対処はAmazonの推奨ではなく、比べる条件をそろえるためのこの記事の判断です。
在庫切れ・セール時期と重ならないか
おすすめ出品に選定されない(在庫不足など)と、スポンサープロダクト広告は表示されません。在庫切れの日は、広告の有無と関係なく売上が落ちるため、検証の結果が読めなくなります。大型セールの時期も、全体の売上が大きく動きます。
診断サンプルの架空の会社(K社)の例では、主力の「ステンレス保存容器 5点セット」が12月19日〜12月30日と3月24日〜3月31日に在庫切れになっていました。このような時期と、検証の期間を重ねないようにします。
停止または入札を下げて検証する設計:比べる売上・期間・件数
比べるのは、指名の広告経由の売上ではなく、広告と自然検索を合わせた全体の売上です。停止前と停止後を同じ長さの期間(例:4週ずつ)でそろえ、停止直後の7日は比較から外します。
停止直後の7日を外して、同じ長さで比べる
- 01停止前の4週基準の期間
- 02停止日指名のキャンペーンを停止する
- 03停止直後の7日広告の影響が残る期間として外す
- 04停止後の4週比較の期間
- 比べる売上:広告と自然検索を合わせた、商品ごとの全体の売上。セラーセントラルで商品ごとの全体の売上を確認できるレポートを使います。レポートの名称と項目は、セラーセントラルで確認してください。公式ヘルプにあるとおり、広告経由の売上は計算方法が異なるため、リテールのレポートと必ずしも一致しません。広告コンソールの数字と混ぜずに、全体の売上は同じレポートから取ります。
- 期間:停止前と停止後を同じ長さにし、曜日の構成をそろえます(例:4週ずつ)。
- 停止直後の扱い:出品者のスポンサープロダクト広告のルックバックウィンドウは7日間です。停止の直前に広告をクリックした人が数日後に買うことがあるため、停止直後の7日は、まだ広告の影響が残っている期間として比較から外します。スポンサーブランド広告の指名もあわせて停止する場合は、14日間を外します。
- 市場全体の変化:同じ期間の一般語のキャンペーンの売上や、前年同期の全体の売上と並べて、季節や市場全体の変化を差し引きます。
診断サンプルの架空の会社(K社)の例では、月の全体の売上は12か月で約396万円(2026年2月)から約599万円(2026年7月)まで動いていました。隣り合う月を比べるだけでは、停止による減少と季節による変動の区別がつきません。
件数が足りるかは、停止の前に確認します。K社の例では、指名の注文は12か月で2,580件、4週あたりにすると約198件です。件数ごとの「ふだんの上下」の目安と確認の手順は、Google広告のコラムと同じ考え方で見積もれます。
停止できない場合:入札を下げる・掲載枠ごとの入札額の調整で段階的に検証する
売上の大きいブランドで全面的な停止が難しい場合は、指名のキャンペーンの入札を段階的に下げる方法もあります。掲載枠ごとの入札額の調整で、検索結果の最上部(最初のページ)への引き上げを外し、最上部に表示される割合を減らす方法もあります。掲載枠は、検索結果の最上部(最初のページ)・その他の検索結果・商品ページの3つです。
どちらも広告の露出を減らして、全体の売上の変化を見る方法です。停止よりも広告の有無の差が小さくなるため、同じ件数でも差が見えにくくなり、判断に必要な期間は長くなります。
スポンサーブランド広告の指名も同時に扱うか
スポンサーブランド広告でもブランド名に広告を配信している場合、スポンサープロダクト広告だけを停止すると、スポンサーブランド広告が受け皿になります。逆も同じです。同時に停止するか、片方ずつ検証するかを先に決めます。同時に停止する場合は、比較から外す期間を長いほうの14日間に合わせます。
結果の読み方:減った売上から「増分のACOS」を出し、損益分岐と比べる
停止前と停止後の全体の売上の差を増分の売上とみなし、使わずに済んだ指名の広告費をその増分の売上で割って「増分のACOS」を出します。これを損益分岐ACOSと比べ、内側なら続ける、外側なら入札を下げるか停止する、と判断します。
増分のACOSは、減った売上を分母にする
- 増分の売上=停止前(基準)の全体の売上-停止後の全体の売上(市場全体の変化を差し引いた後)
- 増分のACOS=停止した期間に使わずに済んだ指名の広告費÷増分の売上
増分のACOSは、Amazonの指標ではなく、この記事での定義です。比べる損益分岐ACOSは、原価に加えてAmazonの販売手数料・配送の費用などを引いた後の利益率から出します。K社の例では、手数料などを引いた後の利益率を35%と仮定し、損益分岐ACOSを35%としています。出し方はAmazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法で扱っています。
