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イベント・催事の売上効果はどう測る?「開催しなかった場合」と比べる3つの方法

店頭イベントや催事、試食会、ポップアップを開いた日は、売場がにぎわい、売上も上がっているように見えます。それでも「この費用に見合っているのか」と聞かれると、はっきり答えられない——そんな経験はないでしょうか。

たとえば、毎月第3土曜に試食会を開いている売場で、開催日の売上が通常の土曜より3割多かったとします。ところが、その週には新聞折込チラシも入っていて、翌週の売上はいつもより少し低い。この場合、3割のうちイベントの効果はどれだけなのでしょうか。

そこでこの記事では、イベントや催事の売上効果を「開催しなかった場合と比べて増えた分」で測る考え方と、そのための3つの方法、費用を利益で判断する計算の仕方、そして分析を外注するときに確認したい5項目を整理します。

対象は、一般消費者向けの商品を扱うメーカー・小売・ブランドで、店頭イベントや催事・体験会・展示会を定期的に実施している販促・マーケティングの担当者です。統計の専門知識がなくても、どのイベントを続け、どれを見直すかを判断できる水準まで噛み砕いて説明します。

実際に広告や販促の効果分析を提供している立場から解説します。

【結論】イベントの効果は「開催日の売上」ではなく、「開催しなかった場合」との差で測る

イベントや催事の売上効果は、開催した日の売上そのものではなく、「もし開催しなかったら、その期間の売上はいくらだったか」を見積もり、実際の売上との差(増分)として測ります。そのうえで、増分から生まれた利益とイベントにかかった費用を比べて、続けるかどうかを判断します。

開催日の売上が高いことと、イベントが売上を増やしたことは同じではありません。売上が高かったのは、もともと売れる土曜日だったからかもしれませんし、同じ週に入れたチラシのおかげかもしれません。イベントの前後で買い控えや前倒しの購入が起きていれば、開催日に増えた分の一部は、ほかの日から移ってきただけです。

ここで必要になるのが「開催しなかった場合の売上」という比較の相手です。直接は観測できないので、過去の同じ条件の週、開催しなかった店舗、あるいは統計的な推定を使って作ります。この差を「増分」と呼びます。増分という考え方の詳しい定義は、増分売上と増分ROASの記事で整理しています。

判断の流れは次の3段階です。

  1. 開催しなかった場合の売上(比較の相手)を作る
  2. 実際の売上との差から、イベントで増えた売上と利益を出す
  3. 人件費や値引き原資まで含めた費用と比べ、続けるか見直すかを決める

開催日の売上が、イベントの効果を見誤らせる4つの理由

開催日の売上には、イベント以外の要因が少なくとも4種類混ざっています。曜日や季節などの「もともとの売れ方」、同時期の特売や広告、前後の買い控えと前倒し購入、そしてもともと買う予定だった人の購入です。これらを除かないと、効果を大きくも小さくも見誤ります。

曜日・季節・給料日・天候による「もともとの売れ方」

イベントは、人が集まりやすい土日や連休、季節の売れどきに合わせて開くのが普通です。つまり、開催日はもともと売上が高い日であることが多く、平日の平均と比べれば、イベントがなくても売上は高く見えます。給料日直後の週末や、雨の日と晴れの日の差も同じように効きます。開催日を「ふだんの日」と比べると、効果を大きく見積もる方向にずれます。

同時期の特売・チラシ・Web広告

イベントに合わせてチラシを入れたり、SNSやWeb広告で告知したり、特売を重ねたりするのは自然なことです。ただ、その週の売上の伸びは、イベントとチラシと特売の合計です。どれか1つの成果として数えると、ほかの施策の分まで上乗せされます。逆に、チラシの担当者も同じ週の伸びを自分の成果として数えていれば、社内で同じ売上が二重に数えられることになります。

イベント前後の買い控えと、前倒し購入(先食い)

イベントや催事が告知されると、その日を待って購入を控える人が出ます。また、催事でまとめ買いをした人は、翌週以降しばらく買いに来ません。前者はイベント前の売上を、後者はイベント後の売上を押し下げます。開催日だけを見ていると、この前後の落ち込みは視野に入りません。

店舗のPOSデータを使った販促の研究では、値引き販促による売上の山を分解すると、ほかのブランドからの乗り換え、ほかの時期からの前倒し、カテゴリ全体の拡大がそれぞれ平均で約3分の1ずつだったと報告されています。値引きを伴う催事では、開催日の伸びのかなりの部分が「ほかの週から移ってきた売上」である可能性を前提にしておく必要があります。

