値引き・セール・クーポンの効果はどう測る?「先食い」と「値引き損」を差し引いて本当の効果を出す方法
セールをした週は、たしかに売上が伸びます。数字だけ見れば成功です。けれど、その伸びは本当に値引きのおかげで「増えた」売上なのでしょうか。
たとえば、20%オフのセールをした週の売上がふだんの1.5倍になったとします。ところが翌週と翌々週は、いつもより売上が落ちていました。さらに、クーポンを使った人の顔ぶれを見ると、多くは毎週のように買いに来る常連のお客さまだった——こうしたことは珍しくありません。セールの週だけを見ると大成功でも、前後を合わせると、売上はほとんど増えておらず、利益はむしろ減っていた、ということが起こります。
そこでこの記事では、値引き・セール・クーポンの効果を「実施期間の伸び − 先食い − 値引き損」という式で整理し、伸びだけで判断すると誤る理由、効果を測る3つの方法、利益で判断する計算例、クーポンの効果測定で気をつけることを順に解説します。
対象は、小売・EC・飲食・メーカーで、値引きやセール、クーポンの企画や振り返りを担当している方です。統計の専門知識がなくても、何を比べれば判断できるかがわかる水準で書いています。
広告や販促の効果分析サービスを実際に提供している立場から解説します。
【結論】値引きの効果は「実施期間の伸び − 先食い − 値引き損」で見る
値引き・セール・クーポンの本当の効果は、実施期間に伸びた売上から、前後の期間に起きた落ち込み(先食い)と、値引きがなくても買った人に渡した値引きの分(値引き損)を差し引いて見ます。判断は売上ではなく、この差し引きを終えた利益で行います。
セールの効果として報告されやすいのは、「セール期間の売上が前週比で何%伸びたか」です。この数字はわかりやすい一方で、2つのものが混ざっています。1つは、本来なら翌週以降に買うはずだった人が、安いうちに前倒しで買った分です。もう1つは、値引きがなくても同じものを買っていた人が、たまたま安く買えた分です。前者は売上を「増やした」のではなく「移した」だけで、後者は売上を増やさずに利益だけを減らしています。
| 要素 | 中身 | 売上・利益への影響 | 見えやすさ |
|---|---|---|---|
| 実施期間の伸び | セール中にふだんより多く売れた分 | 売上は増える | 見えやすい(POSや管理画面ですぐ出る) |
| 先食い | 前倒しで買われた分、告知を見て買い控えた分 | セール前後の売上が減る | 見えにくい(前後の週を見ないと出ない) |
| 値引き損 | 値引きがなくても買った人に渡した値引き | 売上は変わらず、利益が減る | 見えにくい(「誰が値引きなしでも買ったか」は直接わからない) |
| 本当の効果 | 伸び − 先食い − 値引き損 | 利益で判断する | 比べる相手を用意しないと出ない |
この式で見ると、値引きの効果を測る作業は「値引きをしなかった場合の売上と利益」をどう用意するかに集約されます。以下、期待される効果と見落とされるコストから順に見ていきます。
値引き・セールで期待される効果と、見落とされるコスト
値引きには、新しいお客さまに試してもらう、まとめ買いを促す、在庫を消化するといった効果があります。一方で、先食い・値引き損・定価で売れにくくなる影響という3つのコストがあり、どれも実施期間の売上には表れません。
期待される効果:新規客・まとめ買い・在庫の消化
値引きに期待される効果は、目的によって大きく3つに分かれます。
1つ目は新規客の獲得です。ふだんは手に取らない人に一度試してもらう値引きで、効果は定価に戻ったあとも買い続けてくれるかで決まります。
2つ目はまとめ買い・客単価の引き上げです。ただし保存できる商品では、まとめ買いの多くが後で説明する先食いになります。
3つ目は在庫の消化です。季節が終わる衣料品や賞味期限が近い食品は、値引きしてでも売り切ったほうが、保管費や廃棄の損失より小さく済むことがあります。
目的が違えば、測るべき数字も変わります。新規客なら値引き後のリピート、まとめ買いなら前後の期間を含めた販売数、在庫消化なら売れ残った場合の損失との比較です。
見落とされるコスト1:先食い(前倒しされた売上)
先食いが起きやすいのは、保存がきき、ふだんから決まった量を使う商品です。洗剤やティッシュ、飲料、調味料などは、安いときに多めに買っておけば、次の購入までの間隔が延びるだけです。世帯の購買記録2年分を使った経済学の研究でも、一時的な値引きで販売数量が大きく伸びる理由の一部は、消費者が将来の分を買いだめする行動にあることが確かめられています。同じ著者らの続く研究は、こうした買いだめを考えずに推定すると、その商品の価格への反応の大きさ(価格弾力性)を約30%大きく見積もってしまうと報告しています。
図のように、セール週だけを見れば販売数はふだんの1.9倍ですが、前週から翌々週までの4週を合計すると、増えたのは500個です。セール週の伸びの半分近くは、前後の週から移ってきた分だったことになります。
