Google広告の成果が落ちたら、設定を変える前に何を確認する?リスティング広告を改善する点検の6項目と順番
CPAが上がった、売上が増えない。そうしたとき、多くの担当者はまず広告文を書き換えたり、入札単価を変えたりしたくなります。しかし、その前に確認しておくべきことはないでしょうか。
たとえば、アウトドア用品のECを営むB社は、ある月の広告費28万円のうち7万円を動画のキャンペーンに使い、そのキャンペーンの広告経由の売上は0円でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。数字だけを見れば停止の候補ですが、動画は購入で評価するキャンペーンではないため、この数字だけで停止を決めることはできません。反対に、コンバージョンの計測設定に誤りがあれば、どのキャンペーンの数字も判断の材料になりません。
そこでこの記事では、設定を変える前に自分で点検できる6項目(配信状態・計測・キャンペーンの種類ごとの評価指標・検索語句・配信面・予算の損失)を、確認する順番、管理画面のどこを見るか、データだけでは判断できないときの検証方法とあわせて整理します。
対象は、Google広告を自社で運用している担当者と、運用を任せていて数字の見方を確認しておきたい担当者です。
TAMKOでは、この6項目を含むGoogle広告のアカウント診断を行っており、記事中のB社の例はその報告書の例(架空の会社)から取っています。
【結論】リスティング広告の改善は、設定を変える前の「点検の順番」から始める
リスティング広告の改善は、広告文や入札を変える前に、①配信状態→②計測→③キャンペーンの種類ごとの評価指標→④検索語句→⑤配信面→⑥予算の損失、の順で点検することから始めます。上流の項目に誤りがあると、下流の数字の比較そのものが成り立たないためです。
順番に意味があるのは、各項目が前の項目を前提にしているからです。配信が停止していれば、その期間の成果の低下は広告の中身とは関係がありません。配信が正常でも、コンバージョンの計測に購入以外の行動が混ざっていれば、CPAは実際より低く、ROASは実際より高く見えます。さらに、自動入札はその数字を学習するため、購入につながらない行動を増やす方向へ入札を調整していきます。この状態でキャンペーン同士のCPAを比べても、比べている数字自体が実態と合っていません。
計測が正しいと分かってはじめて、キャンペーンの種類ごとに評価指標を決め、そのうえで検索語句・配信面・予算の損失という「費用の使われ方」の点検に進めます。下の表は、6項目と管理画面で見る場所をまとめたものです。
| 順番 | 点検項目 | 主に見る場所 |
|---|---|---|
| 1 | 配信状態 | キャンペーン一覧の「ステータス」列、変更履歴、Merchant Centerの商品のステータス |
| 2 | 計測 | コンバージョン アクションの一覧(ステータス、メインかサブか) |
| 3 | 種類ごとの評価指標 | キャンペーン一覧(種類別)、P-MAXのチャネル パフォーマンス |
| 4 | 検索語句 | 分析情報とレポート > 検索語句 |
| 5 | 配信面 | 分析情報とレポート > 広告が表示された場所、P-MAXのチャネル パフォーマンス |
| 6 | 予算の損失 | 検索広告のインプレッション シェア、インプレッション シェア損失率(予算)・(ランク) |
なお、管理画面には「最適化スコア」という指標があります。これはアカウントの設定がどの程度最適化されているかを0〜100%で示す推定値で、改善案を適用または非表示にすると更新されます。改善案は入札戦略で設定した目標に沿って提示されるため、その目標のコンバージョンが実態とずれていれば、スコアが高くても事業の成果とはずれます。最適化スコアは点検の代わりではなく、点検を終えたあとに参考にする指標と考えるのが安全です。
点検1:配信状態|キャンペーン・広告・商品は配信できる状態か
成果が落ちたときに最初に確認するのは、配信量そのものが減っていないかです。費用が0円になったキャンペーンや、表示回数が急に減ったキャンペーンがないかを、ステータスの列と変更履歴で確認します。
キャンペーンと広告のステータス
キャンペーン一覧の「ステータス」列には、配信できる状態かどうかが表示されます。主な表示と意味は次のとおりです。
| ステータス | 意味 |
|---|---|
| 有効 | 広告を表示できる状態 |
| 有効(制限付き) | 予算や入札戦略による制限で、広告の掲載が抑えられている状態 |
| 対象外 | 広告グループ・広告・キーワードがない、またはすべて一時停止・削除されている状態 |
| 一時停止 | 広告は掲載されず、費用も発生しない。再開できる |
| 保留中・終了 | 開始日前、または終了日を過ぎて配信されていない状態 |
「有効」以外の表示があれば、成果の低下の原因はまずそこにあると考えます。広告そのものがポリシーの審査で不承認になっている場合も配信されません。Googleのヘルプでは、広告が表示されない主な原因として、アカウントの停止や請求の問題、キャンペーンの期間設定、広告の不承認、予算の不足、目標の入札単価が厳しすぎる設定、ターゲティングの絞りすぎ、コンバージョン トラッキングの問題などが挙げられています。新しく作った広告や編集した広告は審査を経てから配信されるため、変更の直後に表示回数が落ちることもあります。
