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成熟期・予算見直し

DMをやめたら売上は落ちる?やめる前に「送らない群」で影響を確かめる方法

ダイレクトメール(DM)の印刷代や郵送費を減らしたい。けれど、やめた途端に常連客の注文が減ったらと思うと、なかなか踏み切れない。通販や小売、サービス業で顧客向けのDMを担当している方から、よく聞く悩みです。

たとえば、会員2万人に毎月カタログを送っていて、送るたびにまとまった注文が入る。ところが、その注文の中にはDMが届かなくても買っていた常連の分も含まれています。どこまでがDMのおかげなのかが分からないままでは、やめてよいかも判断できません。

そこでこの記事では、DMをやめて本当に失う売上は何か、やめる前に一部の顧客にだけ送らずに影響を確かめる手順、全部やめずに送る相手や回数を絞る選択肢を、短く整理します。

対象は、既存顧客や休眠顧客にDMを送っている通販・小売・サービス業のCRM担当者と経営者です。統計の専門知識がなくても、自社でやめる・続けるを決められる水準で書いています。

広告効果の分析サービスを提供している立場から解説します。

【結論】DMをやめて失うのは「DMがなければ買わなかった客の売上」だけ

DMをやめて失うのは、DMが届いたから買った客の売上だけです。DMがなくても買っていた客の売上は、やめても残ります。この差の分の粗利と、浮く費用を比べれば、やめるべきかどうかが決まります。

DMを送った人たちの注文額をすべて「DMの売上」と考えると、やめたときの損を大きく見積もってしまいます。送った相手の多くは、もともと自社で買い物をしている客です。届かなくても、必要なときにはサイトや店で買います。失うのは、DMが背中を押した分だけです。

DMを送った群DMがなくても買う分1,600円DMを送らない群1,200円差400円=増分=DMをやめると失う売上
同じ会員リストから無作為に分けた2つの群の、1人あたり月間売上を比べた図。送った群1,600円、送らない群1,200円で、差の400円(青い部分)がDMをやめたときに失う売上にあたる。数字は説明用の架空の例です

やめるかどうかは、この増分に粗利率をかけた「減る粗利」と、浮く費用を比べて決めます。会員2万人に1通120円のDMを毎月送ると、費用は月240万円です。粗利率35%として、1人あたりの増分ごとに損得を計算すると次のようになります(数値はすべて説明用の架空の例です)。

1人あたりの増分(月)減る売上(2万人分)減る粗利(35%)浮く費用やめた場合の差し引き
200円400万円140万円240万円月100万円の得
400円800万円280万円240万円月40万円の損
600円1,200万円420万円240万円月180万円の損

増分が1人あたり月200円と400円とでは、判断が逆になります。反応率やクーポンの回収数からはこの増分が分からないため、確かめる手順が必要になります。

費用の側には、印刷・封入・郵送の費用だけでなく、リストの整備や紙面の制作にかかる外注費、社内の作業時間も入れます。郵送費は上がっており、25グラム以下の定形郵便物の上限料金は、2024年6月に公布された総務省令で84円から110円に改められました。1通あたりの費用が上がるほど、増分が小さいDMは採算に乗りにくくなります。

やめる前に、一部の顧客にだけ送らずに確かめる

全部やめる前に、送付リストから無作為に選んだ一部の顧客にだけ送るのを止め、送り続けた顧客と1人あたり売上を比べます。DMは送る相手を1人ずつ選べるため、ほかの販促よりもこの確認がしやすい施策です。

手順は3つです。まず、会員番号の末尾や表計算ソフトの乱数で、リストの1〜2割を「送らない群」として機械的に選びます。次に、その人たちにはDMだけを止め、メールや店頭でのお知らせなど、ほかの連絡はこれまでどおり続けます。最後に、同じ期間の1人あたり売上を2つの群で比べ、その差を増分とします。無作為の選び方や必要な人数の考え方は、DMの効果測定の記事で詳しく扱っています。

やめる判断のための確認では、1回分だけでなく、数回分続けて止めることが大切です。DMを1回送らなくても、常連客の多くは次の買い物まで習慣どおりに動くので、差は小さく出がちです。毎月送っているDMなら、2〜3か月ほど止め続けると、購入の間隔が延びる、買う品数が減るといった変化が見えてきます。比べるのは売上の合計だけでなく、購入した人の割合と購入回数も見ておくと、変化の中身が分かります。

止めている間は、送らない群の売上が少し減る可能性があります。それでも、リストの1〜2割に限れば、全部やめて読みを外すよりずっと小さな損で済みます。

全部やめる前に:送る相手を絞る

DMの増分は、送る相手によって大きく違います。全員に送って赤字でも、増分の大きい相手に絞れば採算に乗ることがあるので、「続ける」か「全部やめる」かの二択で考えないことです。

よくあるのは、常連の既存顧客ほど反応率が高く見える一方で、DMがなくても買う人が多いため増分は小さい、という形です。しばらく買っていなかった休眠顧客のほうが、DMで動く分が大きく出ることもあります。送らない群を区分ごとに残しておけば、区分別に費用対効果を出せます。具体的な計算はDMの効果測定の記事で扱っています。

