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予算配分

販促効果はどう測る?店頭販促とWeb広告を同じ物差しにして、効果測定から予算配分まで決める方法

店頭のPOPや試食、陳列の強化、店頭イベントと、Web広告。両方に予算を持っていると、「結局どれが効いているのか」「広告費が上がってきたが、何を残して何を削ればいいのか」という問いに、はっきり答えにくいことはないでしょうか。

Web広告は管理画面のROASやCPAで、店頭販促は実施期間のPOS売上の伸びで評価する——多くの会社ではこの形になっています。それぞれの数字は正しくても、物差しが違うため、2つを並べて「どちらにもう少しお金を回すべきか」を決める根拠にはなりません。

そこでこの記事では、販促効果の測り方を、店頭販促とWeb広告を同じ物差しで比べる考え方として整理します。比べるべき数字は何か、平均のROASで比べると何がずれるのか、同じ物差しにする方法、値引きや人件費の扱い、結果を予算配分に落とす手順、そして外注するときの確認項目までを順に扱います。

対象は、食品・日用品・化粧品などのメーカーや小売で、店頭販促とWeb広告の両方の予算を見ているマーケティング担当の方です。統計の専門知識がなくても判断できるところまで噛み砕いて書きます。

実際に広告効果の分析サービスを提供している立場から解説します。

【結論】店頭販促とWeb広告は「追加の1円で増える売上(利益)」で比べる

予算の配分を決めるときに比べるべきなのは、それぞれの施策に追加で1円使ったときに、売上(できれば利益)がいくら増えるかです。これを増分と呼びます。平均のROASやCPA、実施期間のPOSの伸びは、この問いに直接は答えていません。

予算配分の判断は、「来期、どちらにもう少し回すか(どちらを少し減らすか)」という、追加分の判断です。ですから必要なのは、これまでの成績の平均ではなく、次の1円がどれだけ働くかの見込みです。そして多くの施策は、使う量を増やすほど1円あたりの効きが鈍っていきます(飽和)。この2つを前提にすると、店頭販促とWeb広告を比べる手順は次のように整理できます。

項目Web広告店頭販促
ふだんの評価に使う数字管理画面のROAS・CPA実施期間・実施店舗のPOS売上の伸び
その数字が数えているもの広告に接触した人の購入(広告がなくても買った人を含む)その期間・店舗の売上全体(値引きや他の施策の影響を含む)
抜けやすいもの店頭での購入への影響人件費・協賛金などの費用、実施後の反動
配分のために必要な数字同じ方法で推定した「追加の1円あたりの増分売上(利益)」と、その飽和の度合い

以下、なぜ物差しがずれるのかから順に見ていきます。

販促効果と広告効果は、「POS」と「管理画面」という別々の物差しで測られている

Web広告の数字は広告の配信システムが、店頭販促の数字はPOSが出しています。数え方の前提が違うため、2つの数字を並べても大小を比べる意味がありません。さらに、同じ売上を両方が自分の成果として数えていることもあります。

Web広告の管理画面は「広告に接触した人の購入」を数える

Web広告のROASやCPAは、広告をクリックした、あるいは見た人がその後に購入した件数・金額をもとに計算されます。この数え方には、「広告がなくても買っていた人」も含まれます。普段から店頭で買っている常連の人が、たまたま広告を見たあとにECで買えば、その購入も広告の成果に入ります。また、管理画面が追えるのは基本的にオンラインの購入で、広告を見て店頭で買った分は数字に出にくいという逆方向のずれもあります。

店頭販促は「実施期間のPOSの伸び」で見られがち

店頭販促は、実施した期間・店舗のPOS売上を、実施前や前年と比べて評価されることが多い施策です。この比べ方では、同じ時期に重なった値引き、Web広告、季節の需要、競合の動きの影響が、すべて販促の成果に入ってしまいます。逆に、販促の期間が終わった後に売上が平常より落ちる「反動」があれば、その分は見落とされます。

同じ売上を、両方が自分の成果として数えている

Web広告を見た人が店頭で試食をして買った場合、POSの伸びにもその購入が入り、オンラインで買えば広告の成果にも入る、ということが起こります。部門ごとの成果を合計すると実際の売上の増加より大きくなるのは、このためです。この重複の問題は、広告の費用対効果の測り方の記事でも、計算方法の違いから整理しています。

平均のROAS・CPAで比べると、予算配分を誤る理由

平均のROASは「これまで使ったお金全体の成績」で、次の1円の効きではありません。施策は使うほど効きが鈍るため、平均の成績が良い施策ほど、すでに効きが鈍る領域まで使い込まれていることがあります。