ショッピング広告・P-MAXの対象商品
商品を扱う広告では、キャンペーンが「有効」でも、商品側の状態で配信されないことがあります。Merchant Centerの商品には「承認済み」「制限付き」「不承認」などのステータスがあり、「不承認」の商品はGoogleに表示されません。「制限付き」は表示はされるものの、一部の国や一部の広告でしか掲載されない状態です。在庫切れの商品も配信の対象外になります。売上の大きい商品が不承認になっていないか、Merchant Centerの「注意が必要」の欄を合わせて確認します。
変更履歴で「いつ・何を変えたか」を成果の変化と並べる
変更履歴では、過去2年分の変更(予算の金額、キャンペーンの一時停止、キーワードの編集など)を時系列で確認でき、変更した人のメールアドレスや、自動で行われた変更であればシステム名も表示されます。表示回数やコンバージョンの推移と並べて見られるため、「成果が落ち始めた日の前後に何を変えたか」を特定するのに使えます。成果の変化の理由を推測で補う前に、この記録で事実を押さえておきます。
点検2:計測|コンバージョンは正しく記録されているか
配信が正常なら、次はコンバージョンの計測です。コンバージョン アクションが正しく記録されているか、そして入札に使われる「メイン」のアクションに購入以外の行動が混ざっていないかを確認します。
コンバージョン アクションのステータス
コンバージョン アクションの一覧には、計測の状態がステータスとして表示されます。Googleのヘルプでは、次のような区分が説明されています。
| ステータス | 意味 |
|---|---|
| 有効 | 想定どおりに計測できている |
| 要確認 | 対応が必要な項目があるが、記録は完全には停止していない |
| 設定が不適切 | 設定の誤りやタグの破損で、記録が完全に停止している |
| コンバージョンを待機中 | 過去7日間、コンバージョンが記録されていない |
「設定が不適切」は、サイトの改修でタグが外れたときなどに起きます。この状態のまま入札を自動に任せていると、記録されない期間の成果がゼロとして扱われます。「コンバージョンを待機中」は、作成直後やトラフィックの少ないアクションでも表示されるため、ただちに誤りとは限りませんが、購入のように毎日発生するはずのアクションで表示されていれば原因を調べます。
メインとサブの設定(入札に使う行動と、参考に見る行動を分ける)
コンバージョン アクションには「メイン」と「サブ」の区分があります。メインのアクションはレポートの「コンバージョン」列に計上され、入札の最適化にも使われます。サブのアクションは「すべてのコンバージョン」列にだけ計上され、入札には使われません(カスタム目標を使っている場合は例外で、含まれるアクションはすべて入札に使われます)。
ここで確認したいのは、メインに購入以外の行動が入っていないかです。カートへの追加や特定ページの閲覧などがメインに入っていると、「コンバージョン」列の件数が実際の購入より多くなり、CPAは低く、ROASは高く見えます。参考として見たい行動はサブに置き、メインは事業の成果に直結する行動(ECなら購入、リード獲得なら問い合わせや資料請求)に絞るのが基本です。
自動入札が「何を増やそうとしているか」を確認する
スマート自動入札は、過去のコンバージョンのデータと、デバイス・地域・時間帯・検索語句などのシグナルをもとに、オークションごとにコンバージョン数やコンバージョン値を最適化します。つまり、自動入札が増やそうとするのは「メインに設定した行動」です。メインにカート追加が入っていれば、自動入札はカート追加の多い検索や配信先へ費用を振り向けます。入札戦略の設定画面で、どの目標(どのコンバージョン アクション)に対して最適化しているかを確認しておきます。
点検3:キャンペーンの種類ごとに評価指標を分ける
検索・P-MAX・動画(デマンド ジェネレーション)・ディスプレイは、アカウントの中で担っている役割が違います。同じCPAやROASで横に並べて優劣を決めるのではなく、種類ごとに何で評価するかを先に決めます。
B社のキャンペーンは6本です(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。
| キャンペーン | 種類 | 役割 | 費用 | 広告経由の売上 |
|---|---|---|---|---|
| P-MAX_メイン | P-MAX | 主力(指名・商品の受け皿) | 6.2万円 | 82万円 |
| 検索_指名 | 検索 | 指名の防衛 | 1.8万円 | 41万円 |
| 検索_商品の語 | 検索 | 比べている人の獲得 | 4万円 | 15万円 |
| 動画_ブランド | デマンド ジェネレーション | 認知(ブランドを探す人を増やす) | 7万円 | 0円 |
