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効果測定

POPの効果はどう測る?店頭POPで売上が増えたかを、値引きや陳列と分けて確かめる方法

店頭にPOPを付けたら、その週は売上が伸びた。けれど、本当にPOPのおかげだったのか、同じ週に始めた値引きや、棚の場所を変えたことが効いたのか、はっきりしない——小売の店長や販促担当、メーカーの店頭販促担当の方から、よく聞く悩みです。

たとえば、新商品の横に紹介POPを付けた週に、その商品の売上が前の週より3割増えたとします。ところが同じ週に、その商品は2割引の特売で、エンドの棚に移されていて、しかも気温が上がって季節の需要が伸び始めていた。この場合、3割のうちどれだけがPOPの分なのかは、売上の数字を見ているだけでは分かりません。

そこでこの記事では、POPの効果を値引き・陳列・季節と分けて確かめる方法を整理します。売上の伸びに何が混ざるのかを確かめたうえで、店・棚を分けて比べる方法と、期間を分けて比べる方法の2つを手順として説明し、制作の手間まで含めた費用対効果の計算までを扱います。

対象は、スーパー・ドラッグストア・専門店などの売り場づくりを担当している方と、小売の店頭で自社商品の販促を行っているメーカーの担当者です。統計の専門知識がなくても、自分の売り場で試せる水準で書いています。

広告効果の分析サービスを実際に提供している立場から解説します。

【結論】POPの効果は「置いた店・棚と、置かなかった店・棚の売上の差」で確かめる

POPを置いた週の売上を前の週や前年と比べると、値引きや陳列、季節の影響まで一緒に入ってしまいます。POPの効果は、同じ期間に、条件の近い「置いた店・棚」と「置かなかった店・棚」の売上の変化を比べ、その差(増分)で確かめます。店舗が少ない場合は、置く期間と外す期間を交互につくって比べます。

POPの効果を確かめるときに知りたいのは、「POPがなかったら売れなかった分が、どれだけあるか」です。これは、実際に置いた売り場の数字だけを見ていても分かりません。置かなかった場合の売上を、何らかの形で用意する必要があります。よく使われる比べ方を、混ざるものの違いで並べると次のようになります。

比べ方結果に混ざるものPOPの効果として使えるか
置いた週と、その前の週同じ時期の値引き・陳列の変更、季節の需要、天候、行事使えない(目安にとどまる)
置いた週と、前年の同じ週1年間の客数の変化、価格の変更、競合の出店・閉店使えない(目安にとどまる)
同じ期間の、置いた店・棚と置かなかった店・棚店・棚どうしの条件の違い(選び方で小さくできる)使える

店頭のPOPは、販促費の中で小さな費目ではありません。電通の「2025年 日本の広告費」では、POPの広告費は1,540億円(前年比103.8%)で、実店舗での購買の増加により、消費者との接点となる売り場のPOPが増えたと説明されています。費用が増えるほど、「どのPOPが売上に効いているか」を確かめておく意味も大きくなります。

参照

POPを置いた週の売上の伸びには、ほかの要因が混ざる

POPは単独で置かれることが少なく、値引き・特売、陳列や棚の場所の変更、季節の売り場替えと同じタイミングで付けられることがほとんどです。そのため、置いた週の伸びをそのままPOPの効果と読むと、大きく見積もりすぎます。

POPを置いた週の伸び +30万円(100万円→130万円)季節の需要+8万円値引き・特売+12万円陳列の変更+6万円POP+4万円POPの効果として数えてよいのはこの部分だけ説明用の架空の例です
前の週100万円から、POPを置いた週に130万円へ伸びた売上の内訳を示した図。伸びた30万円のうち、POPの分は4万円で、残りは季節・値引き・陳列の分。数値は説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません

値引き・特売と同時に置いている

いちばん混ざりやすいのが値引きです。「2割引」「本日限り」のように価格を知らせるPOPは、値引きとセットで付けられます。この場合、売上の伸びの大半は値引きによるもので、POPはそれを「知らせた」分だけを担っています。

