Amazonのディスプレイ広告の継続可否は、クリックに起因するACOSを損益分岐ACOSと比較し、ターゲティングの方法ごとに判断する
Amazon広告のディスプレイ広告(旧スポンサーディスプレイ広告)で、管理画面のACOSが損益分岐ACOSを下回っていても、広告によって全体の売上が増加したかどうかを判断できない場合はありませんか。
診断サンプルの架空の会社(K社・キッチン用品メーカー・自社ブランド「ケイライフ(架空)」)に、説明用の架空の数字でディスプレイ広告の3つのキャンペーンを設定した例では、3つのキャンペーンの広告費と売上を合計して算出した管理画面のACOSは26.3%でした。この26.3%は、手数料などを差し引いた後の利益率から算出した損益分岐ACOS(35%と仮定。以下、損益分岐)を下回ります。一方、同じ合計のACOSを、閲覧による購入を除き、クリックに起因する売上だけで算出し直すと40.5%となり、損益分岐を上回ります。
そこでこの記事では、ディスプレイ広告とスポンサープロダクト広告で売上の計上方法がどのように異なるかを確認したうえで、クリックに起因するACOSとブランド新規顧客による売上の割合をターゲティングの方法ごとに並べ、継続・絞り込み・検証・停止のいずれとするかを判断する手順を、Amazon Adsの公式の記載を根拠に整理します。
この記事の対象読者は、Amazonに自社ブランドの商品を出品し、スポンサープロダクト広告に加えてディスプレイ広告を運用している担当者の方です。
Amazon広告のアカウント診断で、広告の種類ごとのACOSと全体の売上に対する広告費を毎回確認しているTAMKOの立場から解説します。
【結論】ディスプレイ広告(旧スポンサーディスプレイ広告)の継続可否は、クリックに起因するACOSを損益分岐と比較して判断する
ディスプレイ広告のACOSは、スポンサープロダクト広告のACOSより広い範囲の購入を含めて算出されるため、同じ基準では評価できません。継続するかどうかは、ターゲティングの方法ごとにクリックに起因するACOSを損益分岐と比較し、閲覧による購入を含めた場合だけ損益分岐を下回るか、ブランド新規顧客による売上の割合が低いかを確認してから判断します。

損益分岐は、販売価格から原価・Amazonの販売手数料・配送費などを差し引いた利益率をもとに算出します。算出方法は「Amazon広告のTACOSとは?損益分岐ACOSでキャンペーンを種類ごとに仕分ける方法」で解説しています。この記事では、売上の計上方法をそろえたうえで損益分岐をディスプレイ広告に適用し、継続の可否を判断する手順を解説します。
ディスプレイ広告とは:スポンサーディスプレイ広告からの名称変更と、スポンサープロダクト広告との違い
キャンペーンの作成画面で、キャンペーンの種類の一覧にスポンサーディスプレイ広告が表示されない。
ディスプレイ広告は、スポンサーディスプレイ広告の現在の名称です。Amazon Adsの公式ページでは、スポンサーディスプレイ広告が名称をディスプレイ広告に変更し、Amazonの包括的なディスプレイ広告のソリューションに統合されたと説明されています。既存のキャンペーンは、中断されずに継続します。

新規のキャンペーンは、作成画面で「ディスプレイ広告、動画広告、音声広告」から「ディスプレイ広告」を選択して作成します。名称変更に伴う移行の時期によっては画面の表記が異なる場合があるため、キャンペーンの種類の表記を自社の管理画面で確認してください。
ターゲティングには2種類があります。コンテキストターゲティングは、特定の商品や関連するカテゴリーを指定する方法で、価格・ブランド・プライム配送の利用資格などで対象を絞り込めます。オーディエンスターゲティングは、閲覧・購入の履歴や興味関心などにもとづいて配信の対象者を指定する方法で、商品の閲覧履歴を使う閲覧リマーケティング、購入履歴を使う購入リマーケティング、Amazon Adsが構築したセグメントを使うAmazonオーディエンスの3つがあります。この記事では、この4つを「ターゲティングの方法」と呼びます。
入札の最適化には3つの方式があります。公式ガイド「ディスプレイ広告について知っておくべきことすべて」での名称は、閲覧の増加を図る「ビューアブルインプレッションに合わせた最適化」、クリックを重視する「ページの訪問数に合わせた最適化」、購入を目的とする「コンバージョンに合わせた最適化」です。いずれを選択したかによって、評価に用いる指標の前提が異なります。
ディスプレイ広告のACOSを、スポンサープロダクト広告のACOSと同列に比較できない理由:14日間・同じブランドの他の商品・閲覧による購入
ディスプレイ広告のACOSとスポンサープロダクト広告のACOSを比較して、予算の配分先を決めようとしている。
公式ヘルプによると、出品者のスポンサープロダクト広告では、クリック後7日間に、広告に表示した商品と同じ出品者が販売する他の商品の購入が売上に計上されます。ディスプレイ広告では、売上の計上期間(ルックバックウィンドウ)が14日間で、広告対象の商品と同じブランドの他の商品の購入が計上され、vCPMのキャンペーンでは閲覧による購入も計上されます。計上の期間が長く、閲覧による購入も含まれる分、購入の実態が同じでもディスプレイ広告のACOSは低く算出されやすくなります。

