SNS運用をやめたら売上はどうなる?「やめたら伸びた」話の正体と、やめる前に貢献を確かめる方法
毎週の投稿に時間をかけているけれど、その手間や外注費に見合う売上が出ているのかが分からない。いっそやめてしまいたい。でも、やめた途端に売上が落ちたらと思うと踏み切れない——自社のInstagramやX、LINE公式アカウントを続けている会社で、よく聞く迷いです。
検索してみると、「SNSをやめたら売上が上がった」という体験談がいくつも見つかります。投稿づくりに使っていた時間を接客や商品の改善に回したら業績が伸びた、という内容です。背中を押してくれる話ですが、同じことが自社でも起きるかどうかは、また別の問題です。
そこでこの記事では、「やめたら伸びた」という結果がなぜ起きるのかを分解したうえで、SNS運用をやめると売上がどう動くのか、やめる前に売上への貢献を確かめる3つの方法、人件費・外注費まで含めたコストとの比べ方、全部やめる前に検討したい選択肢を順に整理します。
対象は、店舗や一般消費者向けの商品を扱う会社で、SNSアカウントを自社で運用している、または運用代行に毎月の費用を払っている担当者・経営者の方です。
広告やSNSの売上への効果を分析するサービスを提供している立場から、判断の手順を中心に解説します。
【結論】やめるかは「投稿量が変わった週に、売上や指名検索が動いたか」で決める
フォロワー数やいいね数を見ても、やめたあとに売上がどうなるかは分かりません。見るべきは、投稿を増やした週・減らした週に、売上や指名検索(店名・社名・商品名での検索)が動いたかどうかです。動いていなければ、やめても影響は小さい可能性が高く、動いていれば、やめる前に続け方を見直す価値があります。
フォロワー数やいいね数は、投稿がどれだけ見られ、反応されたかを表す数字です。SNS運用をやめたときに起きるのは「見られる機会がなくなること」で、それが売上にどれだけ響くかは、反応の多さとは別に確かめる必要があります。フォロワーが1万人いても、その多くが商圏の外に住んでいる、懸賞のときだけ集まった、といった場合は、やめても売上はほとんど変わりません。
判断の目安は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 確かめた結果 | 考えられること | 次の動き方 |
|---|---|---|
| 投稿量が動いた週に、売上や指名検索も動いた | SNSが検索や来店のきっかけになっている可能性がある | 全部やめる前に、頻度や範囲を絞って続ける形を検討する |
| 季節やセールを除くと、投稿量を変えても動かない | 売上への貢献は小さい可能性が高い | やめる、または最低限の情報発信だけにする候補になる |
| 投稿量がずっと一定で、比べられる週がない | まだ判断の材料がない | 投稿を減らす期間をつくって、動きを確かめる |
「SNSをやめたら売上が上がった」話の正体
体験談の多くは、実際に起きたことを書いたものです。ただ、売上が伸びた理由は「SNSをやめたこと」そのものより、空いた時間の使い道や、もともとの運用の状態にあることが多く、どの会社にも同じ結果が出るとは限りません。
空いた時間を、売上に近い仕事に回した
投稿は、見た目以上に時間を使います。企画を考え、写真や動画を撮り、文章を整え、コメントやメッセージに返信する。小さな会社では、これが週に数時間から十数時間になることも珍しくありません。その時間を接客、商品の改善、既存のお客さまへの連絡、広告の見直しなどに回せば、売上が伸びるのは自然なことです。
この場合、売上を伸ばしたのは「SNSをやめたこと」ではなく「別の仕事を増やしたこと」です。SNSが売上に何も寄与していなかったとまでは言えず、SNSで失った分よりも、新しく増やした仕事で得た分のほうが大きかった、という可能性もあります。
そもそも売上に効いていない運用だった
投稿が買う人に届いていなかったケースもあります。フォロワーの多くが同業者や懸賞目当ての人だった、商品と関係の薄い投稿が中心だった、といった状態です。この場合は、やめても失うものが小さく、手間が減った分だけ得をします。
運用のやり方だけでなく、商品とSNSの相性もあります。法人向けの商品や、困ったときに検索して選ばれるサービスは、SNSで見かけたことが購入のきっかけになりにくいことがあります。逆に、見た目で選ばれる商品や、近所の人が通う店では、SNSがきっかけになりやすい傾向があります。
自社に当てはまるかは、測らないと分からない
ネットで見つかる体験談は、やめたあとに業績が伸びた会社の話が中心になりやすく、やめて売上が落ちた会社の話は表に出にくいものです。また、やめた時期に季節の山や値上げ、新商品の発売が重なっていれば、売上の変化がどれのせいなのかは分かりません。自社でやめて大丈夫かどうかは、自社のデータで確かめるのが確実です。