早稲田大学の研究者らが中古品店の売り場で行った実験では、音楽CDの4つの棚に「値引きの有無×価格表示POPの有無」の4条件を割り当て、期間ごとに棚と条件を入れ替えて12日間の売上を比べました。結果は、値引きは単独で売上を増やしましたが、価格表示POPは単独では統計的に意味のある効果が見られず、値引きと組み合わせたときに、値引きだけの場合の約2倍の売上になりました。つまり、価格を知らせるPOPの効果は、値引きがあって初めて表れることがあります。

ここから言えるのは、先に「何をPOPの効果と呼ぶか」を決めておく必要があるということです。値引きを知らせる力を知りたいのか、値引きのない普段の売り場でPOPが効くかを知りたいのかで、比べる条件が変わります。値引きそのものの効果の測り方は、値引き・セールの効果測定の記事で扱っています。

陳列や棚の場所も変えている

POPを付けるときに、商品をエンドに移す、並べる列(フェイス)を増やす、表紙が見えるように置き直すといった変更を同時に行うことも多いはずです。陳列の変更はそれだけで売上を動かします。同じ研究の書籍の実験では、表紙を見せて並べる陳列と、内容を紹介するPOPが、それぞれ単独で売上をおよそ2倍にしていました。両方を同時に変えてしまうと、どちらが効いたのかは分けられません。

中小企業向けの公的な相談窓口であるJ-Net21のQ&Aでも、POPは作りの良し悪しで効果に差が出るものとして扱われています。だからこそ、POPを変えた効果を確かめるときは、陳列はそのままにして、POPだけを変えるのが基本です。

季節・天候・行事

季節商品の売り場替えに合わせてPOPを付け替えると、需要が伸び始める時期と重なります。気温の変化、雨や台風、連休・給料日・地域の祭りなども、POPの有無にかかわらず売上を動かします。店頭イベントや試食と同じ週にPOPを替えた場合も同じです。イベントの効果の分け方はイベントの売上効果の記事を参照してください。こうした要因は、同じ期間に置いた店・棚と置かなかった店・棚を比べれば、両方に同じようにかかるため差し引けます。

参照

方法1:POPを置く店・棚と置かない店・棚を比べる

条件の近い店(または棚)を2つの組に分け、一方にだけPOPを置き、同じ期間の売上の変化を比べます。季節や天候は両方の組に同じようにかかるので、差をPOPの効果として読みやすい方法です。

比べる店の選び方

比べる店は、売上の規模、客層、立地(駅前か郊外か)、競合店の状況が近いものを選びます。同じチェーンの中で、置く店と置かない店を交互に、またはくじのような方法で振り分けると、「売れている店にだけ置いた」という偏りを避けられます。1店舗ずつより、数店舗ずつの組にしたほうが、1店だけの事情(工事や近くの催し)に左右されにくくなります。

1つの店の中で棚を分けて比べる場合は、売れ方の似た商品や同じカテゴリの別の棚を対照群にします。このとき気をつけたいのが、POPを付けた商品に、隣の商品のお客さまが移っただけというケースです。その場合、POPを付けた商品の売上は伸びても、カテゴリ全体の売上は変わりません。メーカーであれば自社商品の伸びで十分なこともありますが、小売にとって意味があるのはカテゴリや店全体の増分です。どちらで評価するかを先に決めておきます。

同じ期間で比べる

比べるのは、売上の水準ではなく「変化」です。まず、POPを置く前の数週間で、2つの組の売上がほぼ同じように動いていたことを確かめます。そのうえで、置いた期間に、置いた組の売上が置かなかった組よりどれだけ多く伸びたかを見ます。期間中は、どちらの組も価格と陳列を揃えておきます。

たとえば、対象カテゴリの1店舗あたりの週の売上が、どちらの組も置く前は50万円だったとします。POPを置いた4週間で、置いた組は平均53万円(6%増)、置かなかった組は平均51万円(2%増)でした。置かなかった組の伸び(2%)は季節などによる分と考えられるので、POPの効果は差の4ポイント、金額にして1店舗あたり週2万円が目安になります(数値は説明用の架空の例です)。

方法2:置く期間と外す期間を交互につくって比べる

比べる店がない場合は、同じ売り場でPOPを置く週と外す週を何度か入れ替え、それぞれの週の売上の平均を比べます。1回の前後比較と違い、繰り返すことで季節やたまたまの動きをならせます。