| 項目 | スポンサープロダクト広告(出品者) | ディスプレイ広告 |
|---|---|---|
| ルックバックウィンドウ | 7日間 | 14日間 |
| 対象となる商品 | 広告に表示される商品と、同じ出品者が販売する他の商品 | 広告対象(ランディングページ)の商品と、同じブランドの他の商品(ブランドハロー効果) |
| 対象となる広告インタラクション | クリックのみ | CPCはクリック、vCPMはクリックと閲覧 |
閲覧による購入とは、広告をクリックせずに閲覧した人による、その後の購入を指します。公式ヘルプでは、ディスプレイ広告ではピクセルの50%が1秒以上表示されたインプレッションが閲覧として記録されるとされています。
また、ディスプレイ広告の売上には、Amazonや他の出品者による新品・中古品の販売分が含まれることがあります。自社商品を他の出品者も販売している場合は、管理画面の売上をセラーセントラルの注文データと照合してください。
診断サンプルの架空の会社(K社)では、スポンサープロダクト広告の一般語(マニュアル)キャンペーンのACOSが23.7%でした。次章で示すディスプレイ広告の3つのキャンペーン(説明用の架空の数字です)の管理画面のACOSは、広告費と売上を合計して算出すると26.3%で、この例ではディスプレイ広告のほうが2.6ポイント高くなっています。計上の期間も範囲も異なるため、ACOSの高低から予算の配分先を判断することはできません。
なお、公式ヘルプでは、2026年1月1日から、一部の掲載枠の閲覧のアトリビューションで、購買行動パターンなどの追加のシグナルが考慮されると記載されています。vCPMのキャンペーンで2025年以前と2026年以降の実績を比較する場合は、計上方法が変更されている点を前提とします。
判断に用いる指標:クリックに起因するACOSと、管理画面のACOSの併記
vCPMのキャンペーンで、ROASは高く表示されているが、クリック数は少ない。
損益分岐と比較するのは、クリックに起因する売上から算出したACOSです。管理画面のACOSは参考値として併記し、両者の売上の差額(閲覧による購入の売上)は、管理画面の数値だけでは広告の効果を判断できない部分として扱います。
公式ヘルプによると、閲覧のアトリビューションに対応するキャンペーン(ディスプレイ広告ではvCPMのキャンペーン)では、商品購入数やROASなどの標準的な指標にクリックと閲覧の両方による購入が含まれ、クリックだけの内訳は「クリックに起因するROAS」「クリックによる購入」のように区別して表示されます。
閲覧による購入を分けるのは、閲覧者の購入が広告の影響によるものか、広告を配信しなくても発生したものかを、管理画面の数値では区別できないためです。まずクリックに起因する売上だけで算出したACOSを損益分岐と比較し、閲覧による購入は「継続・絞り込み・検証・停止の4つの判断」の章で示す手順で確認します。
この例では、1つのキャンペーンに1つのターゲティングの方法を設定しています。
| キャンペーン | コストタイプ | 広告費 | 売上(管理画面) | 管理画面のACOS | クリックに起因する売上 | クリックに起因するACOS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 閲覧リマーケティング | CPC | 80,000円 | 400,000円 | 20.0% | 400,000円 | 20.0% |
| 2 コンテキストターゲティング(保存容器のカテゴリー) | CPC | 120,000円 | 240,000円 | 50.0% | 240,000円 | 50.0% |
| 3 Amazonオーディエンス(キッチン用品に関心のある層) | vCPM | 100,000円 | 500,000円 | 20.0% | 100,000円 | 100.0% |
| 合計 | — | 300,000円 | 1,140,000円 | 26.3% | 740,000円 | 40.5% |