- Igal Hendel, Aviv Nevo "Sales and Consumer Inventory"(NBER Working Paper 9048)2002年。世帯の購買記録2年分から、値引き時の販売増の一部が買いだめによることを確認
- Igal Hendel, Aviv Nevo "Measuring the Implications of Sales and Consumer Inventory Behavior"(NBER Working Paper 11307)2005年(のちにEconometrica 2006年11月号に掲載)。買いだめを無視した推定は価格弾力性を約30%過大に見積もる
見落とされるコスト2:値引き損と、定価で売れにくくなる影響
セールの日に来たお客さまの中には、セールがなくても買いに来ていた人が必ずいます。この人たちへの値引きは、売上を増やさずに利益だけを手放した分です。常連の多い店ほど、また告知が既存のお客さまにしか届かない形ほど、値引き損は大きくなります。
もう1つ、時間をかけて効いてくるのが、定価で売れにくくなる影響です。値引きを繰り返すと、お客さまの中で「この商品はこのくらいの値段」という感覚(内的参照価格)が下がり、定価が割高に感じられるようになります。牛乳を対象に2つの小売チェーンのID-POSデータを分析した研究では、内的参照価格が形成される初期の段階で値引きをした場合、シミュレーション上で期間全体の売上が悪化するという結果が報告されています。この影響は、特売を頻繁に行うタイプの店舗でより強く出ていました。
- 林田光平「Loss Leading 販売の有効性に関する実証研究:異なるストア・タイプの比較を通して」(日本マーケティング・サイエンス学会 第105回研究大会 報告要約)『マーケティング・サイエンス』27巻1号(2019年)。内的参照価格の形成初期の値引きで期間全体の売上が悪化するシミュレーション結果
実施期間の売上の伸びで判断すると誤る3つの理由
実施期間の売上の伸びは、前後の落ち込みを含まず、同じ時期のほかの要因も分けておらず、クーポンを使った人を全員「増えた客」として数えています。この3つのずれは、どれも効果を大きく見せる方向に働きます。
前後の落ち込みを見ていない
いちばん多いのは、比べる期間をセール週だけにしてしまうことです。前週に買い控えが起きていると、前週比の伸びはさらに大きく見えます。セール後の落ち込みは、振り返りの時点ではまだ起きていないか、「セール明けだから」と別の話として扱われがちです。
先食いの長さは商品によって違います。毎日使う消耗品なら数週間、季節ものや耐久財なら次のシーズンまで影響が続くこともあります。少なくとも、セールの前1〜2週と後2〜4週は同じ表に並べて見ます。
同じ時期の他の施策・季節を分けていない
セールは、給料日やボーナス、年末年始、新生活のように、もともと売上が伸びる時期に合わせて実施されることがよくあります。また、セールに合わせて広告費を増やしたり、チラシやメールで告知したりもします。この状態でセール期間の伸びをすべて値引きの効果と呼ぶと、季節の伸びや、広告・告知の効果まで値引きの手柄になります。
前年の同じ時期と比べる、セールをしなかった年の同じ時期と比べる、同じ時期に動かした施策を一覧にしておく——このどれかがないと、伸びのうちどこまでが値引きの分かを切り分けられません。
クーポンを使った人=増えた客ではない
クーポンの利用枚数は、値引きの効果として最も報告しやすい数字です。しかし、クーポンを使った人の中には、クーポンがなくても買っていた人が含まれます。とくに会員アプリやメールで既存のお客さまに配るクーポンは、もともと買う予定のあった人ほど使う、という形になりやすく、利用枚数が多いほど値引き損も大きい、ということが起こります。
効果として数えるべきなのは、「クーポンがなかった場合と比べて増えた売上(増分)」です。増分の考え方は増分売上・増分ROASの記事で詳しく扱っています。
値引き・セールの効果を測る3つの方法
値引きの効果を測るには、「値引きをしなかった場合」を何らかの形で用意して比べます。方法は、値引きしない店舗・客と比べる、前後の期間を含めて比べる、価格と販促を含めて売上を要因に分ける、の3つです。
方法1:値引きしない店舗・客と比べる
条件の似た店舗をいくつか選び、一方では値引きをして、もう一方ではしない。ECやアプリなら、配信先のお客さまを無作為に2つに分け、一方にだけクーポンを送る。この差を比べるのが、もっともわかりやすく確かな方法です。
比べるのは売上の水準ではなく変化です。値引きの前の数週間で、2つのグループの売上がほぼ同じように動いていたことを確かめてから、実施期間と、その後の数週間の差を見ます。後ろの期間まで含めることで、先食いの分も差に反映されます。