「広告がなかったら」との差が、増分

増分とは、その施策をしなかった場合と比べて、施策が上乗せした売上のことです。店頭販促なら「POPや試食がなかった場合の売上」との差、Web広告なら「その広告を出さなかった場合の売上」との差です。施策がなくても売れていた分は、施策の成果ではありません。増分売上とその計算式は、増分売上・増分ROASの記事で詳しく扱っています。

使うほど効きが鈍る(飽和)

Web広告は、予算を増やすと、反応しやすい人にはすでに届いていて、新しく届く人ほど買う可能性が低くなります。店頭販促も、すべての店舗・すべての棚にPOPを置き、試食の回数を増やしていけば、どこかで1回あたりの上乗せは小さくなります。この「増やすほど効きが鈍る」性質を飽和と呼びます。

飽和があるため、平均と追加分の効きは一致しません。下の図は、Web広告と店頭販促それぞれについて、費用と増分売上の関係を描いたものです(数値・形はすべて説明用の架空の例です)。

費用 →増分売上 ↑Web広告店頭販促追加しても、ほぼ伸びない追加すると、まだ伸びる店頭の現在の費用Web広告の現在の費用
費用を増やすほど増分売上の伸びが鈍る2本の曲線。Web広告は平均の成績が良いが、現在の費用ではすでに曲線が寝ていて、追加分の伸びが小さい。店頭販促は平均では見劣りしても、現在の費用ではまだ曲線が立っていて、追加分の伸びが大きい。説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません

数字で見ると、こうずれる

たとえば、Web広告に月300万円を使って増分売上が900万円、店頭販促に月150万円を使って増分売上が300万円だったとします。平均で見ればWeb広告は1円あたり3円、店頭販促は2円で、Web広告のほうが優秀に見えます。ところが、それぞれに追加で30万円を使ったときの増分売上を推定すると、Web広告は15万円(1円あたり0.5円)、店頭販促は60万円(1円あたり2円)だった——ということは十分に起こりえます(数値はすべて説明用の架空の例です)。

この場合、平均の成績を見て「Web広告を増やし、店頭販促を減らす」と判断すると、追加分の効きが小さい方へお金を寄せることになります。平均の成績は「これまでの施策が間違っていなかったか」を振り返るのには使えますが、「次にどこへ回すか」を決めるには、追加分の効きと飽和の度合いが必要です。飽和の考え方はアドストック・飽和の記事で図解しています。

販促効果をWeb広告と同じ物差しで測る2つの方法と、先にそろえる2つのこと

同じ物差しにする方法は、①店舗や地域で実施/非実施を分けて比べる方法と、②週ごとの売上と各施策の費用から、施策ごとの貢献を同時に推定する方法の2つです。どちらを使う場合も、値引きの扱いと費用の範囲を先にそろえておく必要があります。

方法1:店舗・地域で実施/非実施を分けて比べる

条件の似た店舗や地域を2つのグループに分け、一方だけで販促を実施し(あるいはWeb広告の配信地域を絞り)、もう一方と売上を比べる方法です。同じ期間の比較なので、季節や競合の影響は両方のグループに同じようにかかり、差を施策の効果として読みやすくなります。

一方で、グループ分けを事前に設計する必要があること、比べられるだけの店舗数・地域数が必要なこと、一度に確かめられるのは1つの施策の1つの量であることが制約です。「POPを増やしたら、どれだけ増えるか」を確かめるのには向いていますが、店頭販促とWeb広告の全体の配分を一度に決める材料にはなりにくい方法です。

方法2:週ごとの売上と費用から、施策ごとの貢献を同時に推定する

もう1つは、過去1〜2年分程度の週ごとの売上と、店頭販促・Web広告・チラシなど各施策の週ごとの費用を並べ、季節や値引きの影響も一緒に入れて、「売上のうち、どの施策がどれだけ上乗せしたか」を統計的に推定する方法です。マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる手法がこれに当たります。

すべての施策を同じ式の中で扱うため、同じ売上を二重に数えることがなく、施策ごとの増分と飽和の度合いを同じ物差しで出せます。その結果を使って「総額を変えずに配分を変えたら売上はどうなるか」を試算できるのも、この方法の特徴です。条件は、施策の費用が週によってある程度増減していることです。毎週ほぼ同じ量を続けている施策は、比べる材料がないため、効果を切り分けにくくなります。

先にそろえること1:値引き・特売は「販促費」ではなく価格の影響として分ける

店頭の販促で最も影響が大きいのは、値引き・特売であることが少なくありません。ただし値引きは、費用を払って何かを置く施策ではなく、売価を下げる施策です。売上の個数は増えても、1個あたりの利益は減ります。POPや試食と同じ「販促費」の枠に値引きの金額を入れてしまうと、販促全体の効果が値引きの分だけ大きく見え、利益で比べたときに判断を誤ります。