3つのキャンペーンの合計で算出したACOSは、管理画面の値では26.3%で損益分岐を下回りますが、クリックに起因する売上だけで算出すると40.5%となり、損益分岐を上回ります。差額の400,000円(1,140,000円−740,000円)は、すべてキャンペーン3(vCPM)の閲覧による購入の売上です。キャンペーン3の管理画面のACOS(20.0%)は、閲覧による購入が広告による増加分かどうかを確認するまでは、継続の根拠としません。
ターゲティングの方法ごとの評価:リマーケティングはブランド新規顧客による売上の割合とあわせて確認する
閲覧リマーケティングのACOSは低いが、ブランド新規顧客による売上の割合も低い。
ターゲティングの方法によって、対象となる人が購入をどの程度検討しているかが異なります。ターゲティングの方法ごとにクリックに起因するACOSを損益分岐と比較し、リマーケティングについては、あわせてブランド新規顧客による売上の割合も確認し、既存の顧客の再購入が大半を占めていないかを判定します。

| キャンペーン | クリックに起因するACOS | ブランド新規顧客による売上の割合 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1 閲覧リマーケティング | 20.0% | 12% | 損益分岐を下回る。売上の大半は既存の顧客による |
| 2 コンテキストターゲティング(保存容器のカテゴリー) | 50.0% | 68% | 損益分岐を上回る。ブランド新規顧客による売上の割合は高い |
| 3 Amazonオーディエンス(キッチン用品に関心のある層) | 100.0% | 55% | クリックに起因するACOSは損益分岐を上回る。閲覧による購入の検証が必要 |
閲覧リマーケティングは、Amazonストアで自社や類似の商品の詳細ページを閲覧し、その商品をまだ購入していない人(ブランドの他の商品をすでに購入した人を含む)に配信する方法です。ここでの閲覧は商品詳細ページの閲覧で、広告の閲覧とは異なります。キャンペーン1のクリックに起因するACOSは損益分岐を下回りますが、ブランド新規顧客による売上の割合は12%で、残りの88%は過去365日以内にケイライフの商品を購入した人によるものです(説明用の架空の数字です)。購入を検討していた人が対象のため、広告を配信しなくても発生した売上が含まれている可能性があり、ACOSの低さだけでは予算増額の根拠になりません。広告対象の商品や補完的な商品の購入者に配信する購入リマーケティングも、同様に評価します。
コンテキストターゲティングは、指定した商品やカテゴリーごとに成果が異なります。ターゲティングレポートで商品・カテゴリー別のクリックに起因するACOSを算出し、損益分岐を上回る商品・カテゴリーは、価格・ブランド・プライム配送の利用資格の条件を加えて絞り込みます。公式ガイドでも、特定のカテゴリーの成果が低い場合は、入札額の引き下げにとどめず、ターゲティングを調整することをすすめています。
判断する前に確認すること:直近14日の売上・在庫切れの日・注文数
配信開始から1週間のキャンペーンのACOSが高く、停止を検討している。
直近14日の売上は確定していないため、評価の期間から除きます。在庫切れなどで広告が配信されなかった日も対象外とし、損益分岐に達するために不足している注文数(管理画面の商品購入数)が、数件の増減では解消しない規模かどうかを確認してから判断します。

直近14日の売上は、後から加算される
公式ヘルプでは、キャンペーンレポートの売上は広告インタラクションの日付で計上され、各日のアトリビューション指標はルックバックウィンドウが終わるまで確定しないとされています。ディスプレイ広告のルックバックウィンドウは14日間のため、直近14日の売上は後から加算されます。公式ガイドも、評価に十分なデータが得られるまで少なくとも2週間待つことをすすめています。
在庫切れの日は、広告が配信されない
公式の初級ガイドでは、ディスプレイ広告は「販売状況認識対応」で、広告対象の商品が在庫切れのとき、またはおすすめ出品(カート)に選ばれていないときは配信されないと記載されています。在庫切れなどで広告が配信されない日は、広告費も売上も少なくなるため、在庫切れの日を含む期間と含まない期間を同列に比較しません。診断サンプルの架空の会社(K社)の例では、ステンレス保存容器 5点セットが12か月のうち20日間(12月19日〜12月30日、3月24日〜3月31日)在庫切れでした。同商品をディスプレイ広告の対象としている場合は、該当する20日間を評価の期間から除きます。
損益分岐に達するために不足している注文数は、数件の増減で解消するかを確認する
説明用の架空の数字で、注文1件あたりの売上を3,600円とします。キャンペーン2の売上240,000円は、注文約67件分に相当します。ACOSを損益分岐の35%まで下げるには、売上が約342,857円(120,000円÷0.35)必要です。不足額は約102,857円で、注文数に換算すると約29件です。この差は、注文が数件増減しただけでは解消しません。不足が数件にとどまる場合は、評価期間を延長して注文数を確保してから判断します。
継続・絞り込み・検証・停止の4つの判断
キャンペーンごとの指標を確認したが、どのキャンペーンを継続し、どのキャンペーンを停止するかを決められない。
クリックに起因するACOSが損益分岐を下回り、売上が既存の顧客に偏っていないキャンペーンは継続します。売上の大半が既存の顧客の再購入であるものと、閲覧による購入を含めた場合だけ損益分岐を下回るものは、一時停止して全体の売上の変化を確認する検証を行います。閲覧による購入を含めても損益分岐を上回るものはターゲティングを絞り込みます。絞り込んだ後もクリックに起因するACOSが損益分岐を上回る場合と、検証で算出した増分のACOSが損益分岐を上回る場合は、停止します。

