インフルエンサー施策の効果はどう測る?いいね数やクーポンの先にある「売上にいくら効いたか」の確かめ方
インフルエンサーに商品を紹介してもらったあと、報告書に並ぶのは再生数、いいね数、保存数、そして専用クーポンの利用件数ではないでしょうか。数字はたくさんあるのに、「結局、売上はいくら増えたのか」には誰も答えられない。そんな状態のまま次の依頼を決めていないでしょうか。
たとえば、フォロワー20万人のインフルエンサーにスキンケア商品を紹介してもらい、動画は30万回再生、専用クーポンは150件使われたとします。ところが、その週は自社ECの売上も、ドラッグストアでの販売も、ふだんより明らかに伸びていました。クーポンを使わずに買った人、動画を見て商品名を検索した人、店頭で手に取った人は、150件のどこにも入っていません。
そこでこの記事では、再生数・いいね数・クーポンで分かる範囲を整理したうえで、インフルエンサー施策で売上がどれだけ増えたかを確かめる3つの方法と、増えた売上から費用対効果を出す考え方を順に解説します。
対象は、化粧品・食品・日用品などの消費財メーカーやD2Cブランドで、インフルエンサー施策を企画・発注しているマーケティング担当者です。統計の専門知識がなくても、何を記録し、何と何を比べればよいかを判断できる水準で書いています。
広告効果の分析サービスを実際に提供している立場から解説します。
【結論】インフルエンサー施策の効果は「投稿があった時期となかった時期の売上・指名検索の差」で測る
インフルエンサー施策の売上への効果は、投稿があった時期となかった時期で、売上と指名検索(商品名やブランド名での検索)がどれだけ違ったかで確かめます。再生数やいいね数は「どれだけ届いたか」、クーポンの利用数は「手がかりを残して買った人の数」で、どちらも売上が増えた分とは別のものです。
インフルエンサー施策の報告では、届いた量と反応の量が中心になりがちです。けれど、次の依頼を増やすか減らすか、Web広告とどちらに予算を回すかを決めるには、「その施策がなかったら売上はいくらだったか」と比べた差、つまり増分が必要です。
| 指標 | 答えられる問い | 答えられない問い |
|---|---|---|
| 再生数・表示回数 | 投稿がどれだけの人に届いたか | 届いた人のうち何人が買ったか |
| いいね・保存・コメント | 投稿にどれだけ反応があったか | 反応した人が買ったか、もともと買う人だったか |
| クーポン・専用URLの利用 | 手がかりを残して買った人の数 | クーポンなしで買った人、施策がなくても買った人の区別 |
| 指名検索の増え方 | 投稿をきっかけに関心を持った人がどれだけ増えたか | 検索した人が実際に買ったか(売上と合わせて見る) |
| 売上の増分 | 施策で売上がいくら増えたか | (費用と合わせて費用対効果を出す) |
再生数・いいね数・クーポン利用で分かること
再生数やいいね数は、投稿の届き方や中身の良し悪しを比べるのに向いた指標です。クーポンや専用URLは購入まで追える点で一歩進んでいますが、数えられない購入と、数えてしまう余計な購入の両方があり、売上が増えた分とはずれます。
再生数・いいね数:投稿の中身を比べる指標
再生数やいいね数は、どのインフルエンサーの、どの切り口の投稿が見られたかを比べるのに役立ちます。同じ商品を複数の人に紹介してもらったとき、どの見せ方が反応を取ったかを知るには十分な材料です。一方で、反応が多い投稿ほど売れたとは限りません。商品に関心のない層に面白がられて伸びた投稿もあれば、反応は控えめでも、買う気のある人に深く届いた投稿もあります。
クーポン・専用URL:数えられない購入と、余計に数える購入
専用クーポンや専用URLは、購入までつながった人を数えられる便利な仕組みです。ただし、数える範囲には二方向のずれがあります。
1つは、数えられない購入です。動画を見て商品名を検索し、クーポンを使わずに公式ECやモールで買った人、店頭で見かけて手に取った人、数週間後に思い出して買った人は、クーポンの利用数に入りません。店頭で売られている商品ほど、この取りこぼしは大きくなります。
もう1つは、余計に数える購入です。もともと買うつもりだった既存客が、クーポンがあると知って使えば、その購入も施策の成果として数えられます。この場合、売上は増えておらず、値引きの分だけ利益が減っています。
