TAMKO
P-MAX

P-MAXの「新規顧客の獲得」で、新規と既存を分けて数える

P-MAXの売上は増加しているのに、そのうち何人が初めて買ったお客さまなのかを答えられない。そんな状態のまま、予算の増額を検討していないでしょうか。

主力のP-MAXが指名検索や過去の購入者からの注文を多く受けていると、ROASは高く見えても新しいお客さまは増えていないことがあります。たとえば「P-MAX_メイン」が指名と商品の受け皿を担い、月の費用6.2万円で売上82万円という場合(診断サンプルの架空の会社(B社・アウトドア用品EC)の例です)、この数字だけでは売上のどれだけが新規によるものかは分かりません。

そこでこの記事では、P-MAXの「新規顧客の獲得」目標で新規と既存がどう判定されるのか、判定に使われる材料、「新規顧客のみ」に入札する前の確認点を整理します。

対象は、P-MAXを自社で運用している方、または外部に任せてレポートを受け取っている担当者の方です。

Google広告のアカウント診断を提供している立場から、設定の確認ポイントを中心に解説します。

【結論】P-MAXの新規顧客の判定は「既存顧客をどこまで正確に渡せるか」で決まる

「新規顧客の獲得」目標では、既存顧客のリストや購入履歴に該当しない人が新規として扱われます。判定の正確さは、広告主が渡す既存顧客の情報の量と鮮度で決まります。

要点は次の3つです。

  • 判定の材料は、Googleの自動検出・顧客リスト・購入タグのパラメータの3つ。自社の購入履歴を渡すほど判定は実態に近づく
  • 最初から「新規顧客のみ」にせず、まず「新規顧客の価値」で分けて数え、「不明」と「リピーター」の割合を確認する
  • 有効化前のデータには遡れないため、自社の購入データで新規の比率を先に集計しておく

「新規顧客の獲得」目標の3つの設定と、使い分けの前提

現在のGoogle広告ヘルプに並んでいる設定は3つです。購入をコンバージョンとして計測している広告主に推奨されているのは「新規顧客の価値」です。

設定入札の考え方対象のキャンペーン入札戦略既存顧客の扱い
新規顧客の価値新規顧客の入札単価を既存顧客より高くする検索・P-MAX・ショッピング・デマンド ジェネレーション価値ベース(目標広告費用対効果を含む)優先度は下がるが入札対象に残る
価値の高い新規顧客価値の高い新規顧客をさらに優先するP-MAX・検索価値ベース(目標広告費用対効果を含む)3つの層に別々の優先度を置ける
新規顧客のみ新規顧客にだけ入札する検索・P-MAX・ショッピング・デマンド ジェネレーション価値ベースに加え、コンバージョン数の最大化・目標アクション単価も可入札対象外。別のキャンペーンが必要

上の2つは購入のコンバージョン目標が1つ以上あることが前提です。「新規顧客のみ」は、獲得予算に制限がある場合か、見込み顧客の発掘など購入以外の目標の場合に限って推奨されています。購入のコンバージョン目標の扱いは、主要・副次の整理と合わせて確認してください。

なお、休眠顧客の再獲得を目的とする「顧客維持」目標は別の目標で、この記事の対象外です。

「新規顧客の価値」は、新規1件にいくら上乗せするかの設定

「新規顧客の価値」では、新規顧客のコンバージョンに金額を上乗せして入札します。上乗せ額の決め方はヘルプに書かれていないため、2回目以降の購入まで含めた粗利から考え、根拠が乏しいうちは小さな額で始めて検証するのが現実的です。

レポートには、調整前の値を示す「元のコンバージョン値」の列があります。粗利率35%で損益分岐ROASが2.9の会社なら(診断サンプルの架空の会社(B社)の例です)、上乗せ後ではなく、元のコンバージョン値で計算したROASが2.9を下回っていないかを確認します。

新規と既存を判定する3つの材料(自動検出・顧客リスト・購入タグ)

新規か既存かの判定には、Googleの自動検出、広告主が渡す顧客リスト、コンバージョンタグのパラメータの3つが使われます。自動検出は常に動いており、ほかの2つはその精度を補う材料です。

材料仕組み注意点
Googleの自動検出購入をコンバージョンとして計測していれば、過去540日のキャンペーン活動と購入データからオーディエンスリストが自動で作られる設定は最も簡単。Cookieの削除や無効化があると網羅性が下がる
顧客リストカスタマーマッチ(CRMの連携・直接アップロードなど)、コンバージョンベースのリスト、GA4のオーディエンスなどで既存顧客を指定する。最大100個まで選べる自社で確認した最新の顧客データで定義できる。古いリストは判定を誤らせる
コンバージョンタグのパラメータ購入のたびに、自社の購入履歴で判定した新規・リピーターの区分をタグで送る送っている場合は、自動検出の代わりにこの値が判定に使われる