1回だけ「置く前」と「置いた後」を比べると、その間に起きた季節の変化などが全部POPの効果に入ってしまいます。置く・外すを交互に繰り返せば、季節の流れは両方の期間に同じようにかかり、差し引きやすくなります。下の表は、1店舗で8週間、1週ごとにPOPを付け外しした場合の例です。

期間各週の売上平均
POPを置いた週(1・3・5・7週目)21.0万円/20.8万円/21.2万円/21.0万円21.0万円
POPを外した週(2・4・6・8週目)19.8万円/20.2万円/19.6万円/20.4万円20.0万円
差(POPの効果の目安)—週1.0万円(約5%)

先に紹介した早稲田大学の研究者らの実験も、この考え方を棚に広げたものです。4つの棚と4つの期間を用意し、期間ごとに各棚の条件を入れ替えることで、「その棚がたまたま売れる場所だった」影響と「その期間がたまたま売れた」影響の両方をならしていました。似た棚が複数あるなら、方法1と方法2を組み合わせたこの形が、少ない売り場でも結果を出しやすい方法です。

注意点は3つあります。1つ目は、期間中に価格と陳列を動かさないこと。2つ目は、POPの効果が外した後も少し残ることです。POPで商品を覚えたお客さまは、外した週にも買うことがあるため、差は小さめに出ます。3つ目は、慣れです。同じPOPを長く置いていると目に留まらなくなるため、置き続けたときの効果は、試した期間より小さくなることがあります。

なお、多くの店舗で店頭販促を続けていて、その費用や量が週によって増減している場合は、週ごとの売上と施策ごとの費用から、Web広告など他の施策と一緒に貢献を推定する方法もあります。この考え方は販促効果の測り方の記事で扱っています。

POPの費用対効果:制作の手間まで含めて計算する

POPの費用対効果は、増えた売上ではなく増えた粗利と、印刷代に作業時間まで含めた費用で計算します。印刷代だけで割ると、手のかかるPOPほど費用対効果が良く見えてしまいます。

POPの費用は、印刷代や用紙代だけではありません。デザインや文面を考える時間、手書きなら1枚ずつ書く時間、店舗での設置・交換・撤去の作業時間がかかります。店舗数が多いほど、この作業時間の合計は大きくなります。一方、POPで増えた売上がそのまま利益になるわけではないので、売上の増分に粗利率を掛けた「増分粗利」で比べます。方法1の例(1店舗あたり週2万円の増分)を、20店舗で4週間続けた場合で計算すると次のとおりです。

項目計算金額
増分売上週2万円×20店舗×4週160万円
増分粗利160万円×粗利率25%40万円
制作の費用デザイン・文面10時間×時給換算3,000円+印刷3,000円×20店舗9万円
店舗での作業の費用設置・交換・撤去2時間×時給換算1,500円×20店舗6万円
差し引き40万円−(9万円+6万円)25万円(費用1円あたり増分粗利 約2.7円)

この例で印刷代の6万円だけを費用にすると、費用1円あたりの増分粗利は約6.7円となり、実際の2倍以上に見えます。手書きPOPや、店ごとに文面を変えるPOPほど作業時間の割合は大きくなるので、作業時間を入れるかどうかで判断が逆になることもあります。

値引きを知らせるPOPの場合は、もう1つ注意があります。値引きで減った利益は、POPではなく値引きの費用として、別に差し引いて考えます。値引きがなくても買っていたお客さまにまで値引きした分を含めると、売上が伸びても利益は減っていることがあるからです。

DOREGAの場合|店頭販促の効果はほかの施策と並べて扱う

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。分析エンジンにはGoogleのオープンソース「Meridian」を使い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。POP1枚ごとの文面やデザインを比べるのではなく、POPを含む店頭販促にかけた週ごとの費用を、Web広告やチラシと同じ入力の1つとして扱い、売上への貢献を並べて出す分析です。方法1・方法2が「このPOPに効果があるか」を確かめるのに対し、こちらは「店頭販促とほかの施策のどこにお金を回すか」を決めるために使います。

初回分析(15万円・標準範囲の分析)の範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」で、店頭販促の費用もこの中に入れられます。お渡しするものは「レポート・予算配分案・結果説明会」、期間は「最短1週間(必要データ共有後)」です。POPと同時に行った値引き・特売の影響まで分けて見たい場合は、範囲に「価格や販促の影響」を含む本格分析(30万円〜・標準範囲を超える分析)になり、費用と期間は着手前にご案内します。

なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。1回きりのPOP企画の効果を確かめたい場合は、この記事の方法1・方法2のほうが向いています。店頭販促の費用が毎週ほとんど変わらない場合も、効果を取り出せないことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q01店舗が1つしかない場合でも、POPの効果は測れますか?