クーポンの利用数が多いか少ないかは、こうしたずれの向きと大きさが分からないため、そのまま売上への効果としては使えません。
方法1:投稿の前後で、指名検索と売上の動きを見る
いちばん手軽なのは、投稿日の前後で、商品名・ブランド名の検索数と売上がふだんの水準からどれだけ上に出たかを見る方法です。ほかの施策や季節と重なっていない時期なら、効果のおおよその大きさをつかめます。
見るデータ
用意するのは、日ごと(少なくとも週ごと)の指名検索の数と売上です。指名検索は、自社サイトであればGoogle Search Consoleの検索クエリで、商品名やブランド名を含む語の表示回数・クリック数を確認できます。世の中全体の関心の動きは、Googleトレンドでも大まかに追えます。売上は公式ECの注文、モールの売上、取引先から共有される店頭の販売データなど、取れるものを日付で揃えます。
読み方
投稿のない時期の水準を「ふだんの水準」とし、投稿後にそこからどれだけ上に出たかを見ます。投稿の影響は当日に集中するとは限らず、保存された投稿が後から見られたり、検索してから購入まで数日かかったりするため、少なくとも2〜3週間は追います。
落とし穴
この方法の弱点は、投稿と同じ時期にほかの出来事があると、区別がつかないことです。同じ週にセールやWeb広告の強化、テレビでの紹介、季節の需要の山が重なれば、その分も投稿の効果に見えてしまいます。複数のインフルエンサーの投稿が同じ週に集中している場合も、誰の分かは分けられません。前後比較は「効いていそうか」の当たりをつける方法と考え、確かめるには方法2か方法3に進みます。
方法2:投稿のある時期とない時期をつくって比べる
投稿を特定の期間に集め、投稿のない期間を意図してつくることで、「投稿がなかった場合」を比べる相手として用意する方法です。時期で分けるほか、紹介する商品と紹介しない商品で分ける形もあります。
時期で分ける
たとえば、4週間は投稿を集中させ、次の4週間は投稿を入れない、という区切りを何度か繰り返します。投稿のある期間とない期間で売上と指名検索の水準を比べれば、偶然の上下に左右されにくい比較になります。依頼の時期を年間でばらばらに入れるより、まとめて入れたほうが、効果のある期間とない期間がはっきりします。
商品や地域で分ける
複数の商品を扱っている場合は、紹介する商品と、性質の近い紹介しない商品の売上の動きを比べる方法もあります。インフルエンサーのフォロワーは全国にいるため、地域で分けるのは通常は難しいですが、投稿を広告として配信する場合は配信地域を指定できることが多く、配信する地域としない地域で比べる設計も考えられます。
気をつけること
投稿は消えずに残るため、効果は投稿のない期間にも少しずつ続きます。投稿のない期間の最初の数週間は、前の投稿の影響が残っている前提で読みます。また、投稿を止める期間には、その分の売上を失う可能性があります。止めたときに売上がどう動くかの考え方は、SNS運用をやめたら売上はどうなるかの記事でも扱っています。
方法3:報酬・商品提供の費用を週ごとに記録し、ほかの施策と一緒に推定する
インフルエンサーへの報酬や商品提供の費用を週ごとの表にして、Web広告やチラシなどの費用、季節、セールと同じ表に並べ、売上をそれぞれの貢献に分けて推定する方法です。ほかの施策と同じ単位で比べられるので、予算をどこに回すかの判断に使えます。
記録する項目
方法3の材料は、日々の発注記録をそのまま週ごとに並べたものです。
| 項目 | 中身 | 補足 |
|---|---|---|
| 投稿日 | 投稿・配信が出た日 | 予定日ではなく実際に出た日 |
| 報酬 | インフルエンサーに支払った金額 | 投稿が出た週に計上する |
| 商品提供 | 提供した商品の原価と送料 | 報酬がない依頼でも記録する |
| 二次利用・広告配信 | 投稿を広告として配信した費用 | 報酬とは分けて記録する |
| 届いた量 | 再生数・表示回数 | 費用と並べて、届き方の違いを見る |
ほかの施策と一緒に推定する理由
