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成熟期・予算見直し

イベント・催事をやめたら売上はどうなる?開催日の売上に頼らず、やめる前に影響を確かめる方法

準備に何日もかかり、当日は人手を取られる店頭イベントや催事。費用と手間に見合っているのか、いっそやめて、その分をWeb広告などに回したほうがいいのではないか——小売店や商業施設、メーカーの販促担当者が一度は考える問いです。

ところが、判断の材料として手元にあるのは、たいてい開催日の売上です。「試食会の土曜日は、ふだんの土曜日より50万円多く売れた」と聞けば、やめたら50万円を失うように思えます。実際には、そのうちのかなりの部分が、イベントがなくても別の日に売れていた売上かもしれません。

そこでこの記事では、イベントをやめて本当に失う売上は何か、開催日の売上が効果を大きく見せる理由、やめる前に影響を見積もる方法、浮いた費用と手間をどこに回すかの決め方を順に整理します。

対象は、店頭イベント・催事・試食販売・販売会などを続けている小売・商業施設・メーカーの販促担当者と経営者です。統計の専門知識がなくても、自社のデータで判断を進められるように書いています。

Web広告やチラシを含めた広告効果の分析を行っている立場から、判断の手順に絞って解説します。

【結論】やめて失うのは「イベントがなければ来なかった客の売上」だけ

イベントをやめて失う売上は、開催日に伸びた売上のすべてではなく、イベントがなければ来なかった客の売上だけです。常連が来店日を移した分や、前後の週から移ってきた分は、やめても別の日に戻ってきます。判断の材料にするのは、開催日の売上ではなく、前後の週を含めた差です。

下の図は、ある店の試食会の開催日に、ふだんの土曜日より売上が50万円多かった場合の内訳の例です。20万円は、ふだんは平日に来ている常連が開催日に合わせて来店した分、12万円は前の週の買い控えと後の週の買いだめで動いた分で、どちらもイベントをやめれば元の日に戻ります。やめて失うのは、残りの18万円です。

試食会の開催日:ふだんの土曜日より+50万円常連が来店日を移した分20万円前後の週から移った分12万円なければ来なかった客の分18万円やめても別の日に戻る(32万円)やめると失う(18万円)※このほか、初めて来て通うようになった客のその後の購入は、開催日の前後には表れない
試食会の開催日に、ふだんの土曜日より50万円多く売れた場合の内訳。常連が来店日を移した20万円と、前後の週から移った12万円は、やめても別の日に戻る。やめて失うのは青い18万円だけ。数値は説明用の架空の例で、実際の店の値ではありません

ただし、18万円で終わりとは限りません。イベントで初めて来店し、その後も通うようになった客がいれば、その客がこれから先に使う金額も、やめれば入ってこなくなります。この分は開催日の前後を見ても分からず、数か月たってから新しい客の減りとして表れます。広告をやめた影響が遅れて出る仕組みと同じで、詳しくは広告をやめたら売上はどうなるかの記事で整理しています。

開催日の売上が多くても、イベントの効果とは限らない

開催日の伸びには、イベントがなくても店に入っていた売上が2種類混ざっています。常連が来店日をずらした分と、前後の週から動いた分です。どちらも、やめたからといって消える売上ではありません。

常連の来店日が移っただけ

週に1〜2回来る常連にとって、イベントの日は「どうせ行くなら、その日に行こう」と思う日になりがちです。火曜日と金曜日に来ていた客が、試食会のある土曜日にまとめて買い物をすれば、開催日の売上は増え、その週の平日の売上は減ります。週の合計はほとんど変わっていないのに、開催日だけを見れば大きな効果に見えます。

これを確かめるには、ポイントカードや会員アプリの記録で、開催日に来た客の来店回数が、その週や前後の週に増えていたかを見ます。開催日に来た客の多くがいつもの常連で、その週の来店回数もふだんと同じなら、イベントは来店日を動かしただけです。反対に、ふだんより来店回数が増えた客や、初めて来た客が多ければ、その分が増分に近いと考えられます。

前後の週の落ち込み

もう一つは、前後の週との間で売上が移る動きです。催事の告知を見て、それまで買うのを待つ人がいれば前の週の売上が下がり、催事でまとめ買いをした人がしばらく来なければ後の週が下がります。値引きを伴う催事ほど、この動きは大きくなりがちです。値引きそのものをやめたときの売上の動きは、セール・値引きをやめたら売上はどうなるかの記事で扱っています。

開催日だけを見ているとこの落ち込みは目に入らず、やめたときの影響を大きく見積もることになります。言い換えると、やめれば前後の週の売上はいくらか戻ります。落ち込みの測り方や、販促による売上の山を分解した研究の内容は、イベントの売上効果の測り方の記事にまとめています。

やめる前に影響を見積もる方法

影響は、開催日ではなく前後の週を含めた期間の合計で比べて見積もるのが基本です。1店舗なら開催した時期としなかった時期を、複数店舗なら一部の店舗だけ休んで比べます。毎月のように開いているイベントなら、週ごとのデータから統計的に推定することもできます。