SNS運用をやめると、売上はどう動くか
SNSが売上に効いている場合、やめた影響はまず指名検索や来店のきっかけが減る形で表れ、売上にはしばらく遅れて出てくることが多くなります。SNS広告とアカウント運用では止めたときの動き方が違うため、分けて考えます。
指名検索・来店のきっかけが減る
SNSの投稿を見た人は、その場で買うよりも、あとで店名や商品名を検索したり、近くを通ったときに来店したりすることが多くあります。投稿をやめると、フォロワーがすぐに離れるわけではありませんが、タイムラインに表示される機会がなくなり、思い出してもらうきっかけが減ります。その分が、指名検索や来店の数として少しずつ表れます。
SNSは、多くの人にとって日常的に使う場所になっています。総務省の情報通信白書では、LINEの利用率は2024年に94.9%となり、XやInstagramも50代で4割を超えて利用されていると報告されています。お客さまの年代によっては、SNSが店や商品を思い出す主な接点になっていることもあります。
- 総務省「令和7年版 情報通信白書|コミュニケーションツール・SNS」LINEの利用率の推移と、X・Instagramの年代別の利用状況
影響は遅れて出る
投稿をやめた翌週に売上が落ちなかったからといって、影響がないとは限りません。過去の投稿は残り、見た人の記憶もしばらく続くため、影響は数週間から数か月かけて表れることがあります。反対に、季節で売上が下がる時期にやめると、その下がり方がSNSのせいに見えてしまうこともあります。
SNS広告とアカウント運用は分けて考える
「SNSをやめる」が、SNS広告を止めることなのか、アカウントの投稿をやめることなのかで、考え方は変わります。SNS広告は費用を止めれば配信もほぼ同時に止まり、影響も比較的早く出ます。アカウント運用には出稿費用がなく、担当者の時間や外注費で動いています。どちらをやめるのかによって、確かめる材料も、代わりにできることも違います。広告を減らしたときの影響の考え方は、広告費を削ったら売上はどうなるかの記事で扱っています。
やめる前に、売上への貢献を確かめる3つの方法
確かめ方は、投稿を止める・減らす期間をつくって比べる方法、過去の投稿量と売上・指名検索を並べる方法、ほかの施策と一緒に売上を要因に分ける方法の3つです。手軽さと確かさが違うため、手元のデータと使える時間に合わせて選びます。
| 方法 | 手間 | 確かさ | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| 1.止める・減らす期間をつくる | 中(数週間待つ) | 時期を選べば高め | これからの売上と指名検索の記録 |
| 2.投稿量と売上・指名検索を並べる | 小 | 目安にとどまる | 過去の週ごとの投稿数・売上・指名検索 |
| 3.ほかの施策と一緒に要因に分ける | 大 | 高め(データの条件による) | 1〜2年分の週ごとの売上と施策の記録 |
方法1:投稿を止める・減らす期間をつくって比べる
4〜8週間ほど、投稿を止めるか半分に減らし、その前後で売上と指名検索がどう動いたかを比べます。前年の同じ時期の動きも並べておくと、季節の影響と見分けやすくなります。店舗ごとにアカウントがある場合は、一部の店舗だけ投稿を減らし、続けた店舗と比べる方法もあります。
いきなり全部止めるのが不安なら、半分に減らすだけでも比べられます。大切なのは、セールや新商品の発売、広告の増減と重ならない時期を選ぶことです。重なってしまうと、売上の変化がどれのせいか分からなくなります。
方法2:投稿量と、売上・指名検索の動きを並べる
過去の週ごとの投稿数(分かればリーチも)、売上、指名検索の数を1つの表に並べ、投稿が多かった週に指名検索や売上が増えているかを見ます。指名検索の数は、Googleの場合はSearch Consoleの検索パフォーマンスで、検索された語句ごと・期間ごとに確認できます。
この方法は手軽ですが、目安にとどまります。セールの告知で投稿を増やした週は、売上の伸びが値引きによるものか投稿によるものかを分けられないためです。並べてみて関係がまったく見えなければ、方法1で確かめる、という使い方が現実的です。
- Google「Search Console ヘルプ|検索パフォーマンス レポート」検索クエリごとのクリック数・表示回数と、期間の切り替え
方法3:ほかの施策と一緒に、売上を要因に分ける
週ごとの売上を、季節、広告、セール、SNSなどの要因ごとに分けて、統計的に推定する方法です。マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる手法で、広告やセールと同じ時期に投稿量が動いていても、それぞれの分を分けやすいのが利点です。その分、1〜2年分の週ごとの記録が必要で、分析にも手間がかかります。
