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予算配分

チラシとWeb広告はどちらが効く?違う指標のまま比べず、売上への貢献で予算を決める方法

来期の販促費を、折込チラシとWeb広告にどう分けるか。折込やポスティングを続けながらWeb広告も出している販促担当者なら、一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。

たとえば、チラシは反響率0.2%で反響1件あたり2,000円、Web広告はCPA 1,500円だったとします(説明用の架空の例です)。数字だけを並べるとWeb広告のほうが安く見えます。けれど、チラシを見て店名を検索し、そのままWeb広告をクリックして買った人は、どちらの成果に入っているでしょうか。

そこでこの記事では、チラシとWeb広告がふだん違う指標で測られていること、併用すると成果が重なって見えること、そのうえで「売上への貢献」という同じ指標で並べる2つの方法と、予算を移すときの進め方を順に整理します。

対象は、地域の小売・飲食・サービス業や、消費財メーカーで、チラシとWeb広告の両方を使っている販促・マーケティングの担当者です。統計の専門知識がなくても、どの数字を見て決めればよいかを判断できる水準で書いています。

広告効果の分析サービスを実際に提供している立場から解説します。

【結論】チラシとWeb広告は、反響率とクリック率ではなく「売上への貢献」で比べる

反響率・クリック率・CPAは、それぞれの媒体の中で良し悪しを比べるための指標で、チラシとWeb広告を横に並べる指標ではありません。両者を比べるときは、「その施策がなかった場合と比べて、売上がどれだけ増えたか(増分)」を費用1円あたりに直した数字で並べます。

どの業種・どの店でも「チラシが上」「Web広告が上」と言える決まった答えはありません。商品、商圏、客層、すでにかけている量によって、同じ1万円の効き方が変わるからです。決められるのは「自社のいまの配分で、次の1万円をどちらに置くと売上が増えるか」であり、それを確かめるには両方を同じ指標で測る必要があります。

項目チラシ(折込・ポスティング)Web広告比べるときに使う指標
ふだん見る数字反響率、クーポン回収数、反響単価クリック率、コンバージョン数、CPA費用1円あたりの増分売上
「1件」の中身紙面の入口(クーポン・QR・電話)を通った人広告をクリックしてから購入・申込した人施策がなかったら起きなかった売上
数え漏れ・数えすぎ見て検索した人が漏れるチラシを見てから来た人も入る両方を同時に推定して重なりを除く

この見直しが急がれている背景には、紙と画面のあいだで広告費の配分そのものが動いていることがあります。電通「2025年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で初めて4兆円を超えた一方、折込は2,354億円(同96.4%)と前年を下回りました。折込の減少理由としては、新聞購読率の低下や、人件費・配送費の上昇による値上げが挙げられています。費用が上がる側と、予算が集まる側。どちらに置くかを、感覚ではなく数字で決める場面が増えています。

参照

チラシとWeb広告は、ふだん違う指標で測られている

チラシは「紙面を見て反応した人の数」、Web広告は「広告をクリックして成果に至った人の数」で測られています。どちらも媒体の中の改善には役立ちますが、数えている人の範囲が違うため、数字をそのまま並べても比較になりません。

チラシは反響率・クーポン回収数

チラシの効果は、配布部数に対して何件の反応があったかを示す反響率や、クーポン・QRコード・専用電話の件数で測るのが一般的です。紙面のどの商品、どの見出しが反応を取ったかを比べるには向いています。ただし数えられるのは、紙面に用意した入口を通った人だけです。チラシを家に置いたまま来店した人や、商品名を検索してネットで買った人は残りません。反響計測の限界と、その先の測り方はチラシの効果測定の記事で詳しく扱っています。

Web広告はクリック・CV・CPA

Web広告は、表示回数、クリック率、コンバージョン(CV)数、1件あたりの獲得費用(CPA)で測ります。数字が日単位で細かく取れるため、チラシより正確に見えがちです。けれど管理画面のCVは「広告をクリックした後に買った人」を数えたもので、その人がなぜ検索したのか、広告がなくても買っていたのかまでは分かりません。

1件あたりの単価で比べると誤る理由

単価の比較がずれる理由は2つあります。1つ目は、「1件」の定義が違うことです。チラシの1件はクーポンを持ってきた人、Web広告の1件はクリック後に購入した人で、同じ1件でも売上への寄与が同じとは限りません。2つ目は、費用に含める範囲が違うことです。チラシは印刷・配布・デザインの費用を足すかどうかで単価が変わり、Web広告も運用手数料や制作費を入れるかで変わります。

項目チラシWeb広告
月の費用30万円30万円
ふだん見る数字クーポン回収 150件(反響単価 2,000円)管理画面のCV 200件(CPA 1,500円)
見た目の判断割高割安
費用1円あたりの増分売上3.0円(増分売上 90万円)2.0円(増分売上 60万円)

※説明用の架空の例です(1件あたりの購入額は5,000円で計算)。

単価だけを見るとWeb広告が有利ですが、増分売上で並べると逆になる、ということが起こります。なぜこうなるのかは次の章で分解します。チラシの費用の数え方と計算の手順はチラシの費用対効果の記事にまとめています。

