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ROAS・ROI

チラシの費用対効果はどう計算する?反響単価ではなく「増えた売上」から出す方法

チラシを1回配ると、いくらかかって、売上がいくら増えているのか。印刷代と折込料の請求は毎月届くのに、その費用に見合う効果が出ているかははっきりしない——折込チラシやポスティングを続けている店の販促担当者や経営者から、よく聞く悩みです。

たとえば、月100万円かけたチラシでクーポンが1,250枚使われたとします。反響1件あたり800円なら安く見えますし、クーポンを使った人の買い上げを合計すると500万円になります。けれど、その中にはチラシがなくても来店していた常連客が含まれています。チラシで本当に増えた売上が250万円だったとしたら、粗利で見るとこのチラシは赤字かもしれません(数字は説明用の架空の例です)。

そこでこの記事では、チラシにかかる費用の数え方、反響単価と「増えた売上」で見る費用対効果の違い、粗利を使ったROAS・ROIの出し方、具体的な計算例、Web広告と比べるときの注意点を順に整理します。

対象は、スーパーやドラッグストアなどの小売、飲食店、地域のサービス業で、折込チラシやポスティングを配っている会社の販促担当者と経営者です。統計の専門知識がなくても、自社のチラシを続けるか、減らすかを数字で判断できる水準で書いています。

広告効果の分析サービスを提供している立場から解説します。

【結論】チラシの費用対効果は「チラシで増えた粗利 ÷ チラシにかけた費用の合計」で見る

チラシの費用対効果は、チラシで増えた粗利と、チラシにかけた費用の合計を比べて判断します。費用には印刷・配布・制作だけでなく社内の作業時間も入れ、効果には反響の数ではなく、配らなかった場合と比べて増えた売上(増分)を使います。増えた粗利が費用の合計を上回っていれば、そのチラシは利益を生んでいます。

チラシの費用対効果を表す数字はいくつかあり、それぞれ答えられる問いが違います。よく使われる反響単価は、紙面や配布エリアを比べるには便利ですが、チラシを続けて利益が残るかどうかは教えてくれません。判断に使うのは、次の表の下の2つです。

指標計算のしかたわかること
反響単価費用の合計 ÷ 反響の件数反応1件を取るのにかかった費用
増分ROAS増えた売上 ÷ 費用の合計費用1円あたり、売上がいくら増えたか
ROI(増えた粗利 − 費用の合計)÷ 費用の合計費用を差し引いて、利益が残ったか

費用対効果を確かめたい会社が増えている背景には、紙のチラシの届き方とコストの変化があります。日本新聞協会の調べでは、新聞の1世帯あたりの部数は2015年の0.80部から2025年には0.42部になりました。電通「2025年 日本の広告費」でも、折込の広告費は2,354億円(前年比96.4%)と前年を下回り、新聞購読率の低下に加え、人件費や配送コストの高騰による媒体単価の値上げが挙げられています。届く世帯が減り、1部あたりの費用が上がれば、同じ予算で得られる効果も変わります。

参照

チラシにかかる費用をすべて数える

費用対効果の分母は、請求書の金額だけではありません。印刷・配布・デザイン制作に、チラシのために使った社内の作業時間を足したものが「チラシにかけた費用の合計」です。特売の値引きは、入れるかどうかを目的に合わせて先に決めておきます。

印刷・配布(折込・ポスティング)・デザイン制作

印刷代は、部数・サイズ・紙の種類・色数で変わります。配布の費用は、新聞折込なら新聞販売店に払う折込料、ポスティングなら配布を請け負う会社や配布員への料金です。新聞折込は新聞を取っている世帯にしか届かない一方、ポスティングは新聞を取っていない世帯にも届けられ、全戸に配るか戸建てだけに配るかといった条件で単価が変わります。デザイン制作は、外部に頼むならその制作費、社内のデザイナーが作るならその作業時間を入れます。

単価は地域・部数・業者・時期で大きく変わるため、一般的な相場を当てはめるより、自社の請求書から実際の金額を集めるほうが確かです。集めるときは「月ごと」「配布1回ごと」など期間を決めて、すべての費用を同じ期間で合計します。

社内の作業時間・特売の値引き分

見落としやすいのが社内の作業時間です。掲載する商品の選定、価格の調整、原稿の確認と校正、印刷や配布の手配、店頭での準備など、チラシ1回のために動いている時間を書き出し、時給に換算して費用に入れます。毎週配っている店では、この時間だけで月に数十時間になることも珍しくありません。

