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予算配分

テレビCMとWeb広告はどちらが効く?売上への貢献で比べて、予算の配分を決める方法

来期の広告予算を、テレビCMとWeb広告にどう分けるか。比較の記事を探すと、「テレビは一度に広く届く」「Webは狙った相手に出せて結果が見える」といった特徴の一覧はたくさん見つかります。けれど、それを読み終えても「では、テレビCMを全体の何割にするか」は決まらない——両方を使っている宣伝担当者から、よく聞く悩みです。

たとえば、Web広告の管理画面ではROASが高く出ている一方で、テレビCMには同じ形の数字がありません。数字だけ見ればWebに寄せたくなります。ところが、そのWeb広告の成果の中に、テレビCMを見て商品名を検索した人が入っていたらどうでしょうか。テレビを減らしたとたんに、Webの成果まで一緒に落ちるかもしれません。

そこでこの記事では、テレビCMとWeb広告を特徴ではなく「売上への貢献」と「追加で1円使ったときの効き」で比べる方法を軸に、併用したときに効果を取り違えない見方と、配分を変えるときの進め方を順に整理します。

対象は、消費財メーカー・通販・サービス業などで、テレビCMとWeb広告を併用し、その配分を決める立場にある宣伝・マーケティングの担当者です。統計の専門知識がなくても、何を比べれば判断できるかがわかる水準で書いています。

広告効果の分析を仕事にしている立場から、実務に沿って解説します。

【結論】テレビCMとWeb広告は「売上への貢献」と「追加で1円使ったときの効き」で比べる

どちらが効くかは、媒体の特徴や、それぞれの管理画面・出稿報告の数字では決まりません。比べるのは、①その媒体のおかげで売上がいくら増えたか(売上への貢献)と、②いまの出稿額に1円足したとき売上がどれだけ増えるか(追加の効き)の2つです。配分の割合を決めるのは②で、①はその土台になります。

2つを分けるのは、問いが違うからです。「これまでテレビCMで売上がいくら増えたか」は過去の成績で、「来期の1円をどちらに置くか」はこれからの判断です。広告には使うほど効きが鈍る性質があるため、過去の成績が良い媒体が、次の1円でも良いとは限りません。

比べ方答えられる問い配分の判断に使えるか
特徴の比較(届く範囲・狙い方・費用の大きさ)どんな目的に向いているか方向は決められるが、割合は決まらない
出稿報告・管理画面の数字(GRP/クリック・CV)媒体の中で出稿がうまくいったか数える対象が違うため、両者を並べられない
売上への貢献その媒体で売上がいくら増えたか続けるか、やめるかの土台になる
追加の1円の効き次の予算をどちらに足すと売上が伸びるか配分の割合を決める材料になる

媒体全体の流れを見ると、電通「2025年 日本の広告費」では、地上波テレビの広告費は1兆6,333億円(前年比99.9%)とほぼ横ばいで、インターネット広告費は4兆459億円(同110.8%)と伸びています。ただし、これは日本全体の合計の動きです。「市場全体でWebが伸びている」ことは、「自社の次の1円もWebに置くべき」ことを意味しません。自社にとってどちらの1円が売上を増やすかは、自社のデータで確かめることになります。

参照

メリット・デメリットの比較だけでは、配分は決まらない

特徴の比較からわかるのは、「どちらが何に向いているか」までです。割合が決まらない理由は2つあります。両者を数える指標がそもそも違うことと、テレビCMの効果の一部がWeb広告の成果として数えられてしまうことです。

数える指標が違う(視聴率・GRPとクリック・CV)

テレビCMの出稿は、視聴率をもとにしたGRP(延べ視聴率)や到達率で報告されます。どれだけの人に何回届いたかを表す数字で、見た人がその後に何を買ったかは含まれていません。Web広告は表示回数・クリック・コンバージョン(CV)で数え、広告をクリックした人が購入まで進んだかを1件ずつたどれます。