| P-MAX_ポータブル電源 | P-MAX | 新商品の立ち上げ | 5万円 | 7万円 |
| ディスプレイ_リマーケティング | ディスプレイ | 再訪の後押し | 4万円 | 9万円 |
評価の基準線には、損益分岐ROASを置きます。損益分岐ROASは「1÷粗利率」で求められ、広告経由の売上から得られる粗利がちょうど広告費と同じになるROASです。B社の粗利率は35%なので、損益分岐ROASは約2.9です(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。ROASがこれを下回るキャンペーンは、広告経由の売上だけで見れば粗利で広告費をまかなえていないことになります。ただし、この基準線をそのまま当てはめてよいのは、購入を直接の目的にしたキャンペーンだけです。
検索広告は「指名」と「一般の語」を分けて見る
検索広告は、社名や商品名で検索する人(指名)と、商品の種類や用途で検索する人(一般の語)で、成果がまったく違います。B社では、検索_指名が費用1.8万円で売上41万円、検索_商品の語が費用4万円で売上15万円でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。2本を合算すると平均のROASは高く見えますが、一般の語のキャンペーンだけを見ればROASは約3.8で、損益分岐の約2.9との差はそれほど大きくありません。指名はもともと購入の意思が強い人の検索なので、指名を含めた平均で一般の語の成果を判断しないよう、キャンペーンを分けて評価します。
P-MAXはキャンペーン全体の目標に対して評価する
P-MAXは、検索・YouTube・ディスプレイ・Gmailなど複数のチャネルに1つのキャンペーンで配信します。チャネル パフォーマンス レポートで、チャネルごとの費用や成果を確認できますが、個々のチャネルはキャンペーンの目標や予算の設定に沿って配分されているため、評価はまずキャンペーン全体の目標に対して行います。
新商品の立ち上げに使うP-MAXは、通常の基準とは別に考えます。B社のP-MAX_ポータブル電源は費用5万円で売上7万円、ROASは1.4でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。立ち上げの時期は売上が出にくいため、損益分岐ROASだけで判定すると早すぎる停止になりかねません。一方で、いつまでも基準を下回ったまま続けるのも避けたいところです。始める時点で「いつまでに、どの数字に届かなければ縮小するか」という期限と判定条件を決めておきます。
動画・デマンド ジェネレーションは購入では評価しにくい
B社の動画_ブランドは、費用7万円に対して広告経由の売上が0円でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。ただ、この数字は「効果がない」ことを示しているとは限りません。動画を見た人がその場で広告をクリックして購入することは少なく、後日ブランド名で検索して購入した場合、その購入は検索広告やP-MAXの成果として記録されるためです。
このため、動画の評価は管理画面の購入の数字だけでは判断できません。判断するには、配信する地域と配信しない地域、または配信する期間と配信しない期間を分け、指名検索の件数や新規購入者数がどう変わるかを比べる方法があります。比べる前に、どの指標がどれだけ変われば継続とするかを決めておくと、結果の解釈で迷いません。
ディスプレイのリマーケティングは既存顧客の比率と表示頻度を確認する
リマーケティングは、一度サイトを訪れた人に広告を表示する配信です。ROASは高く出やすい一方で、もともと再訪して購入するつもりだった人に費用を使っている可能性があります。B社のディスプレイ_リマーケティングでは、広告経由の購入のうち既存顧客が64%を占め、1人あたりの表示頻度は28回でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。既存顧客の比率が高く、表示頻度も多い場合は、リストの条件(期間や除外するユーザー)とフリークエンシーの上限を見直す余地があります。
点検4:Google広告の検索語句|費用はどの層の検索に使われているか
検索広告の費用の使われ方は、登録したキーワードではなく、実際に検索された語句で見ます。語句を「悩み・用途」「商品・比較」「指名」「層が分からない検索」の層に分けると、費用がどこに配分されているかと、層ごとの成果が並べて見られます。
検索語句レポートの見方
検索語句レポートは、実際の検索で広告が表示された語句の一覧で、管理画面の「キャンペーン」から「分析情報とレポート」内の「検索語句」で開けます。広告主が設定するのはキーワードで、検索語句は利用者が実際に入力した語句です。部分一致やP-MAXでは、登録したキーワードと異なる語句でも広告が表示されるため、キーワード単位の成果だけでは費用の行き先が分かりません。
なお、検索の件数が十分でない語句は、データのプライバシーに関するGoogleの基準により、検索語句レポートに表示されないことがあります。レポートの語句の費用を合計しても、キャンペーン全体の費用と一致しないのはこのためです。