絞り方には、相手を絞るほかに、回数を減らす方法と、形を変える方法があります。毎月送っていたものを隔月にする、厚いカタログを、はがきに変えて詳しい品ぞろえはサイトで見せる、といったやり方です。いずれも、送らない群と同じように、減らした群と元のままの群を並べて比べれば、減る粗利と浮く費用を確かめてから広げられます。

DMに限らず、広告や販促を減らした影響は少し遅れて表れます。その仕組みは広告をやめたら売上はどうなるかの記事、紙の販促を減らす進め方はチラシをやめたら売上はどうなるかの記事にまとめています。

DOREGAの場合|DMもほかの施策と並べて売上への貢献を出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。週ごとの売上と、DM・Web広告・チラシなど施策ごとの費用を同じ表に並べ、施策ごとの売上への貢献を推定します。推定にはGoogleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」を使い、データの整形とレポートの作成は独自ツールで行います。そのうえで、DMを減らしたりやめたりした場合に売上がどう変わるかを見積もります。

初回分析は15万円で、標準範囲の分析です。範囲は1事業・主要KPI 1つで、Web広告もチラシ・イベントも入れられます。お渡しするものはレポート・予算配分案・結果説明会で、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。KPIや事業が複数ある場合や、価格や販促の影響まで分けて見たい場合は、標準範囲を超える分析として本格分析(30万円〜)になります。費用と期間は着手前にご案内します。

なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。年に1回だけ送るDMを続けるか決めたい場合は、この記事の送らない群で確かめる方法が向いています。毎月同じ通数を同じ時期に送り続けていて、週ごとの送付数に増減がないと、DMの貢献を推定しにくいこともあります。

よくある質問(FAQ)

Q01DMをメールやLINEに切り替えれば、同じ売上を保てますか?

保てるとは限りません。届く相手と読まれ方が違うためです。

メールやLINEは1通あたりの費用が小さい一方、配信を止めている人や読まない人には届きません。紙のDMで動いていた客が、メールやLINEでも同じように動くかは客層しだいです。一部の顧客で先に切り替え、紙のDMを続けた群と1人あたり売上を比べてから広げるのが安全です。

Q02休眠顧客へのDMだけやめるのは正しい判断ですか?

確かめてから決めるのが安全です。休眠顧客は、DMで動く分がむしろ大きいことがあります。

休眠顧客は反応率が低く見えやすいものの、DMがなければ買わない人が多いため、届いたときの増分は既存顧客より大きく出る場合があります。やめる候補を反応率で選ぶのではなく、区分ごとに送らない群を残して増分を比べてください。

Q03送らない群で比べて、何か月で判断できますか?

毎月送っているDMなら、2〜3か月がひとつの目安です。

1回止めただけでは、常連客は習慣どおりに買うため差が小さく出がちです。数回分止め続けて、購入した人の割合や購入回数の差が落ち着くところを見ます。判断したあとも、止めた範囲の顧客の購入は見続けてください。

Q04顧客リストが少なくても確かめられますか?

確かめられますが、1回分では差がぶれやすくなります。

人数が少ないと、1人あたり売上の差は偶然でも大きく動きます。毎回同じ決まりで送らない群を残して数回分を合わせて見る、売上の金額より先に購入した人の割合を比べる、といった工夫で判断しやすくなります。

DMは、送らない群で確かめてからやめるか決める|まとめ

DMをやめて失う売上は、DMが届いたから買った客の分だけです。DMがなくても買う常連客の売上は残るため、送った人たちの注文額をそのまま損と考えると、やめたときの影響を大きく見積もってしまいます。判断は、増分に粗利率をかけた減る粗利と、印刷・郵送・作業時間を含めた浮く費用を比べて行います。増分は反応率からは分からないので、リストの1〜2割を無作為に選んで送るのを止め、2〜3か月ほど止め続けて、送り続けた群と比べます。全員に送って赤字でも、増分の大きい相手や回数に絞れば採算に乗ることがあります。全部やめる前に、まず一部で止めて確かめてください。

この記事のポイント

  • DMをやめて失う売上は「DMがなければ買わなかった客」の分だけ。DMがなくても買う常連客の売上は、やめても残る。
  • やめるかどうかは、増分に粗利率をかけた減る粗利と、印刷・郵送・制作・作業時間を含めた浮く費用で比べる。1人あたりの増分しだいで損得は逆になる。
  • 増分は反応率や回収数からは分からない。リストの1〜2割を無作為に選んで送るのを止め、送り続けた群と1人あたり売上を比べて確かめる。
  • やめる判断のための確認は、1回分では差が小さく出がち。毎月のDMなら2〜3か月止め続け、購入した人の割合や購入回数も見る。
  • 選択肢は「続ける」か「全部やめる」かだけではない。増分の大きい相手に絞る、回数を減らす、はがきに変えるといった絞り方を、同じように比べてから広げる。