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計測と評価

指名キーワードの広告は必要か。停止テストで確認できる条件と、P-MAXが同じ検索を拾う問題

社名や商品名で検索した人に出す広告は、ROASが高く出ます。一方で「この人たちは広告が無くても、自然検索の1件目から来るのではないか」と考えたことはないでしょうか。

たとえば社名で検索した人の多くは、広告が無くても、その下にある自社サイトをクリックしそうに見えます。一度停止して比べれば分かりそうですが、停止した翌週に申込が減らなかったとしても、それだけで「不要」と判断してよいとは限りません。

そこでこの記事では、停止して比べるテストで差を確認できる条件(必要な件数)、P-MAXが指名検索を拾っている場合の注意点、停止せずに確認できることとできないことを順に整理します。

対象は、Google広告を自社で運用している担当者と、運用を外部に任せていて指名キーワードの広告費の扱いを確認したい担当者です。

Google広告のアカウント診断で、検索語句と配信の内訳を確認している立場から解説します。

【結論】指名キーワードの広告が必要かは、件数が足りれば停止テストで確認できる

指名キーワードの広告が必要かどうかに、業界共通の答えはありません。停止して比べれば確認できますが、確認できるのは「ふだんの週ごとの上下より大きい差」だけです。

要約:件数が少ないアカウントでは、停止しても差が上下に埋もれて判断できません。その場合は、停止せずに確認できる指標(競合の出稿状況、自然検索からのクリック、広告の表示割合)から判断します。

停止テストに進む前に、次の3つを確認します。

  1. 件数:自社の件数で、停止による減り方を検出できるか
  2. P-MAX:検索の指名キャンペーンを停止したとき、P-MAXが同じ検索に広告を出さないか
  3. 停止しない方法:件数が足りないとき、管理画面のどのレポートで何が分かるか

以下、この順に見ていきます。

指名キーワードの広告で、ROASからは判断できないこと

指名キーワードの広告のROASには、広告が無くても購入した人の売上も含まれます。そのため、ROASが高いことは「広告を出したから増えた売上(増分)」が大きいことを示していません。

診断サンプルの例:指名のROASは25.9

診断サンプルの架空の会社(B社・アウトドア用品のEC)の例です。B社の「検索_指名」キャンペーンは、9月の広告費が18,000円、広告経由の売上が410,000円でした。12か月分の検索語句を層に分けて集計すると、指名の層(34語)のROASは25.9です(いずれも診断サンプルの架空の数字です)。

ほかの層と比べると突出して高い数字ですが、このうちどれだけが「広告が無くても自然検索から来て買っていた人」の売上なのかは、ROASからは読み取れません。社名で検索する人の中には、検索した時点で購入先を決めている人もいるためです。

Googleの研究が示す「自然検索1位のときの増分」

Googleは、検索広告を一時停止した広告主のデータ(390件の停止研究)をまとめた分析を公開しています。その分析では、自社サイトが自然検索で1位に表示されている検索で、広告クリックのうち増分にあたるのは平均でおよそ50%でした。

ただし、この数字を自社に当てはめる目安として使うことはできません。理由は3つあります。

  • 2012年に公開された、Google自身による研究です
  • 対象はクリックで、コンバージョンではありません
  • 390件の停止研究をまとめた平均で、個々の広告主の値ではありません

分かるのは「自然検索で1位でも、広告クリックの一部は広告が無ければ発生しなかった可能性がある」という方向だけです。自社でどれだけかは、比べて確認するしかありません。ROASが高く出る理由の詳しい説明は、DOREGAの「指名検索広告のROASが高く出る理由と、増分で判断する方法」で扱っています。

停止して比べるテストで差を検出するのに必要な件数

停止テストで判断できるのは、停止した期間の減り方が、ふだんの週ごとの上下より大きいときだけです。件数が少ないアカウントほど週ごとの上下は大きく、停止による差が埋もれます。

コンバージョンの件数は、何も変えていなくても週ごとに上下します。たとえば週に25件前後のアカウントなら、20件の週もあれば30件の週もあるのが普通です。この状態で停止した週が22件だったとしても、それが停止の影響か、ふだんの上下かは区別できません。