もともと買う予定だった人の購入

イベントに来る人の中には、常連客や、その週にもともと買い物に来る予定だった人が多く含まれます。その人たちの購入は、イベントがなくても発生していた売上です。来場者数や試食数、イベント会場でのレジ通過数は運営の改善には役立ちますが、そのまま「イベントが生んだ売上」とは言えません。

売上週開催しなかった場合の売上開催週の伸び前週の買い控え翌週以降の落ち込み(先食い)開催週
週ごとの売上と「開催しなかった場合の売上」(破線)を重ねた図。開催週の伸びから、前週の買い控えと翌週以降の落ち込みを差し引いたものが増分になる。数値は説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません
参照

「開催しなかった場合」を作り、増えた分を測る3つの方法

比較の相手の作り方は3つあります。過去の同じ条件の週と比べる方法、開催した店舗と開催しなかった店舗を比べる方法、イベントを含む複数の施策を週ごとの売上から同時に推定する統計的な方法です。手軽さと確かさが違うので、目的に合わせて選びます。

方法比較の相手必要なもの弱いところ
①過去の同条件の週と比べる前年同週や、同じ曜日・同じ月の非開催週日別または週別の売上の記録天候や同時期の施策の違いが残る。手軽だが目安にとどまる
②開催店と非開催店を比べる同じ期間にイベントを開かなかった似た店舗店舗別の売上と、条件の近い比較店店舗の立地や客層の違いが残る。比較店がないと使えない
③複数施策を同時に推定する過去の売上の動きから推定した「イベントなし」の売上週ごとの売上と、施策ごとの費用・実施の記録(1〜2年分が目安)イベントが繰り返し開催されていることが前提。単発は推定できない

方法①:過去の同じ条件の週と比べる(簡易)

いちばん手軽なのは、開催週の売上を「条件の近い非開催週」と比べる方法です。比べる相手は、前年の同じ週、同じ月の非開催の土曜日など、曜日と季節をそろえたものを選びます。比べる期間は開催日だけにせず、開催の前週から2〜3週後までを一続きにすると、買い控えと先食いの分も差し引けます。

ただし、天候や同時期のチラシ・特売の違いは残ります。1回分の比較で結論を出すのではなく、何回分かの開催で同じ比較を重ね、「だいたいこのくらい増えている」という当たりをつける使い方が向いています。

方法②:開催した店舗と、開催しなかった店舗を比べる

複数の店舗や売場を持っている場合は、同じ期間にイベントを開いた店舗と開かなかった店舗の売上の伸び方を比べます。同じ期間で比べるので、季節や天候、全店共通のチラシの影響はおおむね打ち消し合います。比較の前に、イベント前の数か月で両方の店舗の売上が似た動きをしていたかを確かめておくと、結果の信頼度が上がります。

店舗の立地や客層の違いは残るため、比較店はできるだけ条件の近いものを選びます。比べる店舗をあらかじめ決めてから開催店を割り振ると、都合のよい比較を後から選んでしまうことも防げます。地域や店舗で分けて比べる実験の考え方は、インクリメンタリティテストの記事でも扱っています。

方法③:チラシやWeb広告と一緒に、週ごとの売上から同時に推定する

3つ目は、イベントを含む複数の施策の実施状況と、週ごとの売上の動きから、施策ごとの売上への貢献を統計的に推定する方法です。マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる手法がこれにあたり、曜日・季節・値引きなどの影響を分けたうえで、「イベントがなかったら売上はいくらだったか」を推定します。

この方法の利点は、イベントとチラシ、Web広告、テレビCMなどを同じ物差し(増えた売上の金額)で並べて比べられることです。「イベントをやめて、その費用をチラシに回したらどうなるか」という検討にもつなげられます。GoogleのオープンソースのMMMフレームワーク「Meridian」の公式ドキュメントでも、販促の実施や価格のように広告以外で企業が動かせる施策を、天候のような外部要因とは区別して扱い、ゼロではなく基準となる水準と比べて増分を出す考え方が説明されています。

一方で、週ごとの売上の動きから推定する以上、イベントが何度も開催され、開催した週としなかった週がある程度そろっていることが前提です。一回きりのイベントは、この方法では評価できません。

参照

費用は人件費から値引き原資まで含め、売上ではなく「利益」で判断する

イベントを続けるかどうかは、増えた売上ではなく、増えた売上から生まれた利益(粗利)と、イベントにかかった費用の総額を比べて判断します。費用には、会場費や制作物だけでなく、スタッフの人件費、試食品・サンプル、値引きで減った粗利まで含めます。