ここでは、やめる判断に必要な数字を出すことに絞って書きます。比べる相手の作り方や、結果をゆがめる要因など、測り方の全体はイベントの売上効果の測り方の記事をご覧ください。

開催した週としなかった週の、前後を含めた売上を比べる

1店舗でもできるのが、開催した週の前の週から2〜3週後までの売上の合計を、開催しなかった時期の同じ長さの期間と比べる方法です。比べる相手には、前年の同じ時期で開催しなかった年や、同じ季節の開催しなかった月など、曜日と季節をそろえた期間を選びます。期間の合計で比べれば、常連の来店日の移動と前後の週の落ち込みは自然に差し引かれます。

合わせて数えておきたいのが、新しい客です。会員の記録から、開催日に初めて来た客の数と、そのうち3か月以内にもう一度来た客の数を出しておくと、やめた後に遅れて出る影響の大きさの見当がつきます。初めての客がほとんどいない、あるいは来てもその後続かないイベントなら、遅れて出る影響は小さいと考えられます。

天候や同じ時期のチラシ・特売の違いは残るので、1回分の比較で決めず、何回分かの開催で同じ比較を重ねて当たりをつけてください。

開催店と非開催店を比べる

複数の店舗があるなら、やめる前に一部の店舗だけイベントを休み、続けた店舗と売上の動きを比べる方法が使えます。同じ期間で比べるので、季節や天候、全店共通のチラシの影響はおおむね打ち消し合います。休む店舗は、休む前の数か月で続ける店舗と売上の動きが似ていたものを、あらかじめ決めておきます。

休む期間は、前後の週の動きだけを見るなら1〜2か月、新しい客が減る影響まで見るなら3か月程度がひとつの目安です。休んでいる間の売上を失う可能性はありますが、全店で一度にやめるより、読み違えたときの損を小さく抑えられます。

毎月のように開いていて、開催した週としなかった週の記録が1〜2年分あるなら、チラシやWeb広告と一緒に、週ごとの売上から施策ごとの貢献を推定する方法(マーケティング・ミックス・モデリング、MMM)も使えます。「イベントをやめたら」「回数を半分にしたら」の売上の変化を、ほかの施策と同じ基準で試算できるのが利点です。年に1回だけの催事は、この方法では評価できません。

浮いた費用と手間を、どこに回すかを決める

まず、やめて減る粗利と浮く費用を比べます。そのうえで、浮いた現金は「同じ金額で増える粗利」がイベントより大きい見込みのある先に回し、空いた人手は売場や接客など売上に近い仕事に回します。よい回し先が見つからなければ、浮かせたままにするのも一つの答えです。

現金で浮く費用と、時間で空く手間を分ける

イベントの費用には、会場費、什器のレンタル、POPなどの制作物、試食品のように現金で出ていくものと、準備や当日の運営にかかる社員の時間があります。やめれば両方なくなりますが、性質は違います。現金はそのまま別の施策に回せますが、社員の時間は、やめても給与の支払いが減るわけではありません。空いた時間を何に使うかで、初めて価値が決まります。

項目金額(月)
イベントで増えていた売上30万円(前後を含めた差18万円+新しく来た客のその後の購入12万円)
やめて減る粗利(粗利率30%)9万円
現金で浮く費用(会場・什器・制作物・試食品)9万円
時間で空く手間(準備と当日の人手を時給で換算)6万円
差し引き現金の損得はゼロ。空いた人手6万円分の使い道が残る

この例では、やめて減る粗利9万円と、現金で浮く9万円がちょうど同じなので、現金だけを見れば損も得もありません。それでもやめる価値があるかは、6万円分の空いた時間を、売場づくりや接客、発注の見直しといった売上に近い仕事に回せるかで決まります(数値はすべて説明用の架空の例です)。

回し先は「同じ金額で増える粗利」で比べる

浮いた9万円をWeb広告に回すなら、9万円で増える粗利が9万円を超える見込みがあることが条件です。粗利率30%なら、広告がなかった場合より売上が30万円以上増える必要があります。広告の管理画面に表示される売上には、広告がなくても買っていた人の分も含まれるため、この判定には使えません。広告で増えた売上も同じ増分の考え方で見積もり、イベントと同じ基準で比べます。

Web広告が届くのはネットで探したり見たりしている人で、店頭のイベントに来ていた客とは重なりきらないこともあります。チラシに回す場合も考え方は同じで、チラシで増える売上の見積もり方はチラシをやめたら売上はどうなるかの記事で整理しています。どの回し先も、まず小さな金額で試し、増えた粗利を確かめてから広げるのが安全です。

全部やめる前に、回数や規模を減らす

選択肢は、続けるか全部やめるかの二つだけではありません。毎月を隔月にする、増分の小さい店舗だけ休む、値引きや試食を外して実演だけにするなど、減らし方はいくつもあります。前の節の比べ方で、新しい客を連れてくる回と、常連の来店日を動かすだけの回が見分けられれば、前者だけを残す判断もできます。