語句を層に分けて費用の配分を見る
語句を1つずつ見ていくと、数百、数千の行を前にして判断がつかなくなります。そこで、語句をいくつかの層に分類し、層ごとに費用の割合とROASを並べます。B社の例では、300語を次の4層に分けました。
| 層 | 語句の数 | 費用 | 費用の割合 | ROAS |
|---|---|---|---|---|
| 悩み・用途の層 | 96 | 46万円 | 27.9% | 0.9 |
| 商品・比較の層 | 118 | 64万円 | 38.8% | 3.3 |
| 指名の層 | 34 | 30万円 | 18.2% | 25.9 |
| 層が分からない検索 | 52 | 25万円 | 15.2% | 1.9 |
この表から、費用の約4分の1が、ROASが損益分岐の約2.9を大きく下回る「悩み・用途の層」に使われていることが分かります。語句を1つずつ見ていたのでは、この配分の偏りには気づきにくくなります。
悩み・用途の層のROASが低くても、停止すべきとは限らない
悩み・用途の層は、「キャンプ 寒さ対策」のように、まだ商品を決めていない人の検索です(語句は説明用の架空の例です)。こうした人は、その日のうちには購入せず、比較を経て後日、商品名や社名で検索して購入することがあります。その場合、購入は商品・比較の層や指名の層の成果として記録されるため、悩み・用途の層のROASは実際の貢献より低く見えます。
ROASだけで停止を決めると、後の購入につながっていた入口を閉じてしまう可能性があります。管理画面の数字だけでは判断できないため、検証するには、悩み・用途の層の配信を一部の期間や地域で減らし、商品・比較の層や指名の層の検索数と購入がどう変わるかを比べます。変わらなければ縮小の根拠になり、減るようであれば入口としての役割があると判断できます。
点検5:配信面|広告がどこに表示されたか
ディスプレイ・動画・P-MAXでは、検索結果以外の場所(アプリ、動画、ウェブサイトなど)に広告が表示されます。費用がどの面に使われたかを確認し、偏りが見つかったら、除外する前にその面からの成果を確認します。
ディスプレイ・動画の「広告が表示された場所」
ディスプレイと動画のキャンペーンでは、「分析情報とレポート」内の「広告が表示された日時と場所」から「広告が表示された場所」のタブを開くと、広告が掲載されたウェブサイト・アプリ・YouTubeのチャンネルや動画を確認できます。
B社の動画_ブランドでは、費用のうち58%がアプリの面で使われ、そのうち46%がゲームアプリでした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。アウトドア用品の認知を目的とした配信としては、意図した配信先と異なる可能性があります。
ただし、Googleのヘルプでは、プレースメントは数が多く、1か所あたりの表示回数が少なくなるため、レポート内の成果データは通常、統計的に有意ではないと注意されています。成果がよく見える面も悪く見える面も、偶然の変動である可能性があるということです。また、レポートを過度に信用して除外を重ねると、配信できる面が大きく狭まり、全体の成果が下がるおそれがあるとも書かれています。面の偏りを見つけたら、個々の面の成果ではなく、面の種類(アプリ・動画・ウェブサイト)ごとにまとめた費用と成果、さらに指名検索の推移を確認してから除外を判断します。
P-MAXのチャネル別の費用と成果
P-MAXでは、チャネル パフォーマンス レポートで、検索・YouTube・ディスプレイなどのチャネルごとに費用や成果を確認できます。費用の大半が特定のチャネルに偏っていないか、意図と違うチャネルに費用が使われていないかを見ます。
一方、P-MAXの「プレースメント レポート」は、広告が表示されたウェブページ・アプリ・YouTube動画と表示回数を確認するもので、Googleのヘルプではブランド保護のためのツールとして使い、成果の評価には使わないよう案内されています。成果の評価にはチャネル パフォーマンス レポート、掲載先の安全性の確認にはプレースメント レポート、と使い分けます。
点検6:予算の損失|インプレッションシェアから増額の余地を見る
インプレッションシェアの損失は、「予算による損失」と「広告ランクによる損失」に分けて読みます。予算による損失が大きくても、増額すべきかどうかは、平均のROASではなく、上乗せした分の粗利で判断します。
予算による損失と広告ランクによる損失の違い
インプレッションシェアは、広告が表示可能だった回数のうち、実際に表示された回数の割合です。表示されなかった分の理由は、2つの指標に分かれます。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 検索広告のインプレッション シェア損失率(予算) | 予算不足が原因で、広告が表示されなかった割合 |
| 検索広告のインプレッション シェア損失率(ランク) | オークションでの広告ランクの低さが原因で、表示されなかった割合 |