注意点は2つあります。店舗で分ける場合、近くの店舗同士だと、値引きを知ったお客さまが実施店に流れ、実施しない店の売上が下がって差が大きく出ることがあります。また、同じ商品を客によって違う価格で売るのは不公平感につながりやすいため、ECでは表示価格を分けるより、クーポンの配信先で分けるほうが現実的です。
方法2:前後の期間を含めて比べる
対照群を用意できない場合は、セールの前後を含めた期間の合計を、ふだんの水準と比べます。手順は次のとおりです。
- ふだんの売上(基準)を決める。直近のセールのない週の平均か、前年の同じ時期の売上を使う。
- 比べる期間を決める。セールの前1〜2週から、後2〜4週まで。保存がきく商品ほど後ろを長くとる。
- 期間全体の販売数・売上・粗利を合計し、基準との差を出す。
- 同じ期間に動かした広告・告知・季節要因をメモし、差のうちどこまでが値引きの分かを読む。
この方法は手元のPOSデータだけでできる一方、基準の決め方で結果が変わります。前年と比べるなら前年の同じ時期にセールがなかったか、直近と比べるなら直近に別の施策を動かしていなかったかを確かめておきます。
方法3:価格と販促を含めて、売上を要因に分ける
値引きを何度も実施していて、週ごとの記録が残っているなら、売上を「施策がなくても立つ売上」「季節・天候などの影響」「価格(値引き)の影響」「広告やチラシなど施策ごとの影響」に分けて、統計的に推定できます。こうした推定は、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる手法で行うのが一般的です。
この方法の利点は、値引きの効果を、同じ時期に動かした広告や季節の影響と分けて出せることです。先に紹介した買いだめの研究が示すように、セールの週だけを見て価格への反応を推定すると、効果を大きく見積もります。そのため、前後の週への影響まで含めて推定することが大切です。
条件は、値引きの記録に変化があることです。値引き率、対象商品、実施した週が記録されていて、値引きの有無や深さが時期によって違っていれば、推定の材料になります。逆に、1回きりのセールや、毎週同じ値引きを続けている場合は、値引きの分を分けられないことがあります。値引きを「販促費」ではなく価格の影響として扱う考え方は、店頭販促とWeb広告を比べる記事でも触れています。
| 方法 | 向いている場面 | 必要なもの | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| 方法1:値引きしない店舗・客と比べる | これから実施するセール・クーポン | 似た店舗の組、または配信先を分けられる仕組み | 店舗間でお客さまが流れると差がゆがむ |
| 方法2:前後の期間を含めて比べる | 実施済みのセールを振り返る | 週ごとの販売数・売上・粗利 | 基準の決め方で結果が変わる |
| 方法3:価格と販促を含めて要因に分ける | 値引きを繰り返していて、広告など他の施策も動いている | 週ごとの価格・値引き・施策・売上の記録(1年以上が目安) | 1回きりのセールや、値引きが一定の場合は分けにくい |
利益で判断する:計算例(説明用の架空の数字)
同じセールでも、実施週の売上で見ると大成功、4週の売上合計で見るとほぼ横ばい、4週の粗利合計で見ると赤字、ということが起こります。判断は、前後を含めた期間の粗利で行います。
先食いの図と同じ例で計算します。定価1,000円、1個あたりの原価600円(粗利400円)の商品を、ふだんは週に1,000個売っているとします。この商品を20%オフ(800円)で1週間セールにすると、1個あたりの粗利は200円になります。以下は説明用の架空の例です。
| 週 | 販売数 | 売上 | 粗利 |
|---|---|---|---|
| 前週(買い控え) | 950個 | 95万円 | 38万円 |
| セール週(20%オフ) | 1,900個 | 152万円 | 38万円 |
| 翌週 | 750個 | 75万円 | 30万円 |
| 翌々週 | 900個 | 90万円 | 36万円 |
| 4週合計 | 4,500個 | 412万円 | 142万円 |
| 参考:セールなしの4週 | 4,000個 | 400万円 | 160万円 |
この結果を、見る範囲ごとに並べると次のようになります。
| 見る範囲 | 数字 | 結論 |
|---|---|---|
| セール週の売上(ふだんの週と比較) | +52万円(+52%) | 大成功に見える |
| 4週の売上合計 | +12万円(+3%) | ほぼ横ばい |
| 4週の粗利合計 | −18万円 | 赤字 |