件数ごとの「ふだんの上下」の目安

件数が偶然で上下する幅は、おおよそ件数の平方根に比例します。この一般的な目安を使って、週の件数ごとに上下の幅を概算すると次のようになります(説明用の架空の計算です。季節や販促による変動は含んでいません)。

週の件数ふだんの上下(概算)割合にすると検出できる減り方の目安
25件±10件前後約±40%40%を超える減少
100件±20件前後約±20%20%を超える減少
400件±40件前後約±10%10%を超える減少
1,600件±80件前後約±5%5%を超える減少

(表の数字は説明用の架空の計算です。平方根の2倍を上下の幅とした概算で、実際の幅は自社の過去データで確認します)

前の節で見たとおり、指名キーワードの広告を停止した影響は、指名経由の件数の一部にとどまる可能性があります。仮に影響が1割だったとすると、週400件程度の件数が無ければ、上下の幅の中に収まってしまいます。検出したい差が小さいほど、必要な件数は多くなります。

件数が足りるかを、停止する前に確認する手順

実際の上下の幅は、季節や販促の影響が加わるため、上の表より大きくなるのが一般的です。自社の値は、停止前の過去データから次の手順で確認します。

  1. 過去12〜26週について、指名検索経由のコンバージョン件数を週ごとに並べる
  2. 平均と、最も多い週・最も少ない週の差を見て、ふだんの上下の幅を確認する
  3. 想定する減り方(たとえば1割)がその幅の中に収まるなら、停止テストでは判断できないと事前に分かる

3で「収まる」と分かった場合は、停止テストを実施しても結論は出ません。後半の「停止せずに確認できること」に進みます。ふだんの変動幅の計測の仕方は、DOREGAの「テレビCMの削減テスト、中止の判定基準はどう決める?」でも同じ考え方で解説しています。

地域や期間を分けて比べる方法

全国で一斉に停止すると、停止した週と前の週を比べることになり、季節や販促の変化と区別できません。比較の精度を上げる分け方として、次の2つがあります。

  • 地域を分ける:一部の地域だけで指名キーワードの広告を停止し、配信を続けた地域と同じ期間で比べる
  • 期間を交互にする:停止と再開を数週間ずつ繰り返し、停止した期間と配信した期間を比べる

どちらも、件数の不足は解消しません。地域を分ければ、比べる件数はそれぞれさらに少なくなります。

なお、管理画面の[テスト]ページは、キャンペーンの設定を変えた場合の効果を元のキャンペーンと比べる機能です。広告を出さない状態と比べる組み方は、このヘルプには説明がありません。

停止の影響は停止した週には出ない(判定の期間)

申込や購入までに日数がかかる商材では、停止した時点で検討中の人が残っているため、最初の週はほとんど減らないことがあります。1週間の数字で判定すると、減り方を小さく見積もります。

そのため、停止テストの判定の期間は、ふだんの検討期間を含む長さにします。あわせて「どの程度減ったら再開するか」という条件も、停止する前に決めておきます。停止してから条件を決めると、数字を見たあとで都合のよい解釈をしやすくなるためです。影響が出るまでの時間差と、停止テストの設計は、DOREGAの指名検索広告の停止テストの設計を扱ったページで詳しく解説しています。

検索の指名キャンペーンを停止しても、P-MAXが同じ指名検索を拾う

検索キャンペーンに、検索語句と同じ指名キーワードがあると、その検索ではP-MAXより検索キャンペーンが優先されます。逆に、検索の指名キャンペーンを停止すると、その指名検索にP-MAXの広告が出られるようになります。

この状態で停止テストをすると、比べているのは「広告あり/広告なし」ではなく「検索キャンペーンの広告/P-MAXの広告」です。指名キーワードの広告が必要かどうかの答えにはなりません。

診断サンプルの例:P-MAXが指名の受け皿になっている構成

診断サンプルの架空の会社(B社)の例です。B社のアカウントでは「P-MAX_メイン」キャンペーンが、「主力(指名・商品の受け皿)」の役割で配信されています(診断サンプルの架空の構成です)。この構成で「検索_指名」だけを停止しても、指名検索への広告は停止しません。停止した分はP-MAXの配信に移る可能性があります。