インフルエンサーの投稿がある週は、セールや新商品の発売、Web広告の強化と重なることがよくあります。インフルエンサー施策だけを取り出して売上と比べると、重なった施策の分まで投稿の効果に入ってしまいます。そこで、週ごとの売上を「施策がなくても立つ売上」「季節・セールなどの影響」「施策ごとの貢献」に分けて推定します。こうした推定は、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる統計的な手法で行うのが一般的です。
条件と限界
この方法が使えるのは、投稿の量や費用に週ごとの増減があり、その記録が1年分ほどある場合です。単発の1投稿だけでは、比べる材料が足りず推定できません。また、結果は幅のある推定値として出ます。
自社アカウントの投稿のように費用のかからない施策も、投稿数などを並べれば売上への貢献は推定できますが、費用がないため費用対効果は出せません。自社のSNS運用の測り方は、SNSアカウント運用の売上効果の記事で解説しています。
インフルエンサー施策の費用対効果を、増えた売上から出す
費用対効果は、クーポン経由の売上ではなく、増えた売上(増分)を、報酬・商品提供・二次利用・社内の作業時間まで含めた費用で割って出します。利益で判断するなら、増えた売上に粗利率を掛けて費用と比べます。
費用に入れるもの
インフルエンサー施策の費用は、報酬だけではありません。提供した商品の原価と送料、投稿を広告として配信する費用や二次利用料、候補の選定・やり取り・投稿内容の確認にかかった社内の作業時間も含めます。報酬のない商品提供だけの依頼は「費用ゼロ」に見えやすいため、原価と送料を必ず記録しておきます。
計算例
説明用の架空の例です。ある月に複数のインフルエンサーへ依頼し、費用の合計が80万円だったとします。
| 項目 | 金額・値 | 計算 |
|---|---|---|
| 報酬 | 50万円 | — |
| 商品提供(原価・送料) | 10万円 | — |
| 二次利用・広告配信 | 15万円 | — |
| 社内の作業時間 | 5万円 | — |
| 費用の合計 | 80万円 | 50+10+15+5 |
| クーポン経由の売上 | 60万円 | クーポン経由で見たROAS 75%(60÷80) |
| 推定した増分売上 | 240万円 | 増分ROAS 300%(240÷80) |
| 増えた粗利(粗利率40%) | 96万円 | 240×0.4 |
| 費用を差し引いた利益 | +16万円 | 96−80 |
クーポン経由の売上だけで見ると、費用の75%しか回収できていない施策に見えます。一方、クーポンを使わずに買った人や店頭で買った人まで含めた増分で見ると、売上は費用の3倍で、粗利でも費用を上回っています。反対に、クーポン利用は多いのに増分が小さい、ということもあり得ます。どちらの場合も、判断を分けるのは増分です。
増分ROASの考え方と計算は、増分売上・増分ROASの記事で詳しく解説しています。
DOREGAの場合|インフルエンサー施策もほかの施策と並べる
TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事の方法3——報酬・商品提供の費用を週ごとに並べ、ほかの施策と一緒に売上への貢献を推定する分析——を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。
インフルエンサーへの報酬や商品提供は、費用のある施策として、Web広告などと同じ入力で初回分析(15万円・標準範囲の分析)に入れられます。範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」で、お渡しするものはレポート・予算配分案・結果説明会、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。インフルエンサー施策の貢献を、ほかの施策と同じ単位で並べて確かめられます。
自社アカウントの運用など費用のない施策を含める場合や、KPIや事業が複数ある場合は、標準範囲を超える分析として本格分析(30万円〜)になり、費用と期間は着手前にご案内します。SNSアカウント運用は売上への貢献までで、費用がないため配分案には入りません。なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。
よくある質問(FAQ)
Q01単発の1投稿だけで、売上への効果を評価できますか?