増分のACOSが損益分岐の境目に近い場合は、続けるか停止するかを判断できない結果として扱います。期間を延ばすか、入札を下げた検証を足して、判断に足る差が出るまで件数を集めます。
説明用の架空の数字:競合が出ていない場合と、出ている場合
ここからの停止後の数字は、説明用の架空の数字です。前提は、診断サンプルの架空の会社(K社)の12か月の数字を4週あたりに換算したもので、指名の広告費は約51,286円(666,724円×4÷52)、指名の広告経由の売上は約714,530円(9,288,894円×4÷52)です。
| 説明用の架空の数字 | ケースA:競合が配信していない | ケースB:競合が配信している |
|---|---|---|
| 停止後4週で減った全体の売上 | 16万円 | 40万円 |
| 指名の広告経由の売上(約71.5万円)に占める割合 | 約22% | 約56% |
| 増分のACOS(約5.1万円÷減った売上) | 約32.1% | 約12.8% |
| 損益分岐ACOS 35%との比較 | 内側だが境目に近い | 十分内側 |
表の停止後の数字は説明用の架空の数字です。前提の広告費と広告経由の売上は、診断サンプルの架空の会社(K社)の例です。
ケースA(競合が自社ブランド名に広告を配信していない)では、停止後4週で全体の売上が16万円減ったとします。指名の広告経由の売上のうち、広告で増えていたのは約22%(160,000÷714,530)で、残りは広告が無くても自然検索から買われていたことになります。増分のACOSは約32.1%(51,286÷160,000)で、損益分岐の35%の内側ですが境目に近い結果です。利益で見ると、減った売上16万円×利益率35%=5.6万円が、使わずに済んだ広告費約5.1万円をわずかに上回るだけです。続ける判断になりますが、入札を下げた検証を足して、より少ない広告費で同じ売上を保てるかを確認する価値があります。
ケースB(競合が配信している)では、停止後4週で全体の売上が40万円減ったとします。自然検索から買っていた人の一部も、検索結果の上部に表示された競合の広告に流れた想定です。広告で増えていたのは約56%(400,000÷714,530)、増分のACOSは約12.8%(51,286÷400,000)で、損益分岐の十分内側です。続ける判断になります。
なお、16万円の減少は、K社の4週あたりの全体の売上(約457万円)の約3.5%にとどまります。差が小さいほど、ふだんの上下に埋もれやすくなるため、前の章で見積もった件数と期間が足りているかが判断の前提になります。実際の検証では、12か月平均の換算ではなく、停止前4週の実績を基準にします。
検証の後:続ける・入札を下げる・停止するの判断と、ブランド防衛の選択肢
増分のACOSが損益分岐の十分内側なら続け、境目に近ければ入札を下げて露出を残し、外側なら停止します。どの判断でも、競合の出稿状況が変われば結果も変わるため、再検証のきっかけを決めておきます。
増分のACOSの位置で、3つに分かれる
増分のACOSは、損益分岐ACOSと比べてどこにあるか
- 十分内側続ける増分のACOSを記録し、競合の出稿状況が変わったら再検証する
- 境目に近い入札を下げて露出を残す使わずに済んだ広告費を、損益分岐の内側の一般語などへ配分するかを検討する
- 外側停止する競合が配信し始めていないかを定期的に確認する
- 十分内側:続けます。管理画面のACOSではなく、検証で出した増分のACOSを記録しておき、競合が自社ブランド名に広告を配信し始めた・やめたなど、出稿状況が変わったら再検証します。
- 境目に近い:入札を下げて露出を残します。使わずに済んだ広告費を、一般語など損益分岐の内側にあるキャンペーンへ配分するかを検討します。
- 外側:停止します。そのうえで、競合が自社ブランド名に広告を配信し始めていないかを、前の章の方法(実際の検索と検索用語インプレッションシェアレポート)で定期的に確認します。
競合が配信していて、指名の検索結果の上部を確保したい場合の公式の選択肢として、スポンサーブランド広告の「シェア・オブ・ボイスの確保」があります。2025年10月22日のお知らせによれば、ブランドキーワードの検索結果上部のスポンサーブランド広告の掲載枠を、前払いの固定価格で確保できる機能で、日本も対象です。オークションとは別の買い方になるため、使う場合も、確保した期間とそうでない期間の全体の売上を比べて評価します。
なお、広告をきっかけにブランドが検索された回数を示す「ブランド検索数」などの指標もあります。ただし公式のお知らせでは、これらの指標はスポンサープロダクト広告では使用できないとされており、指名の広告を停止したときに残る売上を示す指標でもありません。
指名を含めたアカウント全体は、TACOSを月ごとに並べて見ます。見方はAmazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法で扱っています。