特売の値引きをどう扱うかは、何の費用対効果を知りたいかで決めます。「紙のチラシという手段」の効果を見たいなら、値引きは入れません。「チラシと特売をセットにした販促」の効果を見たいなら、特売品の値引き額の合計も費用に入れます。入れる場合は、値引きで減った粗利を費用側に足すか、増えた粗利を計算するときに差し引くか、どちらか一方だけで反映します。両方で引くと、同じ値引きを二重に数えてしまいます。

費用の項目中身1か月の金額
印刷1回3万部・週1回で月4回(計12万部)、1部3円36万円
配布(新聞折込)12万部、1部3.5円42万円
デザイン制作1回4万円×4回16万円
社内の作業時間月20時間×時給換算3,000円6万円
合計100万円
(参考)特売の値引き額特売品の値引き額の合計。入れるかは目的で決める20万円

反響単価と、増えた売上で見る費用対効果の違い

反響単価は「反応1件を取るのにいくらかかったか」で、紙面や配布エリアを比べるのに向いています。ただし、反響には「チラシがなくても買っていた人」が混ざり、「チラシを見たのに手がかりを残さなかった人」は抜けるため、チラシで利益が出ているかは反響単価だけでは判断できません。

反響単価(1件あたりの費用)の出し方

反響とは、チラシを見た人が残す手がかりのことで、クーポンの利用、QRコードの読み取り、チラシ専用の電話番号への着信、チラシの持参などで数えます。反響単価は、チラシにかけた費用の合計を反響の件数で割って出します。先ほどの例で、月100万円の費用に対してクーポンの利用が1,250件なら、反響単価は800円です。配布部数に対する反響の割合(反響率)は、1,250件÷12万部で約1.04%になります。

反響単価をどこまで許せるかは、反応1件あたりの粗利から逆算して決めます。考え方はWeb広告の許容CPAと同じで、許容CPAの決め方の記事で詳しく扱っています。

反響単価では分からないこと

反響単価には、次の3つが映りません。1つ目は、チラシがなくても来ていた人です。もともとその週に来店する予定だった常連客がクーポンを使えば反響として数えられますが、売上はチラシがなくても同じでした。2つ目は、チラシを見て動いたのに手がかりを残さなかった人です。チラシを家に置いたまま来店した人や、商品名を検索してネットで買った人は数えられません。3つ目は、反響1件の中身の違いです。反響単価が同じでも、買い上げ金額や商品の粗利率が違えば、残る利益は変わります。

このため、反響単価が下がったからといって、チラシの利益が増えたとは限りません。値引き幅を大きくして常連客のクーポン利用が増えただけなら、反響単価は下がっても利益はむしろ減っています。

増えた売上から費用対効果を出す

増えた売上は「実際の売上」から「チラシがなかった場合の売上」を引いて出します。それを費用の合計で割ればROAS、そこから粗利を出して費用を引き、費用で割ればROIです。続けるかどうかの判断には、利益を表すROIを使います。

「チラシがなかった場合」の売上を見積もる

チラシがなかった場合の売上は実際には観察できないため、何らかの方法で見積もります。主な方法は3つです。配った地域・店舗と、条件の似た配らなかった地域・店舗の売上の動きを比べる方法。過去に配布を休んだ週や減らした週の売上と比べる方法。週ごとの売上とチラシ・Web広告などの費用を並べ、季節や特売の影響と分けて統計的に推定する方法です。最後の方法はマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれ、ほかの施策と同じ基準で比べられるのが利点です。

どの方法でも、結果は「250万円ちょうど」ではなく「200万〜300万円くらい」という幅のある見積もりになります。方法ごとの条件や落とし穴は、チラシの効果測定の記事にまとめています。

売上ではなく粗利で割る(ROASとROI)

増えた売上を費用の合計で割ったものが増分ROASです。ただし、増分ROASが100%を上回った時点で黒字になるわけではありません。売上の中には商品の仕入れ代が含まれているからです。利益が残ったかを見るには、増えた売上に粗利率を掛けて増えた粗利を出し、そこから費用の合計を引いて、費用で割ります。これがROIです。

ROIがちょうど0%になるROASは「1÷粗利率」で出せます。粗利率25%の店なら、増分ROASが400%を超えてはじめて黒字です。ROAS・ROI・CPAの関係はROAS・ROI・CPAの違いの記事、増えた売上の考え方は増分ROASの記事で詳しく解説しています。

計算例(説明用の架空の数字)

同じチラシでも、反響から計算すると黒字に見え、増えた売上から計算すると赤字になる、ということが起こります。架空の小売店の1か月分で、2つの計算を並べます。

前提は次のとおりです。週1回3万部の新聞折込を月4回配り、費用の合計は先ほどの表の100万円。クーポンの利用は1,250件で、クーポンを使った人の平均の買い上げは4,000円でした。この月の実際の売上は3,000万円で、配らなかった地域との比較から、チラシがなかった場合の売上は2,750万円と見積もられたとします。粗利率は25%です。