P-MAXが指名検索を拾っているかを確認する

P-MAXに検索語句レポートがあり、キャンペーンの[分析情報とレポート]から[検索語句]を開き、[P-MAX の検索語句とランディング ページ]を選ぶと表示されます。ここに社名や商品名を含む語句が並び、成果が付いていれば、P-MAXは指名検索にも配信しています。

検索語句を自動でまとめた「検索語句に関する分析情報」でも、P-MAXについて検索カテゴリごとのクリック数・コンバージョン数を確認できます。

停止テストの前に、P-MAXにブランド除外を設定する

停止テストの期間中に「広告なし」の状態を作るには、P-MAXにも自社ブランドの除外を設定する必要があります。設定にあたっては、ヘルプに書かれている次の点を確認しておきます。

  • P-MAXでは、ブランドの除外は検索広告枠・ショッピング広告枠・YouTube検索広告枠にだけ適用される
  • 除外したブランドの検索結果に、ショッピング広告だけは表示させる選択肢がある(テストの目的に合わせて決める)
  • ブランド設定はキャンペーンのリーチを制限し、パフォーマンスが低下する可能性がある

ショッピング広告を表示させたままにすると、停止テストは「ショッピング広告だけが残った状態」との比較になります。何と何を比べているのかを、テストの計画に書いておきます。テストが終わったら、ブランド除外を残すかどうかもあらためて判断します。

停止せずに確認できること、確認できないこと

件数が足りないアカウントでは、停止テストの代わりに、管理画面のレポートで「広告が無いと何が起きそうか」を確認します。使うのは次の3つです。

レポート判断できること判断できないこと
オークション分析指名の語に競合の広告が出ているか競合に流れる件数
有料と自然検索のレポート同じ語で、自然検索からもクリックされているか広告を停止したときに自然検索へ移る割合
インプレッションシェア指名の検索で、広告がどれだけ表示されているか表示されなかった検索での申込の有無

オークション分析:指名の語に競合が広告を出しているか

オークション分析レポートでは、同じオークションに参加した他社の広告との重なりを確認できます。検索キャンペーンでは、キーワード単位でインプレッションシェア・広告の重複率・優位表示シェア・上部掲載率などが表示されます。

指名キーワードで重複率の高い他社が見つかれば、広告を停止すると、検索結果の上部をその会社の広告に譲ることになります。逆に、他社が見当たらなければ、その懸念は小さいと判断できます。

Search ConsoleをGoogle広告にリンクすると、同じ検索語句について、テキスト広告のクリック数と、自然検索のクリック数・表示された検索の数を並べて確認できます。

指名の語で自然検索のクリックも十分にあれば、広告を停止したあとも自然検索から来る人は一定数いると考えられます。反対に、自然検索のクリックがほとんど無い語は、広告を停止するとクリックを失いやすい語です。なお、このレポートで数えられるのはテキスト広告だけで、ショッピング広告は含まれません。自然検索とのクリックの移り方の数え方は、DOREGAの「指名検索広告と自然検索は食い合う——移動しているクリックの数え方」で解説しています。

インプレッションシェア:指名の検索でどれだけ広告が表示されているか

インプレッションシェアは、広告を表示できた回数のうち、実際に表示された回数の割合です。キーワード単位でも確認できます。

診断サンプルの架空の会社(B社)の例では、「B社 ポータブル電源」という指名の語で、広告が表示された割合は88%でした(診断サンプルの架空の数字です)。すでに表示されていない検索が一部あり、そこで申込が減っていないかを見れば、広告を絞った場合の比較材料にできます。

3つのレポートは、どれも「広告が無かったら売上がいくら減るか」を示しません。金額で知りたい場合は、件数の足りる停止テストか、過去のデータからの統計的な推定が必要です。

指名キーワードの広告の扱いを決める順番

ここまでの内容を、判断の順番にまとめます。「停止すべき」「続けるべき」と一律に決めるのではなく、確認できる順に進めます。

  1. P-MAXが指名検索を拾っていないか、検索語句レポートで確認する
  2. 指名の語に競合が広告を出しているか、オークション分析で確認する
  3. 自社の件数で、ふだんの上下より大きい差を検出できるか、過去12〜26週のデータで確認する
  4. 足りる場合は、P-MAXにブランド除外を設定したうえで停止テストを実施する(判定の期間と再開の条件は停止前に決める)
  5. 足りない場合は、停止せずに確認できるレポートから判断し、広告費の一部だけを減らして推移を見る

