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効果測定

サンプリングの効果はどう測る?配った数の先にある「その後の売上が増えたか」の確かめ方

試供品を配った、店頭で試食を出した。配った数は報告できるし、アンケートの「また買いたい」もそれなりに集まった。けれど、その後の売上が本当に増えたのかと聞かれると答えに詰まる——食品や化粧品、日用品のメーカーで販促を担当している方から、よく聞く悩みです。

たとえば、駅前で新商品の試供品を1万個配り、回収したアンケートでは7割が「買ってみたい」と答えたとします(数字は説明用の架空の例です)。それでも、翌月に売上が伸びた理由がサンプリングなのか、同じ時期に始めたWeb広告や店頭の値引きなのかは、配った数とアンケートからは切り分けられません。

そこでこの記事では、サンプリングの効果を「配らなかった場合と比べて購入がどれだけ増えたか」で確かめる2つの方法と、効果を見る期間の決め方、増えた売上から費用対効果を出す手順を順に整理します。

対象は、食品・飲料・化粧品・日用品などのメーカーで、試供品の配布や試食販売を企画・評価している販促・ブランドの担当者です。統計の専門知識がなくても、何を準備して何を比べればよいかを判断できる水準で書いています。

広告効果の分析サービスを実際に提供している立場から解説します。

【結論】サンプリングの効果は「配った地域・人と、配らなかった地域・人の購入の差」で測る

サンプリングの効果は、配った数やアンケートで好意的に答えた人の割合ではなく、「配った地域・人」と「配らなかった地域・人」の購入の差で測ります。比べ方は、地域や店で分ける方法と、会員やECの顧客を人で分ける方法の2つです。そのうえで、効果を見る期間を商品の購入周期に合わせて決め、増えた売上と粗利から費用対効果を出します。

サンプリングは、商品を実際に使ってもらう・食べてもらうことで、購入のきっかけを作る販促です。店頭での試食、街頭や駅での配布、ECの注文品への同梱、会員への郵送、イベント会場での配布など、形はさまざまです。どの形でも、確かめたいのは「配ったことで、配らなかった場合より購入が増えたか」という1点に集約されます。

マーケティングの研究でも、試供品の効果は配った直後の数字だけでは捉えきれないことが示されています。米国の学術誌『Marketing Science』に掲載された2つのフィールド実験の研究は、試供品が売上に与える影響を3つに分けて整理しました。本来より早くリピート購入が始まる「前倒し」、本来ならお金を払って試していた購入がサンプルに置き換わる「共食い」、サンプルがなければ買わなかった人が買うようになる「広がり」です。そのうえで、クーポンなどほかの販促と違い、試供品の効果は配布から12か月後まで観測できる場合があること、効果の大きさは同じカテゴリーのブランド同士でも大きく違うことを報告しています。効果は商品ごとに、ある程度の期間をかけて確かめる必要がある、ということです。

参照

配布数・アンケートで分かること、分からないこと

配布数とアンケートは、「どれだけの人に届き、どう受け止められたか」を知るには役立ちます。一方で、「配ったことで購入が増えたか」には答えられません。どの指標も、配らなかった場合と比べていないからです。

見ている指標分かること分からないこと
配布数・配布場所何人に届いたか、どこで配ったか受け取った人が、その後に買ったかどうか
アンケート(使用感・購入意向)味や使い心地の評価、「買いたい」と答えた人の割合実際に買ったか。答えた内容と購入は一致しないことが多い
同封クーポン・QRの利用数手がかりを残して買った人の数クーポンを使わずに買った人、サンプルがなくても買っていた人
配布後の売上の伸び売上が動いたかどうか伸びのうちサンプリングの分はいくらか(季節・値引き・広告の分が混ざる)

アンケートは、どの層に好評だったか、改善点は何かを知るには欠かせない材料です。ただし、回答するのは試供品を使って関心を持った人に偏りやすく、「買いたい」という回答がそのまま購入に変わるわけでもありません。同封したクーポンの利用数も目安にはなりますが、使った人の中にはもともと買うつもりだった人が含まれ、クーポンを持たずに店の棚から買った人は数えられません。