DOREGAの場合|イベントもほかの施策と並べて売上への貢献を出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事で触れた、週ごとの売上から施策ごとの貢献を推定する分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。繰り返し開いているイベントの費用や開催回数を、Web広告やチラシと同じ入力として扱い、施策ごとの売上への貢献と、やめたり回数を減らしたりした場合の売上の変化を見積もります。

初回分析は15万円で、標準範囲の分析です。範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」です。お渡しするものは「レポート・予算配分案・結果説明会」で、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。値引きを伴う催事で価格や販促の影響まで分けて見たい場合や、KPIや事業が複数ある場合は、標準範囲を超える分析として本格分析(30万円〜)になります。費用と期間は着手前にご案内します。

なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。年に1回だけの催事を単独で評価することもできません。また、毎回ほぼ同じ規模・同じ間隔で開いていて、週ごとの変動がほとんどない場合は、イベントの貢献を推定できないことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q01年に1回の大きな催事も、同じ考え方で判断できますか?

考え方は同じですが、見積もり方が限られます。

失うのは「催事がなければ来なかった客の売上」だけで、前後の週を含めた差で見る点は変わりません。ただ、年1回では比べられる回数が少なく、週ごとのデータから統計的に推定する方法は使えません。前年や前々年の同じ時期の前後数週間の合計と比べる、複数店舗なら開催店と非開催店を比べる、といった方法を組み合わせ、結果には幅があると考えて判断します。

Q02集客イベントと販売イベントで、やめた影響は違いますか?

違います。販売イベントは前後の週に、集客イベントは数か月先に影響が出やすい傾向があります。

試食販売や催事販売のような販売イベントは、その場の購入が中心なので、常連の来店日の移動や前後の週の落ち込みが大きく、前後を含めた期間の合計で見ればおおよその影響がつかめます。ワークショップや季節の催しのような集客イベントは、その日の売上より、初めて来た客がその後通うようになるかに価値があります。やめるかを判断するときは、開催日に初めて来た客の数と、その後の再来店を数か月追ってください。

Q03やめた後に、再開するのは難しいですか?

再開はできますが、元の状態に戻るまで時間がかかることがあります。

開催日に合わせて来ていた常連は、やめれば元の来店日に戻り、再開してもすぐに同じ反応が得られるとは限りません。また、商業施設の催事スペースや取引先の協賛・派遣販売のように、枠や相手の都合で決まるものは、いったん手放すと同じ条件で取り直せないことがあります。全部やめる前に回数や店舗を絞って様子を見るほうが、戻す余地を残せます。

Q04店舗が1つしかなくても、やめた影響を見積もれますか?

見積もれます。開催した時期としなかった時期の、前後を含めた売上の合計を比べます。

曜日と季節をそろえた開催しなかった時期を比べる相手にし、何回分かの開催で比較を重ねます。ポイントカードや会員アプリの記録があれば、開催日に来た客の来店回数の変化と、初めて来た客のその後の再来店も見られるので、来店日の移動と本当に増えた客を分けやすくなります。

イベントをやめるかは、開催日の売上ではなく前後を含めた差で決める|まとめ

イベントや催事をやめて失うのは、イベントがなければ来なかった客の売上だけです。開催日の伸びに混ざっている常連の来店日の移動や前後の週の動きは、やめても別の日に戻ります。ただし、イベントで初めて来て通うようになった客の分は、数か月後に表れることがあります。やめる前には、前後の週を含めた合計を開催しなかった時期や休んだ店舗と比べ、新しい客のその後の再来店も確かめます。そのうえで減る粗利と、現金で浮く費用・時間で空く手間を比べ、浮いた現金はより多くの粗利を生む見込みのある先に、空いた人手は売上に近い仕事に回します。全部やめる前に回数や規模を減らして測るのが、売上を守りながら判断を進める確実な方法です。

この記事のポイント

  • イベントをやめて失う売上は、開催日の伸びのすべてではなく「イベントがなければ来なかった客の売上」だけ。常連が来店日を移した分や、前後の週から動いた分は、やめても別の日に戻る。
  • イベントで初めて来て通うようになった客がいれば、その後の購入も失う。この影響は開催日の前後では見えず、数か月後に新しい客の減りとして表れる。
  • 見積もりは、開催日ではなく前の週から2〜3週後までの合計で比べる。複数店舗なら一部の店舗だけ休んで比べ、毎月開いているイベントなら週ごとのデータからほかの施策と一緒に推定できる。
  • やめたときの損得は、減る粗利と浮く費用で比べる。費用は「現金で浮く分」と「時間で空く手間」に分け、空いた人手の使い道まで決めておく。
  • 浮いた現金を回すのは、同じ金額で増える粗利がイベントより大きい見込みのある先だけ。小さく試して確かめ、全部やめる前に回数や規模を減らす選択肢も検討する。