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「この広告費、何に効いてるの?」と聞かれたら|ROASで納得されない理由と、説明の組み立て方

「この広告費、何に効いてるのか説明して」——上司にそう言われて、ROASの資料を出したら、納得してもらえなかった。数字は揃っているのに、会話が噛み合わない。そんな経験はありませんか。

そこでこの記事では、ROASの資料で納得されない理由と、上司が実際に聞いている3つのこと、それに答えるための資料3枚の組み立て方、広告費を「役割」で語る5つの型までを整理します。

明日の会議で使える形に絞って解説しますので、広告を運用するマーケターの方はもちろん、部下の報告を受ける側のマネージャーの方にも役立つはずです。実際にMMM分析(広告が増やした分を推定する分析)を提供している立場から解説します。

【結論】納得されないのは資料の出来ではなく、数字の種類が質問と合っていないから

ROASの資料で納得されないのは、作り方が悪いからではありません。上司の「何に効いてるの?」は「広告経由でいくら売れたか」ではなく、「その広告費で、売上や利益がいくら動いたのか」を聞いています。ROASの分子は媒体が広告の接点に割り当てた「広告経由の売上」なので、この質問の答えにはもともと使えない数字です。

すれ違いを表にすると、次のようになります。

上司のセリフ聞かれている数字ROASが示す数字
「何に効いてるの?」広告費が動かした売上・利益広告経由と記録された売上
「で、儲かってるの?」粗利から広告費を引いた残り売上ベースの倍率
「やめたらどうなるの?」広告がない場合との差広告がある場合の記録だけ

以下、右の列を左の列に揃えていく手順です。

上司が聞いている3つのこと

上司の質問は言い方こそ様々ですが、中身はほぼ3つに集約されます。「売上はいくら増えたのか」「利益は出ているのか」「やめたらどうなるのか」です。

①「売上はいくら増えたのか」——経由ではなく増分で答える

広告をクリックして買った人の中には、広告がなくても買っていた人が含まれます。だから「広告経由の売上500万円」と「広告で増えた売上」は別の数字で、上司が聞いているのは後者です。この「増えた分」は増分売上と呼ばれ、実際の売上から「広告がなかった場合の推定売上」を引いて概算できます。GoogleやMetaも、広告を見せる人と見せない人を分けて増えた分を測るコンバージョンリフトという実験機能を提供しており、「増えた分で測る」は媒体自身も認める物差しです。計算のやり方は増分売上・増分ROASの記事で解説しています。

参照

②「利益は出ているのか」——売上ベースの倍率を、粗利の線と比べる

「ROASは500%です」に「で、儲かってるの?」と返されるのは、ROASが売上ベースの倍率だからです。利益の質問には、粗利率から計算する損益分岐のROAS(100%÷粗利率)を隣に置いて答えます。粗利率40%なら分岐点は250%。実際のROASがこの線のどちら側にいるかを示せば、売上の話が利益の話に変わります。損益分岐ROASの計算はROASの目安の記事で解説しています。

③「やめたらどうなるのか」——残存を踏まえて、事前の試算で答える

「やめたらどうなるの?」に管理画面は答えを持っていません。管理画面にあるのは広告を出している間の記録だけで、「出さなかった場合」のデータがないからです。事実に沿った答えは「すぐには落ちませんが、影響は数ヶ月遅れて出ます」——広告の効果には残存があるため、止めた直後は変化が見えず、数ヶ月後に指名検索や新規の数字に表れます。削る前に影響を見積もる方法は、広告をやめたら売上はどうなるかの記事で解説しています。

資料3枚の組み立て|役割・増えた分・判断

説明の順番は「この広告費は何のためか(役割)」→「実際にいくら動かしたか(増えた分)」→「だから来期どうするか(判断)」の3枚です。ROASの数字を捨てる必要はありませんが、主役の席から補足の席に移します。

1枚目:役割——広告費が何を動かすために使われているか

最初の1枚は数字ではなく、つながりの説明です。「この広告費は、新規顧客の獲得のために使っていて、獲得した顧客の売上と粗利がこう積み上がる」という、広告費→顧客の行動→売上・粗利の道筋を1枚にします。役割の語り方は次の章の5つの型から選べます。

2枚目:増えた分——ウォーターフォールで見せる

2枚目が数字の本体です。実際の売上から、季節要因・キャンペーン・広告がなくても立っていた売上を順に引き、「広告などによる上乗せは約いくら」を残すウォーターフォールの形が、経営会議ではいちばん伝わります。この1枚の作り方——Excelの回帰分析での要因分解——は、広告効果を自分で分析する方法の記事で手順を解説しています。

3枚目:判断——継続・増額・削減の提案と、見直しの条件

最後の1枚は「だからどうするか」です。継続か、増額か、削減かの提案に、見直しの条件——いつの数字で答え合わせをするか、どこまで下がったら配分を変えるか——を添えます。判断まで書いて初めて、報告が意思決定の材料になります。予算配分の決め方の手順は広告予算の配分の記事にまとめています。

広告費を「役割」で語る5つの型

1枚目の「役割」は、次の5つのどれか(または複数)に当てはまるはずです。役割ごとに、添える数字が変わります。

役割説明の形添える数字
新規顧客の獲得利益の出る新規客を、1人あたりいくらで増やしているか獲得単価(CPA)・LTV・限界CPA
売上の上乗せ広告がない場合と比べて、売上をいくら押し上げているか増分売上・増分ROAS
指名検索・認知の積み上げあとで社名検索から買いに来る人を、どれだけ増やしているか指名検索数・ブランドリフト調査
既存客の再購入買い忘れ・休眠をどれだけ防いでいるか再購入率・休眠からの復帰数
利益への貢献粗利から広告費を引いて、いくら残っているか損益分岐ROAS・ROI