配布後に売上が伸びた場合も注意が必要です。新商品の発売直後や季節の山、同じ時期の値引きやWeb広告が重なると、伸びのどこまでがサンプリングの分かは見分けられません。値引きが重なる場合の考え方は、値引き・セールの効果の記事で詳しく扱っています。

方法1:配った地域・店と、配らなかった地域・店の売上を比べる

条件の似た地域や店を2つの組に分け、片方でだけ配って、配る前から配った後への売上の変化を比べる方法です。店頭での試食や街頭配布のように、受け取った人を特定できないサンプリングに向いています。

比べるのは売上の水準ではなく、配る前と後の「変化」です。両方の組に同じようにかかる季節や景気、全国で流しているWeb広告の影響は、配らなかった組の変化として表れます。配った組の変化からそれを差し引いた分が、サンプリングによる増分の目安になります。

たとえば、対象商品の試食を出した20店と、出さなかった20店を比べたとします。1店あたりの週の販売数は、試食を始める前の4週の平均がどちらも100個でした。始めてからの8週の平均は、試食を出した店が118個、出さなかった店が106個です。出さなかった店でも6個増えているのは、季節やほかの施策など両方の店にかかる影響の分です。出した店の伸び18個からこの6個を差し引いた12個が、試食による増分の目安で、8週・20店では12個×8週×20店=1,920個になります(数値は説明用の架空の例です)。

100106100118両方の店にかかる影響(+6個)増分の目安12個配る前配った後配る前配った後試食を出さなかった20店試食を出した20店1店あたり週の販売数(個)
配った店と配らなかった店の販売数の変化。配らなかった店の伸び(6個)を差し引いた12個が増分の目安。数値は説明用の架空の例で、実案件の推定値ではありません

この方法でいちばん結果をゆがめやすいのは、店の選び方です。売上の大きい店や、売場づくりに協力的な店だけで試食を出すと、もともとの勢いの差まで効果に見えてしまいます。先に条件の近い店どうしで組を作り、どちらで配るかはくじ引きのように機械的に決めるのが基本です。あわせて、試食を出す店でだけ値引きや陳列の変更をしない、配らなかった地域の人が配った地域で受け取りにくいよう離れた地域を選ぶ、週ごとのぶれに埋もれないよう十分な期間をとる、といった点も押さえておきます。

地域の組み方や比べる期間の考え方は、チラシの効果測定の記事で紹介している配布エリアの比較と共通です。イベント会場での配布や、催事に合わせた試食販売を評価する場合は、イベント・催事の売上効果の記事もあわせて参考にしてください。

方法2:配った人と配らなかった人の購入を比べる(会員・ECの場合)

会員やECの顧客など、購入履歴を人ごとに追える場合は、配る候補のリストをくじ引きで2つに分け、片方にだけ送ってその後の購入を比べます。比べるのは「サンプルを使った人」ではなく、「送った人全体」と「送らなかった人全体」です。

送った人全体で比べる理由は、サンプルを使った人やアンケートに答えた人が、もともとその商品に関心の高い人に偏りやすいからです。その人たちと受け取らなかった人の購入率を比べると、関心の差まで効果に見えてしまいます。送る前にくじ引きで分けた2つの組を丸ごと比べれば、組どうしの違いは「送ったかどうか」だけになります。

たとえば、条件に合う会員2万人をくじ引きで1万人ずつに分け、片方にだけ試供品を郵送したとします。3か月以内に対象商品を買った人は、送った組が1,200人(12%)、送らなかった組が800人(8%)でした。差の400人(4ポイント)が、サンプリングで増えた購入者の目安です(数値は説明用の架空の例です)。

ECの注文品への同梱でも同じ考え方が使えます。一定期間の注文者のうち一部にだけ同梱し、同梱しなかった注文者と、その後の対象商品の購入を比べます。送らない組を残すと、その人たちには配る機会がなくなりますが、候補全体のうち一部を残すだけでも比べられます。ただし、送らない組が小さすぎると差が偶然のぶれに埋もれるため、比べられる人数を確保できるかは事前に確認しておきます。