ヘルプでは、タグで新規かどうかを自社で報告する方法が、レポートの精度を高める手段として案内されています。

カスタマーマッチのリストは照合キーを複数入れ、頻繁に更新する

顧客リストは、Googleのユーザーと照合できた分だけが判定に使われます。照合できた割合は、オーディエンス マネージャーまたはデータマネージャーの「マッチ率」の列で確認できます。メールアドレス・電話番号・郵便番号など照合キーを複数入れるとマッチ率は上がりやすく、リストは最新の状態に保って頻繁に更新することが推奨されています。

購入タグのパラメータは「判断できない注文には値を入れない」

Google広告のタグでは、購入イベントに新規顧客のパラメータを加え、新規ならtrue、リピーターならfalseを渡します。ゲスト購入のように判断できない注文には値を指定しません。無理に「新規」と送ると、既存客が新規として数えられます。判定期間は540日が推奨値で、既定でもこの期間です。

送れているかは、Tag Assistantでコンバージョンのリクエストを開き、「vdnc: true」(新規)または「vdnc: false」(リピーター)が含まれているかで確認します。

新規と既存を分けて数えるレポートの見方

レポートは「新規顧客とリピーター」のセグメントで分けて確認します。見る順番は、不明の割合、リピーターの割合、新規顧客の獲得コストの順です。

セグメントは次のように分かれます。

  • 新規顧客:過去540日に購入がない、既存顧客リストに含まれない、またはタグで新規と識別された購入
  • リピーター:過去540日に購入がある、既存顧客リストに含まれる、またはタグで既存と識別された購入
  • 不明:iOSの計測の制限やユーザーのパーソナライズ設定などで、どちらとも判別できない購入
  • その他のコンバージョン:購入以外のコンバージョン(ライフサイクル目標のレポートは購入だけが対象)

まず「不明」の割合を確認します。不明が多いと、新規とリピーターの比率も実態とずれて見えるためです。次に「リピーター」の割合で、主力のキャンペーンが既存客の注文をどれだけ受けているかを把握します。最後に「顧客獲得コスト(CAC)」を確認します。CACは新規顧客に割り当てた広告費を、ユニークな新規顧客数で割った値です。

「新規顧客のライフタイム バリュー」の列は、最初の購入の値に調整を加えた額で、その後の再購入は含みません。CACの評価には、自社の購入データから2回目以降の粗利も見積もって並べてください。

B社の「P-MAX_メイン」のように指名と商品の受け皿を担うP-MAXが高いROASを示している場合(診断サンプルの架空の会社(B社)の例です)、分けて数える目的は、そのROASが既存客の注文によるものかを把握することです。指名検索の受け方の確認方法と、配信面ごとの読み方は別の記事で解説しています。

有効化する前のデータには遡れない

ライフサイクル目標のレポートは、目標を有効にした後の期間についてだけ提供されます。有効化前の購入は「不明」として扱われ、遡って新規とリピーターに分けることはできません。

そのため、切り替える前に自社の購入データで「直近3か月の注文のうち初めての購入が何割か」を集計しておきます。ヘルプでも、優先したい顧客層がコンバージョンに占める割合を有効化前後で比べる方法が紹介されています。

コンバージョンのカウント方法で数え方が変わる

カウント方法が「すべて」(既定)の場合、計測期間内の再購入もカウントされ、新規顧客の再購入も「新規」に分類されます。「初回のみ」では再購入はカウントされません。「新規顧客」の列はカウント方法にかかわらず人数を示すため、比べるときは見る列をそろえてください。

「新規顧客のみ」に入札する前に確認すること

「新規顧客のみ」は、既存顧客を入札の対象から外す設定です。既存客の注文を別のキャンペーンで受けられること、判定の精度が十分であることを確認してから切り替えます。

確認したい項目は4つです。

  1. 既存顧客の注文を受けるキャンペーンが別にあるか。受け皿が無いまま切り替えると、既存客の注文を手放すことになる
  2. 「不明」と「リピーター」の割合が高いままではないか。ヘルプによれば、「新規顧客のみ」でも配信時に新規かリピーターか判別できない場合があり、AppleのITPやATTによる技術的な制限が一因とされている。タグの実装不備でもリピーターは増える
  3. 成果が上がらないときに戻す手順を決めているか。ヘルプでは、「新規顧客のみ」で成果が上がらない場合、リーチが制限されにくい「新規顧客の価値」への変更が推奨されている
  4. 判定までの期間を見込んでいるか。大きな変更の後は、反映まで1〜2週間かかることがある

どちらの設定が合うかは、データを眺めるだけでは判断できません。期間を決めて有効化前後の新規比率を比べます。広告が新規顧客の獲得にどれだけ寄与しているかまで確認する場合は、地域ベースまたはユーザーベースのコンバージョン リフトで検証する方法がヘルプで案内されています(ライフサイクル目標そのものはGoogle広告の中でテストできません)。

B社の場合:主力のP-MAXを「新規顧客のみ」にすると何が起きるか

診断サンプルの架空の会社(B社)の例です。B社の「P-MAX_メイン」は指名と商品の受け皿の役割を担っています。ほかに「検索_指名」(月1.8万円・売上41万円)と「ディスプレイ_リマーケティング」(月4万円・売上9万円)があります。