チラシを見て検索した人は、Web広告の成果に入っている

チラシで商品や店を知った人が、店名や商品名で検索し、表示された検索広告をクリックして買うと、その売上はWeb広告のCVとして数えられます。併用していると、チラシの効果の一部がWeb広告の成績に移って見えるため、単価の比較はWeb広告に有利に傾きます。

前の章の架空の例で、Web広告の管理画面に出ているCV 200件を分けてみます。200件のうち120件は、Web広告がなければ起きなかった購入です。50件は、チラシを見て店名を検索し、検索広告から買った人です。残りの30件は、広告がなくてもいずれ買っていた常連客です。

Web広告の管理画面のCV 200件Web広告で増えた購入120件チラシを見て検索50件広告なしでも30件本当はチラシの効果例:チラシで店名を知る → 店名で検索 → 検索広告をクリック → 購入
管理画面のCV 200件を3つに分けた図。120件はWeb広告で増えた購入、50件はチラシを見て検索した人(チラシの効果)、30件は広告がなくても買っていた人。件数は説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません

チラシ側から見ると、増分は180件分(90万円)あります。クーポンで数えた150件のうち、チラシで増えた購入は100件で、残り50件はもともと来る予定だった人です。これに、検索広告経由の50件と、クーポンを持たずに来店した30件が加わります。つまり、チラシの反響(150件)は効果を少なめに、Web広告のCV(200件)は効果を多めに見せていたことになります。

重なりは逆向きにも起きます。Web広告で店を知った人が、後日届いたチラシのクーポンを使って来店すれば、今度はチラシの反響に入ります。媒体ごとの報告を足し合わせると実際の売上より多くなるのはこのためで、仕組みは広告経由の売上が重複する記事で整理しています。

売上への貢献を同じ指標で並べる2つの方法

重なりを除いて同じ指標で並べる方法は、エリアを分けて配布と出稿を変える方法と、週ごとの売上と両方の費用から統計的に推定する方法の2つです。どちらも、片方だけを見るのではなく、チラシとWeb広告を同時に扱うのが要点です。

方法1:エリアを分けて、配布と出稿を変える

条件の似たエリアを組にして、一方ではチラシの部数を減らし、もう一方では変えずに、同じ期間の売上の変化を比べます。チラシの配布エリアは町丁目や新聞販売店の区域で決まり、Web広告は配信地域を市区町村や半径で指定できるため、両方の区切りを先に揃えておくのが準備の中心です。

チラシを減らしたエリアでは、検索広告のCVも一緒に減るかを見ておきます。減っていれば、それはチラシから検索広告に流れていた分の手がかりになります。逆に、Web広告の配信地域を一部で止めて、チラシの反響や来店がどう動くかを見ることもできます。

この方法は結果が分かりやすい反面、一度に確かめられるのは1つの施策の1つの量です。エリア別の売上が取れること、境界をまたいだ来店が少ないことも条件になります。

方法2:週ごとの売上と、両方の費用から推定する

過去1〜2年分の週ごとの売上と、チラシの週ごとの配布費用(または部数)、Web広告の週ごとの費用を同じ表に並べ、季節・特売・天候などの影響も入れて、売上のうちどれだけが各施策によるものかを同時に推定します。こうした推定は、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる統計的な手法で行うのが一般的です。

すべての施策を同じ式で扱うので、チラシから検索広告に流れた売上を二重に数えることがなく、どちらも「費用1円あたりで増えた売上」という同じ単位で出ます。条件は、チラシにもWeb広告にも、週によって量の増減があることです。毎週同じ部数を配っていると、チラシの効果は推定しにくくなります。

店頭のPOP・試食などの販促とWeb広告を比べる場合の考え方は店頭販促とWeb広告の比較の記事で、チラシ単体の測り方はチラシの効果測定の記事で扱っています。

予算を移すときの進め方

比べた結果をもとに予算を動かすときは、片方をいきなりゼロにせず、エリアや量を区切って少しずつ移し、移した後の売上を確かめます。あわせて、チラシとWeb広告で届いている客層が違わないかを確認します。

いきなりゼロにしない

チラシをすべてやめると、チラシ本体の効果に加えて、チラシをきっかけにした指名検索も減ります。その結果、Web広告のCVまで下がり、「Web広告の効きが落ちた」と誤って読んでしまうことがあります。また、チラシの効果は配布した週だけでなく、その後しばらく続くことが多いため、止めた直後の数週間だけでは影響の全体が見えません。止めたときに起きることはチラシをやめたら売上はどうなるかの記事で詳しく扱っています。

移した分の売上の変化を確かめる

予算を移すときは、まず一部のエリアや一部の週に限って配布を減らし、その分をWeb広告に回します。そのうえで、移したエリアと移していないエリアの売上の変化を、少なくとも数週間から1〜2か月並べて見ます。確かめるのは、Web広告のCVが増えたかではなく、店舗やECを合わせた売上全体がどう動いたかです。