粗利が減った理由を式に当てはめると、こうなります。セール週に増えた900個のうち、400個は前後の週から移ってきた先食い・買い控えの分で、本当に増えたのは500個です。この500個が生んだ粗利は1個200円で10万円。一方、セール週に売れた1,900個のうち、値引きがなくても売れていた1,400個(ふだんの1,000個+前倒しの400個)には、1個あたり200円ずつ値引きを渡しています。これが値引き損の28万円です。差し引き、10万円 − 28万円 = −18万円になります。
この例で利益を出すには、4週合計で増える販売数が1,400個(値引き損28万円 ÷ 1個あたり粗利200円)を超える必要があります。言い換えると、値引きで利益が出るかどうかは、「値引きがなくても買った人の数」に対して「値引きで新しく増えた数」がどれだけ大きいかで決まります。粗利率が低い商品ほど、値引きの深さが同じでも、必要な増分は大きくなります。
これは短期の利益だけを見た計算です。新規客の獲得が目的ならその後の購入による利益を足し、在庫消化が目的なら売れ残った場合の損失と比べます。どの場合も、前後を含めた期間の粗利が出発点です。値引きをやめるかどうかを考えるときの見積もり方は、セール・値引きをやめたときの売上への影響の記事で扱っています。
クーポンの効果測定で気をつけること
クーポンは配る相手を選べるぶん、配らない群を残した比較がしやすい施策です。配布数や利用率ではなく、配った群と配らなかった群の売上・粗利の差で効果を見ます。
配布数・利用率だけで判断しない
クーポンの振り返りでは、配布数、利用枚数、利用率がまず並びます。これらはクーポンが届いたか、使いやすかったかを確かめる数字としては役立ちますが、効果そのものではありません。利用率が高いクーポンは、もともと買う予定のあった常連のお客さまに多く配ったクーポンである可能性があります。
利用者の過去の購入履歴から、ふだんから同じ頻度で買っている人の割合を見ると、値引き損の目安にはなります。ただし、使った人だけを見ている限り、クーポンがなかった場合の購入は推測にとどまります。
ポイント還元も、基本は同じ考え方で測ります。なお、食品スーパーの購買データで値引きとポイント付与を比べた研究では、商品単価が低く、値引率・付与率も低い場合に限って、ポイント付与のほうが値引きより売上効果が高いという結果が出ています。値引きとポイントのどちらが効くかは、商品の価格帯や還元の大きさによって変わるということです。
- 中川宏道・星野崇宏「ポイント付与と値引きはどちらが効果的か?:マグニチュード効果を導入したプロモーション効果の推定」(『流通研究』20巻2号)2017年。食品スーパーの購買データで、低単価・低率の場合に限りポイント付与が値引きより売上効果が高いことを確認
クーポンを渡さない群を残す
いちばん確かなのは、配信対象のお客さまを無作為に分け、一部(たとえば1〜2割)にはクーポンを送らずに残しておくことです。会員アプリやメール、LINEなどで配るクーポンであれば、配信リストを分けるだけで実施できます。
比べるときのポイントは、クーポンを「使った人」ではなく、「配った群全体」と「配らなかった群全体」を比べることです。配った群には、クーポンを受け取っても使わなかった人も含めます。使った人だけを取り出すと、もともと買う気の強い人ばかりを集めることになり、効果を大きく見積もります。
期間は、クーポンの有効期限だけでなく、その後の数週間も含めます。クーポンで前倒しされた購入があれば、配った群の売上はその後に下がるため、差が縮みます。売上の差から値引きの総額を引いて、粗利がプラスになっていれば、そのクーポンは利益を生んだと判断できます。
DOREGAの場合|値引き・販促の影響は「本格分析」で、ほかの施策と一緒に分ける
TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。この記事の方法3——価格と販促を含めて、週ごとの売上を要因に分ける推定——にあたる分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。
値引き・セールなど価格や販促の影響まで含めて分析する場合は、本格分析(30万円〜・標準範囲を超える分析)になります。本格分析の範囲は「KPIや事業が複数/SNSアカウント運用など費用のない施策/価格や販促の影響」で、費用と期間は着手前にご案内します。値引きの影響を、Web広告やチラシなどほかの施策の影響と同じ分析の中で分けて出すため、「伸びのうち、どこまでが値引きの分か」を、広告や季節の分と並べて確かめられます。
なお、標準範囲の分析は初回分析(15万円)で、範囲は「1事業・主要KPI 1つ。Web広告もチラシ・イベントも入れられます」です。短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。1回きりのセールを振り返りたい場合は、この記事の方法1・方法2が向いています。手元のデータで分析が成立するかは、無料の分析可否チェックで確認でき、成立しない場合はそうお伝えします。
よくある質問(FAQ)
Q01値引き率は何%にするのがよいですか?