測れます。置く期間と外す期間を交互につくる方法(方法2)が向いています。

1店舗でも、POPを付ける週と外す週を何度か入れ替え、それぞれの週の売上の平均を比べれば、POPの分の差が見えてきます。売り場に似た商品の棚が複数あるなら、棚ごとにPOPの有無を入れ替える形にすると、同じ週の中でも比べられます。どちらの場合も、価格と陳列は期間中に変えないことが前提です。

Q02手書きPOPと印刷POPでは、効果に違いはありますか?

一概には言えないので、自分の売り場で比べるのが確実です。

同じ商品・同じ場所で、手書きの週と印刷の週を交互につくれば、方法2と同じ考え方で比べられます。比べるときは売上の差だけでなく、作るのにかかった時間も費用に入れてください。手書きは1枚ごとの作成時間がかかるため、売上の差が小さければ、印刷のほうが費用対効果は良くなることがあります。

Q03デジタルサイネージにも、同じ測り方は使えますか?

使えます。表示を切り替えやすい分、期間を分けて比べる方法はむしろやりやすくなります。

サイネージは、表示する内容を時間帯や日ごとに切り替えられるので、「商品の紹介を流す日」と「流さない日」を交互につくる比較がしやすい媒体です。費用には、機器の購入費やリース料を使う期間で割った額と、表示する動画や画像の制作費を入れます。

Q04何週間くらい比べれば、結果を信じてよいですか?

週ごとの売上のぶれより、POPあり・なしの差がはっきり大きく見えるまでです。

目安としては、POPを置く前の数週間で比べる店・棚の動きが揃っていることを確かめ、置いてからも4週間程度は続けて見ることをおすすめします。もともと売れる数が少ない商品は、週ごとの売上のぶれが相対的に大きいため、もっと長い期間か、もっと多くの店舗が必要になります。1〜2週間で結論を出すと、たまたまの差を効果と読み違えやすくなります。

POPの効果は、置いた店・棚と置かなかった店・棚の差で確かめる|まとめ

POPを置いた週の売上の伸びには、値引き・特売、陳列の変更、季節・天候・行事の影響が混ざっているため、前の週や前年と比べただけではPOPの分は分かりません。POPの効果は、同じ期間に、条件の近い置いた店・棚と置かなかった店・棚の売上の変化を比べた差で確かめます。店舗が少なければ、置く週と外す週を交互につくって平均を比べます。どちらの方法でも、期間中は価格と陳列を揃え、値引きを知らせるPOPなら何を効果と呼ぶかを先に決めておきます。そのうえで、増えた粗利を、作業時間まで含めた費用と比べれば、続けるべきPOPと見直すべきPOPを数字で分けられるようになります。

この記事のポイント

  • POPを置いた週の売上の伸びには、値引き・特売、陳列や棚の場所の変更、季節・天候・行事の影響が混ざる。前の週や前年と比べただけでは、POPの分を取り出せない。
  • POPの効果は、同じ期間に「置いた店・棚」と「置かなかった店・棚」の売上の変化を比べた差で確かめる。比べる店・棚は条件が近いものを選び、置く前の動きが揃っているかを先に確かめる。
  • 店舗が少ない場合は、POPを置く期間と外す期間を交互につくり、それぞれの期間の平均を比べる。期間中は価格と陳列を変えないことが前提。
  • 値引きを知らせるPOPは、値引きと一緒になって初めて効くことがある。何を「POPの効果」と呼ぶかを先に決め、値引きの効果とは分けて記録する。
  • 費用対効果は、増えた売上ではなく増えた粗利で計算し、費用には印刷代だけでなく、デザインや手書きの時間、店舗での設置・交換・撤去の作業時間まで入れる。