予算による損失が大きければ、予算を増やせば表示回数は増えます。一方、ランクによる損失が大きい場合は、予算を増やしても表示は増えにくく、入札単価や広告の品質の側に原因があります。どちらが大きいかで、取るべき対応が変わります。
B社では、一般の語のインプレッションシェアが15%、指名のインプレッションシェアが88%でした(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。一般の語にはまだ表示されていない検索が多く残っていることになります。キャンペーンのステータスが「予算による制限」になっている場合、管理画面には推奨予算が表示されることもあります。
増額の判断は「平均のROAS」ではなく「上乗せした分の粗利」で行う
ただし、表示の余地があることと、増額すべきことは別の問題です。予算を増やすと、それまで表示されていなかった、より購入の意思が弱い検索や、より高い単価のオークションにも広告が表示されるようになります。そのため、増額した分のROASは、それまでの平均より下がるのが一般的です。平均のROASが損益分岐を上回っていても、上乗せした分だけを見ると赤字になっていることがあります。
B社の例で見てみます。B社は11月のセール月に、広告費を通常の月の2.6倍まで増やしました。セール中は10%の値引きで粗利率が27.8%に下がるため、損益分岐ROASは約3.6に上がります(診断サンプルの架空の会社B社の例です)。この月の広告費を、増額の段階ごとに分けて試算したのが下の図です。
| 段階 | 広告費 | 広告経由の売上 | ROAS | 値引き後の粗利−広告費 |
|---|---|---|---|---|
| 通常の月と同じ額まで | 26万円 | 298.4万円 | 11.5 | 57.0万円 |
| 通常の1.5倍まで | 13万円 | 52.6万円 | 4.0 | 1.6万円 |
| 1.5倍を超えた上乗せ | 27万円 | 82.2万円 | 3.0 | −4.1万円 |
月全体で見れば、広告費66万円で十分な粗利が出ているように見えます。しかし、通常の1.5倍を超えて上乗せした27万円はROASが3.0で、損益分岐の約3.6を下回り、粗利から広告費を引くと−4.1万円でした。この部分は増額しないほうが利益は多く残り、その予算は通常の月の施策に配分する選択肢があります。
増額を検討するときは、予算による損失の大きさで余地を確認し、増額した分のROASを段階ごとに見積もり、損益分岐を下回る段階の手前で上限を決める、という順で判断します。
点検だけでは判断できないことと、その検証方法
6項目の点検で分かるのは、設定の誤りと、費用がどこに使われているかまでです。広告がなくても起きていた購入の割合や、動画・認知施策の売上への寄与は、管理画面の数字だけでは判断できません。その場合は、配信を分けた比較で検証します。
広告経由の購入のうち、広告がなくても起きた分
管理画面の「コンバージョン」は、広告をクリックまたは視聴した人の購入を記録したものです。その中には、広告がなくても検索結果の通常の枠やブックマークから購入していた人も含まれます。特に指名の検索やリマーケティングでは、この割合が大きくなりやすいと考えられます。広告によって増えた分(増分)を知るには、配信する期間・地域と配信しない期間・地域を分けて、全体の購入数の差を比べる方法があります。管理画面のROASと、広告によって増えた売上の考え方の違いは「増分売上・増分ROASとは」の記事で、配信を分けた比較の方法は「インクリメンタリティテストとMMMの使い分け」の記事で解説しています。
動画・認知施策の売上への寄与
動画やデマンド ジェネレーションの効果は、視聴から購入までの間に時間があり、購入は別の経路で記録されます。点検3で書いたとおり、評価するには、配信を地域や期間で分け、指名検索の件数と新規購入者数の推移を比べます。比較の期間は、商品の購入までにかかる期間より長く取ります。どの指標がどれだけ変われば継続とするかは、比較を始める前に決めておきます。
TAMKOのGoogle広告アカウント診断|6項目の点検を報告書にまとめる
TAMKOのGoogle広告アカウント診断は、この記事で紹介した点検を、検索広告・P-MAX・YouTube・ディスプレイ・ショッピングまでキャンペーンの種類ごとに行い、続けてよいか・やめるべきものはあるか・広告で伸ばせるかに根拠を添えて答えるサービスです。料金は無料(毎月2社まで)で、予算を決める方向けのエグゼクティブサマリー・運用する方向けの調査報告書・分析の明細(Excel)・オンラインの説明会1回をお渡しします。診断のあいだ、設定には触れません。月の広告費が10万円以上のアカウントが対象です。
この記事で使ったB社の数字は、診断の報告書の例(架空の会社)と同じものです。報告書の例のページで、実際の紙面を確認できます。設定の修正まで任せたい場合は、Google広告のお試し運用(1施策・1か月で5万円・税別)から始められます。対象は、その施策の広告費が月50万円までです。
よくある質問(FAQ)
Q01最適化スコアが高ければ、点検は不要ですか?