イベントの費用として記録されやすいのは、会場費や什器のレンタル、POPやのぼりなどの制作物です。一方で、販促スタッフや応援に出た社員の人件費、試食品やサンプルの原価、値引きで減った粗利(値引き原資)は、別の勘定に入っていて見落とされがちです。これらを含めないと、費用を小さく見積もることになります。

次の表は、月1回の試食会を例にした計算です。

項目開催日の売上だけで見た場合増分と費用の総額で見た場合
増えた売上30万円(開催日と通常の土曜の差)15万円(同週のチラシ分と翌週以降の先食いを差し引き)
増えた粗利(粗利率40%)12万円6万円
数えている費用会場・什器1万円+制作物1.5万円=2.5万円左の2.5万円+人件費3万円+試食品1万円+値引き原資2万円=8.5万円
差し引き+9.5万円(黒字に見える)▲2.5万円(赤字)

同じイベントでも、開催日の売上と目に見える費用だけで計算すると黒字に、増分と費用の総額で計算すると赤字になります(数値は説明用の架空の例です)。赤字になったから即やめる、という話ではありません。新規のお客さまとの接点づくりや、売場との関係づくりといった売上以外の目的があるなら、それを含めて判断してよいはずです。大事なのは、「売上でいくら取り戻せていて、残りをどの目的に払っているのか」を分けて説明できる状態にすることです。

利益を基準にした費用対効果の考え方は、広告の費用対効果の記事でも、測りにくい施策の評価を含めて解説しています。

繰り返し開催しているイベントほど、比較の材料は貯まる

毎月のように同じ形式で開いているイベントは、開催した週としなかった週の比較が自然に積み重なるため、効果を測りやすい施策です。そのために必要なのは特別な仕組みではなく、開催の記録を週ごとに残しておくことです。

一回きりのイベントは、天候や偶然の影響と区別しにくく、どの方法でも結果の幅が大きくなります。逆に、月1回の試食会や季節ごとの催事のように繰り返している施策は、開催日・店舗・規模が少しずつ違う記録が貯まっていきます。この「ばらつき」があるほど、イベントの効果とほかの要因を分けやすくなります。

記録しておくとよいのは、次の項目です。表計算ソフトに週1行で十分です。

  • 開催した週と店舗、開催回数(同じ週に複数店舗で開いた場合はその数)
  • イベントにかかった費用(人件費・会場費・制作物・試食品を分けて)
  • 値引きの有無と値引き率、値引きの対象商品
  • 同じ週に実施したほかの施策(チラシ、Web広告、SNSでの告知、特売)
  • 天候や近隣の行事など、売上に効いたと思われる出来事のメモ

特に効いてくるのは、値引きとイベントを毎回セットにしないことです。いつも「イベントの日=値引きの日」だと、売上の伸びがイベントによるものか値引きによるものかは、どの方法でも分けられません。可能なら、値引きなしで開催する回や、イベントなしで値引きだけ行う週を混ぜておくと、後から両者を分けて評価できます。

イベントの効果測定を外注するときに確認する5項目

イベントの効果測定を外部に頼む場合、来場者数や人の流れ、購買データの集計までなのか、売上の増分を金額で出すところまでなのかで、依頼先の得意分野が分かれます。「どのイベントを続けるか」を決めたいなら、次の5項目を事前に確認しておくと、期待と納品物のずれを防げます。

確かめること確かめる理由
①チラシ・イベント・Web広告を、同時に分析できるか施策ごとに別々に測ると、同じ売上を複数の施策が自分の成果として数え、合計が実際の売上を超えてしまうため。
②反響の数や相関ではなく、施策ごとに増えた売上を金額で出せるか反響の数や相関には「施策がなくても買っていた人」が含まれ、効果を大きく見せてしまうため。
③季節・曜日・天候・値引き・新商品などの影響を除いて見られるか売上は施策以外の理由でも動くため、それを除かないと施策の効果と混ざってしまうため。
④1円あたりどれだけ売上が増えたか(ROI)まで出せるか増えた売上の大きさだけでは、その施策が費用に見合っているかを判断できないため。
⑤次の予算配分案まで出せるか分析の結果を、次にどこへいくら使うかの判断に落とせないと、手元に数字が残るだけになるため。

あわせて、手元のデータで分析が成り立つかを着手前に判断してもらえるかも確認しておくと安心です。データの量や施策の変動が足りないときに、そう伝えてくれる依頼先のほうが、結果の読み違いを避けられます。