- Amazon Ads「検索結果上部での露出度とつながりを高める」2025年10月22日
- Amazon Ads「ブランド検索指標の強化」2025年10月1日
TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること
この記事で扱った、キャンペーンの種類ごとのACOS、全体の売上に対する広告費、管理画面の数字だけでは判断できないものの検証の方法は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で毎回確認している項目です。

診断で確認する項目には、「スポンサープロダクト広告・スポンサーブランド広告・ディスプレイ広告の分け方と、それぞれのACOS(広告費÷広告経由の売上)」と「広告以外を含む全体の売上に対する広告費(TACOS)」が含まれます。改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)。
指名の広告の検証そのものを依頼したい場合は、Amazon広告のお試し運用から始められます。「ブランド名・商品名で検索されたときの広告」のような施策を、1施策・1か月で5万円・税別でお預かりします。
詳しくは診断ページへ。
よくある質問(FAQ)
Q01Amazon広告で自社ブランド名(指名)の広告は必要ですか?
管理画面のACOS・ROASだけでは判断できません。
広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるためです。競合が自社ブランド名に広告を配信しているかを確認したうえで、停止または入札を下げて全体の売上の減り方を計測し、損益分岐と比べて判断します。
Q02指名の広告を停止すると、競合に売上を取られませんか?
競合が自社ブランド名に広告を配信している場合は、その可能性があります。
停止の前に、実際の検索結果と検索用語インプレッションシェアレポートで、他の広告主が同じ語に広告を配信しているかを確認します。
Q03検証はどのくらいの期間が必要ですか?
停止前と停止後を同じ長さ(例:4週ずつ)で比べます。
出品者のスポンサープロダクト広告のルックバックウィンドウは7日間のため、停止直後の7日は比較から外します。必要な期間は注文の件数によって変わります。
Q04指名の広告を停止しても、広告が表示されることがあるのはなぜですか?
指名以外のキャンペーン(オートや一般語の部分一致など)が、ブランド名を含む検索語句にも広告を表示していることがあります。
検索ワードレポートで確認し、検証の期間中にそれらのキャンペーンへ除外キーワードを設定するかを決めます。
Q05停止せずに検証する方法はありますか?
入札を段階的に下げる、掲載枠ごとの入札額の調整で検索結果の最上部への引き上げを外す、などで露出を減らし、全体の売上の変化を見る方法があります。
停止より差が小さくなるため、判断に必要な期間は長くなります。
Amazon広告の指名の広告は、停止して減った全体の売上から増分のACOSを出して判断する|まとめ
Amazon広告の指名(自社ブランド名)の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるため、数字が良くても要否は判断できません。まず、競合が自社ブランド名に広告を配信しているかと、オートや部分一致のキャンペーンが指名の検索を拾っていないかを確認し、在庫切れやセールと重ならない期間を選びます。そのうえで停止するか入札を下げ、広告と自然検索を合わせた全体の売上を同じ長さの期間で比べます(停止直後の7日は外す)。減った売上から増分のACOSを出し、手数料などを引いた後の利益率から出した損益分岐ACOSと比べて、続ける・入札を下げる・停止するを決めてください。
この記事のポイント
- 指名(自社ブランド名)の広告のACOS・ROASには、広告が無くても自然検索から買われていた売上が含まれるため、数字が良くても要否は判断できない(診断サンプルの架空の会社K社は指名のACOS 7.2%・ROAS 13.93)。
- 検証の前に、競合が自社ブランド名に広告を配信しているか(ブランド防衛の要否)と、オートや部分一致が指名の検索を拾っていないかを確認する。
- 比べるのは広告経由の売上ではなく、広告と自然検索を合わせた全体の売上。停止前と停止後を同じ長さで比べ、停止直後の7日(ルックバックウィンドウの残り)は外す。
- 減った売上から増分のACOS(使わずに済んだ広告費÷減った売上)を出し、手数料などを引いた後の利益率から出した損益分岐ACOSと比べる。
- 全面的な停止が難しい場合は、入札を下げる・掲載枠ごとの入札額の調整を外すなどで段階的に検証する。