大まかな当たりはつけられますが、確かめるのは難しいです。
1回の投稿でも、投稿の前後で指名検索や売上がふだんの水準からどれだけ上に出たかは見られます(方法1)。ただし、同じ時期のセールや季節の影響と分けるための材料が1回分しかないため、週ごとのデータから貢献を推定する方法には向きません。効果を確かめたい場合は、投稿のある期間とない期間をつくって比べるのが確実です。
Q02アフィリエイトの成果とは何が違いますか?
アフィリエイトの成果は「リンク経由で記録された購入」で、売上が増えた分とは別です。
成果報酬の計算に使う購入記録は、リンクを通った購入だけを数えるため、リンクを通らずに買った人は入らず、もともと買うつもりだった人も含まれます。報酬の支払いには必要な記録ですが、施策を続けるかどうかの判断には、投稿のない時期と比べた増分を使います。
Q03ステマ規制で気をつけることはありますか?
広告であることを分かるように表示してもらうことが前提です。
消費者庁によると、2023年10月1日から、広告であることを一般消費者が判別しにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)は景品表示法違反となり、規制の対象は依頼した事業者(広告主)です。表示の具体的な方法は、消費者庁の公表資料で確認してください。
Q04自社のSNS運用の効果と分けられますか?
投稿日と費用が記録されていれば、分けて推定できることが多いです。
インフルエンサーの投稿と自社アカウントの投稿は、出た日も量も違うため、週ごとに別の列として並べれば、それぞれの売上への貢献を分けて推定できます。ただし、両方がいつも同じ週に集中していると分けにくくなります。また、費用のない自社アカウントの運用は、貢献は出せても費用対効果は出せません。
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」2023年10月1日施行。規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)
インフルエンサー施策は、いいね数ではなく投稿の有無による売上の差で測る|まとめ
再生数やいいね数は投稿がどれだけ届き、反応されたかを示す指標で、クーポンや専用URLの利用数は手がかりを残して買った人の数です。どちらも、インフルエンサー施策で売上がどれだけ増えたかとは一致しません。売上への効果は、投稿があった時期となかった時期の売上と指名検索の差で確かめます。手軽なのは投稿前後の動きを見る方法で、確かめるには投稿のない時期を意図してつくるか、報酬・商品提供の費用を週ごとに記録してほかの施策と一緒に推定します。費用対効果は、増えた売上を、商品提供や二次利用、社内の作業時間まで含めた費用で割って判断します。
この記事のポイント
- 再生数・いいね数は「届いた量と反応」、クーポン・専用URLの利用数は「手がかりを残して買った人の数」。どちらも売上が増えた分(増分)とは別の数字。
- クーポンの利用数には、クーポンを使わずに買った人や店頭で買った人が入らず、もともと買うつもりだった人が入る。ずれは両方向に起きる。
- 手軽なのは、投稿の前後で指名検索と売上がふだんの水準からどれだけ上に出たかを見る方法。ほかの施策や季節と重なると区別できないため、当たりをつける用途に向く。
- 確かめるには、投稿のある時期とない時期を意図してつくって比べるか、報酬・商品提供の費用を週ごとに記録し、Web広告などと同じ表に並べて貢献を推定する。
- 費用対効果は、増えた売上を、報酬・商品提供・二次利用・社内の作業時間まで含めた費用で割って出す。クーポン経由の売上だけで判断すると、施策の価値を大きくも小さくも見誤る。