主力のP-MAXを「新規顧客のみ」にすると、P-MAXが受けていた既存客の注文はほかのキャンペーンで受けることになります。切り替える前に、「検索_指名」とリマーケティングの予算と設定でその注文を受けられるかを確認します。B社のリマーケティングは配信の64%が既存の購入者に向いていました(診断サンプルの架空の会社(B社)の例です)。この数字は、既存客の受け皿がすでにどこにあるかを考える材料になります。

判定に必要な件数と期間

顧客リストには、用途ごとに件数の条件があります。リストが条件に届かない場合は、購入タグのパラメータで判定するか、自動検出のまま「新規顧客の価値」で分けて数えるところから始めます。

ヘルプのページごとに異なる数字がありますが、それぞれ別の条件です。

条件数字対象
顧客リストとして使える少なくとも1つのネットワークで100人以上のアクティブなメンバーライフサイクル目標に追加するリスト
「新規顧客の獲得」を有効にできない場合がある顧客リストの登録ユーザーが1,000人未満目標の有効化
「新規顧客に限定して入札単価を設定」を使う少なくとも1つのネットワークで1,000人以上のアクティブ ユーザーがいるオーディエンス セグメント新規顧客のみの設定
自動検出が参照する期間過去540日自動で作られるオーディエンスリスト
購入タグのパラメータの判定期間540日(推奨値・既定)自社で判定して送る新規・リピーター
小売以外の広告主の条件購入コンバージョンが過去30日以内にある、または既存顧客のリストを追加している目標の利用

リストが1,000人に届かない場合は、まず購入タグのパラメータで新規・リピーターを送る方法が候補です。タグの改修も難しい場合は、自動検出のまま「新規顧客の価値」で分けて数え、不明の割合を確認しながらリストを増やしていきます。

TAMKOのGoogle広告アカウント診断で確認できること

TAMKOのGoogle広告アカウント診断では、検索広告・P-MAX・YouTube・ディスプレイ・ショッピングまでキャンペーンの種類ごとに確認し、続けてよいか・やめるべきものはあるか・広告で伸ばせるかに根拠を添えて答えます。主力のP-MAXが新規を獲得しているのか、既存客の注文を受けているのかも確認の対象です。

お渡しするのはサマリー・調査報告書・分析の明細と、オンラインの説明会1回で、料金は無料(毎月2社まで)です。月の広告費が10万円以上のアカウントが対象です。設定の修正まで任せたい場合は、Google広告のお試し運用(1施策・1か月で5万円・税別)から始められます。

よくある質問(FAQ)

Q01P-MAXの「新規顧客の獲得」は、カスタマーマッチが無くても使えますか?

使えます。

購入をコンバージョンとして計測していれば、自動検出で既存顧客のリストが作られます。精度を上げるには、顧客リストか購入タグのパラメータで補ってください。

Q02「新規顧客のみ」にしたのに、レポートにリピーターが出るのはなぜですか?

配信の時点で新規かリピーターかを判別できない人がいるためです。

AppleのITPやATTによる制限、タグの実装の不備も原因になります。顧客リストの更新とタグの設定を見直してください。

Q03新規顧客の価値(上乗せ額)はいくらに設定すればよいですか?

一律の目安はありません。

2回目以降の購入まで含めた粗利から考え、小さな額で始めて調整してください。

Q04目標を有効にする前の新規・既存の割合は確認できますか?

Google広告のレポートでは確認できません。

有効化前の期間は「不明」になるため、自社の購入データで集計しておいてください。

新規と既存は、渡した情報の分だけ正確に分かれる。「新規顧客のみ」の前に、まず分けて数える|まとめ

P-MAXの「新規顧客の獲得」目標の判定材料は、自動検出・顧客リスト・購入タグのパラメータの3つで、自社の購入履歴を渡すほど判定は実態に近づきます。レポートは不明、リピーター、CACの順に確認します。「新規顧客のみ」は、既存客の注文を受けるキャンペーンが別にあり、判定の精度が十分なときに検討する設定です。条件に届かないうちは、まず「新規顧客の価値」で分けて数え、有効化前に集計した自社の新規比率と比べるところから始めてください。

この記事のポイント

  • P-MAXの「新規顧客の獲得」目標は、既存顧客のリストや購入履歴に該当しない人を新規として扱う。判定の正確さは、広告主が渡す既存顧客の情報で決まる。
  • 判定の材料は、Googleの自動検出(過去540日)・カスタマーマッチなどの顧客リスト・購入タグの新規顧客パラメータの3つ。タグの値を送っている場合は、自動検出の代わりにその値が使われる。
  • レポートは「不明」「リピーター」の割合を先に確認し、CACは2回目以降の購入まで含めた粗利と並べて評価する。有効化前のデータには遡れない。
  • 「新規顧客のみ」は、既存顧客を別のキャンペーンで受けられることが前提。成果が上がらないときは「新規顧客の価値」へ戻す。
  • 顧客リストの件数条件(100人・1,000人)は用途ごとに異なる。届かないときは、購入タグのパラメータで判定するか、「新規顧客の価値」で分けて数えることから始める。