片方は「届いた量」、もう片方は「行動の件数」なので、横に並べても比べたことにはなりません。テレビCMにもCPA(1件あたりの獲得費用)を当てはめ、画面に出した電話番号やURLからの反応だけを数えると、テレビの効果はかなり小さく見えます。見た人の大半は、後から別の経路で動くからです。

テレビCMを見た人の多くは、後で商品名や社名を検索します。その検索結果に出た自社の検索広告をクリックして購入すれば、Web広告の管理画面には検索広告のCVとして1件記録されます。きっかけはテレビCMでも、成果はWeb広告の側に付くわけです。

どこにも記録されないテレビCMを見る商品名を検索(指名検索)検索広告をクリック購入管理画面に記録される(検索広告のCV)
テレビCMを見て検索し、検索広告から購入した人の流れ。管理画面に記録されるのは右の2つだけで、きっかけになったテレビCMと指名検索はどこにも記録されない

その結果、管理画面だけを見るとWeb広告の効率は実際より良く見え、テレビCMは効いていないように見えます。この状態でテレビを削ってWebへ寄せると、指名検索の量そのものが減り、寄せた先のWeb広告の成果まで落ちることがあります。

Googleのオープンソースの分析ツール「Meridian」のドキュメントも、検索の量は検索広告にとっては結果をゆがめる要因(交絡因子)になる一方、ほかの媒体が検索を促す場合には、その媒体の効果が通る道(メディエーター)になると整理しています。テレビCMとWeb広告を並べて評価するときは、この「通り道」の分をどちらの成果として数えるかを、最初に決めておく必要があります。

参照

両方の売上への貢献を、同じ基準で測る

テレビCMとWeb広告を比べるには、どちらも「その施策がなかった場合と比べて、売上がいくら増えたか」で測ります。方法は、地域を分けて比べるか、週ごとの売上と出稿量から統計的に推定するかの2つです。

地域を分けて比べる

テレビCMは放送エリアごとに出稿できるため、条件の似た地域を組にして、一方だけ出稿量を増やす(または減らす)比較が組めます。変える前に2つの地域の売上が同じように動いていたことを確かめ、変えた後にどれだけ差が開いたかを見ます。その間、Web広告の出稿条件は両方の地域で揃えておきます。

全国ネットの枠が中心で地域ごとに動かせない場合や、売上を地域別に切り出せない場合は、この方法は使えません。代わりの方法は地域テストができないときの効果検証の記事で整理しています。

週ごとの売上と出稿量から、施策ごとの貢献を推定する

週ごとの売上、テレビCMのGRP(または放映費)、Web広告の費用を同じ表に並べ、季節や値引き、ほかの施策の影響と分けて、施策ごとの貢献を推定する方法です。こうした推定は、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる統計的な手法で行うのが一般的です。テレビとWebの貢献が「費用1円あたり、売上がいくら増えたか」という同じ単位で出るので、そのまま並べられます。

前の章の「通り道」の問題も、この推定の中で扱います。テレビの出稿が多い週に指名検索と検索広告のCVが増えているなら、その分をテレビCMの貢献として数え直す考え方です。どこまで数え直すかはモデルの組み方で変わるため、結果を受け取ったら「検索広告の成果にテレビCMの分が残っていないか」を確認してください。

前提は、出稿量に週ごとの変動があることです。テレビCMは放映期と休止期を繰り返すことが多いので推定に向いていますが、Web広告の費用がずっと一定なら、Webの側の効きは推定しにくくなります。測り方の全体像と、ほかの方法との違いはテレビCMの効果測定の記事にまとめています。

「追加の1円」の効きで比べる(飽和の考え方)

売上への貢献が測れたら、次は「いまの出稿額から1円足したら、売上がいくら増えるか」で比べます。広告は使うほど効きが鈍るため、これまでの平均で効率が良かった媒体に、次の1円を置くのが正解とは限りません。

使うほど効きが鈍る

鈍り方は媒体によって違います。検索広告は検索する人がいなければ出せないので、予算を足すほど指名検索から一般的な語、遠い語へと広がり、効率が下がります。テレビCMは、GRPを積むほど新しく届く人の増え方が鈍り、同じ人が何度も見る割合が増えます。