分析の上では、値引き・特売は「価格」の動きとして、POP・試食・陳列・店頭イベントとは別の項目にします。どの週に、どの商品を、どれだけ値引きしたかの記録があれば、価格の影響と、それ以外の販促の影響を分けて推定できます。

先にそろえること2:費用には制作物・人件費・協賛金まで含める

Web広告の費用は媒体への支払いでほぼ決まりますが、店頭販促の費用は散らばっています。販促物の制作・印刷費、試食やデモ販売のスタッフの人件費、店頭イベントの運営費、小売に支払う協賛金や棚の確保の費用などです。このうち制作物の費用だけで効果を割ると、人手やお付き合いのかかる施策ほど費用対効果が良く見えます。施策ごとに「実際にかかった費用」を週単位で記録しておくことが、Web広告と同じ表に並べる前提になります。

市場全体で見ても、店頭の販促は小さな費目ではありません。電通の「2025年 日本の広告費」では、プロモーションメディア広告費は1兆7,184億円(前年比102.0%)で、そのうちPOPは1,540億円(同103.8%)でした。同じ発表では、食品や日用品で売り場戦略の強化が進んだことにも触れられています。なお、統計上の区分と社内の「販促費」の費目は一致しないことが多いため、自社の費用は自社の区分で集め直すのが確実です。

参照

結果を予算配分に落とす:総額を変えずに組み替える

推定結果を予算に落とすときは、まず総額を変えずに、追加分の効きが小さい施策から大きい施策へ、少しずつ組み替えるのが基本です。いきなりゼロにしたり倍にしたりせず、組み替えた後の数字で推定を確かめながら進めます。

総額を固定して、配分だけを動かす

「広告費が上がってきた。何を削るか」という問いに対しても、最初の一手は総額を減らすことではなく、総額を変えずに組み替えることをおすすめします。追加分の効きが小さい施策から一部を、効きが大きい施策へ移せば、同じ総額で売上(利益)が増える余地があります。そのうえで、組み替えてもなお効きが小さい部分が残っていれば、そこが削る候補です。配分を決める手順全体は広告予算の配分の決め方の記事で整理しています。

動かす幅は小さく、確かめながら

推定には幅があり、推定に使ったデータの範囲を大きく超える配分(過去に一度もやったことのない量)は、当たりにくくなります。たとえば、移す額は各施策の費用の1〜2割程度にとどめ、組み替えた期間の売上と費用を記録して、次の推定に入れる——という順で進めると、推定と実際のずれを小さくしていけます。店頭販促は小売との調整や制作の段取りがあるため、Web広告のようにすぐには増減できません。半期や四半期の販促計画のタイミングに合わせて組み替えるのが現実的です。

検証にかける手間は、予算の規模に合わせる

どこまで手間をかけて検証するかは、販促と広告の合計予算の規模によって変わります。予算規模ごとの現実的な組み立ては、広告費の規模別の効果検証の記事を参考にしてください。

店頭販促とWeb広告の分析を外注するときに確認する5項目

分析を外部に頼む場合は、会社の規模や知名度より先に、次の5項目に答えられるかを確認してください。店頭販促とWeb広告を同じ物差しで比べ、予算配分まで決めるために必要な条件です。

確かめること確かめる理由
①チラシ・イベント・Web広告を、同時に分析できるか施策ごとに別々に測ると、同じ売上を複数の施策が自分の成果として数え、合計が実際の売上を超えてしまうため。
②反響の数や相関ではなく、施策ごとに増えた売上を金額で出せるか反響の数や相関には「施策がなくても買っていた人」が含まれ、効果を大きく見せてしまうため。
③季節・曜日・天候・値引き・新商品などの影響を除いて見られるか売上は施策以外の理由でも動くため、それを除かないと施策の効果と混ざってしまうため。
④1円あたりどれだけ売上が増えたか(ROI)まで出せるか増えた売上の大きさだけでは、その施策が費用に見合っているかを判断できないため。
⑤次の予算配分案まで出せるか分析の結果を、次にどこへいくら使うかの判断に落とせないと、手元に数字が残るだけになるため。

あわせて、費用の目安と、どんなデータを用意すればよいか(週ごとの売上、施策ごとの週ごとの費用、値引きの記録など)を、見積もりの段階で聞いておくと比較しやすくなります。手元のデータでそもそも分析が成り立つかを、着手前に確認してくれるかどうかも確認ポイントです。