推定のしかたや、データを揃えるときの注意点は、SNS運用の売上効果の測り方の記事で詳しく解説しています。
SNS運用の本当のコスト(人件費・外注費)と比べる
SNS運用には広告費のような出稿費用がありませんが、担当者の時間と外注費というコストがかかっています。売上への貢献を確かめたら、粗利に直して、このコストと並べて判断します。
投稿のコストは見えにくいものです。外注費は請求書で分かりますが、社内の作業時間は記録していないことが多く、実際より安く見積もられがちです。洗い出すと、次のような費目になります。
| 費目 | 中身 | 例(説明用の架空の例) |
|---|---|---|
| 社内の作業時間 | 企画・撮影・投稿・コメント返信にかかる時間を人件費に直したもの | 週8時間×時給換算3,000円=月約10万円 |
| 外注費 | 運用代行・投稿制作の月額 | 月15万円 |
| 撮影・素材費 | 撮影用の商品、小道具、外部カメラマンなど | 月3万円 |
| 合計 | 月約28万円 |
比べる相手は、売上ではなく粗利です。上の例で、SNSによる増分売上が月60万円と推定され、粗利率が40%なら、増分の粗利は月24万円です。月約28万円のコストを少し下回るため、今のやり方のままでは見合っていない、という読み方になります(数値はすべて説明用の架空の例です)。
注意したいのは、SNSの貢献の多くが、指名検索や来店を通じて別の経路の売上として数えられていることです。SNSの管理画面で見える購入だけをコストと比べると、貢献を小さく見積もってしまいます。比べるときは、前の章の方法で確かめた増分を使ってください。
もう1つの見方は、時間の使い道です。週8時間をほかの仕事に回したら、どれだけの売上が見込めるか。「やめたら伸びた」話で起きていたのは、まさにこの入れ替えでした。SNSの粗利が、その時間で生み出せるほかの成果を下回るなら、時間を移す理由になります。
全部やめる前に検討したい選択肢
貢献が小さくてもゼロではない場合や、確かめる前に手間を減らしたい場合は、全部やめるのではなく、頻度を下げる、続ける範囲を絞る、SNS広告に予算を寄せる、という中間の選択肢があります。
投稿の頻度を下げる
週5本を週2本にする、というように頻度を落とします。手間はすぐに減り、同時に方法1の「減らす期間」にもなります。下げても売上や指名検索が変わらなければ、さらに下げる、またはやめる判断の材料になります。下げたことで指名検索が目に見えて減るなら、元に戻す判断も早くできます。
外注をやめて、続ける範囲を絞る
外注費の負担が大きい場合は、外注をやめ、社内でできる範囲だけを続ける方法があります。新商品や入荷、営業時間の変更、イベントの告知など、買う人に必要な情報に絞って発信すれば、手間は大きく減ります。アカウントは消さずに残し、プロフィールの営業時間・所在地・リンクを最新にしておくだけでも、名前で検索して見に来た人の役に立ちます。
SNS広告に予算を寄せる
投稿にかけていた手間を、SNS広告の費用に置き換える考え方です。広告は費用と配信量が数字で残るため、増やした週・減らした週の比較がしやすく、売上への効果を確かめやすくなります。ただし、広告に切り替えれば売れるわけではありません。届ける相手と内容が合っていなければ、費用が増えるだけになる点は、アカウント運用と同じです。
DOREGAの場合|SNSアカウント運用は「本格分析」で売上への貢献まで
TAMKOが提供する「DOREGA」は、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事の方法3——ほかの施策と一緒に売上を要因に分ける分析——を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行います。前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化し、分析結果は広告運用の経験を持つ分析担当者が実際の出稿状況と照らし合わせてから納品します。
SNSアカウント運用を分析に含める場合は、本格分析(30万円〜)になります。本格分析は標準範囲を超える分析で、範囲は「KPIや事業が複数/SNSアカウント運用など費用のない施策/価格や販促の影響」です。費用と期間は着手前にご案内します。SNSアカウント運用は売上への貢献までで、費用がないため配分案には入りません。続けるか・やめるかは、推定された貢献を、この記事の「本当のコスト」と並べてご判断いただく形になります。
SNS広告のように費用のある施策は、初回分析(15万円)=標準範囲の分析で扱えます。範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」です。
よくある質問(FAQ)
Q01フォロワーが多ければ、売上に効いていると考えてよいですか?