項目反響から計算した場合増えた売上から計算した場合
費用の合計100万円100万円
チラシの効果とみなす売上500万円(1,250件×4,000円)250万円(3,000万円−2,750万円)
ROAS500%250%
粗利(粗利率25%)125万円62.5万円
ROI+25%−37.5%
見え方続けてよさそうに見える費用が粗利を上回り、赤字
125万円62.5万円費用の合計 100万円(この線を超えれば黒字)反響から計算した粗利(ROI +25%)増えた売上から計算した粗利(ROI −37.5%)
同じ月のチラシについて、反響から計算した粗利125万円と、増えた売上から計算した粗利62.5万円を、費用の合計100万円の線と比べた図。反響からの計算では線を上回るが、増えた売上からの計算では下回る。数字は説明用の架空の例で、実案件の値ではありません

差が出た理由は、クーポンを使った1,250人の中に、チラシがなくても来ていた常連客が多く含まれていたことです。チラシを見てクーポンを使わずに買った人の分を足しても、チラシで増えた売上は250万円にとどまりました。粗利率25%の店で黒字にするには、増えた売上が400万円(100万円÷25%)必要です。

見積もりには幅があるので、幅の両端でも計算しておきます。

増えた売上の見積もり増えた粗利(25%)ROI
180万円(少なめ)45万円−55%
250万円(中心)62.5万円−37.5%
320万円(多め)80万円−20%

この例では、幅のどこをとっても赤字なので、判断が揺れる心配は小さいと言えます。特売の値引き額20万円も費用に入れると、費用は120万円になり、中心の見積もりでのROIは約−48%まで下がります。反対に、幅の中に黒字と赤字がまたがる場合は、配らない地域を設けて比べるなど、見積もりの幅を狭める材料を足してから判断します。

赤字だからといって、すぐにやめるのが正解とは限りません。増えた売上の少ない地域を配布から外す、部数や回数を減らす、粗利率の高い商品を紙面に載せる、といった手で費用対効果が改善することもあります。また、1か月分の計算には、チラシで初めて来た客がその後も通い続ける分は入っていません。新しい客の割合が多い店では、数か月後の売上も含めて見るほうが実態に近くなります。

Web広告と費用対効果を比べるときの注意

チラシとWeb広告の費用対効果を比べるときは、効果の数え方と費用の範囲を揃えます。チラシの増分ROASと、Web広告の管理画面に出るROASをそのまま並べても、数え方が違うため比べたことになりません。

Web広告の管理画面に出るコンバージョンは、広告をクリックしたり見たりした後の購入を数えたもので、性質はチラシの反響に近いものです。広告がなくても買っていた人が含まれます。チラシを増分で、Web広告を管理画面の数字で比べると、Web広告のほうが有利に見えやすくなります。

費用の範囲も揃えます。チラシに印刷・配布・制作・社内の作業時間を入れるなら、Web広告にも媒体に払う広告費だけでなく、運用の手数料、バナーや動画の制作費、社内の作業時間を入れます。期間も同じにします。チラシの効果は配布日から数日に集中しやすい一方、認知を目的にした広告は遅れて効くことがあり、短い期間で区切ると片方に不利な結果になります。

もう一つ注意したいのは、効果の重なりです。チラシを見た人が店名を検索し、検索広告をクリックして買えば、管理画面ではWeb広告の成果として数えられます。同じ時期に両方を出しているなら、どちらか一方だけを測るのではなく、同じ分析の中で施策ごとに分けるのが確実です。

揃える項目チラシWeb広告
効果の数え方配らなかった場合と比べて増えた売上出さなかった場合と比べて増えた売上(管理画面の数字ではなく)
費用の範囲印刷・配布・制作・社内の作業時間広告費・運用手数料・制作費・社内の作業時間
期間同じ月・同じ週で区切る同じ月・同じ週で区切る
重なり同時期の両方を、同じ分析で分ける同時期の両方を、同じ分析で分ける

比べ方の全体と、予算を移すときの進め方はチラシとWeb広告はどちらが効くかの記事で解説しています。

DOREGAの場合|チラシで増えた売上をほかの施策と分けて出す

TAMKOが提供するDOREGAは、統計学による広告効果の分析サービスです。週ごとの売上と施策ごとの費用から、チラシやWeb広告それぞれで増えた売上を推定する分析を、Googleのオープンソースの分析エンジン「Meridian」で行い、前後のデータ整形とレポート作成は独自ツールで標準化しています。チラシの配布費用や部数をWeb広告と同じ入力として扱うので、この記事の計算例でいう「増えた売上」を、施策ごとに同じ基準で出せます。