DOREGAの場合|店頭販促とWeb広告の費用を、同じ入力として分析する

TAMKOの「DOREGA」は、統計学による広告効果の分析サービスです。分析エンジンにはGoogleのオープンソース「Meridian」を使い、前後のデータ整形とレポート作成を独自ツールで標準化しています。

店頭販促の週ごとの費用とWeb広告の週ごとの費用を同じ入力として扱い、初回分析(標準範囲・15万円)で、施策ごとの売上への貢献と予算配分案を出します。標準範囲は1事業・主要KPI 1つで、週ごとの売上と施策別の費用を使います。Web広告のほか、チラシやイベントも入れられます。お渡しするのは、レポート・予算配分案・分析者による結果説明会で、必要なデータを共有いただいてから最短1週間です。分析結果は、広告運用の経験を持つ分析担当者が実際の出稿状況と照合してから納品し、分析が成立しない場合はそうお伝えします。

値引き・特売など価格の影響まで入れて分析する場合や、KPI・事業が複数ある場合は、本格分析(30万円〜)になります。費用と期間は着手前にご案内します。なお、単発の短期キャンペーンだけの評価は対象外で、費用や実施量がほとんど変わらない施策は効果を推定できない場合があります。手元のデータで分析が成り立つかは、無料の分析可否チェックで確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q01店頭販促の効果は、実施期間のPOS売上の伸びで測れば十分ではありませんか?

伸びの全部を販促の効果とみなすと、多くの場合は大きく見積もりすぎます。

同じ期間に値引き・Web広告・季節要因・競合の動きが重なっていれば、POSの伸びにはそれらの影響も入っています。実施していない店舗との比較か、各施策の影響を同時に推定する方法で、販促が上乗せした分だけを取り出す必要があります。

Q02試食やデモ販売のように、費用の大半が人件費の施策も比べられますか?

比べられます。人件費を含めた費用で比べることが前提です。

制作物の費用だけで割ると、人手のかかる施策ほど費用対効果が良く見えます。販売員の費用、本部側の準備工数、小売への協賛金まで含めた「その施策に実際にかかった費用」を週ごとに記録しておくと、Web広告と同じ表に並べられます。

Q03値引き・特売は販促費として一緒に扱ってはいけないのですか?

効果の出方が違うので、価格の影響として分けて扱うのが基本です。

値引きは費用を払うのではなく売価を下げる施策で、売上は増えても1個あたりの利益は減ります。POPや試食と同じ「販促費」に混ぜると、販促全体の効果が値引きの分だけ大きく見え、利益で比べたときの判断を誤ります。

Q04店舗数が少なく、実施/非実施を分けた比較ができない場合はどうすればいいですか?

週ごとの売上と費用の記録から、統計的に推定する方法があります。

店頭販促の費用が週によって増減していれば、その増減と売上の動きの関係から販促の貢献を推定できます。ただし、毎週ほぼ同じ量を続けている施策は、比べる材料がないため推定が難しくなります。

販促効果は平均ではなく「追加の1円の効き」で測り、Web広告と同じ物差しで配分を決める|まとめ

店頭販促はPOS、Web広告は管理画面と、別々の物差しで評価されていると、どちらに予算を回すべきかは決められません。比べるべきは、追加で1円使ったときに増える売上(利益)=増分と、増やすほど効きが鈍る飽和の度合いです。同じ物差しにするには、店舗・地域で実施/非実施を分けて比べるか、週ごとの売上と各施策の費用から貢献を同時に推定します。その前に、値引きは価格の影響として分け、費用には人件費や協賛金まで含めておく。結果は総額を変えずに少しずつ組み替え、組み替えた後の数字で確かめる。この順で進めれば、「何を残して何を削るか」に根拠を持って答えられるようになります。

この記事のポイント

  • 店頭販促はPOS、Web広告は管理画面で別々に評価されがちで、同じ売上を両方が自分の成果として数えていることもある。
  • 比べるべきは平均のROAS・CPAではなく、「追加で1円使ったときに増える売上(利益)」=増分。増やすほど効きが鈍る(飽和)ため、平均が良い施策ほど追加分の効きが小さいことがある。
  • 同じ物差しにする方法は、店舗・地域で実施/非実施を分けた比較と、週ごとの売上と各施策の費用から貢献を同時に推定する統計的推定の2つ。
  • 比べる前に、値引き・特売は価格の影響として別扱いにし、費用には制作物・人件費・協賛金まで含める。
  • 結果は総額を変えずに、追加分の効きが小さい施策から大きい施策へ少しずつ組み替え、組み替えた後の数字で確かめる。