それだけでは判断できません。
フォロワー数は、これまでにどれだけの人がアカウントを登録したかを表す数字で、その人たちが今も投稿を見ているか、買う人なのかまでは分かりません。商圏の外のフォロワーや、懸賞のときだけ集まったフォロワーが多い場合、数が多くても売上への貢献は小さいことがあります。投稿量が変わった週に、売上や指名検索が動いたかで確かめてください。
Q02Instagramだけやめる、のように一部のSNSだけやめるのはどうですか?
現実的な選択肢です。
1つずつやめると、その期間がそのまま比べる期間になり、どのSNSが効いていたのかの手がかりも得られます。ただし、同じ投稿を全部のSNSに同じ日に出していた場合、過去のデータからSNSごとの貢献を分けるのは難しくなります。
Q03どれくらいの期間止めれば、影響を確かめられますか?
目安は4〜8週間以上です。
影響は遅れて出ることがあるため、1〜2週間では見落としやすくなります。購入の間隔が長い商品ほど、長めに見る必要があります。セールや季節の山と重ならない時期を選び、前年の同じ時期の動きとも並べてください。
Q04投稿をやめると、アカウントの評価が下がりますか?
1つの「評価」の点数があるわけではありませんが、表示されにくくなることはあり得ます。
Instagramは公式の説明で、何を表示するかを1つのアルゴリズムで決めているわけではないとしたうえで、投稿日時や、見る人とのやり取りの履歴などを手がかりにしていると説明しています。投稿をやめると新しい投稿として表示される機会自体がなくなり、やり取りも減るため、再開したときにすぐ以前と同じ反応が戻るとは限りません。止めるなら、再開の可能性も考えて期間を決めておくと安心です。
- Instagram「Instagramのランキングを解説」2023年5月31日。表示の順番を1つのアルゴリズムで決めていないこと、投稿日時ややり取りの履歴などの手がかり
SNS運用は、やめる前に売上への貢献を測ってから決める|まとめ
「SNSをやめたら売上が上がった」という話の多くは、空いた時間を売上に近い仕事に回したか、もともと売上に効いていない運用だったかのどちらかで説明できます。自社に当てはまるかどうかは、フォロワー数やいいね数ではなく、投稿量が変わった週に売上や指名検索が動いたかで確かめます。確かめ方は、止める・減らす期間をつくる、過去の投稿量と並べる、ほかの施策と一緒に要因に分ける、の3つです。影響は遅れて出ることがあるため、短い期間で判断しないようにします。確かめた貢献は粗利に直し、社内の作業時間まで含めたコストと比べます。全部やめるか続けるかの二択ではなく、頻度を下げる、範囲を絞る、SNS広告に寄せる、という中間の選択肢もあります。
この記事のポイント
- 「SNSをやめたら売上が上がった」話の多くは、空いた時間を売上に近い仕事に回した結果か、もともと売上に効いていない運用だった結果。自社に同じことが起きるとは限らない。
- やめるかどうかは、フォロワー数やいいね数ではなく、投稿量が変わった週に売上や指名検索が動いたかで決める。
- SNSの影響は指名検索や来店のきっかけを通じて、遅れて売上に表れる。SNS広告とアカウント運用は止めたときの動き方が違うので分けて考える。
- 確かめ方は、止める・減らす期間をつくる、過去の投稿量と並べる、ほかの施策と一緒に要因に分ける、の3つ。確かめた貢献は粗利に直し、社内の作業時間を含むコストと比べる。
- 全部やめる前に、頻度を下げる、外注をやめて範囲を絞る、SNS広告に予算を寄せる、という中間の選択肢を検討する。