見落としやすいのは、テレビCMが指名検索を増やし、Web広告の上限を押し上げる面があることです。テレビを減らすと、Web広告が鈍り始める位置そのものが手前に来ることがあります。両方を別々に評価すると読み違えるのはこのためです。飽和の形の読み方はアドストックと飽和の解説記事で図を使って説明しています。

計算例(説明用の架空の数字)

月の広告費1,000万円を、テレビCMに700万円、Web広告に300万円使っている会社で考えます。分析の結果、テレビCMの売上への貢献は1,400万円、Web広告は(テレビCMの分を数え直したあとで)900万円と推定されたとします。平均では、テレビCMは1円あたり2.0円、Web広告は3.0円です。

ところが、次の100万円を足した場合の推定は、テレビCMが+180万円(1円あたり1.8円)、Web広告は+110万円(1.1円)でした。Web広告はすでに検索の量の上限に近づいていて、足した分の多くが効率の低い出稿に回るためです。

テレビCM|これまでの平均200万円テレビCM|次の100万円180万円Web広告|これまでの平均300万円Web広告|次の100万円110万円平均ではWeb広告が上、次の100万円ではテレビCMが上
100万円あたりの売上の増分を、これまでの平均と次の100万円で比べた図。平均ではWeb広告が上だが、次の100万円ではテレビCMが上になる。数値は説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません

この数字のもとで、総額は1,000万円のまま、Web広告から100万円をテレビCMに移すとどうなるかを計算します。

項目変更前変更後売上への貢献の変化
テレビCM700万円800万円+180万円
Web広告300万円200万円−130万円
合計1,000万円1,000万円+50万円

※数値は説明用の架空の例です。Web広告を減らしたときの−130万円は、足したときの+110万円より大きくなります。削る100万円は、足す100万円より効きの良い位置にある分だからです。

平均で並べればWeb広告が優秀に見えますが、次の1円の行き先としてはテレビCMが売上を増やします。テレビCMがすでに飽和に近い会社なら、逆の結論になります。答えは媒体の種類ではなく、自社のいまの出稿額がそれぞれの曲線のどこにあるかで決まります。

なお、テレビCMの制作費は放映量を増やしてもほとんど増えないため、追加の1円の比較には放映費を使い、制作費は「続けるか、やめるか」を判断するときに入れます。最終的な判断は、売上の増分に粗利率をかけた利益で行います。

配分を変えるときの進め方

配分を変えるときは、総額を固定して割合だけを動かし、外れても取り返せる幅で少しずつ動かして、売上の変化を確かめながら進めます。

総額を固定して、割合だけを動かす

総額と割合を同時に変えると、売上が動いたときに原因を分けられません。総額を固定しておけば、変化は配分の違いから来たものとして読め、計算例のような試算とも突き合わせやすくなります。

動かす単位は、テレビCMの側に合わせるのが現実的です。Web広告は日ごとに予算を変えられますが、テレビCMは出稿期や契約の単位で枠を買うことが多いからです。次の出稿期の計画でテレビのGRPをどれだけ増減するかを決め、Web側をそれに合わせます。

小さく動かして、売上の変化を確かめる

一度に動かすのは、たとえば全体の1割前後のように、試算が外れても取り返せる幅にとどめます。試算は過去のデータからの推定なので、経験したことのない配分ほど当たりにくくなるからです。

確かめるときは、先に動く指標から見ます。テレビCMを動かした場合は、指名検索の量、検索広告のCV、売上の順に変化が表れやすく、残存効果があるため影響が数週間遅れて出ることもあります。判定の時期と、どこまで下がったら戻すかは、動かす前に決めておきます。その決め方はテレビCM削減テストの判定基準の記事で、媒体全般の配分の手順は広告予算配分の記事で扱っています。動かした後のデータは次の推定に足して、試算を更新していきます。