Web広告は、費用を増やすほど1円あたりの効きが下がっていく(飽和)性質があります。いまの配分での成績がよくても、移した分で同じ効きが出るとは限らないため、移す幅は小さく始めます。

客層(年齢・地域)の違いを確認する

チラシとWeb広告では、届いている人が違うことがあります。日本新聞協会の調べでは、新聞の発行部数は2015年の4,424万部から2025年には2,487万部に減り、1世帯あたりの部数は0.80部から0.42部になりました。折込チラシが届く世帯は年々限られてきていますが、その中に自社の主要な客層がどれだけ含まれるかは商圏によって違います。

確かめ方としては、会員データやレシートアンケートで来店客の年齢・住所の分布を見て、チラシを減らしたエリアで特定の年代の来店が落ちていないかを確認します。Web広告では届きにくい層が中心の店では、チラシを残したまま配布エリアや頻度を絞る、ポスティングに切り替えるといった中間の選択肢も検討できます。

参照

DOREGAの場合|チラシとWeb広告を同じ入力にして、配分案を出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事の方法2にあたる分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。

チラシの週ごとの配布費用とWeb広告の週ごとの費用を同じ入力として扱い、初回分析(15万円・標準範囲)で、施策ごとの売上への貢献と予算配分案を出します。標準範囲は1事業・主要KPI 1つで、Web広告もチラシ・イベントも入れられます。お渡しするものはレポート・予算配分案・結果説明会で、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。

KPIや事業が複数ある場合や、価格や販促の影響まで分けて見たい場合は、本格分析(30万円〜)になります。費用と期間は着手前にご案内します。なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。チラシの配布量に週ごとの変動がほとんどない場合は、チラシの効果を推定できないことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q01高齢のお客さまが多い店は、チラシのほうがいいのでしょうか?

客層だけでは決まりません。売上への貢献で比べたうえで判断します。

高齢の客層が中心なら、チラシが届いている割合は高いかもしれません。ただし、同じ地域に同じ部数を配り続けていると、追加の部数で増える売上は小さくなっていることがあります。客層の分布は判断の前提として確認し、どちらに次の予算を置くかは、売上への貢献を同じ指標で並べてから決めます。

Q02ポスティングとWeb広告を比べる場合も、考え方は同じですか?

同じです。

ポスティングは新聞の購読に関係なく配れる一方、配布エリアの区切りが細かいので、エリアを分けた比較(方法1)を組みやすい施策です。週ごとの配布数と費用を記録しておけば、Web広告と同じ表に入れて推定することもできます。

Q03店舗が1〜2店の小さな店でも比べられますか?

方法によります。エリアを分けた比較は難しいことが多いです。

店舗が少ないと、条件の似たエリアの組を作りにくくなります。その場合は、週ごとの売上と費用の記録から推定する方法が候補になりますが、配布量や出稿量に変動があることが条件です。まずは配布部数・費用・売上を週ごとに記録するところから始めます。

Q04チラシをやめたら、売上はどのくらい下がりますか?

店や商圏によって大きく違い、事前に推定してから判断するのが安全です。

チラシ本体の効果に加えて、チラシをきっかけにした検索や来店も減るため、Web広告の成績にも影響します。やめる前に確かめる方法は、チラシをやめたときの売上影響の記事で整理しています。

チラシとWeb広告は、売上への貢献という同じ指標で比べて予算を決める|まとめ

チラシの反響率・反響単価と、Web広告のクリック率・CPAは、それぞれの媒体の中で改善するための指標で、互いを比べる指標ではありません。併用していると、チラシを見て検索した人がWeb広告のCVに入るため、単価の比較はWeb広告に有利に傾きます。両者を比べるには、エリアを分けて配布と出稿を変えるか、週ごとの売上と両方の費用から同時に推定するかのどちらかで、費用1円あたりの増分売上を出して並べます。予算を移すときは、片方をゼロにせず、エリアや量を区切って少しずつ移し、売上全体の変化と客層の違いを確かめながら進めます。

この記事のポイント

  • 反響率・クーポン回収数とクリック率・CPAは、数えている人の範囲が違うため、そのまま並べてもチラシとWeb広告の比較にはならない。
  • チラシを見て店名や商品名を検索し、検索広告から買った人はWeb広告のCVに入る。併用時の単価比較はWeb広告に有利に傾き、逆向きの重なりも起きる。
  • 比べる指標は「費用1円あたりの増分売上」。エリアを分けて配布と出稿を変える方法と、週ごとの売上と両方の費用から同時に推定する方法の2つで出せる。
  • 予算を移すときは片方をいきなりゼロにせず、一部のエリア・期間で移して、Web広告のCVではなく売上全体の変化を確かめる。
  • 新聞の1世帯あたり部数は0.80部(2015年)から0.42部(2025年)に減った。来店客の年齢・住所の分布を見て、チラシとWeb広告で届く客層の違いを確認してから配分を決める。