初回分析は15万円で、標準範囲の分析です。範囲は1事業・主要KPI 1つで、Web広告もチラシ・イベントも入れられます。お渡しするものはレポート・予算配分案・結果説明会で、期間は最短1週間(必要データ共有後)です。KPIや事業が複数ある場合、SNSアカウント運用など費用のない施策を含める場合、特売の価格の影響まで分けて見たい場合は、標準範囲を超える分析として本格分析(30万円〜)になります。費用と期間は着手前にご案内します。

なお、短期の単発キャンペーンだけの評価は対象外です。SNSアカウント運用は売上への貢献までで、費用がないため配分案には入りません。また、毎週ほぼ同じ部数を配り続けていて配布量に変動がない場合は、チラシで増えた売上を推定できないことがあります。

よくある質問(FAQ)

Q01チラシの費用対効果の目安はどれくらいですか?

業種共通の目安より、自社の損益分岐を先に出すのが確実です。

損益分岐の増分ROASは「1÷粗利率」で出せます。粗利率25%なら400%、40%なら250%です。チラシで増えた売上がこれを上回っていれば黒字です。反響率の「何%なら合格」といった目安は、商品や地域、紙面によって大きく変わり、利益が出ているかどうかは教えてくれません。

Q02新聞折込とポスティングは、どちらが割安ですか?

1部あたりの単価だけでは決まりません。

新聞折込は新聞を取っている世帯にしか届かず、新聞の1世帯あたりの部数は2025年に0.42部まで減っています。ポスティングは新聞を取っていない世帯にも届けられますが、配布の条件で単価が変わります。比べるべきなのは、増えた売上1円あたりの費用です。可能なら、地域を分けて両方を試し、それぞれの増分を比べてください。

Q03特売の値引きは、チラシの費用に入れますか?

何の費用対効果を知りたいかで決めます。

紙のチラシという手段の効果を見たいなら入れず、チラシと特売をセットにした販促の効果を見たいなら、特売品の値引き額の合計を費用に入れます。入れる場合は、値引きで減った粗利を費用側か粗利側のどちらか一方だけで反映し、二重に引かないようにします。

Q04チラシ1回分だけで、費用対効果を計算できますか?

反響単価は計算できますが、増えた売上は1回分だけでは見積もりにくいです。

1回分の売上の変化は、天候や曜日、競合の特売でも大きく揺れるためです。配らなかった地域と比べる方法なら、1回分でも目安は出せます。週ごとのデータから統計的に推定する方法では、1〜2年分の週次データがあると季節の動きと分けやすくなります。

チラシの費用対効果は、反響単価ではなく増えた粗利と費用の合計で計算する|まとめ

チラシの費用対効果は、反響1件あたりの費用ではなく、チラシで増えた粗利と、チラシにかけた費用の合計を比べて判断します。費用には印刷・配布・制作に加えて社内の作業時間を入れ、特売の値引きは目的に合わせて入れるかを決めます。効果には、クーポンの利用枚数のような反響ではなく、配らなかった場合と比べて増えた売上を使います。増えた売上を費用で割ればROAS、粗利から費用を引いて費用で割ればROIで、黒字かどうかは「1÷粗利率」の損益分岐と比べればわかります。反響からの計算では黒字に見えるチラシが、増えた売上で計算すると赤字になることもあるため、見積もりの幅も含めて確かめてから、続ける・減らす・中身を変えるを決めるのが確実です。Web広告と比べるときは、効果の数え方・費用の範囲・期間を揃えて並べます。

この記事のポイント

  • チラシの費用対効果は「チラシで増えた粗利」と「チラシにかけた費用の合計」で判断する。反響単価は紙面やエリアの比較には便利だが、利益が出ているかは教えてくれない。
  • 費用は印刷・配布・デザイン制作に社内の作業時間を足して合計する。特売の値引きは、紙の効果を見るなら入れず、特売込みの販促として見るなら入れ、二重に引かない。
  • 増えた売上は「実際の売上 − チラシがなかった場合の売上」。配らなかった地域との比較、休んだ週との比較、週次データからの統計的な推定で見積もり、結果は幅で受け取る。
  • 増分ROAS=増えた売上÷費用、ROI=(増えた粗利−費用)÷費用。黒字になる増分ROASは「1÷粗利率」で、粗利率25%なら400%が必要。
  • Web広告と比べるときは、管理画面のROASではなく増えた売上で、費用の範囲と期間も揃えて並べる。同時期に出しているなら、同じ分析の中で施策ごとに分ける。