5の「一部だけ減らす」は、結論を出すための方法ではなく、損失を限定しながら様子を見るための方法です。減らした期間に件数が変わらなかったとしても、ふだんの上下の中であれば「影響が無かった」とは判断できない点は、停止テストと同じです。

TAMKOのGoogle広告アカウント診断で確認すること

TAMKOでは、Google広告のアカウントを診断します。料金は無料(毎月2社まで)。検索広告・P-MAX・YouTube・ディスプレイ・ショッピングまでキャンペーンの種類ごとに確認し、続けてよいか・やめるべきものはあるか・広告で伸ばせるかに根拠を添えて答えます。

この記事で例に使ったB社は、診断の報告書の例に登場する架空の会社です。報告書の例では、検索語句を層(指名・商品と比較・悩みと用途など)に分けて、層ごとの費用とROASを並べています。診断のあいだ、設定には触れません。月の広告費が10万円以上のアカウントが対象です。

運用まで任せたい場合は、1施策・1か月で5万円(税別)のお試し運用があります。対象は、その施策の広告費が月50万円までです。お試し運用で預かる施策の例には、「指名を取りこぼさない(社名・商品名で検索されたときの広告)」も含まれます。

よくある質問(FAQ)

Q01指名キーワードの広告は、自然検索で1位なら不要ですか?

1位であることだけでは判断できません。

指名の語に競合が広告を出していれば、広告を停止すると検索結果の上部を競合に譲ることになります。オークション分析で競合の出稿を確認し、有料と自然検索のレポートで、同じ語で自然検索からもクリックされているかを確認してから判断します。

Q02指名の広告を1週間停止して申込が減らなければ、不要と判断してよいですか?

1週間では判断が早すぎます。

検討期間のある商材では、停止の影響は遅れて出ることがあります。また、件数が少ないと、減っていてもふだんの上下に埋もれて検出できません。

Q03検索の指名キャンペーンを停止したのに、指名の広告費が減りません。なぜですか?

P-MAXが同じ指名検索に配信している可能性があります。

検索キャンペーンを停止すると、その検索にはP-MAXの広告が出られるようになります。P-MAXの検索語句レポートで、社名や商品名を含む語句が並んでいないかを確認してください。

Q04停止テストに必要な件数は何件ですか?

一律の件数はありません。

自社の週ごとの件数の上下と、検出したい減り方の大きさで決まります。停止する前の過去12〜26週のデータで、ふだんの上下の幅を確認できます。

Q05P-MAXにブランド除外を設定すると、P-MAXの成果は下がりますか?

下がる可能性があります。

Googleのヘルプでは、ブランド設定はキャンペーンのリーチを制限し、パフォーマンスが低下する可能性があると説明されています。停止テストの期間だけ設定し、終了後に残すかを判断する方法もあります。

指名キーワードの広告が必要かは、件数とP-MAXを確認してから停止テストで判断する|まとめ

指名キーワードの広告が必要かどうかに、業界共通の答えはありません。ROASが高いことは、広告が無かった場合との差を示していないため、比べて確認する必要があります。

ただし、停止テストで確認できるのは、ふだんの週ごとの上下より大きい差だけです。停止する前に、過去のデータで件数が足りるかを確認し、P-MAXが指名検索を拾っていないかを確認し、ブランド除外を設定してから実施します。件数が足りない場合は、オークション分析・有料と自然検索のレポート・インプレッションシェアで、停止せずに確認できることから判断します。

この記事のポイント

  • 指名キーワードの広告が必要かに業界共通の答えは無い。ROASが高いことは、広告が無かった場合との差を示していない。
  • 停止テストで確認できるのは、ふだんの週ごとの上下より大きい差だけ。件数が少ないアカウントでは、停止しても判断できない。
  • 停止の影響は停止した週には出ないことがある。判定の期間と再開の条件は停止前に決める。
  • 検索の指名キャンペーンを停止しても、P-MAXが同じ指名検索を拾う。停止テストの前にブランド除外を設定しないと「広告なし」との比較にならない。
  • 件数が足りない場合は、オークション分析・有料と自然検索のレポート・インプレッションシェアで、停止せずに確認できることから判断する。