自社の広告がどの役割かを1枚目で宣言しておくと、2枚目に置くべき数字が決まり、「ROASが高いのに詰められる」という噛み合わない場面が減ります。新規獲得の単価の決め方は限界CPA・許容CPAの記事、認知施策の測り方はブランドリフト調査の記事で解説しています。

言ってはいけない3つの答え方

組み立てと同じくらい効くのが、避けるべき答え方を知っておくことです。管理画面の合計を見せる・断定で守る・ROASの言葉で受け続ける、の3つを挙げます。

媒体別の管理画面の数字を、合計して見せる

GoogleとMetaの管理画面のコンバージョンを合計すると、同じ1件の購入が両方に数えられているため、実際の売上を超えることがあります。経営会議でこの合計を出すと、売上と突き合わせた瞬間に資料全体の信頼が崩れます。Google自身も、集計の仕組みが違えば数字がずれることをヘルプで説明しています。管理画面の数字は、運用の詳細を聞かれたときの控えに回してください。合計が実際の売上を超える仕組みと、指摘されたときの説明のしかたは、広告経由売上の重複計上の記事で解説しています。

参照

「確実に効いています」と断定で守る

増えた分は推定でしか出せません。断定で守ると、前提を1つ突かれただけで全部が崩れます。「広告による上乗せは約150万円と推定しています」のように、概数と推定で出すほうが、会議では折れにくい数字になります。

その場で答えられない質問を、ROASの言葉で受け続ける

「増えた分はいくらか」に手元の数字で答えられないときは、無理にROASで受けずに引き取ります。「経由の売上と、広告によって増えた分は別の数字なので、増えた分の推定を出し直して次回お持ちします」——数字の種類の違いを自分から言えたほうが、その場をしのぐより信頼が残ります。

DOREGAの場合|会議に出す「増えた分」を、検証つきで揃える

TAMKOのMMM分析サービス「DOREGA」は、この記事の2枚目——広告が増やした分の推定——を分析代行の形で提供しています。エンジンには、各施策の増分効果を推定する設計のGoogle「Meridian」を使い、前後のデータ整形・レポート作成を独自ツールで標準化することで、初回分析15万円で、媒体別の貢献・ROI・飽和度の分解から予算配分シミュレーション(3枚目の判断の材料)までを出します。社外の分析者が検証した数字として出せるため、「その推定は誰が確認したのか」と聞かれる場面にも備えられます。手元のデータで分析が成立するかどうかは、無料の事前診断で確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q01「ROASは500%です」と答えたら「で、儲かってるの?」と返されました。どう答えればいいですか?

粗利率から損益分岐のROASを計算して、その線と比べて答えます。

損益分岐ROASは100%÷粗利率で、粗利率40%なら250%が分岐点です。「500%は分岐点の250%を上回っているので、粗利ベースでも回収できています」という形にすると、売上の話が利益の話に変わります。

Q02経営会議の資料に、広告の管理画面のスクリーンショットを貼ってもいいですか?

補足資料までにとどめるのがおすすめです。

管理画面の数字は媒体ごとに数え方が違い、媒体別の合計が実際の売上を超えることもあります。本編は自社の売上・粗利と接続した数字で組み立て、管理画面は運用の詳細を聞かれたときの控えにします。

Q03「広告をやめたらどうなるの?」と聞かれたら、どう答えればいいですか?

「すぐには落ちませんが、影響は数ヶ月遅れて出ます」が事実に沿った答えです。

広告の効果には残存があるため、止めた直後の売上は変わらないように見えます。事前に影響を見積もる方法があるので、「試算して次回お持ちします」と引き取るのが実務的です。

Q04ブランディング目的の広告は、どう説明すればいいですか?

売上への直接の数字ではなく、指名検索や認知の指標で途中経過を示します。

認知施策の効果は購入までの距離が長く、クリックの数字に出ません。指名検索の件数やブランドリフト調査の結果を途中の物差しにし、売上への貢献はMMMのような手法で確かめる、と層を分けて説明します。

「何に効いてるの?」には、経由の数字ではなく増えた分で答える|まとめ

「この広告費、何に効いてるの?」に対してROASの資料が通らないのは、資料の出来ではなく、数字の種類が質問と合っていないからです。上司が聞いているのは、売上はいくら増えたのか・利益は出ているのか・やめたらどうなるのか、の3つ。答える資料は、役割・増えた分・判断の3枚。広告費の役割を宣言し、増えた分をウォーターフォールで見せ、見直しの条件つきで判断を提案する——この形に組み替えると、同じ広告の同じ実績でも、会議での通り方が変わります。

この記事のポイント

  • ROASの資料で納得されないのは、上司の質問「売上はいくら増えたのか」に対して「広告経由でいくら売れたか」という種類の違う数字を出しているから。
  • 上司が聞いていることは3つ——売上はいくら増えたのか・利益は出ているのか・やめたらどうなるのか。
  • 資料は「役割・増えた分・判断」の3枚で組み立て、ROASは補足の席に移す。
  • 広告費の役割は5つの型(新規獲得・売上の上乗せ・指名検索/認知・再購入・利益)から宣言し、型に合った数字を添える。
  • 管理画面の合計を見せない・断定で守らない・答えられない質問は数字の種類の違いを言って引き取る。