DOREGAの場合|テレビCMとWeb広告を同じ入力にして、配分案を出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事の「週ごとの売上と出稿量から、施策ごとの貢献を推定する」方法にあたる分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。テレビCMの週ごとの出稿量(GRPまたは放映費)とWeb広告の費用を同じ入力にして、売上への貢献と追加の効きを推定し、予算配分案としてお渡しします。

初回分析は15万円で、標準範囲の分析です。範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」で、お渡しするものは「レポート・予算配分案・結果説明会」、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。KPIや事業が複数ある場合や、価格や販促の影響まで分けて見たい場合は、標準範囲を超える本格分析(30万円〜)になり、費用と期間は着手前にご案内します。

なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。テレビCMやWeb広告の出稿量にほとんど変動がない場合も、効きを推定できないことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q01テレビCMを減らしてWeb広告に寄せると、売上はどうなりますか?

会社によって違い、事前に一律の答えは出せません。

テレビCMで指名検索が増えていた会社では、テレビを減らすとWeb広告の成果も一緒に落ちることがあります。寄せる前に、自社のデータで両方の追加の効きを推定し、総額を固定して少しずつ動かすのが安全です。テレビCMを減らしたときに許容できる売上減の計算は、損益分岐の考え方で先に出しておけます。

Q02TVerなど、動画配信サービスの広告はどちらに入れて考えますか?

分析では、テレビCMとも一般的なWeb広告とも分けた独立の施策として扱うのが無難です。

番組の合間に流れる点はテレビCMに近く、配信と計測の仕組みはWeb広告に近いため、どちらかにまとめると効果がゆがむことがあります。費用が小さく単独で推定しにくい場合は、Web上の動画広告とまとめるなど、データ量に合わせて決めます。電通「日本の広告費」の集計では、こうした広告は「テレビメディア関連動画広告費」としてインターネット広告費の中に数えられています。

Q03ローカル局のテレビCMだけでも、Web広告と比べられますか?

比べられます。放送エリアが限られる分、地域を分けた比較はむしろ組みやすくなります。

放送エリアと、それ以外の似た地域の売上を比べられるかがポイントです。そのためには、売上を地域別に切り出せる必要があります。地域別の売上がない場合でも、週ごとの出稿量と売上から推定する方法は検討できます。

Q04何年分のデータが必要ですか?

週ごとのデータで少なくとも1年分、できれば2年分あると安定しやすくなります。

季節の動きを分けるために1年分以上、テレビCMの放映期と休止期の両方が含まれていることが大切です。期間が短くても、出稿量の変動が大きければ推定できることがあります。

テレビCMとWeb広告は、特徴ではなく売上への貢献と追加の効きで配分を決める|まとめ

テレビCMとWeb広告はGRPとCVという別々の数字で報告され、しかもテレビCMを見て検索した人の購入は検索広告の成果として記録されます。管理画面だけでは、Webが実際より良く、テレビが実際より悪く見えます。比べるには、両方を「その施策で売上がいくら増えたか」という同じ基準で測り、そのうえで「次の1円をどちらに置くと売上が増えるか」を見ます。配分を変えるときは総額を固定し、テレビCMの出稿の単位に合わせて少しずつ動かし、指名検索・検索広告のCV・売上の順に変化を確かめます。

この記事のポイント

  • テレビCMとWeb広告は、特徴の比較や管理画面の数字では配分が決まらない。比べるのは「売上への貢献」と「追加で1円使ったときの効き」の2つで、割合を決めるのは後者。
  • テレビCMはGRP(届いた量)、Web広告はCV(行動の件数)で数えるため、そのまま並べても比べたことにならない。
  • テレビCMを見て指名検索した人の購入は、検索広告の成果として記録される。管理画面だけで判断してテレビを削ると、Web広告の成果まで落ちることがある。
  • 広告は使うほど効きが鈍るため、平均の効率が高い媒体が、次の1円でも効くとは限らない。答えは、自社のいまの出稿額が曲線のどこにあるかで決まる。
  • 配分を変えるときは総額を固定して割合だけを動かし、外れても取り返せる幅で少しずつ進める。指名検索・検索広告のCV・売上の順に変化を確かめ、試算を更新する。