効果が出るまでの期間を決めておく

サンプリングの効果は、配った翌週にすべて出るわけではありません。いつまでの購入を数えるかは、配る前に、商品の購入周期をもとに決めておきます。

商品の購入周期に合わせる

試供品を受け取った人は、まずそれを使い切り、気に入れば店やECで買い、さらに使い切ったころに次を買います。その間隔は商品によって大きく違い、飲料や菓子のように数週間で買い直す商品もあれば、化粧品のように数か月かかる商品もあります。見る期間が購入周期より短いと、1回目の購入すら数えきれず、効果を小さく見積もってしまいます。

期間を決めずに結果を見はじめると、数字の良い時点で区切りたくなります。配る前に「購入周期の何回分を見るか」を決めて書き残しておくのが、結果を正しく読むための前提です。自社商品の購入周期は、会員データやECの購入履歴から、同じ人が次に買うまでの間隔の中央値として出せます。

1回目の購入と、2回目以降の購入を分けて見る

サンプリングで増えた1回目の購入には、もともと別の機会にお金を払って試していた人の分が含まれます。先ほどの研究でいう「前倒し」や「共食い」にあたる部分で、売上として定着したかどうかは、2回目以降の購入で見るほうが確かです。方法2の例の続きで考えてみます。

3か月以内の購入送った組(1万人)送らなかった組(1万人)差
1回目を買った人1,200人800人400人
2回目も買った人540人400人140人
1回目を買った人のうち2回目も買った割合45%50%―

1回目の購入者は400人増えましたが、2回目まで買った人の差は140人にとどまります。サンプルをきっかけに買った人には、試し買いで終わる人が多いと読めます。1回目の差だけで判断すると効果を大きく見積もり、2回目以降まで見ると、どれだけの人が定着したかが分かります。方法1でも同じで、配った直後の週だけが伸び、その後に配らなかった店を下回る週がないかを確認しておくと、前倒しの分を見分けられます。

サンプリングの費用対効果を、増えた売上から出す

費用対効果は、配った数や購入者数ではなく、増分の売上と粗利から出します。費用には試供品の原価だけでなく、配布の委託費や人件費、送料・梱包費まで含めます。

方法2の例で、費用対効果を計算してみます。試供品の原価が1個60円、郵送と梱包の費用が1件90円で、1万人に送った費用は150万円です。送った組と送らなかった組の売上の差(増分売上)は、3か月時点で120万円、12か月まで追うと400万円になったとします。粗利率を40%とすると、次のようになります(数値は説明用の架空の例です)。

項目3か月時点12か月時点
サンプリングの費用150万円150万円
増分売上(送った組−送らなかった組)120万円400万円
増分粗利(粗利率40%)48万円160万円
増分売上÷費用0.8約2.7
増分粗利−費用−102万円+10万円

3か月時点では費用を回収できていないように見えますが、12か月まで追うと粗利で費用を上回ります。どの時点で判断するかで結論が変わるため、見る期間は前の章のとおり事前に決めておきます。増分売上を費用で割った値は増分ROASと呼ばれ、ほかの施策と比べるときの共通の指標になります。計算の考え方は、増分売上・増分ROASの記事で詳しく解説しています。

もう一つの見方は、増えた購入者1人あたりの費用です。この例では150万円÷400人=3,750円で、新しい購入者を1人増やすのにかかった費用として、Web広告などほかの手段と比べられます。ただし、1回目の購入者数で割ると、定着しなかった人まで含めた値になる点には注意が必要です。

1回ごとのサンプリングの評価には方法1・方法2が向いています。一方、サンプリングを継続して行っていて、Web広告やチラシと比べて予算の配分を決めたい場合は、週ごとの配布数・費用と売上を並べ、季節や値引きの影響と分けて施策ごとの貢献を推定する方法があります。マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる統計的な手法で、配布量が週によって増えたり減ったりしていることが前提になります。

DOREGAの場合|サンプリングもほかの施策と並べて売上への貢献を出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。週ごとの売上と施策別の費用から施策ごとの売上への貢献を推定する分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。