一律の答えはありません。粗利率と、値引きがなくても買う人の多さで決まります。
値引きで利益が出るのは、新しく増えた販売数が生む粗利が、値引きがなくても買った人に渡す値引きの総額を上回るときです。粗利率が低い商品ほど、同じ値引き率でも必要な増分は大きくなります。複数の店舗や配信先で値引き率を変えて試し、前後の期間を含めた粗利で比べるのが確実です。
Q02ポイント還元も、値引きと同じ考え方で効果を測れますか?
測れます。先食いと、還元がなくても買った人への還元の分を差し引く考え方は同じです。
ポイントは使われるまで費用が確定しないため、付与したポイントのうち実際に使われる見込みの分を費用として扱います。値引きとポイントのどちらが効くかは、商品の価格帯や還元の大きさで変わります。
Q03ECのセールも同じ考え方でよいですか?
同じです。ECはデータが細かく取れるぶん、測りやすい面もあります。
ECでは、告知メールやモールの大型セールの予告で買い控えが起きやすく、セールに合わせて広告費を増やすことも多いため、前の落ち込みと広告の影響を分けて見ます。配信先を分けて比べる方法1は、ECで特に使いやすい方法です。
Q04単発のセール1回だけでも、効果を評価できますか?
評価できます。ただし、方法は対照群との比較か、前後の期間を含めた比較になります。
1回きりのセールは、値引きの有無や深さの変化が1回分しかないため、週ごとのデータから統計的に要因を分ける方法(方法3)には向きません。似た店舗や配信先の一部で実施しない群を残すか、前後の期間を含めた合計をふだんの水準と比べて判断します。
値引きの効果は、伸びではなく「先食いと値引き損を差し引いた利益」で判断する|まとめ
セールの週の売上の伸びには、前後の週から移ってきた分(先食い)と、値引きがなくても買った人に渡した値引き(値引き損)が混ざっています。本当の効果は「実施期間の伸び − 先食い − 値引き損」で、判断は売上ではなく、前後を含めた期間の粗利で行います。測る方法は、値引きしない店舗・客と比べる、前後の期間を含めて比べる、価格と販促を含めて売上を要因に分ける、の3つです。クーポンは配らない群を残し、配った群全体と配らなかった群全体を比べるのが確実です。
この記事のポイント
- 値引き・セール・クーポンの本当の効果は「実施期間の伸び − 先食い − 値引き損」。セール週の売上の伸びだけでは、効果を大きく見積もる。
- 先食いは、前倒しの購入やセール前の買い控えとして、前後の週の落ち込みに表れる。保存がきく商品ほど大きい。
- 値引き損は、値引きがなくても買った人に渡した値引き。売上には表れず、利益だけを減らす。値引きを繰り返すと、定価で売れにくくなる影響も出る。
- 測る方法は、値引きしない店舗・客との比較、前後の期間を含めた比較、価格と販促を含めた要因の分解の3つ。判断は前後を含めた期間の粗利で行う。
- クーポンは配布数や利用率ではなく、配らない群を残して「配った群全体」と「配らなかった群全体」の売上・粗利の差で測る。