検証では、停止前と停止後に同じ日数の比較期間を設定し、広告によらない売上も含む全体の売上の減少幅を比較します。ディスプレイ広告のルックバックウィンドウが14日間であるため、停止日からの同じ期間は、それ以前に広告をクリック・閲覧した人の購入がまだ発生しうる期間として比較から除外します。
公式ヘルプでは、ブランドを宣伝する広告のあいだで、1つの購入はすべてのキャンペーンの中で1つの広告インタラクションにだけ帰属し、クリックが閲覧より優先されるとされています。ディスプレイ広告を停止すると、それまで同広告に帰属していた購入の一部が、スポンサーブランド広告など他の広告の成果として計上される可能性があります。そのため、検証では、広告別の売上ではなく全体の売上を比較します。
停止期間中に削減した広告費を、全体の売上の減少額で割った値(増分のACOS)を損益分岐と比較する考え方は、「Amazon広告の指名の広告は必要か?停止して自然検索に残る売上を検証する方法」の記事と同じです。ディスプレイ広告では、比較から除外する期間が、同記事の7日間ではなく14日間となります。
TAMKOのAmazon広告アカウント診断で確認すること
この記事で扱った広告の種類ごとのACOSと、在庫切れなどで広告が配信されなかった日は、TAMKOのAmazon広告アカウント診断で毎回確認している項目です。診断では、広告によらない売上も含む全体の売上に対する広告費(TACOS。Amazon Adsの公式の用語ではありません)も確認します。

診断ページには、「現状の配分を続けてよいという判断も、診断の結論です。」「改善点には設定の手順を、続けてよい点にはその根拠を、判断できないものには検証の方法を添えます。」と記載しています。料金は、診断・報告書・説明会まで無料(毎月2社まで)です。
詳しくは、診断ページをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q01スポンサーディスプレイ広告とディスプレイ広告は、別の広告ですか?
同じ広告です。
ディスプレイ広告は、スポンサーディスプレイ広告の新しい名称です。公式ページでは、名称の変更前から配信しているキャンペーンも、中断されずに継続すると案内されています。
Q02ディスプレイ広告のACOSの目安はどの程度ですか?
公式の目安はありません。
手数料などを差し引いた利益率から損益分岐ACOSを算出し、クリックに起因するACOSと比較することをおすすめします。
Q03在庫が少ない商品を、ディスプレイ広告の対象にしてもよいですか?
対象にすることはできます。
公式ガイド「ディスプレイ広告について知っておくべきことすべて」では、商品が購入できない状態になると広告の配信が自動的に停止し、その間の広告費は請求されないとされています。評価の期間からは、在庫切れの日を除きます。
Amazonのディスプレイ広告の継続可否は、クリックに起因するACOSを損益分岐と比較して判断し、閲覧による購入や既存の顧客の再購入が多いキャンペーンは一時停止して検証する|まとめ
ディスプレイ広告は売上の計上期間と範囲が異なるため、出品者のスポンサープロダクト広告とACOSを同列に比較することはできません。継続するかどうかは、ターゲティングの方法ごとに、クリックに起因するACOSを損益分岐と比較して判断します。閲覧による購入を含めた場合にのみACOSが損益分岐を下回るものと、既存の顧客の再購入が大半を占めるものは、一時停止して全体の売上の変化で検証してください。
この記事のポイント
- ディスプレイ広告は、スポンサーディスプレイ広告の現在の名称。
- ディスプレイ広告は売上の計上期間と範囲(14日間・同じブランドの他の商品・vCPMでは閲覧による購入)がスポンサープロダクト広告と異なるため、出品者のスポンサープロダクト広告のACOSと同列に比較しない。
- 損益分岐と比較するのは、クリックに起因するACOS(1÷クリックに起因するROAS)。
- リマーケティングは、クリックに起因するACOSとあわせてブランド新規顧客による売上の割合を確認する。
- 閲覧による購入や既存の顧客の再購入が多いキャンペーンは、一時停止して全体の売上で検証する。
- 評価の期間からは、直近14日と在庫切れの日を除く。