継続して行っているサンプリングは、週ごとの配布費用(または配布数)を、Web広告やチラシと同じ入力として初回分析(15万円・標準範囲の分析)に入れられます。範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」で、お渡しするものは「レポート・予算配分案・結果説明会」、期間は「最短1週間(必要データ共有後)」です。KPIや事業が複数ある場合や、価格や販促の影響まで分けて見たい場合は、本格分析(30万円〜・標準範囲を超える分析)になり、費用と期間は着手前にご案内します。

短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。1回きりのサンプリングを振り返りたい場合は、この記事の方法1・方法2が向いています。手元のデータで分析が成立するかは無料の分析可否チェックで確認でき、成立しない場合はそうお伝えします。

よくある質問(FAQ)

Q01試食販売も、同じ考え方で効果を測れますか?

測れます。受け取った人を特定しにくいため、店で比べる方法1が基本です。

試食を出した店と出さなかった店を組にして、配る前と後の対象商品の販売数の変化を比べます。試食の日は、値引きや特設の陳列が一緒に行われることが多いため、比べる店どうしでそろえるか、少なくとも記録を残しておくと、試食そのものの効果と分けて読めます。

Q021回のサンプリングだけで効果を評価できますか?

できます。ただし、配る前に比べる相手を決めておくことが条件です。

配った後で比べる地域や人を探すと、条件の違う相手を選んでしまいがちです。配る前に、配らない地域・店・人を残しておけば、1回のサンプリングでも増分を確かめられます。一方、1回分の配布データだけで、過去の売上の動きから統計的に推定するのは難しくなります。

Q03配った人の連絡先がない場合は、どうすればよいですか?

地域や店で比べる方法1を使います。

街頭や駅での配布のように受け取った人が分からない場合は、配布場所の近くの店の販売数を、配っていない地域の似た店と比べます。サンプルに同封したクーポンやQRの利用数は、反応の目安として併用できますが、増分の代わりにはなりません。

Q04イベント会場での配布は、どう評価すればよいですか?

サンプルの効果とイベント全体の効果を、分けて見るかどうかを先に決めます。

イベント会場で配る場合、来場者が受けるのはサンプルだけではありません。イベント全体の効果を見たいなら、開催した地域としなかった地域を比べます。サンプルだけの効果を見たいなら、同じイベントで配る日と配らない日、配るブースと配らないブースを分けるなどの工夫が必要です。開催地域の比べ方は、イベント・催事の売上効果の記事で詳しく紹介しています。

サンプリングは配った数ではなく、配らなかった場合との購入の差で測る|まとめ

配布数やアンケートは、どれだけの人に届き、どう受け止められたかを教えてくれますが、配ったことで購入が増えたかは教えてくれません。サンプリングの効果は、配った地域・店と配らなかった地域・店の売上の変化を比べるか、会員やECの顧客をくじ引きで分けて、送った人全体と送らなかった人全体の購入を比べるかで確かめます。見る期間は商品の購入周期をもとに配る前に決め、1回目の購入と2回目以降の購入を分けて見ると、試し買いで終わった分と定着した分が分かります。費用対効果は、試供品の原価から配布費まで含めた費用と、増分の売上・粗利から出し、どの時点で判断するかも先に決めておきます。

この記事のポイント

  • 配布数・アンケート・同封クーポンの利用数は、届いた範囲や受け止め方を知る材料で、配ったことで購入が増えたかには答えられない。どれも配らなかった場合と比べていない。
  • サンプリングの効果は、配った地域・人と配らなかった地域・人の購入の差(増分)で測る。受け取った人を特定できない試食や街頭配布は地域・店で、会員やECは人で比べる。
  • 人で比べるときは、配る前にくじ引きで組を分け、「サンプルを使った人」ではなく「送った人全体」と「送らなかった人全体」を比べる。使った人は関心が高い人に偏るため。
  • 見る期間は商品の購入周期をもとに配る前に決める。1回目の購入には前倒しや置き換わりが含まれるので、定着したかは2回目以降の購入で見る。
  • 費用対効果は、原価・配布費・送料まで含めた費用と、増分売上・増分粗利から出す。判断する時点で結論が変わるため、時点も事前に決めておく。