不要とは言えません。
最適化スコアはアカウントの設定がどの程度最適化されているかの推定値で、改善案は入札戦略の目標に沿って提示されます。目標に設定したコンバージョンに購入以外の行動が混ざっていれば、スコアが高くても事業の成果とずれることがあるため、計測の点検は別に行います。
Q02点検はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
目安として、配信状態と計測は設定を変えたときと週1回、検索語句・配信面・予算の損失は月1回です。
決まった基準はないため、設定を変える頻度と広告費の規模に合わせて決めてください。サイトの改修やタグの変更があった週は、計測を点検の対象に含めます。
Q03検索語句レポートにすべての語句が表示されないのはなぜですか?
検索の件数が十分でない語句は、データのプライバシーに関するGoogleの基準により、レポートから除外されることがあるためです。
除外された語句は、「検索語句に関するインサイト」では関連するテーマにまとめて分析されます。
Q04コンバージョンが少ないキャンペーンは、どう評価すればよいですか?
件数が少ない期間どうしを比べても、差が偶然によるものかは判断できません。
比べる期間を延ばす、指名検索の件数や新規購入者数など件数の多い指標と組み合わせる、始める前に期限と判定条件を決めておく、の3つで判断の精度を上げます。
Q05自分で修正するのと、運用を任せるのはどちらがよいですか?
点検で問題の場所が特定できれば、ステータスの対応やメインとサブの設定の見直し、除外キーワードの追加など、自社で修正できる項目は多くあります。
動画の寄与や増分のように、管理画面の数字だけでは判断できない項目が残る場合は、配信を分けた比較の設計と結果の読み方を含めて、自社の体制で対応できるかを基準に決めるとよいでしょう。
リスティング広告の改善は、6項目の点検で問題の場所を特定してから|まとめ
リスティング広告の改善は、広告文や入札を変える前の点検から始めます。順番は、配信状態→計測→キャンペーンの種類ごとの評価指標→検索語句→配信面→予算の損失です。上流の配信状態と計測に誤りがあると、CPAやROASの比較そのものが成り立たないため、まずここを押さえます。
そのうえで、キャンペーンの種類ごとに評価指標を決め、検索語句は層に分けて費用の配分を見て、配信面は偏りを確認してから除外を判断し、増額は上乗せした分の粗利で判断します。管理画面の数字で判断できないもの(広告による増分、動画の寄与、購入までに時間がかかる検索の評価)は、配信を分けた比較で検証します。
この記事のポイント
- リスティング広告の改善は、広告文や入札を変える前に、配信状態→計測→評価指標→検索語句→配信面→予算の損失の順で点検する。
- 上流(配信状態・計測)に誤りがあると、CPA・ROASの比較そのものが成り立たない。特に、メインのコンバージョンに購入以外が混ざっていないかを先に確認する。
- 検索・P-MAX・動画・ディスプレイは役割が違うため、同じCPA・ROASで並べず、種類ごとに評価指標を決める。
- 検索語句は語句単位ではなく「悩み・用途/商品・比較/指名」の層に分けて、費用の配分と成果を見る。
- インプレッションシェアの「予算による損失」が大きくても、増額の判断は上乗せした分の粗利で行う。管理画面の数字で判断できないもの(増分・動画の寄与)は、配信を分けた比較で検証する。