DOREGAの場合|繰り返し開いているイベントは、チラシやWeb広告と並べて評価できる

TAMKOの「DOREGA」は、統計学による広告効果の分析サービスです。毎月のように繰り返し実施しているイベントや催事で、週ごとの費用(または開催の有無・回数)と売上の記録があれば、チラシやWeb広告などと一緒に、施策ごとの売上への貢献を推定する対象にできます。分析エンジンにはGoogleのオープンソース「Meridian」を使い、前後のデータ整形とレポート作成を独自ツールで標準化しています。結果は、広告運用の経験を持つ分析担当者が実際の実施状況と照らし合わせてから納品し、分析が成り立たない場合はそうお伝えします。

初回分析は15万円で、1事業・主要な指標1つの範囲で、週ごとの売上と施策別の費用をもとに分析します。お渡しするのは、レポート、予算配分案、分析者による結果説明会で、必要なデータの共有後、最短1週間です。値引きを伴う催事で値引きの影響まで分けたい場合や、指標・事業が複数ある場合は、本格分析(30万円〜)として、費用と期間を着手前にご案内します。

なお、一回きりのイベントだけを評価する分析は対象外です。また、毎回ほぼ同じ規模・同じ頻度で開催していて週ごとの変動がほとんどない場合は、効果を推定できないことがあります。手元のデータで分析が成り立つかは、無料の分析可否チェックで確認できます。サンプルデータで分析結果の見方を確かめられる無料体験会(オンライン・約1時間)もあります。

よくある質問(FAQ)

Q01来場者数や試食数が多ければ、イベントは成功と考えていいですか?

来場者数は「反響」で、売上の増分とは別のものです。

来場者の中には、イベントがなくてもその日やその週に買っていた人が含まれます。来場者数は運営の改善には役立ちますが、続けるかやめるかの判断は、開催しなかった場合と比べて売上(利益)がどれだけ増えたかで行ってください。

Q02一回しか開催していないイベントでも、効果は測れますか?

比べる相手を用意できれば、大まかには測れます。

同じ時期に開催しなかった店舗と比べる、過去の同じ条件の週と比べる、といった方法です。ただし一回分の比較は天候や偶然の影響を受けやすく、結果の幅は大きくなります。複数の施策と並べて統計的に推定する方法は、繰り返し開催しているイベントでないと成り立ちません。

Q03イベントの翌週に売上が下がるのは、失敗だったということですか?

失敗とは限りません。前倒しの購入(先食い)が起きている可能性があります。

イベントでまとめ買いや前倒しの購入が起きると、翌週以降の売上はその分だけ下がります。この下がった分を差し引いたものが、イベントで本当に増えた分です。開催日だけでなく、前後数週間を一続きで見てください。

Q04値引きをしている催事では、値引きの効果とイベントの効果を分けられますか?

記録があれば分けられることがありますが、分析の手間は増えます。

値引き率や値引き対象を週ごとに記録しておき、値引きのある週とない週、イベントのある週とない週がそれぞれ十分にあれば、統計的に分けて推定できる場合があります。いつも「イベント=値引き」がセットだと、2つの効果は切り分けられません。

イベントの売上効果は「開催しなかった場合」との差で測り、利益で判断する|まとめ

イベントや催事の効果は、開催した日の売上ではなく、開催しなかった場合の売上と比べて増えた分で測ります。開催日の売上には、曜日・季節・天候、同時期のチラシや特売、前後の買い控えと先食い、もともと買う予定だった人の購入が混ざっているためです。比較の相手は、過去の同条件の週、開催しなかった店舗、あるいは複数の施策を週ごとの売上から同時に推定する統計的な方法で作ります。増えた分がわかったら、人件費や試食品、値引き原資まで含めた費用と、増えた粗利を比べて判断します。繰り返し開いているイベントほど比較の材料は貯まるので、まずは開催の記録を週ごとに残すことから始めると、次の見直しの場で根拠を示せるようになります。

この記事のポイント

  • イベントの効果は「開催した日の売上」ではなく、「開催しなかった場合の売上」と比べて増えた分(増分)で測る。
  • 開催日の売上には、曜日・季節・給料日・天候、同時期の特売や広告、前後の買い控えと前倒し購入(先食い)、もともと買う予定だった人の購入が混ざる。
  • 測り方は3つ——過去の同条件の週との比較/開催店と非開催店の比較/チラシやWeb広告と一緒に週ごとの売上から推定する統計的な方法。
  • 判断は利益で行う。人件費・会場費・制作物・試食品・値引き原資まで費用に含めると、売上では黒字に見えたイベントが赤字になることがある。
  • 外注先には、複数施策の同時分析/増分の金額化/天候・曜日・値引きの除去/ROI/次の予算配分案の5点を確認する。